- 英
- endoscopic submucosal dissection ESD
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内視鏡的粘膜下層剥離術(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ、ESD[1])とは内視鏡治療の一つ。
目次
- 1 歴史
- 2 適応
- 3 手技
- 4 器具
- 4.1 切除器具
- 4.2 高周波器具
- 4.3 局注液
- 5 合併症
- 6 脚注
- 7 参考書籍
- 8 外部リンク
- 9 関連
歴史
日本が草分けの治療技術である。
「EMR」より広範囲の病変切除の方法が模索され、1982年に平尾雅紀(北海道勤労者医療協会中央病院)らが「ERHSE」法を報告[2] して以降、様々な方法[3]が提案されていった。
現型のESDのモデルとなったのは、1996年に国立がんセンター内視鏡部、細川浩一・小野裕之よりITナイフを用いた手法が報告され、その後、小野裕之(国立がんセンター→静岡がんセンター)・後藤田卓志(国立がんセンター→東京医科大学准教授)、小山恒男(佐久総合病院)、矢作直久(虎の門病院→慶応大学教授)、豊永高史(岸和田徳洲会病院)、山本博徳(自治医科大学)ら全国の有志によって発展し、確立してきた。
2007年に早期胃癌に対するESDが保険医療の適応を受け、その後、2008年に早期食道癌が続いて保険適応認定され、日本全国の医療機関で行われるようになってきた。2012年4月からは大腸のESDも保険適応となっている。
適応
基本的に原発病変切除のみであるため「リンパ節転移の無い、進達度の浅い早期の病変」が治療適応対象。現在保険適応となっているのは、早期食道癌、早期胃癌であり、早期大腸癌は2009年より先進医療に指定されている。また武藤学(京都大学)らによって早期咽頭癌に対しても行われている[4]。食道癌・胃癌・大腸癌のみならず咽頭癌でも術後機能が温存され、良好な経過が多くみられている。[5]
手技
現在、病変の臓器・形態によって、様々な手段・方法が存在し一概に記述は困難であるが、一般的に多く行われる手技について以下に紹介する。
- 病変部を確認し、色素散布を行い、病変を鮮明にし、切除境界を考慮して行く。
- 病変部よりやや間隔をとり、高周波器具を用いて切除範囲のマーキングを行う。
- 粘膜下層に局注液を注入し、人工的に浮腫を起こさせ、粘膜病変部を隆起させる。
- マーキングを目標に病変奥側から切開を開始し、粘膜下層を切除し病変を剥離させていく。
- 剥離した潰瘍面の血管・出血部位に対して十分な止血処置を施行していく。
器具
現在、様々な器具が開発されてきているが、主に広く用いられる器具は以下の通り。ほぼメーカーの独占商品名でもある。
切除器具
- ニードルナイフ(needle knife)
- ITナイフ(insulation tipped knife)シリーズ:オリンパス
- 現型のESDを広く普及させることとなった処置器具 国立がんセンター内視鏡部、細川・小野・後藤田らにより開発
- 小山恒男らによって開発
- フラッシュナイフ(Flush knife):富士フイルム
- 豊永高史らによって開発。送水機能を持つため、洗浄、局注が術中に可能という長所を持つ。[6]
- フレックスナイフ(Flex knife):オリンパス
- 矢作直久らによって開発。
- ムコゼクトーム (Mucosectom) HOYAペンタックス
- 河原祥朗(岡山大学)らによって開発
- 山本博徳(自治医大)らによって開発
- 赤星和也らによって開発 :富士フイルム[7]
高周波器具
- VIO300D:ドイツERBE社
- ICC-200:ドイツERBE社
局注液
- ヒアルロン酸注入液 山本博徳(自治医大)らによって開発 粘膜膨隆維持に優れESDを安全に普及させることとなった
合併症
偶発合併症には以下が存在する。
穿孔
ESDは粘膜表層の広範囲の切除を行う手術処置であるが、より下層を切除してしまう可能性があり、粘膜を穿き切れば穴が空いてしまう。
多くの場合、内視鏡的穿孔部縫合術が施行され、保存的経過観察とされる。ごく稀に縦郭・腹腔に炎症が生じてしまったような場合で手術的加療がなされることもある。
出血
人工的に潰瘍を作成するような治療のため出血が生じることがある。主に内視鏡的止血術施行にて対処される。
脚注
- ^ 英: endoscopic submucosal dissection
- ^ 平尾雅紀 他:胃の腫瘍性病変に対する内視鏡的切除法. Gastroenterol Endosc 25:1942-53, 1983.
