- 英
- coronavirus
- 同
- ヒト呼吸器コロナウイルス, human respiratory coronavirus, HRCV
- 関
- SARSコロナウイルス、ウイルス、SARS-CoV-2
- ニドウイルス目 Nidovirales コロナウイルス科 Coronaviridae コロナウイルス属に所属するウイルスである。
- コロナウイルスは直径80-160nmのエンベロープに包まれたウイルス(粒子)である。
- ウイルス粒子の表面には12-24nmのスパイク(ペプロマー peplomer)の突起を有しており、これが太陽のコロナに似ることからコロナウイルスと命名されている。
- ゲノムは一本鎖のプラス鎖であり、5'末端にcap構造、3'末端にpoly A構造を有している。
- ゲノムRNAの大きさは、6~9x10^6 Daであり、20-30kbの大きさを有する。
- ゲノムRNAはカプシドと結合してらせん対称のヌクレオカプシドをなしており、エンベロープ下に配置されている。
- ウイルス粒子の密度は1.15~1.18g/cm3程度である。
- ゲノムRNAはウイルスRNAポリメラーゼにより感染細胞中でマイナス鎖RNAに転写され、それを鋳型に3'末端が揃った複数のmRNAが合成される。
- 脂質二重膜上にはスパイク(S)、膜(M)などの蛋白質が存在する。種よっては血球凝集素・エステラーゼ(hemagglutinin-erastase, HE)も存在する(OC43株など)。
- S蛋白とHE蛋白が中和に関する主な抗原決定基となりうる
- ヒトには鼻かぜを起こし、その他の動物にも感染しうる;マウス(マウス肝炎ウイルス, mouse hepatitis virus, MHV)、ラット、イヌ、ウシ、鳥類(ニワトリ伝染性気管支炎ウイルス, avian infectious bronchitis virus, AIV)。
- ヒト呼吸器コロナウイルス human respiratory coronavirus HRCVには229E株とOC43株が代表的なものである。OC43株は赤血球凝固能を有する。
- ヒトに風邪症状を引きおこすウイルスは、αコロナウイルスの22E株、NL63株、βコロナウイルスのOC43株、HKU1株であり、これら4種類が風邪の原因の10-15%を占める(流行期35%)。
- コロナウイルスには4種の血清型を有しており、αコロナウイルス(I群)には229E株・NL63株・ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、βコロナウイルス(II群)にはOC32株・HKU1株・・マウス肝炎ウイルス、γコロナウイルス(III群)にはニワトリ伝染性気管支炎ウイルス、δコロナウイルス(IV群)には七面鳥コロナウイルスが属する。
- 2002年11月に中国で始まり、2003年に世界に広まったsevere acute respiratory syndrome SARSの原因ウイルスであるSARSコロナウイルスは遺伝的にこれまでのいずれのコロナウイルスとも抗原性が異なる。現在ではβコロナウイルスに属するとされている。
- 2012年中東で流行したMERSコロナウイルスはもβコロナウイルス属に所属する。
- 致死率はいずれも高くSARSコロナウイルス感染症は10%、MERSコロナウイルス感染症は30%とされる。
- 2019年末から2020年初頭に中国で始まり世界に広まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルス SARS-CoV-2はβコロナウイルスに属する。
コロナウイルス感染症の特徴
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/11/05 01:32:37」(JST)
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コロナウイルス科 |
コロナウイルス
|
分類(ウイルス) |
群 |
: |
第4群(1本鎖RNA +鎖) |
目 |
: |
ニドウイルス目 |
科 |
: |
コロナウイルス科 |
|
亜科(本文参照) |
|
コロナウイルス(Coronavirus)は、一本鎖(+)RNAウイルスのニドウイルス目のコロナウイルス科のウイルスをさし、コロナウイルス亜科、トロウイルス亜科を含む。
エンベロープ表面に存在する突起によって太陽のコロナのような外観を持つことからこの名が付いた。
ウイルスの増殖は細胞質内で行われ、小胞体やゴルジ装置から出芽する。
コロナウイルスの中にはエンベロープにヘマグルチニンエステラーゼを有し、赤血球凝集性を示す種が存在する。
SARSコロナウイルスは既知のコロナウイルスと大きく異なった塩基配列を持つことが示された[1]。
コロナウイルス属のゲノムはRNAウイルス中最大(約30kb)である。
目次
- 1 分類
- 2 参考文献
- 3 関連項目
- 4 脚注・引用
分類
- コロナウイルス亜科(Subfamily: Coronavirinae)
- アルファコロナウイルス属
- アルファコロナウイルス1(Alphacoronavirus 1)
- ヒトコロナウイルス229E(英語版)
- ヒトコロナウイルスNL63(Human coronavirus NL63)
- ミニオプトラスコウモリコロナウイルス1(Miniopterus bat coronavirus 1)
- ミニオプトラスコウモリコロナウイルスHKU8(Miniopterus bat coronavirus HKU8)
