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髄鞘をもつ神経細胞の構造図 |
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樹状突起
細胞体
軸索
核
ランヴィエ絞輪
軸索末端
シュワン細胞
ミエリン鞘
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神経細胞(しんけいさいぼう、ニューロン、neuron)は、神経系を構成する細胞で、その機能は情報処理と情報伝達に特化しており、動物に特有である。なお、日本においては「神経細胞」という言葉でニューロン(neuron)ではなく神経細胞体(soma)を指す慣習があるが、本稿では「神経細胞」の語を、一つの細胞の全体を指して「ニューロン」と同義的に用いる。
神経細胞の基本的な機能は、神経細胞へ入力刺激が入ってきた場合に、活動電位を発生させ、他の細胞に情報を伝達することである。ひとつの神経細胞に複数の細胞から入力したり、活動電位がおきる閾値を変化させたりすることにより、情報の修飾が行われる。
神経細胞は主に3つの部分に区分けされ、細胞核のある細胞体、他の細胞からの入力を受ける樹状突起、他の細胞に出力する軸索に分けられる。樹状突起と軸索は発生的にはほぼ同じ過程をたどるため、両者をまとめて神経突起(neurite)とも言う。前の細胞の軸索終末と後ろの細胞の樹状突起の間の情報を伝達する部分には、微小な間隙を持つシナプスと呼ばれる化学物質による伝達構造が形成されている。
神経細胞の中には、光や機械的刺激などに反応する感覚細胞や、筋繊維に出力する運動神経の細胞などもある。
なお「ニューロン」は、「神経元」とも訳され、神経系の構成単位を意味する語として生み出された造語である。神経の構造に関する論争の中で作られた。詳細は歴史の節を参照。現在[いつ?]においては、単に細胞の名前として「神経細胞」と同義的に用いられる。
細胞体(cell body, soma)は神経細胞の中で細胞核などの細胞小器官が集中し、樹状突起と軸索が会合する部位である。神経細胞内でのタンパク合成など、一般的な細胞としての機能はほとんどここで行われる。細胞体の大きさはヒトでは直径3~18マイクロメートル程度だが、無脊椎動物の中には1ミリメートルに達するものもある。細胞骨格には中間径フィラメントの一種であるニューロフィラメントが高密度で分布する。細胞体には神経細胞以外の細胞に存在する微細管に相当する神経細管が存在し、細胞体と樹状突起や軸索間の物質輸送に関連していると考えられている。また、核の周辺部には粗面小胞体の集塊であるニッスル物質が存在し、ニッスル染色によって染色される。このことから、細胞体ではタンパク合成が盛んであることがわかる。
軸索(axon)とは、細胞体から延びている突起状の構造で、神経細胞において信号の出力を担う。神経細胞中では長さが大きく異なってくる部分であり、ヒトの場合、隣接する細胞に接続するための数ミリメートル程度のものから、脊髄中に伸びる数十センチメートルのものまである。軸索は基本的に一つの細胞体からは一本しか伸びていないが、しばしば軸索側枝(axon collateral)と呼ばれる枝分かれを形成する。
軸索は、その細長い構造を維持するために長い細胞骨格を有する。この細胞骨格は、細胞体で合成された物質を軸索の先端まで輸送するためのレールとしても振舞う。また軸索は、細胞内外のイオンの濃度勾配を利用して情報を伝達するが、そのため軸索表面には多くのイオンチャネルが存在する。軸索が細胞体から伸び始める場所は軸索小丘(axon hillock、または軸索起始部、axon initial segment)と呼ばれており、イオンチャネルが高密度で存在する。
