- 英
- cetuximab
- 商
- アービタックス Erbitax
- 関
- 上皮成長因子受容体、上皮成長因子受容体阻害薬
- セツキシマブは、上皮成長因子受容体 (EGFR) に結合して、EGFRの働きを阻害するモノクローナル抗体である。(wikipedia)
- 抗がん剤として使用され、癌の増殖などに関係する特定の分子を狙い撃ちする分子標的治療薬のひとつである。(wikipedia)
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セツキシマブ
臨床データ |
投与方法 |
点滴静注 |
薬物動態データ |
半減期 |
114 時間 |
識別 |
CAS番号 |
205923-56-4 |
ATCコード |
L01XC06 |
KEGG |
D03455 |
化学的データ |
化学式 |
C6484H10042N1732O2023S36 |
分子量 |
145781.6 |
セツキシマブ (Cetuximab) は、上皮成長因子受容体 (EGFR) に結合して、EGFRの働きを阻害するモノクローナル抗体である。抗癌剤として使用され、癌の増殖などに関係する特定の分子を狙い撃ちする分子標的治療薬のひとつである。
目次
- 1 概要
- 2 歴史
- 3 使用方法
- 4 作用機序
- 5 臨床効果
- 5.1 大腸癌
- 5.2 頭頸部癌
- 5.3 非小細胞肺癌
- 6 参考文献
概要
セツキシマブはIgG1に属するヒト・マウスキメラ化モノクローナル抗体であり、点滴静注で使用される。商品名はアービタックス® (Erbitax®)。開発コード名「IMC-C225」で呼ばれることもある。米国イムクローン・システムズ社によって開発・製造され、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社により販売される。EGFRを発現する転移性大腸癌に対する治療薬、および頭頸部癌(EGFRの発現を問わない)の治療薬として日本、米国食品医薬品局 (FDA) などで承認を受けている。
副作用として現れる皮疹のグレードと生存期間との間に相関関係が知られており、患者(大腸がん)の全生存率が20パーセント以下になるのは、皮疹がない場合で6ヵ月以上に対して、グレード1の患者は13ヵ月以上、グレード2以上の患者17ヵ月以上であった。なお、皮疹グレード2以上と皮疹なしの患者の死亡のハザード比(HR:Hazard Ratio、危険率)は 0.33(p<0.001)[1]。
なお、理由は不明だがセツキシマブとベバシズマブ(アバスチン)の併用治療は、無再発生存期間と全生存期間中央値を有意に短縮するとされる[2]。
歴史
1980年代初頭にEGFRを癌治療の標的にすることが提唱され、EGFRに対するモノクローナル抗体の研究が始まった[3]。1983年セツキシマブは培養癌細胞やマウスモデルに対し抗腫瘍効果を示すことが確認され[4][5][6]、さらに1990年には臨床試験が開始された[7]。2001年~2002年に行われた無作為化比較臨床試験[8]において大腸癌に対する効果が証明され、2003年12月に、転移性大腸癌に対する治療薬としてスイスで初めて認可を受けた。2004年2月12日米国食品医薬品局 (FDA) は、EGFRを発現する転移性大腸癌に対する治療薬として承認し、さらに2006年3月1日頭頸部癌の治療薬として追加承認を行った。また、2004年6月には欧州医薬品局 (EMEA) の認可を受けた。日本では2008年7月18日に、「EGFR陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌の治療薬」として厚生労働省の製造販売承認を受けた。
使用方法
欧米では、初回体表面積あたり400 mgを点滴静注し、その後1週間ごとに体表面積あたり250 mgを点滴静注で投与する。
作用機序
セツキシマブは、細胞表面に存在するEGFRのリガンド結合部位に、EGFの5倍の親和性[9]を持ってEGFと競合的に結合し、EGFRの活性化、二量体化を阻害する[10]。また細胞表面にあるEGFRを細胞内へ内在化 (internalization) させる[11]。これらの結果、EGFRからのシグナル伝達が遮断され、腫瘍増殖・転移に関与する多くの細胞機能(細胞増殖、細胞生存、細胞運動、腫瘍内血管新生及び細胞浸潤など)を抑制するとされる。
