家族性大腸腺腫症
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/03/21 22:10:03」(JST)
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家族性大腸腺腫症(かぞくせいだいちょうせんしゅしょう,familial adenomatous polyposis;FAP)とは大腸に100個以上のポリープ(ポリポーシス)が発生する遺伝的な疾患である。家族性大腸ポリポーシス、家族性腺腫性ポリポーシスなどとも呼ばれる。
目次
- 1 病因
- 2 病態
- 2.1 大腸
- 2.2 胃・十二指腸
- 2.3 消化管外
- 3 症状
- 4 診断
- 5 治療
- 6 関連疾患
|
病因
常染色体優性遺伝の遺伝疾患である。原因遺伝子はAPC遺伝子であることが判明している。
病態
大腸
家族性大腸腺腫症の内視鏡所見。多数のポリープが見える。
数百から数万個のポリープが発生する。ポリープが発生し始めるのは10歳前後であり、以降は時間の経過とともに数と大きさが増大する。このポリープから大腸癌が発生する。15歳前後から発生が見られ、40歳では50%、60歳ではほぼ100%の患者に大腸癌を発生する。
胃・十二指腸
患者の約6割に胃にポリープや腺腫が発生する。発生する部位は胃底腺と幽門腺であるが、これらが悪性化することはほとんどない。
十二指腸には高率で腺腫が発生し、癌化することもある。
消化管外
顎骨に骨腫が発生する。これは消化管ポリポーシスの中でもFAPに特異的なものである。
その他、甲状腺癌や膵癌の合併も見られる。
症状
特有な症状はない。血便や下痢が発生することがある程度である。
診断
注腸造影や大腸内視鏡検査で診断し、生検によって確定する。またX線検査によってその他の症状がないか検査する。
遺伝疾患であることから、家族にFAPの患者がいる場合は早期から検査をして極力早期診断・治療ができるように試みる。
治療
大腸癌が発生するのを予防するため、基本的に大腸粘膜を全摘する。通常は全結腸と直腸粘膜を切除し、回腸嚢肛門吻合を行うが、下部直腸や肛門管に癌が存在した場合は直腸も全摘する。手術は癌発生がまれな20歳以前に行う。
関連疾患
- ガードナー症候群(Gardner's syndrome)
- FAPに頭蓋骨や長管骨の骨腫や軟部組織の腫瘍が合併したもの。原因遺伝子はFAPと同じくAPC遺伝子である。治療法はFAPに同じ。
- ターコット症候群(Turcot's syndrome)
- ポリポーシスに中枢神経系腫瘍が合併するもの。FAPと比較して大腸の腺腫は少ないが、悪性化は若年で起こりやすい。常染色体劣性遺伝であり、原因遺伝子は不明である。大腸全摘を行う。予後は脳腫瘍に左右される。
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 腹腔鏡補助下脾合併膵体尾部切除術を施行した腹腔内デスモイド腫瘍の1例
- 山川 俊紀,小野田 裕士,溝尾 妙子,村岡 孝幸,徳毛 誠樹,鈴鹿 伊智雄
- 日本消化器外科学会雑誌 43(7), 752-757, 2010-07-01
- 今回,我々は術前診断に苦慮した腹腔内デスモイド腫瘍に対して,腹腔鏡補助下脾合併膵体尾部切除術を施行した1例を経験したので報告する.症例は21歳の女性で,開腹手術,腹部外傷などの既往歴,家族性大腸ポリポーシスの家族歴もなかった.腹部CT,MRI,超音波検査にて,膵体尾部表面から胃を前方に圧排するように発育する腫瘍を認めた.膵臓もしくは膵前筋膜より発生した良性腫瘍を考慮し,診断的治療目的で手術を施行し …
- NAID 110007657014
- 4. 家族性大腸ポリポーシス術後に脳出血を併発した22歳女性の1例(第39回日本リハビリテーション医学会関東地方会)
- 栗原 由佳,日原 信彦,渡辺 俊之,笹尾 ゆう,豊倉 穣
- リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 45(8), 542, 2008-08-18
- NAID 110006862643
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- hereditary disease
- 関
- 先天性疾患
- 世代を通じて配偶子に伝えられる疾患。家族性発生をみる。
- 遺伝性疾患は必ずしも先天性疾患ではない。
- 例:Huntington病
遺伝性疾患
常染色体優性遺伝
常染色体劣性遺伝
伴性劣性遺伝
伴性優性遺伝
[★]
- 英
- hereditary nonpolyposis colorectal cancer, HNPCC
- 同
- リンチ症候群 Lynch syndrome
- 関
- 大腸癌、家族性大腸ポリポーシス
- first aid step1 2006 p.277
概念
- 若年~中年で大腸癌を発症する疾患
- ミスマッチ修復遺伝子の変異と関係がある。
疫学
- 日本の全大腸癌に対するHNPCCの割合は0.2-4% (YN.A-85)
- 50歳ごろに発症。
病因
- HNPCCの素因のある人は50歳までに大腸癌を発症する。女性では子宮体癌、卵巣癌のリスクもある。
- 90%の症例でミスマッチ遺伝子の変異と関係がある。
- hMSH2、hMLH1、hPSM1、hPMS2、hMSH6など
- G2期でミスマッチ修復に関わる、HNPCCの腫瘍細胞では、塩基の反復の不安定性が特徴的である。
- 浸透率:約80%。腺腫の合併:約10%。
遺伝形式
病態
合併症
予後
参考
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%BA%E4%BC%9D%E6%80%A7%E9%9D%9E%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%B9%E5%A4%A7%E8%85%B8%E7%99%8C
uptodate
