- 英
- acute intermittent porphyria, AIP
- 同
- スウェーデン型ポルフィリン症 Swedish type porphyria
- 関
- ポルフィリン症、肝性ポルフィリン症
概念
- バルビツール酸系の薬剤はALA synthetaseを誘導するので、AIPの情動不安、せん妄のコントロールには禁忌
遺伝
病因
- この蛋白の機能異常に加えて誘発因子が存在したときに急性発作をきたす
発作の誘発因子
- 環境因子:薬物(様々、例えば抗てんかん薬)、食物(低カロリー食、低炭酸化物食)、アルコールの摂取、感染、手術
- 薬物の例:バルビタール、抗てんかん薬、経口避妊薬、サルファ剤、鎮静剤(QB.D-321) ← 禁忌
- ホルモン:内的ホルモン・外的ホルモン(経口避妊薬)
- 女性の方が症状が重いが、これは内的なエストロゲンやプロゲステロンの影響に寄ることを示唆している。
病態
- HIM.2438
- ホルホビリノゲン(PBG)デアミナーゼ/ヒドロキシメチルビラン(HMB)合成酵素の欠損をヘテロ接合で有することで活性が半分となっており、ある誘発因子により基質であるホルホビリノゲン(PBG)やアミノレブリン酸(ALA)が組織に蓄積するのが本疾患の本態。ホモ接合の場合は生後より発症する。以下、ヘテロ接合のみについて記載する。思春期に前に症状を呈さない人がほとんどであり、これはAIPの誘発因子と考えられる体内のホルモンと関係している。誘発因子の存在により肝臓でのヘム合成が亢進し、ホルホビリノゲン、アミノレブリン酸およびその他のヘム中間代謝産物が蓄積する。
症状
- 腹痛、嘔吐、便秘。弛緩性?麻痺(下肢優位)、高血圧、頻脈、SIADH
- uptodate
|
incidence
|
腹痛
|
85~95 %
|
嘔吐
|
43~88 %
|
便秘
|
48~84 %
|
脱力
|
42~60 %
|
精神症状
|
40~58 %
|
四肢、頭部、頚部、胸部の疼痛
|
50~52 %
|
高血圧
|
36~54 %
|
頻脈
|
28~80 %
|
痙攣
|
10~20 %
|
感覚麻痺
|
9~38 %
|
発熱
|
9~37 %
|
呼吸筋麻痺
|
9~14 %
|
下痢
|
5~12 %
|
- HIM.2440
- 思春期前の場合は、neurovisceral symptomsがまれに起こり、またしばしば非特異的なので、診断には疑ってかかる必要がある。
- この疾患は(発症すると)何もできないような状態になるが、死に至ることはまれである。
臓器症状、全身症状
- 腹痛は最も良くある症状であり、持続的で局在性がないが、疝痛であることはない。
- イレウス、腹部膨満、腸蠕動音減弱も良くある症状であるが、下痢や腸蠕動音亢進もありうる。
- 腹部圧痛や発熱、好中球増加は通常みられず、またあっても軽度である。これは、症状が炎症ではなく、神経学的な要因によるからである。
- 悪心・嘔吐、便秘、頻拍、高血圧、精神症状、四肢・頭部・頸部・胸部の疼痛、筋力低下、感覚減弱、排尿困難、が特徴的である。
- 頻拍、高血圧、焦燥感、振戦、および発汗過多は交感神経活動性亢進のためである。
神経障害に基づく神経症状
- 末梢ニューロパチーは軸索変性によるものであり、主に運動ニューロンを冒す。
- 著明な神経症状がいつも急性発作に起こるわけではない。そういうときには腹部症状が著明である。
- 運動神経のニューロパチーは、最初に近位の筋(肩や腕)を冒す。
- 障害の程度、経過は様々であり、特に神経局所症状を呈したり、脳神経も侵される。
- 深部腱反射は最初は正常~亢進しているが、ニューロパチーの進展と共に減弱~消失してくる。
- 錯感覚(paresthesia)や感覚消失はあまりみられない(less prominent)。
- 呼吸麻痺、球麻痺及び死亡は診断と治療が遅れたときに特に起こる。
- 突然死は交感神経の過剰興奮と不整脈から起こるかもしれない。
精神症状
- 急性発作の時に不安、傾眠、うつ、見当識喪失、原資、および妄想が起こりうる。
- てんかん発作は神経学的機序、あるいは低ナトリウム血症で起こりうる。(治療は困難である。抗てんかん薬(フェニトイン、バルビツール酸にくらべてクロナゼパムは安全かもしれない)はAIPを悪化させるためである)。低ナトリウム血症は神経学的障害が視床下部に及びSIADHをきたすこと、あるいは嘔吐、下痢、食物摂取不足、あるいは腎臓からの塩類の喪失による電解質の喪失から生じる。
- 持続的な低血圧や腎機能不全が起こりうる。
- 発作が治まれば、腹痛は数時間で消失することがあり、麻痺は数日間で改善し始め、数年の経過で数年の経過で回復していくことがある。
検査
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/12/21 17:26:30」(JST)
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急性間欠性ポルフィリン症 |
ポルフォビリノーゲン
|
分類及び外部参照情報 |
ICD-10 |
E80.2 |
