- hydatid mole
- 英
- hydatidiform mole, hydatid mole
- ラ
- mola hydatidosa
- 関
概念
- 妊娠時に、妊卵由来の絨毛が水腫様変化を起こしたもの。
- 肉眼的に絨毛の嚢胞化がみられる。嚢胞化とは腫大した絨毛の短径が2mmを超えるもの(参考1)。 ⇔ 2mm未満で絨毛間質の水腫化が認められるものは顕微鏡的奇胎とし、胞状奇胎とはしないとする(参考1)。
疫学
- 日本を含む東南アジア、メキシコに多い。
- 頻度は350分娩に1胞状奇胎である。
- 発生数は生殖年齢(20-30歳代)に多い。(G9M.182)
- 発生年齢は40歳以上の高年妊娠に多く発生し(10-30倍)、妊娠可能年齢の終わりに近づくほど高くなる。
分類
発生機序による分類
進展性による分類
病因
- 雄性接合子:胎盤の形成に関与 → 倍加して二倍体の精子が染色体を欠いた卵子と受精した場合に胎盤のみが増殖 → 全胞状奇胎(complete hydatidiform mole)
- 雌性接合子:胎芽の形成に関与 → 高齢になるに従い、卵の加齢による染色体を欠いた異常な卵の出現頻度が高まり全胞状奇胎の原因となってくる。
症候
- HBEsT (NGY.243)
- 1. history(病歴): 妊娠の成立を示す所見(無月経、つわりなど)
- 2. bleeding(子宮出血):切迫流産様の異常出血
- 3. enlargement and softness(子宮の増大と軟化):妊娠週数に比して過度に腫大して軟化
- 4. toxemia(妊娠高血圧症候群):浮腫、高血圧、タンパク尿
- 不正性器出血(90%)、悪阻(30-40%) (G9M.182)
- 部分胞状奇胎の場合には典型的な症状を示さないことが多い。
- 黄体嚢胞による卵巣腫大が認められる(NGY.243)
検査
- 経腟超音波検査:子宮腔内の大小の低輝度・高輝度混在
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治療
- 子宮内容除去術を施行し、1週間後に再施行する。hCGを5週(103mIU/ml)、8週(102mIU/ml)、20週(cut off値以下)となれば、経過順調型(I型)とされる。以降、4年以上はhCG測定、基礎体温測定、胸部X撮影を行い、フォローする。(NGY.243)
- hCG値の低下が悪い場合、子宮内胞状奇胎遺残、進入胞状奇胎、転移性胞状奇胎が考えられ、それぞれ子宮内容除去術、化学療法もしくは子宮摘出術、化学療法を行う。
- 40歳以上では絨毛癌の頻度が高くなるため、40歳以上で挙児希望の場合は子宮全摘術を考慮。(G9M.182)
続発症
参考
- 1. D.産科疾患の診断・治療・管理 6.異常妊娠 - 日産婦誌59巻11号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/59/5911-682.pdf
国試
Table 19-3. Features of Complete and Partial Hydatidiform Mole
|
Feature
|
complete mole
|
partial mole
|
Karyotype
|
46,XX (46,XY)
|
Triploid (69,XXY)
|
Villous edema
|
All villi
|
Some villi
|
Trophoblast proliferation
|
Diffuse; circumferential
|
Focal; slight
|
Atypia
|
Often present
|
Absent
|
Serum hCG
|
Elevated
|
Less elevated
|
hCG in tissue
|
++++
|
+
|
Behavior
|
2% choriocarcinoma
|
Rare choriocarcinoma
|
AFP
|
-
|
+
|
fatus
|
-
|
+
|
WordNet
- a small congenital pigmented spot on the skin
- small velvety-furred burrowing mammal having small eyes and fossorial forefeet
- spicy sauce often containing chocolate
- cyst filled with liquid; forms as a result of infestation by tapeworm larvae (as in echinococcosis)
