- 英
- Brugada syndrome
- 同
- Brugada症候群
- 関
概念
- 特発性心室細動をもたらす症候群の一つ。
- 基礎疾患を有さない若年者~中年の失神発作が特徴的
- 非発作時には無症状であるが、発作時には突然死を来す可能性がある。
- 反復する多型性心室頻拍、心室細動を来たし、放置すれば突然死に至。
歴史
- 1992年、Brugadaらは洞調律時に右脚ブロック様QRS波形、V1-V3においてST上昇を示し、心室細動を来した、器質疾患を有さない8例を報告。
病因
- SCN5A geneの突然変異 → Naの流入が緩徐@RV流出路心外膜領域 → 活動電位の短縮(action potential shortening → 正常な心外膜とrapidly depolarized RV outflow epicardiumの間の電位差によりV1-V3でのST上昇を起こす → 局所的リエントリ誘発 → 致死性心室不整脈 (HIM.1442)
- 心筋Naチャネル遺伝子SCN5Aの以上がが原因の20%を占めるが、その他CACNA1C,CACNB2,GPD1-L,SCN1B,KCNE3,SCNE3Bなど多くの遺伝子異常と関係があるとされる。
疫学
- 30-50歳代の男性に多い
- 若年から中年の男性に多く、20-30%は突然死の家族歴を有する。
- 日本や東南アジアに多く、日本では成人の1%にBrugada型心電図を認める。
症状
- 前駆症状を伴わない失神発作が初発症状。
- 反復する多型性心室頻拍、心室細動。
- 放置により突然死する可能性が大きい
- uptodate
- 突然死(sudden cardiac arest)は初発症状の1/3を占める。
- 不整脈は22-65歳で見られ、副交感神経が活発となる日中より夜間、起床中よりも就寝中にみられる。
- 突然死と運動とは無関係とされている。
検査
心電図
- 1)完全あるいは不完全右脚ブロック様QRS波形(つまり、V1-V3でJ波が見られる)
- V1,V2のrSの後ろにJ波が出現している。右脚ブロックのV1誘導の心電図ではrSr'が認められるが、さきのJ波があたかもr'の様に見え、右脚ブロック様QRS波形と称している
- 2)右側胸部誘導(V1-V2(V3))のST上昇(coved型あるいはsaddle back型)
- ST上昇はcoved型(右下がり。陰性T波)、saddle back型(J波とT波が高く、その間が低くなって鞍状のSTを呈する)のパターンを示す。J波の高さが2mm以上でcoved型ST上昇と陰性T波を示す所見が最も診断価値が高い。
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薬物誘発検査?(HIM.1442)
薬物負荷試験
- ピルシカイニドでcoved型ST上昇を誘発できるとされる。心室頻拍や心室細動を誘発することがある。
診断
治療
予後
ガイドライン
- QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_ohe_h.pdf
国試
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/04/16 22:04:03」(JST)
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ブルガダ症候群(ブルガダしょうこうぐん、英: Brugada syndrome)は、1992年にスペイン人医師ペドロ・ブルガダとその兄弟が報告した心疾患[1]で、疾病名は最初の報告者名に由来する。ブルガーダ症候群とも呼ばれる。
目次
- 1 概要
- 2 臨床像
- 3 原因
- 4 検査
- 5 治療
- 6 参考文献
- 7 外部リンク
概要
心筋梗塞、狭心症、心不全等の所見が認められないのに心室細動を生じる疾患で、夜間に心室細動の発作を起こすことが多いとされている。多くの場合は一過性の心室細動を生じるだけで元々の正常な脈拍に戻り、一時的な症状で終わる。しかし、希に重篤な不整脈である心室細動により失神し、死に至る場合がある[2]。心室細動の他に発作性心房細動を来すこともある。失神や心停止蘇生や心室細動の既往歴のある群と、全く症状を有しない群に分けられ、それぞれ、症候性ブルガダ症候群(有症候群)と、無症候性ブルガダ症候群(無症候群)に分類される。
また、発作を起こす危険性の高い人を確実に見分ける検査方法は確立されていないが、他の心疾患のような運動制限は不要である。
心室細動の発作がいつ起こるかわからないため、体内植込み型除細動器(ICD)の利用が多くなってきている。しかし、ICDは電磁波によって不適切作動の危険性もあり、社会的な環境保全が待たれる。また、電子調理器、盗難防止用電子ゲート、大型のジェネレーターなどが不適切作動を誘発する恐れがある。
現在無症状であっても45歳以下の突然死の家族歴、失神発作、夜間苦悶様呼吸(発作性夜間呼吸困難)の既往暦を有する場合は、当該疾病を疑い精密検査をすべきであるとの見解もある[3]。
臨床像
アジア人の30代から50代の男性に多く発症する。男女比率は9:1で、無症状の有所見者が心室細動を起こす可能性は100人中2年に1人程度とされている[2]。多くは、無症候性と考えられるが、無症候群では突然死などのイベント発生率が年0.3 - 4.0%であるのに対し、有症候群はイベント発生率が年10 - 15%と報告されている。前駆症状を伴わない失神発作が初発症状。
日本における突然死症候群のうち、ぽっくり病の主要疾病と考える研究者もいる[4]。