ICD-9 |
277.1 |
OMIM |
176000 |
DiseasesDB |
171 |
eMedicine |
med/1880 |
MeSH |
D017118 |
急性間欠性ポルフィリン症(Acute intermittent porphyria)は、酸素と結びつくヘモグロビンの補欠分子団のヘムの合成に影響を与える稀な常染色体優性遺伝[1]の代謝疾患である。この疾病は、ポルフォビリノーゲン脱アミノ酵素の欠損に特徴付けられる。急性間欠性ポルフィリン症は、ポルフィリン症のうちで2番目に多いタイプのものである[2]。
目次
- 1 疾病のメカニズム
- 2 治療
- 3 有名な患者
- 4 出典
- 5 関連項目
疾病のメカニズム
通常の環境では、ヘム合成は細胞質に先立ってミトコンドリアの中で開始され、最後もミトコンドリアに戻ってくる。しかしながら必要な細胞質の酵素であるポルフォビリノーゲン脱アミノ酵素なしでは、ヘム合成は終了せず、細胞質内に代謝中間物質であるポルフォビリノーゲンが蓄積してくる[3]。 症状発現の引き金となるホルモン、薬剤、食事の変化などの付随的な要因が必要となる。急性間欠性ポルフィリン症の最初の症状として、腹痛、便秘、筋脱力症などが現われてくる。
治療
回復を手助けするためにグルコース10%液のような炭水化物の輸液が推奨される。もし薬剤が発作の引き金になったのなら、原因物質の服用を中止することが重要である。感染症が発作の一番多い原因であり、様々な治療が求められる。痛みは激烈で耐えられるレベルまで軽減するために鎮痛薬が往々に必要となってくる。その激烈さゆえに可能な限り早く痛みの医学的な治療が必要である。悪心が起こり、フェノチアジン薬剤が処置されるが、時には対応しきれない場合がある。時には、熱い風呂やシャワーが悪心を軽減する場合があるが、火傷や転倒のリスクもある[4]。
ヘマチン及びアルギニン酸ヘムは、米国及び英国それぞれでの急性ポルフィリン症の処方薬である。より効果を引き出すためにこれらの薬剤は発作の際にごく初期に投与される必要がある。薬効は人によって異なる。これらの薬剤は治療薬ではないが、発作の期間を短くしたり、発作を緩和することができる。副作用は稀であるが、重篤な場合もありうる。これらのヘムに似た物質は、理論的にはアミノレブリン酸合成酵素を阻害し、それゆえ有毒な前駆物質の蓄積を阻害する。
何回も発作を経験している患者は、腸の慢性疼痛と同様に激烈な慢性神経因性疼痛に襲われることがある。これは影響を受けている神経系の軸索神経が損傷を受けていることによるものと思われる。このような場合には長時間有効な麻薬に類似した鎮痛剤が処方される。また、この疾患にはうつ病の発症を往々に伴うので、必要があるなら抗うつ薬を投与する必要がある。
急性発作をまさに体験している患者の尿は、ポルフィリンが存在しているが故に赤色かポートワイン色になることだろう。急性間欠性ポルフィリン症患者の尿は、ある程度の時間、紫外線を照射すると紫色になることがある。
有名な患者
フィンセント・ファン・ゴッホ [5]やジョージ3世 (イギリス王) [6]は、遺伝的な観点からも、急性間欠性ポルフィリン症に罹患していたと推測されている。ただし近年の研究においては、ジョージ三世の症状はポルフィリン症には合致しない部分が多いと指摘されている[7]。
出典
- ^ Whatley SD, Roberts AG, Llewellyn DH, Bennett CP, Garrett C, Elder GH (2000). "Non-erythroid form of acute intermittent porphyria caused by promoter and frameshift mutations distant from the coding sequence of exon 1 of the HMBS gene". Hum. Genet. 107 (3): 243–8. doi:10.1007/s004390000356. PMID 11071386.
- ^ James, William D.; Berger, Timothy G.; et al. (2006). Andrews' Diseases of the Skin: clinical Dermatology. Saunders Elsevier. ISBN 0-7216-2921-0.
- ^ Aarsand, AK; Petersen PH, Sandberg S (April 2006). "Estimation and application of biological variation of urinary delta-aminolevulinic acid and porphobilinogen in healthy individuals and in patients with acute intermittent porphyria". Clinical Chemistry 52 (4): 650–656. doi:10.1373/clinchem.2005.060772. PMID 16595824.