- ^ 石後岡正弘,内沢政英,他:早期胃癌に対するHSE局注を併用した内視鏡的粘膜切除法(ERHSE)の新しい手技-粘膜下層直接切離による一括切除法. 消化器内視鏡 11:1323-1327, 1999.
- ^ 下咽頭癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術, Gastroenterological Endoscopy: 47(10):2416, 2005
- ^ Hanaoka, N et al.Clinical outcomes of endoscopic mucosal resection and endoscopic submucosal dissection as a transoral treatment for superficial pharyngeal cancer.Head Neck. 2013 Sep;35(9):1248-54.
- ^ Takeuchi Y., etal. Am J Gastroenterol. 2010; 105(2):314-322.
- ^ http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0389.html?ref=rss
参考書籍
- ESDのための胃癌術前診断 ISBN 978-4524250967
- ESDアトラス―処置具の選択と部位別攻略法 ISBN 978-4307101349
外部リンク
関連
- 消化器学
- 内視鏡
- 内視鏡的粘膜切除術 (EMR)
- 腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopy endoscopy cooperative surgery:LECS)
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 当院内視鏡センターにおけるブリーフィング導入の試み:チーム医療の推進を目的として
- 川合 万里,赤松 拓司,山下 幸孝,菅原 美紀,上田 久仁子,谷垣内 郁余
- 日本赤十字社和歌山医療センター医学雑誌 = Medical journal of Japanese Red Cross Society Wakayama Medical Center 32, 49-55, 2015-05-01
- … 今回、治療内容や患者情報に関してチーム内で情報共有を行う目的で、内視鏡的粘膜下層剥離術の術前にブリーフィングを導入し、参加した医師・看護師に対してアンケートを実施した。 …
- NAID 120005643398
- 狭帯域光観察(NBI)内視鏡および超音波内視鏡(EUS)にて観察された,黄色腫混在過形成ポリープの一例
- Fukuda Shin-ichiro,Akahoshi Kazuya,Fushimi Fumiyoshi,Oya Masafumi
- Fukuoka Acta Medica 106(4), 77-82, 2015-04-25
- … .超音波内視鏡検査(EUS)では穹窿部前壁の病変は第1 層の不整と第2層の肥厚として描出され,第3層は保たれていた.肥厚した第2層の内部には高エコー領域が散見された.前庭部の早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)と穹窿部の病変に対する内視鏡的粘膜切除術(EMR)を一期的に行なった.病理組織学的検索では穹窿部の病変は腺窩上皮が延長,分枝,拡張を伴う過形成変化を示し,また間質には泡沫組織球が著 …
- NAID 120005615448
- 食道・胃・大腸がんなど 大圃(はた)研NTT東日本関東病院医師がESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)で完治へ : 初期の消化器系がん切除で国内最高峰だが医局に属さず腕を磨いた異端児
Related Links
- 内視鏡的粘膜下層剥離術(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ、英endoscopic submucosal dissection:ESD)とは内視鏡 .... 下咽頭癌に対する内視鏡的粘膜下層 剥離術, Gastroenterological Endoscopy: 47(10):2416, 2005; ^ Takeuchi Y., etal.