後述の様な特徴的な心電図が現れる。
原因
心筋細胞の細胞膜上にあるナトリウム・チャンネルのαサブユニットをコードしている遺伝子の変異に原因がある例が認められる。問題の遺伝子SCN5Aは第3染色体の短腕 (3p21) 上に位置する。遺伝子の変異により右室心外膜における活動電位時間が著明に短縮し、貫壁性の再分極状態のばらつきが大きくなるため、心室細動を起こしやすくなると考えられている。変異したナトリウム・イオンチャンネルがアンキリン-Gと結合できないため、心臓活動電位が変化すると考えられている。アンキリン-Gは、細胞骨格とイオンチャンネルの相互作用を調停する膜骨格タンパク質である。なお、遺伝子の変異は、常染色体優性で遺伝する。しかし、遺伝子異常は検索されても20%程度のみにしか認められず、すべての症例がSCN5Aの異常で説明されるわけではない[5]。
検査
心電図
ブルガダ症候群に見られる心電図の波形 A:健康な心臓 B:ブルガダ症候群 V2ではST上昇(赤矢印)がはっきり現れている
心電図で、典型的には右脚ブロック様波形(V1,2のrSR’パターン)とV1~V3にかけてのcoved型、またはsaddleback型のST上昇を来す。
- 高位肋間心電図、トレッドミル運動負荷心電図は coved型波形を顕在化するために有用である。
ピルシカイニド負荷
ピルシカイニドなどのNaチャネル遮断薬負荷はcoved型波形を顕在化させるのに有用である。この時高位肋間心電図の記録も薦められる。ただし心室細動を起こすことがあるため、注意を要する。
治療
唯一有効な治療方法は、対症療法としてのAED(体外用除細動器)またはICD(植込み型除細動器)が選択される。
薬剤による発症抑制および治療方法は確立していなが、発作予防の薬剤として、イソプロテレノールという交感神経刺激剤を点滴、シロスタゾールの内服など。抗不整脈薬として、発作頻度を減らすために一過性外向きK電流(Ito)遮断作用のあるキニジン[6]、ジソピラミド、ベプリジルが用いられることがある。
家族歴や有症候群の場合は、植込み型除細動器の使用が推奨される。
禁忌薬は、Naチャネル遮断系抗不整脈薬(ピルシカイニドやフレカイニドなど)、抗うつ薬。
参考文献
- ^ Brugada, P.; Brugada, J. (1992). "Right bundle branch block, persistent ST segment elevation and sudden cardiac death: a distinct clinical and electrocardiographic syndrome. A multicenter report." J. Am. Coll. Cardiol. 20(6):1391–6. PMID 1309182
- ^ a b ブルガダ症候群/QT延長症候群/突然死症候群 岡山大学循環器内科
- ^ ブルガダ型心電図を呈した症例の検討(健康診断時の対応) 産業衛生学雑誌 Vol.47 (2005) No.1 P33-39
- ^ 健診で心電図異常を指摘された34歳の男性 日本内科学会雑誌 Vol.100 (2011) No.7 p.2036-2038
- ^ 堀江 稔:研究会 第37回理論心電図研究会 テーマ : 心筋のCaハンドリング Brugada症候群とナトリウム・チャネル遺伝子異常 心臓 Vol.35 (2003) No.6 p.459-464
- ^ ブルガダ症候群での心室細動誘発に対するキニジン静脈内投与による抑制効果 日大医学雑誌 Vol.67 (2008) No.5 P299-303
外部リンク
- QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン(2007年改訂版) (PDF) 日本不整脈学会
- 循環器系疾患分野 Brugada症候群(ブルガダ症候群) 難病情報センター
- 徳島大学名誉教授 森博愛によるBrugada症候群の解説
- ブルガダ(Brugada)症候群 慶應義塾大学病院
- ブルガダ症候群
- 第17回 心臓性急死研究会 ブルガダ型心電図症例における心室細動(VF)誘発性と臨床的危険予測因子の比較検討 心臓 Vol.37 (2005) No.Supplement3 p.142-146
- ブルガダ症候群における心房細動の発生機序に関する検討 日大医学雑誌 Vol.68 (2009) No.5 P290-296
- Wichter, T. et al. Clinical investigation and reports: cardiac autonomic dysfunction in Brugada syndrome. Circulation 2002;105:702-706
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治療 |
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外科的治療
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冠動脈バイパス術(CABG)
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CABG | off-pump CAB(OPCAB) | MIDCAB(en) | TECAB(en)
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弁膜症手術