非臨床試験(インボイド・in vitro)での研究であるが、セツキシマブはIgG1に属する抗体であるため、抗体依存性細胞障害 (ADCC/antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)活性による抗腫瘍効果も期待されている。このADCC(抗体依存性細胞障害)活性とは、細胞膜上FcγRの結合によって起こる抗腫瘍効果のひとつで、抗体ががん細胞表面に結合することで、Fc受容体を介してNK細胞に対してがん細胞を標的とさせ、NK細胞よりのパーフォリン(perforin)とグランザイム(granzyme)を分泌させることでがん細胞にアポトーシスを惹起させ、それによりがん細胞が溶けていくというものである[12]。なお、大腸癌細胞株に対する4 時間51Cr遊離法(NK細胞活性の測定方法の一つでクロムの放射性同位体51Crで標識(ラベル)して、リンパ球と4時間の混合培養後に上清中に検出される51Crの放射能活性を測定する)で測定した時、0.000025µg/mL以上から活性を示し0.025µg/mL (それ以上の濃度ではほぼ横ばい)で最大のADCC 活性を示した[13]。また、セツキシマブによる抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性はEGFシグナル伝達系遺伝子(K-ras)異常に関係なく、細胞表面のEGF-Rの発現と相関するとの研究[14]がある。なお、ADCC活性がもたらす抗腫瘍効果はリツキサン(Rituxan)やハーセプチン(Herceptin)では、Fcレセプターを介するADCC活性が重要な抗腫瘍効果(但しマウスでの評価)[15]とされており、抗腫瘍メカニズムの一つとして近時注目されている。
臨床効果
大腸癌
フルオロウラシルおよびイリノテカン抵抗性で、EGFR陽性の大腸癌患者57例を対象にした第II相臨床試験では、セツキシマブ単剤で8.8%の奏効率が得られ、36.8%で病変の進行を食い止めた[16]。同様にイリノテカン抵抗性でEGFR陽性の転移性大腸癌患者329例を対象にした無作為化比較第II相臨床試験では、セツキシマブとイリノテカンの併用療法(218例)では奏効率22.9%、病変進行までの期間は4.1ヵ月、生存期間中央値は8.6ヵ月であり、セツキシマブ単剤治療(111例)での奏効率10.8%、病変進行までの期間1.5ヵ月、生存期間中央値6.9ヵ月を上回った[17]。現在(2013年5月)KRAS (コドン12, 13) 変異に対し後ろ向きの研究からは効果がない可能性が高いとされているが、KRAS変異のうちコドン13のみの変異については、良好な治療効果が得られる[18]のではないかとの異論があった。一方で、2014年ASCOで発表された結果からKRAS(コドン12, 13)以外のRAS変異(All RAS)を持つ場合も効果が乏しいとの報告が出された[19]。
頭頸部癌
424例の未治療頭頸部扁平上皮癌患者を対象にした第III相臨床試験において、セツキシマブと放射線併用療法群(211例)は生存期間中央値49ヵ月、局所制御期間24.4ヵ月であり、放射線治療単独群(213例)の生存期間中央値29.3ヵ月、局所制御期間14.9ヵ月を上回った[20]。さらに、442例の未治療頭頸部扁平上皮癌(再発あるいは転移症例)を対象とした第III相臨床試験において、セツキシマブと化学療法(プラチナとFU)併用療法群(222例)は生存期間中央値10.1ヵ月、無増悪生存期間5.6ヵ月、奏功率36%であり、化学療法単独群(220例)の生存期間7.4ヵ月、無増悪生存期間3.3ヵ月、奏功率20%を有意に上回った[21]。
非小細胞肺癌
66例の既治療進行非小細胞肺癌を対象にした第II相臨床試験において、セツキシマブ単剤治療は4.5%の奏功率、30.3%の病勢制御率であり、EGFR陽性例(60例)に限っても5.0%の奏功率、30.0%の病勢制御率であった[22]。
参考文献
- ^ 三重大学医学部医学部付属病院 皮膚科・薬剤部 「分子標的薬 皮膚対策マニュアル2011」 p.29 /HRについてJonker DJ, et al.: N Engl J Med. 357(20): 2040-2048, 2007
- ^ Tol J, et al., Chemotherapy, Bevacizumab, and Cetuximab in Metastatic Colorectal Cancer. New Eng J Med 360:563-572, 2009.