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- 次の文を読み、69~71の問いに答えよ。
- 76歳の女性。胃癌の治療のため来院した。
- 現病歴:健康診断の上部消化管内視鏡検査と生検で胃癌と診断されたため治療の目的で受診した。同健康診断で血中Helicobacter pylori抗体陽性を指摘された。
- 既往歴:20年前から高血圧症で自宅近くの診療所に通院中。
- 生活歴:夫と長女の家族と暮らしている。喫煙歴と飲酒歴はない。
- 家族歴:父親が心筋梗塞。母親が胃癌。
- 現症:意識は清明。身長 157cm、体重 48kg。体温 36.5℃。脈拍76/分、整。血圧 132/86mmHg。呼吸数 14/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
- 検査所見:血液所見:赤血球 418万、Hb 12.7g/dL、Ht 40%、白血球 4,300、血小板 22万。血液生化学所見:総蛋白 6.7g/dL、アルブミン 4.0g/dL、総ビリルビン 0.8mg/dL、AST 25U/L、ALT 19U/L、LD 193U/L(基準 120~245)、ALP 147U/L(基準 115~359)、尿素窒素 18mg/dL、クレアチニン 0.9mg/dL、Na 139mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 103mEq/L。上部消化管内視鏡像(別冊No. 15)を別に示す。
- その後の経過:病理組織結果から治癒切除と診断し、上部消化管内視鏡検査で切除治療後の潰瘍の治癒を確認した。その後、Helicobacter pyloriに対する除菌治療を行うことにした。医師と患者の会話を以下に示す。
- 医師:「①ピロリ菌の除菌治療のためにNSAIDと3種類の抗菌薬を処方します。
- ②1日3回朝昼晩で、1か月間服用していただきます。今までにお薬のアレルギーはありませんか」
- 患者:「ありません」
- 医師:「副作用として下痢や皮疹がみられることがありますが、③副作用が出ても我慢して内服を続けてください」
- 患者:「わかりました」
- 医師:「④除菌が成功すると胃癌は発生しなくなりますが、⑤1~2年に1度は胃の内視鏡検査を受けることをお勧めします」
- 患者:「わかりました」
- 医師:「除菌ができたかどうかは2か月後に検査をします」
- 2か月後の除菌判定を行うのに適切なのはどれか。2つ選べ。
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- 76歳の女性。胃癌の治療のため来院した。
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- 既往歴:20年前から高血圧症で自宅近くの診療所に通院中。
- 生活歴:夫と長女の家族と暮らしている。喫煙歴と飲酒歴はない。
- 家族歴:父親が心筋梗塞。母親が胃癌。
- 現症:意識は清明。身長 157cm、体重 48kg。体温 36.5℃。脈拍76/分、整。血圧 132/86mmHg。呼吸数 14/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
- 検査所見:血液所見:赤血球 418万、Hb 12.7g/dL、Ht 40%、白血球 4,300、血小板 22万。血液生化学所見:総蛋白 6.7g/dL、アルブミン 4.0g/dL、総ビリルビン 0.8mg/dL、AST 25U/L、ALT 19U/L、LD 193U/L(基準 120~245)、ALP 147U/L(基準 115~359)、尿素窒素 18mg/dL、クレアチニン 0.9mg/dL、Na 139mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 103mEq/L。上部消化管内視鏡像(別冊No. 15)を別に示す。
- その後の経過:病理組織結果から治癒切除と診断し、上部消化管内視鏡検査で切除治療後の潰瘍の治癒を確認した。その後、Helicobacter pyloriに対する除菌治療を行うことにした。医師と患者の会話を以下に示す。
- 医師:「①ピロリ菌の除菌治療のためにNSAIDと3種類の抗菌薬を処方します。
- ②1日3回朝昼晩で、1か月間服用していただきます。今までにお薬のアレルギーはありませんか」
- 患者:「ありません」
- 医師:「副作用として下痢や皮疹がみられることがありますが、③副作用が出ても我慢して内服を続けてください」
- 患者:「わかりました」
- 医師:「④除菌が成功すると胃癌は発生しなくなりますが、⑤1~2年に1度は胃の内視鏡検査を受けることをお勧めします」
- 患者:「わかりました」
- 医師:「除菌ができたかどうかは2か月後に検査をします」
[正答]
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- 次の文を読み、67~69の問いに答えよ。
- 62歳の女性。胃病変の精査と内視鏡治療とを希望して来院した。
- 現病歴:3年前に胸やけがあり、自宅近くの医療機関で上部消化管内視鏡検査を施行され、逆流性食道炎と診断された。その後、近くの診療所でプロトンポンプ阻害薬を投与されていた。1か月前から再度、食後や就寝後に胸やけが生じるようになったため、同じ医療機関で上部消化管内視鏡検査を受けたところ、逆流性食道炎は治っているが胃に異常があると言われた。胃病変が心配になりインターネットで検索した結果、早期の癌は内視鏡で治療できると記載があったため、胃病変の精査と内視鏡治療とを希望して受診した。
- 既往歴:5年前から高血圧症で治療中。
- 生活歴:喫煙歴と飲酒歴とはない。
- 家族歴:父親が糖尿病。
- 現 症:意識は清明。身長 156cm、体重 48kg。体温 36.2℃。脈拍 68/分、整。血圧 114/76mmHg。呼吸数 14/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、心窩部に圧痛を認めるが腫瘤は触知しない。