軸索の一部には、グリア細胞が巻きついて出来た髄鞘(ミエリン)と呼ばれる構造を持つものがある。髄鞘を構成する細胞は、中枢神経系ではオリゴデンドロサイト、また末梢神経系ではシュワン細胞である。髄鞘は脂質二重層で構成された細胞膜が何重にも巻きつく形で構成されている。脂質は絶縁体の性質を持つため、髄鞘は、イオン電流の漏洩を防ぎ、電気的信号の伝導速度を上げる効果を持つ跳躍伝導にも寄与している。髄鞘のある軸索を有髄線維、無い軸索を無髄線維と呼ぶ。髄鞘に対して核の存在する外側の部分を神経鞘といい、髄鞘を持たない神経を無髄神経という。ここで注意したいのは無髄神経も神経鞘は持っているということである。
軸索の先端は他の細胞と接続してシナプスを形成する。軸索のシナプス結合部はやや膨大しており、これをシナプス前終末(presynaptic terminal)と呼ぶ。シナプス前終末には神経伝達物質を貯蔵しているシナプス小胞、電位依存性のカルシウムイオンチャネル、神経伝達物質を回収するためのトランスポーター、およびシナプス後細胞からのフィードバックやシナプス前抑制などの役割を受け持つ各種の受容体が存在し、これによって軸索はシナプスを通じて他の細胞に信号を伝達する。
樹状突起(dendrite)は、細胞体から文字どおり木の枝のように分岐しながら広がる構造であり、他の神経細胞などから信号を受け取る働きをする。一つの神経細胞に、軸索は基本的には一本しかないが、樹状突起は何本もありうる。小脳のプルキンエ細胞のように、樹状突起が特徴的な形を示す神経細胞も少なくない。樹状突起には、他の細胞との間のシナプスがたくさんある。ニューロンの種類によっては(大脳新皮質の錐体細胞 (神経細胞)や、線条体の中型有棘ニューロンなど)、樹状突起の上に小さなとげ状の隆起である棘(スパイン、spine)が無数にあってシナプス部位として機能しており、神経活動などに依存して棘の形態が変化し、電流の流れ方が変化したり、シナプスそのものが形成・消滅したりすることが神経可塑性のメカニズムの一つだと考えられている。軸索との区別の一つの指標として、樹状突起には小胞体やリボソームが存在するが、軸索にはほとんど無いことがあげられる。
グリア細胞は神経系を構成する神経細胞ではない細胞であり、神経系の維持に関与する細胞群のことを言う。神経細胞に対し、位置の固定や栄養素の供給など恒常性の維持を担う細胞、髄鞘(ミエリン)の構成などの機能をもつ細胞、免疫系のような振る舞いをする細胞などがある。近年、シグナル伝達への関与を示唆する証拠が見つかりつつある。ヒトの脳では、細胞数で神経細胞の50倍ほど存在していると見積もられている。
動物の体液には多量のカリウムイオン、ナトリウムイオン、塩化物イオンなどが含まれているが、細胞外液と神経細胞の細胞質のイオン構成は通常大きく異なっており、細胞内外で電位差がある。微小電極を用いて細胞内外の電位差を測定すると、細胞内は細胞外に比べ-60~-70mVほど負の電位を示す。これを静止膜電位と呼ぶ。これらのイオンは細胞膜を透過して拡散するため、神経細胞の膜貫通タンパクのナトリウムポンプなどによりATPを利用してエネルギーを消費しながらイオンを輸送し、濃度差を維持している。
活動電位は非常に短時間の電位変化であり振幅は一定している。これを計って時間を軸にグラフを描くと、活動電位は針のような急速な電位変化として描画されることが多い。このため電気工学的にインパルスと呼ばれることもある。
神経細胞でも代謝は一般の細胞と同じく、タンパク質等の合成には核を必要とする。つまり神経細胞では細胞体でタンパク質が合成される。神経細胞は長い軸索を持つことが多いが、細胞体で生産された物質が拡散によって軸索先端にまで達するには時間がかかり、主に微小管上のモータータンパクによって能動的に軸索先端に輸送される。
シナプスでは盛んに神経伝達物質が放出されているが、放出された神経伝達物質の一部は能動的に回収され、シナプス小胞に再充填される。
神経細胞では、静止膜電位の維持と活動電位からの回復のために莫大なATPを消費している。ヒトの脳の質量は体重の2%程度なのに対し、グルコース消費量は全身の25%と非常に多い。
神経細胞の増殖は、ヒトでは小児期に、神経幹細胞が盛んに分裂して分化することで起こる。