PrepTutorEJDIC
- モグラ
- ほくろ,あざ
- 防波堤,突堤
- モル,グラム分子(化学分子量をグラムで表したもの)
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/08/08 23:22:09」(JST)
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胞状奇胎(ほうじょうきたい、英: Hydatidiform mole)は、染色体異常により異常増殖を認める病的な妊卵のこと。俗に「ぶどう子」とも呼ばれる。
目次
- 1 名称
- 2 種類
- 3 症状
- 4 臨床像
- 5 治療
- 6 予後
- 7 外部リンク
名称
英語の「hydatidiform」はギリシャ語でぶどうの房状を意味し、「mole」はラテン語の「mola」から由来し、石臼を意味している。
種類
形態
- 全胞状奇胎(complete hydatidiform mole)
「受精時に卵由来の核が不活化し、精子由来の核のみが分裂増殖していく」
- 卵子に問題がある場合におこる。
- 受精後に何らかの原因で卵子の核が消失、またはもともと核をもたない卵子に精子が受精し
- 精子の染色体だけを使って細胞分裂がはじまったもので、父方精子由来の有核発生で、46xxの2倍体を形成している。
- 遺伝情報だけでは胎児成分を作ることができず絨毛組織だけの増殖となる。
- 子宮腔内全体にぶどうの房状の絨毛の異常増殖が認められる。
- 部分胞状奇胎(Partial hydatidiform mole)
「一つの卵子に二つの精子が侵入する」
- 多くは2精子受精といわれ、一度に2個の精子が受精することで発生し、染色体は69xxy・69xxx・69xyy等の3倍体を形成している。
- 子宮腔内にぶどうの房状の絨毛の異常増殖が認められる。
- この場合は胎児成分を作ることができるので絨毛の嚢胞状変化と胎児成分が混在した胞状奇胎である。
進展
- 非侵入奇胎(非侵入全胞状奇胎/非侵入部分胞状奇胎)
- 侵入奇胎(侵入全胞状奇胎/侵入部分胞状奇胎)
- 絨毛癌
症状
- 重いつわり(悪心・嘔吐)
- 性器出血(不正出血)
- 暗赤色のおりものなど
- 妊娠初期から見られるむくみや高血圧など妊娠中毒症のような症状
「つわりがひどいのに切迫流産の症状がある」のが特徴的である。 通常、切迫流産すなわち流産しかかった状態にある場合には、HCGが減少し、つわり症状が軽くなるのが普通であるのに対し、 胞状奇胎では絨毛から分泌されるHCGが大量となるためつわり症状が悪化し、絨毛が異常増殖するために不正出血や腹痛を起こすという、切迫流産とは相反する状態を呈するようになる。 ただし、以上はあくまで典型的な場合の話で、HCGの分泌量が通常通りで、つわり症状も軽く超音波所見でも粒状陰影があまりはっきりしないことがままあり、通常の流産との鑑別が難しくなる。 このような理由から、流産として処置(子宮内掻爬)、ないしは組織検査を行ってみて初めて胞状奇胎と判明するという場合もある。 その他、子宮腟部びらん・子宮頸管ポリープ・機能性出血にも類似した症状がある。
臨床像
- 子宮腔内に粒状の構造が認められる。
- hCGの異常高値
治療
一般に以下を執り行う。
- 子宮内容を完全に除去する。通常2度施行し残存がないようにする。
- 手術施行の後はhCG値の測定を定期的に行うことで経過を見る。順調に経過すればhCG値も順調に低下傾向を示していく。一般に施行後5、8、12、20週まで経過推移を見守る。
- hCG低下を認めない、または増加傾向に転じた場合は侵入奇胎に進展した可能性が高く、さらに絨毛癌への進展も考慮し抗癌剤の施行を行う。なお、今後、妊娠出産を望まない人などには、抗癌剤治療ではなく子宮全摘出術を行なうこともある。
予後
一般的にhCGの数値が順調に下がり、治療経過がよければ 予後良好であり、次回妊娠も可能である。
まれに、侵入奇胎や絨毛癌へと進展する。
外部リンク
- women's QOL - 胞状奇胎
- メルクマニュアル家庭版 - 胞状奇胎
- 胞状記
- 産婦人科の基礎知識/胞状奇胎
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- P2-19-9 肺転移をきたした胎児共存胞状奇胎の一例(Group109 子宮頸部腫瘍・絨毛性疾患症例,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 楯笑 美子,井上 誠司,楠本 知行,中村 圭一郎,関 典子,本郷 淳司,児玉 順一,平松 祐司