- ^ Mendelsohn J, Baselga J. "Status of epidermal growth factor receptor antagonists in the biology and treatment of cancer." J Clin Oncol, 21, 2003, p.p. 2787-2799. PMID 12860957
- ^ Kawamoto T, Sato JD, Le A, et al. "Growth stimulation of A431 cells by EGF. Identification of high affinity receptors for epidermal growth factor by an anti-receptor monoclonal antibody." Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America, 80, 1983, p.p. 1337-1341. PMID 6298788
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- ^ ブリストル・マイヤーズ株式会社HP「アービタックスR注射液100mg」 アービタックスR 非臨床試験(アービタックスR製品情報概要より) [1]
- ^ 山口耕介ほか 『大腸癌細胞株に対するセツキシマブを介した抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)の検討』Biotherapy( 2008年 22巻6号)p. 423~430 癌と化学療法社 2008年
- ^ 日本消化器外科学会 第67 回日本消化器外科学会総会2012年7月(一般演題19 大腸化学療法1)瀬尾雄樹ほか 「大腸癌におけるcetuximab の抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性と細胞表面EGF-R 発現との関連」日本消化器外科学会HP [2]
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- ^ Cunningham D, Humblet Y, Siena S, et al. "Cetuximab monotherapy and cetuximab plus irinotecan in irinotecan-refractory metastatic colorectal cancer." NEJM., 351, 2004, p.p. 337-345. PMID 15269313
- ^ 『Cetuximabで治療した化学療法抵抗性の転移を有する大腸癌患者におけるKRAS p.G13D変異と予後との関係』 Association of KRAS p.G13D mutation with outcome in patients with chemotherapy-refractory metastatic colorectal cancer treated with cetuximab / *De Roock W, Jonker DJ, Di Nicolantonio F, Sartore-Bianchi A, Tu D, Siena S, Lamba S, Arena S,Frattini M, Piessevaux H, Van Cutsem E, O'Callaghan CJ, Khambata-Ford S, Zalcberg JR, Simes J, Karapetis CS, Bardelli A, Tejpar S. / JAMA. 2010; 304(16): 1812-1820
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 抗がん剤における薬剤経済学的分析 (特集 臨床で活かす薬剤経済学) -- (薬剤別にみた費用と効果のポイント)
- セツキシマブ,パニツムマブを用いた治療の実際 (特集 分子標的治療薬と看護--最近のトピックと特徴的な有害事象)
Related Links
- セツキシマブ (Cetuximab) は、上皮成長因子受容体 (EGFR) に結合して、EGFRの働きを 阻害するモノクローナル抗体である。抗がん剤として使用され、癌の増殖などに関係する 特定の分子を狙い撃ちする分子標的治療薬のひとつである。 セツキシマブはIgG1に ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
- 抗悪性腫瘍剤 抗ヒトEGFR注2)モノクローナル抗体
- 注2)EGFR:Epidermal Growth Factor Receptor(上皮細胞増殖因子受容体)
販売名
アービタックス注射液100mg
組成
有効成分 1バイアル(20mL)中の分量