神経細胞は分化が進むとともに、軸索誘導によって特定の位置にある神経細胞が特定の細胞に軸索を伸ばし、シナプスを形成して神経回路を形成していく。軸索を誘導する因子として、標的細胞側から出される特定の化学物質が関与していると言われている。
神経細胞間の接続関係の調節には、神経栄養因子(ニューロトロフィン; NGF、BDNF、NT-3、NT-4)とその特異的受容体(TrkA、TrkB、TrkC)が関与しているといわれる。BDNFは中枢神経に特に豊富で、神経活動依存的に合成・分泌される。これらの物質を受け取った細胞の活動やシナプスの接続関係を強化するため、神経系の学習・記憶を制御する中心的な物質と考えられている。[1]また、神経細胞群は初期に過剰な接続を形成した後、必要なものだけを残してシナプスを減らすと考えられている。これは「刈り込み」と呼ばれている。 [2]
20世紀初頭のラモン・イ・カハール以来、ヒトの成人の脳では新たな神経細胞は形成されないと考えられてきたが、1990年代に神経幹細胞と新生神経細胞が成人の脳にも存在することが示され、成人で神経新生が起こる可能性も検討されている。ただし、その生理的意味はよく分かっていない。
神経細胞の一部が傷つけられると、その場所よりも細胞体から遠い側は変性して壊れてしまう。これを順行性変性という。細胞体のある側にも変性が進行することがあり、これを逆行性変性という。また、神経細胞は互いに神経栄養因子などをやり取りしており、シナプスで接続している細胞が壊れた場合にも、神経栄養因子の不足からプログラム細胞死を起こすことがある。この場合も、前シナプス細胞が死んだことにより後シナプス細胞が死ぬ場合を順行性変性、後シナプス細胞が死んだことにより前シナプス細胞が死ぬ場合を逆行性変性と呼ぶことがある。
障害の程度が激しくて細胞体が死んでしまうと、その神経はもはや再生不能である。しかし、末梢神経の場合には、細胞体が生きていれば、再び軸索を伸ばして目的細胞との結合を回復できることが多い。その過程には、基底膜やシュワン細胞の関与が必要とされる。一方、末梢神経に比べて中枢神経はほとんど再生能力がなく、脳や脊髄の損傷は生涯に渡って後遺症を残すことが少なくない。末梢神経の再生を促進する再生医療技術が実用期に入っているが、中枢神経の再生は開発途上である。人工神経を参照。
以下は神経細胞の形態による分類であり、細胞の機能が特定されていない場合の一般的分類である。あちこちの神経細胞が同じ名前で呼ばれるが、基本的に形態以外の共通点は考慮されていない。しかし局所的には形態の違い、すなわち軸索の伸びる先や樹状突起の持つシナプス数は機能の違いを反映していると仮定した研究が多い。
錐体細胞(ゴルジ染色)
大脳皮質においては、錐体細胞は皮質領野間や皮質と核をつなぐ興奮性の細胞であり、星状細胞は領野内での抑制性および興奮性の介在神経細胞と考えられている。これら介在神経細胞は、形態から細かく数十種類に分類されることがある。
以下は特定の部位に存在し、特徴的な機能・形態を持つ分類である。
網膜神経節細胞 (D,E)
プルキンエ細胞
19世紀後半、中枢神経をはじめとした神経系が網状構造をとることまでは知られていたが、カミッロ・ゴルジらは、神経繊維は末端で互いに途切れることなく連続して網を形成しているとする網状説を主張し、ラモン・イ・カハールらの神経線維も細胞の集合であるとするニューロン説と対立した。1906年のノーベル生理学・医学賞はゴルジとカハールが同時受賞し、両者はまったく正反対の立場で受賞記念講演を行っている。なお、ゴルジ染色法によりニューロン説が有力となり、電子顕微鏡や分子設計による染色法の発達に伴って、神経の細胞としての微小構造や特性の解明が急速に進んだ。
終脳(大脳)は見た目の色で表面の灰白質と内部の白質に分けられるが、細胞体は主に灰白質にあり、白質はそこから伸びた軸索が束になったものが主である。髄鞘は神経細胞より白っぽく見える。白質が白く見えるのは灰白質に比べて有髄神経線維が多いからである。
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