- 検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球 400万、Hb 12.1g/dL、Ht 40%、白血球 8,200、血小板 30万。心電図と胸部エックス線写真とに異常を認めない。上部消化管内視鏡像(別冊No. 8A、B)を別に示す。生検組織のH-E染色標本(別冊No. 9①~⑤)を別に示す。
- 胃病変への対応として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109G068]←[国試_109]→[109H001]
[★]
- 次の文を読み、59~61の問いに答えよ。
- 63歳の男性。吐血のため救急車で搬入された。
- 現病歴:2年前から食後に心窩部痛を感じていたが、多忙であったために医療機関を受診していなかった。最近になって、常に心窩部不快感があり食欲低下と全身倦怠感とを感じるようになった。2日前に便が黒いことに気付いたが、今朝、排便後に真っ赤な血を大量に吐いたため救急車を要請した。
- 既往歴:50歳ごろに脳梗塞。抗血小板薬を処方されている。
- 生活歴:喫煙は20本/日を43年間。飲酒は焼酎1合/日を38年間。
- 家族歴:父親が胃癌。母親が高血圧症。
- 現症:意識は清明。身長 168cm、体重 72kg。体温 36.3℃。心拍数 96/分、整。血圧 98/68mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜は貧血様だが眼球結膜に黄染を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、心窩部に軽度圧痛を認める。表在リンパ節を触知しない。
- 検査所見:血液所見:赤血球 276万、Hb 8.7g/dL、Ht 28%、白血球 6,400、血小板 28万。血液生化学所見:総蛋白 6.8g/dL、アルブミン 3.4g/dL、総ビリルビン 0.8mg/dL、AST 45U/L、ALT 56U/L、LD 344U/L(基準 176~353)、ALP 322U/L(基準 115~359)、γ-GTP 87U/L(基準8~50)、アミラーゼ 120U/L(基準 37~160)、CK 78U/L(基準 30~140)、尿素窒素 28mg/dL、クレアチニン 0.8mg/dL、尿酸 6.3mg/dL、血糖 108mg/dL、HbA1c 5.8%(基準 4.6~6.2)、総コレステロール 250mg/dL、トリグリセリド 190mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 100mEq/L。上部消化管内視鏡像(別冊No. 7)を別に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [111B059]←[国試_111]→[111B061]
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- 次の文を読み、 67~ 69の問いに答えよ。
- 62歳の男性。心窩部痛を主訴に来院した。
- 現病歴: 3か月前から時々心窩部不快感を自覚するようになった。最近、会社の同僚が同じような症状で胃癌の診断を受け手術を行ったため、自分も胃癌ではないかと心配になっていた。食欲低下も出現したため、市販の胃薬を内服したところ心窩部不快感と食欲不振とは改善した。その後仕事が忙しく、時々心窩部不快感はあったがそのままにしていた。 1週前に腰部を打撲し、自宅近くの診療所で治療を受け 2日後には軽快した。 3日前から心窩部痛が持続するようになり、夜間就寝中にも痛みで覚醒するようになった。テレビで胃癌の原因が Helicobacterpyloriの感染であることを聞いて心配になり、上部消化管内視鏡検査を希望し受診した。
- 既往歴:特記すべきことはない。
- 生活歴:喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
- 現症:意識は清明。体温 36.7℃。脈拍 76/分、整。血圧 128/70 mmHg。呼吸数 16/分。腹部は平坦で、肝・脾を触知しない。心窩部に軽度の圧痛を認めるが、腫瘤は触知しない。直腸指診で異常を認めない。
- 検査所見:尿所見:蛋白 (-)、糖 (-)、潜血 (-)。血液所見:赤血球 330万、 Hb11.8 g/dl、Ht 32%、白血球 7,200、血小板 24万。心電図と胸部エックス線写真とに異常を認めない。上部消化管内視鏡像 (別冊 No. 9)を別に示す
- 治療として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [108G068]←[国試_108]→[108H001]
[★]
- 次の文を読み、69~71の問いに答えよ。
- 76歳の女性。胃癌の治療のため来院した。
- 現病歴:健康診断の上部消化管内視鏡検査と生検で胃癌と診断されたため治療の目的で受診した。同健康診断で血中Helicobacter pylori抗体陽性を指摘された。
- 既往歴:20年前から高血圧症で自宅近くの診療所に通院中。
- 生活歴:夫と長女の家族と暮らしている。喫煙歴と飲酒歴はない。
- 家族歴:父親が心筋梗塞。母親が胃癌。
- 現症:意識は清明。身長 157cm、体重 48kg。体温 36.5℃。脈拍76/分、整。血圧 132/86mmHg。呼吸数 14/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
- 検査所見:血液所見:赤血球 418万、Hb 12.7g/dL、Ht 40%、白血球 4,300、血小板 22万。血液生化学所見:総蛋白 6.7g/dL、アルブミン 4.0g/dL、総ビリルビン 0.8mg/dL、AST 25U/L、ALT 19U/L、LD 193U/L(基準 120~245)、ALP 147U/L(基準 115~359)、尿素窒素 18mg/dL、クレアチニン 0.9mg/dL、Na 139mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 103mEq/L。上部消化管内視鏡像(別冊No. 15)を別に示す。