- セツキシマブ(遺伝子組換え)注3) 100mg
注3)マウスハイブリドーマ細胞株を用いて製造される。マスターセルバンク及びワーキングセルバンク構築時にウシ胎児血清を使用している。また、製造工程において、培地成分としてウシ血清由来成分(アルブミン及びリポたん白質)を使用している。
添加物 1バイアル(20mL)中の分量
- 塩化ナトリウム 116.88mg
グリシン 150.14mg
ポリソルベート80 2.00mg
クエン酸水和物 42.02mg
その他、添加物としてpH調節剤を含有する。
効能または効果
- EGFR陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
- 術後補助化学療法としての本剤の有効性及び安全性は確立していない。
- 本剤の使用に際してはKRAS遺伝子変異の有無を考慮した上で、適応患者の選択を行うこと(「臨床成績」の項参照)。
- 「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
- 通常、成人には週1回、セツキシマブ(遺伝子組換え)として、初回は400mg/m2(体表面積)を2時間かけて、2回目以降は250mg/m2(体表面積)を1時間かけて点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する。
- オキサリプラチン及びフッ化ピリミジン系薬剤を含む化学療法が無効となった患者に対するイリノテカン塩酸塩水和物との併用において、本剤の上乗せによる延命効果は検証されていない(「臨床成績」の項参照)。
- 本剤と放射線療法との併用における有効性及び安全性は確立していない。
- 本剤投与時にあらわれることがあるinfusion reactionを軽減させるため、本剤の投与前に抗ヒスタミン剤の前投薬を行うこと。さらに、本剤投与前に副腎皮質ホルモン剤を投与すると、infusion reactionが軽減されることがある。
- 重度(Grade3以上注4))のinfusion reactionが発現した場合には、本剤の投与を直ちに中止し、再投与しないこと。軽度?中等度(Grade1-2注4))のinfusion reactionが発現した場合には、投与速度を減速し、その後の全ての投与においても減速した投与速度で投与すること。投与速度を減速した後に再度infusion reactionが発現した場合には、直ちに投与を中止し、再投与しないこと。
- 重度(Grade3以上注4))の皮膚症状が発現した場合には、次表に従い本剤の用量を調節すること。
〈用量調節の目安〉
注4)GradeはNCI-CTCに準じる。
注射液の調製方法及び投与速度
- 本剤の投与時には必要量を注射筒で抜き取り、点滴バッグ等を用い日局生理食塩液で希釈してあるいは希釈せずに、10mg/分以下の投与速度で、初回投与時は2時間、2回目以降は1時間かけて静脈内注射すること。投与終了後は本剤投与時と同じ投与速度でラインを日局生理食塩液にてフラッシュすること。
慎重投与
- 間質性肺疾患の既往歴のある患者[間質性肺疾患を増悪させるおそれがある(「重大な副作用」の項参照)。]
- 心疾患のある患者又はその既往歴のある患者[心疾患を増悪させるおそれがあるため、本剤による治療を開始するにあたっては、患者の冠動脈疾患、うっ血性心不全及び不整脈等の既往歴に注意すること(「重要な基本的注意」の項参照)。]
重大な副作用
重度のinfusion reaction
(5%未満)
- 重度のinfusion reactionとして、気管支痙攣、蕁麻疹、低血圧、意識消失又はショックを症状としたアナフィラキシー様症状があらわれることがあるので、投与中及び投与後も観察を十分に行い、重度のinfusion reactionが認められた場合は、本剤の投与を直ちに中止し、それ以降、本剤を再投与しないこと(「警告」及び「重要な基本的注意」の項参照)。
重度の皮膚症状
(10?15%)
- 皮膚症状[主にざ瘡様皮疹、皮膚の乾燥及び亀裂、続発する炎症性及び感染性の症状(眼瞼炎、口唇炎、蜂巣炎、嚢胞等)]があらわれることがあり、重度の皮膚症状(主にざ瘡様皮疹)発現後に、切開排膿を要する膿瘍や黄色ブドウ球菌敗血症等を合併した例が報告されているので、重度の皮膚症状が認められた場合には、本剤の投与量を調節するとともに、続発する炎症性又は感染性の症状の発現に十分注意し、これらの症状に対する適切な治療を行うこと。また、必要に応じて皮膚科を受診するよう患者に指導すること(<用法・用量に関連する使用上の注意>の項参照)。
間質性肺疾患
(0.5%未満)
- 間質性肺疾患があらわれることがあるので、観察を十分に行い、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状が急激にあらわれた場合には投与を中止し、胸部X線等の検査を実施するとともに、副腎皮質ホルモン剤投与等の適切な処置を行うこと。