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 823, 2011-02-01
- NAID 110008509889
- P2-15-23 全胞状奇胎特異的microRNAの網羅的解析(Group101 絨毛性疾患,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 三浦 清徳,長谷川 ゆり,東島 愛,城 大空,阿部 修平,三浦 生子,山崎 健太郎,吉田 敦,吉村 秀一郎,吉浦 孝一郎,増崎 英明
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 796, 2011-02-01
- NAID 110008509810
- P2-15-22 胞状奇胎掻爬後治療開始基準の再考(Group101 絨毛性疾患,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 木崎 尚子,石谷 健,橋本 和法,碓井 宏和,生水 真紀夫,塙 真輔,上杉 健哲,山本 英子,吉川 史隆,松井 英雄
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 796, 2011-02-01
- NAID 110008509809
- P2-15-21 子宮内容除去術1回で管理した胞状奇胎症例の検討(Group101 絨毛性疾患,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 福田 貴則,井上 裕美,木幡 豊,日下 剛,大林 美貴,鵜澤 芳枝,市田 知之
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 796, 2011-02-01
- NAID 110008509808
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★リンクテーブル★
[★]
- 19歳の女性。妊娠の確認のため来院した。月経周期は28日型、整であり、最終月経は平成15年1月18日から5日間であった。2月の月経発来が遅れていたので、2月25日に市販の妊娠診断補助試薬で検査したところ陽性であった。そのころから悪心が次第に強くなってきた。受診時の内診所見で子宮は超鶏卵大、軟で、子宮付属器は触知しない。カレンダーを以下に示す。
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [097I032]←[国試_097]→[097I034]
[★]
- 35歳の女性。2回経妊、1回経産。不正性器出血を主訴に来院した.月経は30日型、整。最終月経は6月5日から7日間。7月20日から嘔気、嘔吐および少量の性器出血を認めるようになり、改善しないため8月16日に受診した。子宮は手拳大で軟。妊娠反応陽性。経腟超音波写真を以下に示す。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105I042]←[国試_105]→[105I044]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [100G055]←[国試_100]→[100G057]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [106E023]←[国試_106]→[106E025]
[★]
- (1) 発生頻度に人種差がある
- (2) 恒例の妊娠では胞状奇胎の発生頻度が高い
- (3) 卵巣ルテイン嚢胞はhCGの作用によって発生する
- (4) 絨毛癌ではvillous patternを認める
- (5) 転移は主としてリンパ行性である
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- (1) 全胞状奇胎は雄性発生により生じる
- (2) 子宮は妊娠週数に比べ大きいとは限らない
- (3) 血中hPLは妊娠週数に比べ高値である
- (4) 胎児の存在は認められない
- (5) 病理組織学的検査で絨毛形態を認める
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- 妊娠11週において超音波断層法で診断できるのはどれか?