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弁置換術(en) | 弁形成術(en) | 弁輪形成術 | 交連切開術(en)
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小児心臓外科
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動脈管結紮術 | BTシャント | 肺動脈絞扼術(en) | ノーウッド手術 | グレン手術 | フォンタン手術 | ジャテン手術 | ラステリ手術 | ロス手術
|
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心不全外科
|
心移植術 | 補助人工心臓装着術 | 左室形成術(Dor・SAVE・Overlapping)
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不整脈外科
|
メイズ手術(en) | ペースメーカー | 植え込み型除細動器
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大動脈手術
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大動脈人工血管置換術 | 大動脈基部置換術 (Bentall, David) | ステントグラフト内挿術(en)
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末梢血管手術
|
末梢動脈血行再建術 | 末梢静脈血行再建術 | 静脈抜去術(en) | 静脈血栓摘除術(en) | 内シャント作成術 | 肢切断
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内科的治療
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循環作動薬
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抗不整脈薬
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Ia群: プロカインアミド, キニジン
Ib群: リドカイン, フェニトイン
Ic群: フレカイニド(en), プロパフェノン(en)
II群: 交感神経β受容体遮断薬(プロプラノロールなど)
III群: アミオダロン, ソタロール(en)
IV群: カルシウム拮抗剤(ベラパミル, ジルチアゼムなど)
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心不全治療薬(en)
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利尿薬 | 血管拡張薬 | 強心配糖体 | 強心剤 | PDEⅢ阻害薬
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狭心症治療薬
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交感神経β受容体遮断薬 | 硝酸薬
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|
高血圧治療薬
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利尿薬 | 交感神経β受容体遮断薬 | レニン-アンジオテンシン系 (ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、レニン阻害薬(en)) | カルシウム拮抗剤 | アドレナリン作動薬 | 脂質降下薬
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 特殊不整脈・状態と麻酔管理上の抗不整脈対策 : (1)ブルガダ症候群(2)QTc延長とトルサデポアン
- 大西 佳彦
- 日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia 32(4), 601-605, 2012-07-14
- NAID 10030832462
- 心磁図を用いたブルガダ症候群における異常電流ベクトルの検出
- 神鳥 明彦,緒方 邦臣,宮下 豪,高木 洋,橋本 修二,山田 優子,駒村 和雄,清水 渉,鎌倉 史郎
- 心電図 = Electrocardiology 30, 1-24, 2010-05-25
- NAID 10027704923
- ブルガダ症候群における心房細動の発生機序に関する検討 : 心房活動電位持続時間および心房内伝導時間を指標とした比較検討
- 小船 雅義,渡辺 一郎,芦野 園子,奥村 恭男,小船 達也,大久保 公恵,中井 俊子,國本 聡,平山 篤志
- 日大醫學雜誌 68(5), 290-296, 2009-10-01
- NAID 10025593166
- 緊急性を要する心房細動 (特集 心房細動) -- (心房細動の治療)
Related Links
- ブルガダ症候群(ブルガダしょうこうぐん、英: Brugada syndrome)は、1992年に スペイン人医師ペドロ・ブルガダとその兄弟によって報告された心疾患。ブルガーダ 症候群とも呼ばれる。重篤な不整脈である心室細動により失神し、死に至る場合がある 。 ...