心不全
(頻度不明注8))
- 心不全があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
重度の下痢
(頻度不明注8))
- 重度の下痢及び脱水があらわれることがあり、腎不全に至った症例も報告されている。観察を十分に行い、これらの症状があらわれた場合には、止瀉薬(ロペラミド等)の投与、補液等の適切な処置を行うこと。
薬効薬理
作用機序
- セツキシマブはヒトIgG1の定常領域とマウス抗体の可変領域からなるキメラ型モノクローナル抗体であり、EGFR発現細胞のEGFRに対して高い親和性で結合する9)。
抗腫瘍作用
- 多様なEGFR陽性癌細胞株において、セツキシマブのin vitro増殖阻害作用は濃度依存的であった10),11),12)。また、セツキシマブの増殖阻害作用は多様なEGFR陽性癌細胞株(ヒト結腸癌GEO等)を用いたin vivoモデルにおいても確認されている。
有効成分に関する理化学的知見
一般名:
- セツキシマブ(遺伝子組換え)
Cetuximab(Genetical Recombination)
本質:
- マウス抗ヒト上皮細胞増殖因子受容体モノクローナル抗体の可変部及びヒトIgG1定常部からなるヒト/マウスキメラ型モノクローナル抗体をコードするcDNAの導入によりマウスハイブリドーマSP2/0-Ag14細胞株で産生される214個のアミノ酸残基(C1025H1595N281O338S5;分子量:23,422.64)からなる軽鎖2分子と449個のアミノ酸残基(C2208H3400N582O674S15;分子量:49,363.09)からなる重鎖2分子からなる糖たん白質(分子量:約151,800)
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- large bowel cancer
- 同
- 結腸直腸癌, colorectal cancer, CRC, colorectal carcinoma、直腸結腸癌
- 関
- 結腸癌 colon cancer colonic cancer。大腸
- first aid step1 2006 p.277
概念
- 大腸に発生した悪性腫瘍の総称
- 結腸癌、直腸S状部癌、直腸癌を含む。
疫学
死亡率
- 男性:第4位(肺>胃>肝>大腸)
- 女性:第1位(大腸>胃>肺>肝>乳房>子宮)
リスクファクター(first aid step1 2006 p.277)
- ×Peutz-Jeghers syndromeはリスクファクターではない
好発部位
- 直腸・S状結腸 > 上行結腸・盲腸 > 横行結腸 > 下行結腸
- 直腸が50%、S状結腸25% (出典不明)
頻度
肉眼分類
早期癌
- 0-I型(隆起型):Ip(隆起型)、Isp(亜有茎型)、Is(無茎型)
- 0-II型(表面型):IIa(表面隆起型), IIc(表面陥凹型)
進行癌
- 1型(腫瘤型)
- 2型(潰瘍限局型)
- 3型(潰瘍浸潤型)
- 4型(びまん浸潤型)
頻度
- 進行癌:2型(潰瘍限局型) > 3型(潰瘍浸潤型) > 1型(腫瘤型) > 4型(びまん浸潤型)
- 早期癌を含めると、2型(潰瘍限局型)(80%)に次いで0型(表在型)が多い。
- 2型で外周の2/3週以上となると、注腸造影でapple core sign として認められる。
病期分類
Dukes分類
- A. 癌腫が腸管壁内に限局するもの ← 固有筋層まで(MP。つまりT2)
- B. 癌腫が腸壁を貫いて浸潤するが、リンパ節転移のないもの
- C. リンパ節転移があるもの
進行病期分類
stage
|
定義
|
治療
|
0
|
癌が粘膜にとどまっている。(M)
|
内視鏡
|
I
|
癌が大腸壁にとどまっている。(SM,MP)
|
SM軽度浸潤(<2cm)では内視鏡、それ以外は手術療法
|
II
|
癌が大腸壁の外まで浸潤している。(SS,SE)
|
手術療法
|
III
|
リンパ節転移がある。
|
手術療法+補助化学療法
|
IV
|
肝転移、肺転移または腹膜播種がある。
|
手術療法 and/or 化学療法 and/or 放射療法
|
大腸癌取り扱い規約 第7版(2009年)
壁深達度
- M:粘膜内まで
- SM:粘膜下層まで
- MP:固有筋層まで
漿膜を有する部位
- SS:MP越えているが漿膜下にとどまる
- SE:漿膜表面に露出
- SI:他臓器に直接浸潤
漿膜を有しない部位
進行度
|
N0
|
N1
|
N2
|
H1,H2,H3,M1 P1,P2,P3
|
M
|
0
|
|
SM MP
|
I
|
IIIa
|
IIIb
|
IV
|
SS,A SE SI,AI
|
II
|
リンパ節郭清
- 1群リンパ節郭清:D1:腫瘍付近のリンパ節(傍リンパ節)を切除
- 2群リンパ節郭清:D2:癌のある腸管を栄養する血管に沿うリンパ節(中間リンパ節)までを切除