- 1. [charged] 大腸癌の分子遺伝学 - uptodate [1]
- 2. [charged] リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)の臨床的特徴および診断 - uptodate [2]
- 3. [charged] リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス性大腸癌):患者および家族のスクリーニングおよび管理 - uptodate [3]
- 4. [charged] リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス性大腸癌)の女性における子宮体癌および卵巣癌のスクリーニングおよび予防 - uptodate [4]
国試
[★]
- 英
- gastrointestinal polyposis, polyposis of the alimentary tract
- 関
- ポリポーシス、消化管ポリープ
消化管ポリポーシス
QB.A-396改変
SSUR.545
-
[★]
- 英
- familial adenomatous polyposis, FAP
- 同
- 家族性大腸ポリポーシス ,familial polyposis coli, FPC, 家族性大腸ポリープ症, familial adenomatous polyposis coli
- 家族性ポリポーシス familial polyposis syndrome familial polyposis
- 関
- 大腸ポリポーシス
- familial polyposis syndrome
概念
- 癌抑制遺伝子APC geneのloss of functionにより、大腸全体にびまん性に腺腫を生ずる。
分類
- 家族性大腸腺腫症のうち、以下の合併症を伴う物はそれぞれ家族性大腸腺腫症の下位概念として名称が与えられている
-
- SSUR.546によると、Garder症候群 ≒ 家族性大腸腺腫症。すなわち「古典的なGardner症候群の類似疾患である」(SSUR.546)
病因
疫学
遺伝形式
病変形成&病理
症状
合併症
- 消化管:大腸。60-70%の症例で → 小腸・胃(胃底腺領域)・十二指腸
- 消化管外:顎骨内骨腫、顎骨以外の骨病変、網膜色素斑、体表の軟部組織腫瘍、デスモイド腫瘍、歯牙腫、甲状腺癌、子宮癌
診断
検査
治療
予後
- 大腸癌は20歳ごろから発生、40歳で50%リスク、60歳でほぼ全例。癌により死亡する平均の年齢は42歳。(YN.A-74)
予防
[★]
- 英
- colonic polyp, polyp of large intestine, polyp of the colon
- 関
- 結腸ポリープ、大腸ポリポーシス
概念
- (広義)大腸の管腔内に突出する限局性隆起。腫瘍性から非腫瘍性のものを含む。
- (狭義)上皮性増殖からなる隆起。良性のものを指して言うことが多い。
分類
- 大腸ポリープ全体のなかで大腸腺腫は80%を占める。
疫学
- 40歳代より漸増。50歳以上でよく見られる(SSUR.544)。
- 男女比2:1
病態
病理
- 無茎性(Is)が最も多い。有茎性(Ip)、亜有茎性(Isp)など
症状
- 無症状のことが多いが、まれに消化管出血をきたしうる。しかし、下血を来すほどの出血はしない。
治療
[★]
- 英
- large intestine (Z)
- ラ
- intestinum crassum
小腸と比べたときの大腸の特徴 (M.149)
- 結腸ヒモという縦走筋繊維からなる3本の太い帯を有する
- 結腸膨起という結腸ヒモの間の膨らみを有する
- 腹膜垂という脂肪の塊を含む
- 内径は小腸よりも大きい
大腸を構成する部位
- 盲腸
- 結腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)
- 直腸
- (虫垂)
生理
1)膨起性往復運動 haustralshuttling movement
2)(単一)膨起性移送運動 segmentalhaustralpropulsion
3)多膨起性移送運動 multihaustralpropulsion
1) 2)により内容物のゆっくりした移動(5cm/hr)
→ 48hrで上行結腸よりS状結腸へ
4)総蠕動mass movement(mass peristalsis,maSS PrePulsion)
1-3回/日、強い蠕動→結腸内容物が直腸へ移動(→排便誘発)
5)収縮回数:直腸 > S状結腸 のため内容物はS状結腸へ移動
(通常は、直腸に内容物(-))
6)胃大腸反射 gastro-colonic reflex
小腸大腸反射 ileo-colonic reflex:胃、小腸に内容物-→結腸に総蠕動(+)
*排便
1)解剖
①内肛門括約筋internalanal
②外肛門括約筋externalanal
sphincter---平滑筋
sphincter山-一横紋筋
2)排便のメカニズム
i)総蠕動一糞便直腸へ
ii)直腸内圧〉20Ⅷ舶g ⇒ 直腸壁伸展⇒ 仙髄排便中枢(S2-4)
⇒ ①高位中枢(便奇形成)
②排便反射defecation reflex
内肛門筋弛緩
外肛門筋収縮(一過性)
直腸蠕動運動(⇒内圧をさらに高める)
iii) 内圧45-55mmHg以上
内容物200ml以上
便意による排便動作 外肛門筋弛緩
腹筋、横隔膜収縮
[★]
- 英
-
- 関
- 科、家系性、家族性、家庭、系統群、産生、親戚、ファミリ、ファミリー、一対、ファミリーメンバー、家族特性
[★]
- 英
- intestine
- ラ
- intestinum
- 関
- 小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸(結腸、S状結腸、直腸、盲腸)
[★]
- 英
- polyposis
- 同
- ポリープ症
- 関
- 消化管ポリポーシス、ポリープ
[★]
- 英
- familial
- 関
- 家系性、家族