- ブルガダ症候群ではブルガダ型心電図を示すのみで明らかな器質的心疾患を認めませ ん。日本や東南アジアで頻度が高く、40歳前後の男性に多く発症するとされ、しばしば 突然死の家族歴があります。特発性心室細動は睡眠時などの安静時に多く出現し再発 ...
- ブルガダ症候群とは、突然に心臓けいれんともいえる心室細動[しんしつさいどう:心臓が 細かくふるえ、ポンプ機能として不能の状態]をきたし、失神を起こしたり、時に突然死に もつながることもある原因不明の心臓病です。
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★リンクテーブル★
[★]
- 38歳の男性。失神を主訴に来院した。2日前、自動車運転中に意識を失い、交通事故を起こした。6か月前にも自宅で意識消失発作があった。父と兄とが突然死している。意識は清明。身長170cm、体重64kg。体温36.4℃ 。脈拍72/分、整。血圧 116/80mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。12誘導心電図を以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [103A019]←[国試_103]→[103A021]
[★]
- 44歳の男性。深夜に帰宅後、意識を失う発作を繰り返したため搬入された。1か月前から就寝時に時々胸苦しさを自覚していた。最近仕事が忙しく疲れ気味であった。40歳時に健康診断で心電図異常を指摘されていた。家族歴に特記すべきことはない。救急車の中で記録された発作時の心電図とを以下に示す。
- 対応として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [102A057]←[国試_102]→[102A059]
[★]
- 英
- electrocardiogram ECG, electrocardiography
- 同
- elektrokardiogramm EKG
- 図:PT.268,279(心臓の構造と興奮伝導系)
- 心電図の読み方:PHD.108
概念
- 心臓全体の電気的活動を体表面から経時的に記録したもの。
- 特殊心筋の活動電位は記録されない。固有心筋の活動電位のみ
医学大事典より
- 心臓は拍動のたびに電気を発生し、これを心起電力(cardiac electromotive force)と呼ぶ。
- 心起電力により体表面に電流が流れると四肢や胸壁など、体表面の異なった部位間に電位差が生じる。
- この電位差を導出するための装置を心電計と呼び、心電計により時間軸に沿って記録された電位の変化を心電図という。
意義
- 心電図は心臓の電気的興奮の伝達を記録したものである。P波は心房の脱分極を、QRS波は心室の心筋細胞の脱分極を表す。T波は心室の再分極を表す。つまり心筋の異常がある場合何かしらの変化が心電図上に表れるということである。心電図は身体に侵襲的な影響を及ぼさない検査である。このことはこの検査を心臓の疾患を疑ったら即行ってよいということである。
- 心電図は、不整脈、心筋梗塞、心筋虚血、心膜炎、心房負荷、心室肥大・心室拡大、電解質異常などの判断に有用である。
施行する目的
- 心臓疾患疑い(狭心症・心筋梗塞・不整脈など)
- スクリーニング(学校検診、職場検診など)
心電図の種類
電極の部位による分類
表現形式による分類
- ベクトル心電図:心起電力をベクトル環として三次元的に描く
- スカラー心電図:時間軸に沿った電位の記録
心電図の記録サイズ
- 縦軸:10mm = 1mV
- 横軸: 5mm = 0.2s
標準12誘導心電図