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- hydatid
- 英
- partial hydatidiform mole
- 同
- 部分奇胎 partial mole、一部胞状奇胎
- 関
- 胞状奇胎、全胞状奇胎、奇胎妊娠
診断
- 超音波所見やhCGにより胞状奇胎が疑われたら診断は組織診断により確定される。組織診断は核型を決定するためのフローサイトメトリーでさらに正確なものとなる。(参考1) → 病理診断が確定診断となる。
参考
- [charged]Gestational trophoblastic disease: Epidemiology, clinical manifestations and diagnosis - uptodate [1]
全胞状奇胎と部分胞状奇胎の比較
Table 19-3. Features of Complete and Partial Hydatidiform Mole
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Feature
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complete mole
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partial mole
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Karyotype
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46,XX (46,XY)
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Triploid (69,XXY)
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Villous edema
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All villi
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Some villi
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Trophoblast proliferation
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Diffuse; circumferential
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Focal; slight
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Atypia
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Often present
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Absent
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Serum hCG
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Elevated
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Less elevated
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hCG in tissue
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Behavior
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2% choriocarcinoma
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Rare choriocarcinoma
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AFP
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-
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fatus
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- 英
- first trimester, early pregnancy, first trimester pregnancy
- 同
- 妊娠前期
- 関
- 妊娠期間
超音波診断
- 経腟超音波により空気を含む腸管の影響を受けずに子宮や付属器の状態を描出できる。
- 胎嚢は妊娠4-5週に子宮内に認められるようになる。
- その後、胎嚢内に卵黄嚢を認めるようになり、それに接して胎芽心拍動を認めるようになる。
- 妊娠6週目頃には部分的に肥厚した絨毛膜有毛部と菲薄した無毛部に分かれる。
心拍動の確認
- 胎嚢に接したエコーフリースペースが認められる場合がある。症状があれば治療を行う。
胎児の異常
生理的な胎児異常
- 妊娠10-14週において胎児の項部に認められる皮下浮腫がnuchal translucency]]と呼ばれる。3mm以上の場合、異常肥厚と言われる。染色体異常の検出率は28-100%とばらつきがあり、21トリソミー、13トリソミー、18トリソミー、Turner症候群が検出できるが、特に21トリソミーの検出に優れていると言われている。
- 嚢胞部分、出血走、高輝度エコー部位の混合部位が描出される。
参考
国試
[★]
- 英
- genital bleeding
- 関
- 不正性器出血。新生女児性器出血
妊娠初期に見られる性器出血
妊娠後期に見られる性器出血
- 前置胎盤:下腹部痛なし
頚管無力症 ← 妊娠の中期以降に性器出血や腹痛を伴わずに頚管が短縮・開大し、胎児が娩出される(NGY.402)。なので性器出血の鑑別に入らないのでは?
- 切迫早産:下腹部痛(+)(←陣痛)、子宮口やや開大
- 常位胎盤早期剥離:下腹部痛(++)。板状硬
分娩後に見られる性器出血
- 弛緩出血
- 子宮破裂:病的収縮輪を認め、激痛を訴える。胎児ジストレス~胎児心拍の消失。母体の突然のショック。
- 子宮内反症:臍帯の用手的牽引による。激痛と出血によるショックに陥ることがある。
- 癒着胎盤
- 産道裂傷(頚管裂傷):
[★]
- 英
- gynecology
婦人科学 類腫瘍病変
婦人科学 外陰の腫瘍
婦人科学 膣の腫瘍
婦人科学 子宮の腫瘍
婦人科学 卵管腫瘍
婦人科学 絨毛性疾患
[★]
- 英
- atypical genital bleeding
定義
時期別鑑別疾患
非妊娠時
妊娠期間中
閉経後
[★]
- 英
- complete hydatidiform mole CHM, total hydatid, complete hydatid, complete mole
- 同
- 全奇胎
- 関
- 胞状奇胎、部分胞状奇胎、奇胎妊娠
病因
- 1X → ホモ全奇胎(90%)
- 2X → ヘテロ全奇胎(5%)
- 1X 1Y → ヘテロ全奇胎(5%)
- 1Y → 発生しない
- 2Y → 発生しない
合併症
- 核を失った卵子と精子による受精でで生じる。X染色体を有する精子が受精し、その後染色体が倍加したものが最も多い。その他に、X染色体を有する2つの精子により同時に受精が起きた場合、あるいはそれぞれX染色体およびY染色体を有する精子により同時に受精が起きた場合にも生じる。
[★]
- 英
- invasive hydatidiform mole
- ラ
- mola hydatidosa destruens
- 同
- 破壊性胞状奇胎 destructive hydatidiform mole
- 関
- 侵入奇胎、絨毛性疾患
[★]
- 英
- destructive hydatidiform mole
- 関
- 侵入胞状奇胎
[★]
- 英
- mole
- ラ
- mola
- 関
- 胞状奇胎
[★]
- 英
- cystoid、hydatidiform