- 内視鏡治療の適応と診断し内視鏡的粘膜下層剥離術を行った。病理組織のH-E染色標本(別冊No.16①~⑤)を別に示す。
- この患者の切除標本の病理組織像と考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114F068]←[国試_114]→[114F070]
[★]
- 62歳の男性。吐血のため救急車で搬入された。今朝、突然の吐血があり、家族が救急車を要請した。意識レベルは JCSⅠ-2。体温 36.5℃。心拍数 98/分、整。血圧 110/78mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 96%(鼻カニューラ 3L/分酸素投与下)。眼瞼結膜は軽度貧血様で眼球結膜に黄染を認める。腹部は膨満し波動を認める。下腿に浮腫を認める。直腸診で黒色便の付着を認める。血液所見:赤血球 328万、Hb 9.5g/dL、Ht 32%、白血球 4,800、血小板 4万、PT-INR 1.6(基準 0.9~1.1)。血液生化学所見:総蛋白 5.6g/dL、アルブミン 2.8g/dL、総ビリルビン 3.1mg/dL、直接ビリルビン 2.2mg/dL、AST 56U/L、ALT 38U/L、LD 234U/L(基準 120~245)、ALP 302U/L(基準 115~359)、クレアチニン 1.0mg/dL、アンモニア 135μg/dL(基準 18~48)、Na 131mEq/L、K 3.5mEq/L、Cl 99mEq/L。CRP 1.1mg/dL。上部消化管内視鏡像(別冊No. 11)を別に示す。
- 治療として適切なのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [114F057]←[国試_114]→[114F059]
[★]
- 70歳の男性。嚥下困難を主訴に来院した。2か月前から食物の飲み込みにくさを自覚するようになった。徐々に食事摂取が困難となり、体重は1か月で4kg減少した。身長 170cm、体重 59kg。体温 36.5℃。脈拍 76/分、整。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球 334万、Hb 10.8g/dL、Ht 31%、白血球 7,200、血小板 18万。血液生化学所見:総蛋白 6.3g/dL、アルブミン 3.3g/dL、AST 36U/L、ALT 40U/L、尿素窒素 19mg/dL、クレアチニン 0.8mg/dL、CEA 14ng/mL(基準5以下)、SCC 7.8ng/mL(基準1.5以下)。上部消化管内視鏡像(別冊No.19A)、生検組織のH-E染色標本(別冊No.19B)及び腹部造影CT(別冊No.19C)を別に示す。
- 対応として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114A047]←[国試_114]→[114A049]
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- 69歳の女性。血便を主訴に来院した。 3か月前から便に血液が付着していることに気付いていた。便器の水が血で染まる色が徐々に濃くなったため受診した。既往歴に特記すべきことはない。下部消化管内視鏡検査による回盲部から約 20 cm肛門側の写真 (別冊 No.25A)と肛門から約 30 cm口側の写真 (別冊 No.25B)とを別に示す。写真Aの病変に対しては内視鏡的粘膜切除が行われ、病理所見は腺腫であった。同時に行った写真Bの病変に対しては生検が行われ、病理所見は腺癌であった。胸腹部・骨盤部造影 CTで肺や肝臓などの主要臓器に転移を認めない。
- 対応として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [108I063]←[国試_108]→[108I065]
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[正答]
※国試ナビ4※ [107B001]←[国試_107]→[107B003]
[★]
- 英
- large bowel cancer
- 同
- 結腸直腸癌, colorectal cancer, CRC, colorectal carcinoma、直腸結腸癌
- 関
- 結腸癌 colon cancer colonic cancer。大腸
- first aid step1 2006 p.277
概念
- 大腸に発生した悪性腫瘍の総称
- 結腸癌、直腸S状部癌、直腸癌を含む。
疫学
死亡率
- 男性:第4位(肺>胃>肝>大腸)
- 女性:第1位(大腸>胃>肺>肝>乳房>子宮)
リスクファクター(first aid step1 2006 p.277)
- ×Peutz-Jeghers syndromeはリスクファクターではない
好発部位
- 直腸・S状結腸 > 上行結腸・盲腸 > 横行結腸 > 下行結腸
- 直腸が50%、S状結腸25% (出典不明)
頻度
肉眼分類
早期癌
- 0-I型(隆起型):Ip(隆起型)、Isp(亜有茎型)、Is(無茎型)
- 0-II型(表面型):IIa(表面隆起型), IIc(表面陥凹型)
進行癌
- 1型(腫瘤型)
- 2型(潰瘍限局型)
- 3型(潰瘍浸潤型)
- 4型(びまん浸潤型)
頻度
- 進行癌:2型(潰瘍限局型) > 3型(潰瘍浸潤型) > 1型(腫瘤型) > 4型(びまん浸潤型)
- 早期癌を含めると、2型(潰瘍限局型)(80%)に次いで0型(表在型)が多い。
- 2型で外周の2/3週以上となると、注腸造影でapple core sign として認められる。
病期分類
Dukes分類
- A. 癌腫が腸管壁内に限局するもの ← 固有筋層まで(MP。つまりT2)
- B. 癌腫が腸壁を貫いて浸潤するが、リンパ節転移のないもの
- C. リンパ節転移があるもの
進行病期分類
stage