- 標準肢誘導(I,II,III) + 単極肢誘導(aVR, aVF, aVL) + 胸部誘導(V1, V2, V3, V4, V5, V6) = 12誘導
電極の取り付け位置・電極の色
単極肢誘導
- EAB.5改変
V1
|
右第4肋間
|
赤
|
V2
|
左第4肋間
|
黄
|
V3
|
V2とV4の中点
|
緑
|
V4
|
左第5肋間かつ鎖骨中線
|
茶
|
V5
|
V4と同じ高さで前腋窩線との交点
|
黒
|
V6
|
V4と同じ高さで中腋窩線との交点
|
紫
|
心電図の波
- 6つの棘波よりなる
- P波:心房の電気的興奮。:0.12-0.20s (3-5mm)
- QRS複合:心室の電気的興奮:0.06-0.15s :正常; 0.06-0.08s (1.5-2mm), 不完全脚ブロック; 0.08-0.12s (2-3mm), 完全脚ブロック ≧0.12s (≧3mm)
- T波:心室の再分極(心室筋興奮の回復過程):
- U波
心電図の波の間隔
- PQ時間:房室間伝導遅延:0.12-0.20s
- QT時間:電気的心室収縮時間:心拍数と相関関係がある
- QTc=QT/sqrt(RR)
- 心拍数によらずほぼ一定の値を示す
正常心電図における波
心電図による得られる情報 (SP.536)
- 1. 心臓内の興奮伝導の障害
- ex. 房室ブロック
- 2. 不整脈:脈拍のリズムと心拍数の異常
- ex. 心房粗動、心室細動
- 3. 冠循環の異常
- ex. 心筋梗塞
- 4. 心室肥大
- 5. 血漿中の電解質濃度の異常
各誘導で取りやすい所見
特徴的な所見
新生児・幼小児の心電図
- SPE.428-
- 電気軸:右軸偏位 → 左軸偏位 胎児循環では右心系が主に体循環に関わっていたが、成人で見られる循環では左心系が関わる。生後一ヶ月らいまでは+120~130°程度の右軸偏位
- 呼吸性不整脈:小児では顕著。吸気時に心拍数増加、呼気時に心拍数減少
- 右室肥大:新生児~乳児では肺血管抵抗がまだ高いために右室肥大が持続。
心電図と心疾患
- 心臓を栄養している血管が急激に閉塞するため、全く血液が供給されない状態。
- 急性期と慢性期では異なった心電図をとる。
- 異常Q、ST上昇、冠性T
- 心臓に器質的疾患を持たないにもかかわらず、心電図上でQT時間の延長(QT時間が0.46秒以上)を認める病態。
疾患と心電図
- 心膜炎 心外膜炎:90%の患者に異常が見られる。aVR, V1を除いたST上昇。いくつかの電極でPR部の低下(PR segment depression)
- 肺性心(肺気腫):肺性P、不完全右脚ブロック、右軸偏位、V1-V3のT波陰転・平坦化、II,III,aVFでST低下。肺高血圧、最初の3つは右室負荷を反映
- 肥大型心筋症:ST-T変化(ストレイン型の陰性T波は、上に凸のST低下を伴い、非対称性陰性T波)。Sv1, Rv5の増大。QRS時間の延長。
- 心房中隔欠損症:PR延長、不完全右脚ブロック、右軸偏位。右心系の容量負荷による遠心性心肥大。
- 心室中隔欠損症:
- ブルガダ症候群:右側胸部誘導(V1-V2(V3))のST上昇(coved型あるいはsaddle back型) 。完全あるいは不完全右脚ブロック様QRS波形(つまり、V1-V3でJ波が見られる)。
- 脚ブロック
- WPW症候群:Δ波。PQ短縮、QRS延長。V1に特徴的変化「A型: 高いR波。左室自由壁」「B型: rS型。右側」「C型: Qr/QS。中隔」
- 肺血栓塞栓症:右側胸部誘導の陰性T波、洞性頻脈、SⅠQⅢTⅢ、右脚ブロック、ST低下、肺性P、時計方向回転
- 肺気腫:V1,V2でrS/QSパターン
注意点