- 3群リンパ節郭清:D3:栄養血管の根元にあるリンパ節(主リンパ節)までを切除
病理
症状
腫瘍の局在
|
右側結腸
|
左側結腸
|
S状結腸・直腸
|
症状
|
自覚症状に乏しい(貧血、腹部腫瘤、腹痛、まれに腸重積)
|
イレウス多い、左下腹部痛
|
血便/粘結弁
|
下痢
|
便秘、便通過障害(下血・血便)
|
便通異常(下痢・便秘、腹部膨満感、しぶり腹、輪状狭窄、糞柱の狭小化)
|
検査
血液検査
腫瘍マーカー
便潜血
単純X線検査
診断
治療
- 原則として以下の治療を選択するが、必要に応じて、手術療法、化学療法、放射線療法を組み合わせる。(SSUR.550)
- Stage0,StageIの一部:内視鏡的切除
- StageI,II:手術療法
- StageIII:手術療法+化学療法
- StageIV:手術療法、化学療法、および放射線療法の組み合わせ
早期癌
内視鏡的治療
原則
病期
- stage 0 ~ stage I and SM軽度浸潤 and 最大径 2cm以下
適応基準
- ( M or SM ) and ( 最大経≦2cm ) and ( 肉眼型は問わない )
進行癌
-
- FOLFIRI療法 → FOLFOX療法 、 FOLFOX療法 → FOLFIRI療法 。一次治療にはベバシズマブ、二次治療にはセツキシマブの併用を推奨
- stage I~IVで行われる。
- 原発巣の切除とリンパ節の郭清を行う
- 転移巣(肝臓、肺)、局所再発に対して:根治性が得られるなら切除。得られないのであれば姑息的治療(肝転移の場合なら、経カテーテル的肝動脈塞栓術
- (姑息的に?結腸癌の進展による直腸の狭窄が考慮される場合には)Hartmann手術をおこなう。
- (大腸癌の肝転移例に対する手術適応)原発巣が根治的に処理されている場合には積極的に肝切除を行う。肝切除ができない場合は経カテーテル的冠動脈塞栓術を施行(QB.A-194)
術式
結腸癌
- 結腸部分切除術
- 回盲部切除術
- 結腸右半切除術
- 結腸左半切除術
- S状結腸切除術
- 結腸全摘術
検診
スクリーニング
- USPSTF
- 50-75歳の成人に便潜血・大腸内視鏡を推奨する(A)
- 85歳以上の高齢者には推奨しない(D)
- リスクが有る患者には40歳、ないし発症した親族の年齢の10年前から大腸内視鏡を5年ごとに行う
- リスク:2人の大腸癌ないし腺腫性ポリープの家族歴あり
- 大腸内視鏡であれば10年毎でよいが、これをやらない場合には毎年の便潜血を。
参考
- 1. がん情報 - 結腸および直腸 Colon and Rectum(C18-C20)
- http://ganjoho.ncc.go.jp/data/hospital/cancer_registration/odjrh3000000hrgr-att/20070723022_c18colon_and_rectum.pdf
- 2. 大腸低分化腺癌,印環細胞癌の臨床病理学的検討
- 山形県立中央病院外科
- 平井 一郎 池田 栄一 飯澤 肇 佐藤 敏彦 岡部 健二 石田 卓也 太田 陽一
- 最近11年間の大腸癌手術症例1,260例のうち,低分化腺癌(por)93例,印環細胞癌(sig)7例を臨床病理学的に検討した.また間質結合織の多寡で髄様型(med),中間型(int),硬性型(並1)に3分類した。por,sigはs(a2)以深の進行例が多く,早期癌203例中1例のみであり,癌発生直後より急速に進展すると考えられた。5生率は高分化:67.9%,中分化:423%,por,sig:37.4%で,por,sigは有意に予後不良であった。間質別5生率はmedで79.6%と極めて予後良好だったが,sciには3年生存例がなく,med,int,並i間に有意差が認められた。組織発生の検討では,intは分化型腺癌の浸潤先進部の分化度が低下し低分化部分が優勢となったもので,med,sciは発生初期から低分化腺癌の形態をとる症例が存在すると考えられた。大腸低分化腺癌,印環細胞癌の間質組合織の多寡による3分類は予後,癌組織発生の点で重要である。
- http://journal.jsgs.or.jp/pdf/028040805.pdf
- http://www.jsco-cpg.jp/guideline/13.html
ガイドライン
- http://www.jsco-cpg.jp/guideline/13.html
- 大腸癌治療ガイドライン 医師用 2010年版 - 大腸癌研究会 JSCCR
- http://www.jsccr.jp/guideline2010/guideline02.html
[★]
- 英
- epidermal growth factor receptor inhibitor
- 関
- 上皮成長因子受容体
薬理学
- rapamycin(sirolimus)
- temsirolimus(CCI-779)
- everolimus(RAD001)