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定義
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治療
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0
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癌が粘膜にとどまっている。(M)
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内視鏡
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I
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癌が大腸壁にとどまっている。(SM,MP)
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SM軽度浸潤(<2cm)では内視鏡、それ以外は手術療法
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II
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癌が大腸壁の外まで浸潤している。(SS,SE)
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手術療法
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III
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リンパ節転移がある。
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手術療法+補助化学療法
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IV
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肝転移、肺転移または腹膜播種がある。
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手術療法 and/or 化学療法 and/or 放射療法
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大腸癌取り扱い規約 第7版(2009年)
壁深達度
- M:粘膜内まで
- SM:粘膜下層まで
- MP:固有筋層まで
漿膜を有する部位
- SS:MP越えているが漿膜下にとどまる
- SE:漿膜表面に露出
- SI:他臓器に直接浸潤
漿膜を有しない部位
進行度
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N0
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N1
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N2
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H1,H2,H3,M1 P1,P2,P3
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M
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0
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SM MP
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I
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IIIa
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IIIb
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IV
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SS,A SE SI,AI
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II
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リンパ節郭清
- 1群リンパ節郭清:D1:腫瘍付近のリンパ節(傍リンパ節)を切除
- 2群リンパ節郭清:D2:癌のある腸管を栄養する血管に沿うリンパ節(中間リンパ節)までを切除
- 3群リンパ節郭清:D3:栄養血管の根元にあるリンパ節(主リンパ節)までを切除
病理
症状
腫瘍の局在
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右側結腸
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左側結腸
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S状結腸・直腸
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症状
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自覚症状に乏しい(貧血、腹部腫瘤、腹痛、まれに腸重積)
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イレウス多い、左下腹部痛
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血便/粘結弁