- ^ *American Porphyria Foundation. "About Porphyria: Acute Intermittent Porhyria", 2007,
- ^ Arnold, Wilfred N. Vincent van Gogh: Chemicals, Crises, and Creativity, Birkhãuser, Boston, 1992. ISBN 0-8176-3616-1.
- ^ Macalpine, Ida and Hunter,Richard 'The Insanity of King George III: A Classic Case of Porphyria', British Medical Journal (1966)
- ^ Hift, Richard J.; Peters Timothy J., Meissner Peter N. (2012). "A review of the clinical presentation, natural history and inheritance of variegate porphyria: its implausibility as the source of the 'Royal Malady'". Journal of Clinical Pathology 65: 200–605.
関連項目
ポルフィリン症
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Japanese Journal
- 色素関係 ポルホビリノーゲン・デアミナーゼ(PBGD) (広範囲 血液・尿化学検査,免疫学的検査(第7版・1)その数値をどう読むか) -- (生化学的検査(1))
- 急性間欠性ポルフィリン症 (特集 内科エマージェンシー--病態生理の理解と診療の基本) -- (内分泌・代謝系疾患)
- 赤血球ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ酵素活性を用いた急性間欠性ポルフィリン症の長期モニタリング
- 上顎埋伏歯抜去の周術期管理に留意したポルフィリン症患者の1例
- 堀内 隆作,山本 忠,深野 英夫 [他],嘉悦 淳男,山本 知由,古川 博雄
- 日本口腔外科学会雑誌 52(12), 743-747, 2006-12-20
- Acute intermittent porphyria (AIP) is a hereditary metabolic disease with a mortality rate of still 25% when clinical symptoms develop.<BR>We described our experience with extraction of an upper …
- NAID 10018858852
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- 急性間欠性ポルフィリン症はあらゆる人種で生じますが、北欧系の人に多くみられます。ほとんどの国で、最も一般的な急性ポルフィリン症です。最初に神経症状が突然起こります。発作は男性より女性に多く起こり、思春期以前に ...
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★リンクテーブル★
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- 英
- heme
- 同
- プロトヘム protoheme、フェロプロトポルフィリンIX ferroprotoporphyrin IX
- 関
- ヘマチン hematin
生合成
生合成の場所
[★]
- 英
- schizophrenia like symptoms
-
[★]
- 英
- polyneuropathy
- 同
- 多発神経障害、多発性神経炎、多発ニューロパシー、多発ニューロパチー、多発ニューロパシー、ポリニューロパチー
- 関
- 、多発性神経炎、多発神経炎。末梢神経障害
- 両側対称性に複数の末梢神経障害が出現する。左右差はない。
- 四肢末梢優位に冒されるのが特徴的である。典型的には手袋靴下型の分布をとり、初期には靴下型から始める。
[★]
[★]
- 英
- Watson-Schwartz test
- 同
- Watson-Schwartz反応、ワトソン-シュワルツ試験
- 関
- 急性間欠性ポルフィリン症
[★]
- 英
- porphyria, porphyrias
- 関
- 肝性ポルフィリン症、急性ポルフィリン症
分類
- NDE.283改変
[★]
- 英
- phosphorus P
- 関
- serum phosphorus level
分子量
- 30.973762 u (wikipedia)
- 単体で化合物としてはP4、淡黄色を帯びた半透明の固体、所謂黄リンで毒性が高い。分子量124.08。
基準値
- 血清中のリンおよびリン化合物(リン酸イオンなどとして存在)を無機リン(P)として定量した値。
- (serum)phosphorus, inorganic 2.5–4.3 mg/dL(HIM.Appendix)
- 2.5-4.5 mg/dL (QB)
代謝
- リンは経口的に摂取され、小腸から吸収され、細胞内に取り込まれる。
- 骨形成とともに骨に取り込まれる。
- 腎より排泄される。
尿細管での分泌・再吸収
- 排泄:10%
尿細管における再吸収の調節要素
臨床検査
- 無機リンとして定量される。
基準範囲
血清
- 小児:4-7mg/dL
- 閉経後女性は一般集団より0.3mg/dL高値となる
尿
測定値に影響を与える要因
臨床関連
参考
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B3
[★]
- 英
- porphyrin, porphyrins
- 関
- ヘム
臨床関連
- ポルフィリン症:ヘム合成系路の障害により、中間産物であるポルフィリンの誘導体が蓄積することにより諸症状をきたす疾患の総称。
[★]
- 日
- 間歇
- 一定の時間をおいて、物事が起こったりやんだりすること
- 英
- intermission
[★]
- 英
- intermittence、intermittent
- 関
- 間欠、間欠的、断続性、断続的