- 胸をさらすことになるので、女性の患者では特に配慮する。誘導の電極が正しい位置に貼られていないと記録される結果が異なってくるので、正確な位置に貼る。また、心電図は筋肉の活動も拾ってしまうので、筋緊張を和らげるため患者にはリラックスしてもらい、リラックスできる状況を作ることを心がける。
参考
- http://www.cardiac.jp/
[★]
- 英
- propofol infusion syndrome, PRIS
- 関
- プロポフォール
概念
- 集中治療分野における、長期間鎮静のためにプロポフォールが投与された患者の病態
- 集中治療における人工呼吸中の鎮静の目的でプロポフォール投与中に代謝性アシドーシス、横紋筋融解症、高カリウム血症、心不全が発現した症例が報告されており、このような病態をプロポフォール症候群と呼ぶ
- 4mg/kg•hr(60kgで24ml/hr)以上の高用量プロポフォールを48時間以上使用している患者で代謝性アシドーシス、徐脈を伴うショック(徐脈性不整脈)、横紋筋融解症、高脂血症、腫大肝・脂肪肝を呈する疾患
- 5mg/kg/hを48時間以上としている情報源あり
疫学
- 死亡率が高い
- 小児で多いが、成人でもまれならず
- PRISはまれではあるが、致死性合併症
診断基準
Brayによる小児PRISの診断基準
- 突発性もしくは比較的突発性に治療抵抗性の徐脈が発現し不全収縮(心静止)へ移行する
- 以下のうち少なくとも1項目を含む
- 脂質異常症の発現
- 肝腫大または剖検による肝臓の脂肪浸潤
- BE≦-10を呈する代謝性アシドーシス
- 横紋筋融解もしくはミオグロビン尿を伴う筋症状
リスク因子
PRIS発症に関する危険因子
- 高容量(>5mg/kg/h)、長時間(>48時間)のプロポフォール投与
- 乳幼児
- 上気道感染
- 多発外傷、頭部外傷
- 内因性ストレスの存在、カテコラミンやグルココルチコイドの投与
- 糖摂取の不足
PRIS発症時の所見
病態生理
検査
治療
予防
- プロポフォールを使用する際は4mg/kg•hrを越えないようにする
- 48時間以内でも除外しない。疑えば中止を考える。
- 使用中は心電図(徐脈に注意、ブルガダ変化も)、pH、CK、TGをモニタリング
- プロポフォールを漫然と長期投与しないように、鎮静レベルはRASSなどで評価
[★]
- 英
- syndrome, symptom-complex
- 同
- 症状群
- 関
- [[]]
- 成因や病理学的所見からではなく、複数の症候の組み合わせによって診断される診断名あるいは疾患。
内分泌
先天的代謝異常
高プロラクチン血症
- 分娩後の視床下部障害によるプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制のため、高プロラクチン血症を呈する。
- 分娩に関係なくプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制をきたし、高プロラクチン血症を呈する。
性腺機能低下
- 嗅覚の低下・脱出、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
- 肥満、網膜色素変性症、知能低下、低ゴナドトロピン性性器発育不全、多指症、低身長
性早熟
- 思春期早発症、多発性線維性骨異形成症、皮膚色素沈着
- 女性型の肥満、性器の発育障害の2主徴を示し、視床下部に器質的障害をもつ疾患群。
脳神経外科・神経内科
[★]
- 英
- group
- 関
- グループ、集団、分類、群れ、基、グループ化
[★]
- 英
- symptom and sign
- 関
- 症状, 徴候 兆候