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下痢
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便秘、便通過障害(下血・血便)
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便通異常(下痢・便秘、腹部膨満感、しぶり腹、輪状狭窄、糞柱の狭小化)
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検査
血液検査
腫瘍マーカー
便潜血
単純X線検査
診断
治療
- 原則として以下の治療を選択するが、必要に応じて、手術療法、化学療法、放射線療法を組み合わせる。(SSUR.550)
- Stage0,StageIの一部:内視鏡的切除
- StageI,II:手術療法
- StageIII:手術療法+化学療法
- StageIV:手術療法、化学療法、および放射線療法の組み合わせ
早期癌
内視鏡的治療
原則
病期
- stage 0 ~ stage I and SM軽度浸潤 and 最大径 2cm以下
適応基準
- ( M or SM ) and ( 最大経≦2cm ) and ( 肉眼型は問わない )
進行癌
-
- FOLFIRI療法 → FOLFOX療法 、 FOLFOX療法 → FOLFIRI療法 。一次治療にはベバシズマブ、二次治療にはセツキシマブの併用を推奨
- stage I~IVで行われる。
- 原発巣の切除とリンパ節の郭清を行う
- 転移巣(肝臓、肺)、局所再発に対して:根治性が得られるなら切除。得られないのであれば姑息的治療(肝転移の場合なら、経カテーテル的肝動脈塞栓術
- (姑息的に?結腸癌の進展による直腸の狭窄が考慮される場合には)Hartmann手術をおこなう。
- (大腸癌の肝転移例に対する手術適応)原発巣が根治的に処理されている場合には積極的に肝切除を行う。肝切除ができない場合は経カテーテル的冠動脈塞栓術を施行(QB.A-194)
術式
結腸癌
- 結腸部分切除術
- 回盲部切除術
- 結腸右半切除術
- 結腸左半切除術
- S状結腸切除術
- 結腸全摘術
検診
スクリーニング
- USPSTF
- 50-75歳の成人に便潜血・大腸内視鏡を推奨する(A)
- 85歳以上の高齢者には推奨しない(D)
- リスクが有る患者には40歳、ないし発症した親族の年齢の10年前から大腸内視鏡を5年ごとに行う
- リスク:2人の大腸癌ないし腺腫性ポリープの家族歴あり
- 大腸内視鏡であれば10年毎でよいが、これをやらない場合には毎年の便潜血を。
参考
- 1. がん情報 - 結腸および直腸 Colon and Rectum(C18-C20)
- http://ganjoho.ncc.go.jp/data/hospital/cancer_registration/odjrh3000000hrgr-att/20070723022_c18colon_and_rectum.pdf
- 2. 大腸低分化腺癌,印環細胞癌の臨床病理学的検討
- 山形県立中央病院外科
- 平井 一郎 池田 栄一 飯澤 肇 佐藤 敏彦 岡部 健二 石田 卓也 太田 陽一
- 最近11年間の大腸癌手術症例1,260例のうち,低分化腺癌(por)93例,印環細胞癌(sig)7例を臨床病理学的に検討した.また間質結合織の多寡で髄様型(med),中間型(int),硬性型(並1)に3分類した。por,sigはs(a2)以深の進行例が多く,早期癌203例中1例のみであり,癌発生直後より急速に進展すると考えられた。5生率は高分化:67.9%,中分化:423%,por,sig:37.4%で,por,sigは有意に予後不良であった。間質別5生率はmedで79.6%と極めて予後良好だったが,sciには3年生存例がなく,med,int,並i間に有意差が認められた。組織発生の検討では,intは分化型腺癌の浸潤先進部の分化度が低下し低分化部分が優勢となったもので,med,sciは発生初期から低分化腺癌の形態をとる症例が存在すると考えられた。大腸低分化腺癌,印環細胞癌の間質組合織の多寡による3分類は予後,癌組織発生の点で重要である。
- http://journal.jsgs.or.jp/pdf/028040805.pdf
- http://www.jsco-cpg.jp/guideline/13.html
ガイドライン
- http://www.jsco-cpg.jp/guideline/13.html
- 大腸癌治療ガイドライン 医師用 2010年版 - 大腸癌研究会 JSCCR
- http://www.jsccr.jp/guideline2010/guideline02.html
[★]
- 英
- rectal cancer, cancer of the rectum
- ラ
- carcinoma recti
- 関
- 大腸癌、直腸、colorectal cancer
治療
-
- 1. 経肛門的にイレウス管を挿入・減圧後、一期的手術 ← 増えてきている。
- 2. 人工肛門造設、腫瘍摘出の二期的手術
手術療法
国試
[★]
[★]
内視鏡的粘膜下層剥離術 ESD
[★]
内視鏡的粘膜下層剥離術
[★]
- 英
- mucosa (KL), mucous membrane (KH), endometrium (Z. L-20), mucosae (Z. P-27)
- ラ
- tunica mucosa
- 関
- 粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下組織、筋層
定義
粘膜
粘膜下の深層にある組織
[★]
- 英
- endoscope
- 同
- エンドスコープ
- 関
- 小腸内視鏡、大腸内視鏡、電子内視鏡
[★]
- 英
- surgery
- 関
- 外科、外科学、手術、外科術、外科手術
[★]
- 英
- endoscopic、endoscopically
- 関
- 内視鏡検査、内視鏡下
[★]
- 英
- detachment, ablation
- 関
- 表皮剥離、表皮剥脱