- ブタ流行性下痢ウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)
- Rhinolophus bat coronavirus HKU2
- Scotophilus bat coronavirus 512
- ベータコロナウイルス属
- ベータコロナウイルス1(Betacoronavirus 1)
- マウスコロナウイルス
- ヒトコロナウイルスHKU1(英語版)
- SARSコロナウイルス
- ルーセットコウモリコロナウイルス HKU9(Rousettus bat coronavirus HKU9)
- タケコウモリコロナウイルス HKU4(Tylonycteris bat coronavirus HKU4)
- アブラコウモリコロナウイルス HKU5(英語版)
- MERSコロナウイルス
- デルタコロナウイルス属
- ヒヨドリコロナウイルスHKU11(Bulbul coronavirus HKU11)
- ムニアコロナウイルスHKU13(Munia coronavirus HKU13)
- ツグミコロナウイルスHKU12(Thrush coronavirus HKU12)
- ガンマコロナウイルス属
- 鳥コロナウイルス(Avian coronavirus)
- シロイルカコロナウイルスSW1 (Beluga whale coronavirus SW1)
- トロウイルス亜科(Subfamily: Torovirinae)
- バフィンウイルス属(Genus: Bafinivirus)
- ホワイトブリームウイルス(White bream virus)
- トロウイルス属
- ウシトロウイルス(Bovine torovirus)
- ウマトロウイルス(Equine torovirus)
- ヒトトロウイルス(Human torovirus)
- ブタトロウイルス(Porcine torovirus)
新型コロナウイルス
中東呼吸器症候群 (MERS:マーズ)コロナウイルス(2013年5月に「MERSコロナウイルス[1]」という名前に決まった。「SARI」も使われている。英語ではNovel Coronavirus, SARS-like virus, NCoV, HCoV-EMC[2]などと表現されている)は2012年9月[3] - 2013年5月現在流行中で、5月14日現在、38人感染確認、20人死亡、死亡率53%[4][5][6]。サウジアラビアで発生したと言われる。感染源[7]、感染方法は全くわかっておらず[8]、薬・治療方法は全くない[9]。イギリス4人・ドイツ2人、フランス2人の中東からの輸入例がある[10]。報道によれば、家族内感染3人(ヒト-ヒト感染の疑い)と、状態良好で入院後2時間で死亡した11歳男児がいる[11]WHOのフクダ事務局長補は、複数の国でまとまった感染例(クラスター)があるのでヒト-ヒト感染の可能性が高まっていると述べている(これ以上どういう風に広がるかについては全く分かっていない)[12]。また肺炎だけではなく脳炎、腎炎も発症したと言われる[13][14][15][16]。
2013年5月15日、WHOは、患者が入院したサウジアラビアの病院の2人(看護婦と医療関係者)への「ヒトヒト感染」が初めて確認されたと発表した[17][18][19]。これで、感染者40人、死者20人、死亡率50%になった[20][21][22]。5月21日、チュニジア政府は、66歳のチュニジア人がMERS-CoVで死亡し、2人の子どももMERS-CoVに感染していたと発表した(父と姉妹一人が、1週間前まで5週間のあいだサウジアラビア(メッカなど)とカタールに旅行していたという)。これで感染者44人、死者22人になる。
参考文献
- 原澤亮 「動物ウイルスの新しい分類(2005)」 『獣医畜産新報』 58号 921-931頁 2005年 ISSN 0447-0192
- 見上彪監修 『獣医感染症カラーアトラス』 文永堂出版 2006年 ISBN 4830032030
関連項目
- 牛コロナウイルス病
- 唾液腺涙腺炎
- 伝染性気管支炎
- 猫伝染性腹膜炎
- 豚伝染性胃腸炎
- 豚流行性下痢
- マウス肝炎
- 重症急性呼吸器症候群(SARS。2002 - 2003年流行、全世界で中国を中心として約8,000人が感染し、774人が死亡した(死亡率約10%)[23]。中国広東省(珠江デルタ地帯付近)が発生地とされる)
脚注・引用
- ^ Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus"(MERS-CoV)
- ^ Human Coronavirus-Erasmus Medical Center
発見したザキ博士が送った試料オランダのエラスムス医療センターの遺伝子解析で新型コロナウイルスであると判明したため。
- ^ ザキ博士本人による全世界初の公表から始まった。
"Novel coronavirus - Saudi Arabia: human isolate" ProMED-mail,2012-09-20 15:51:26
- ^ "Novel coronavirus infection - update" May 6,2013,Global Alert and Response(GAR),WHO
- ^ "Novel coronavirus - Eastern Mediterranean(18): Saudi Arabia" ProMED-mail 2013-05-05 18:49:21
2つめの保健副大臣からの直接投稿
- ^ "Novel coronavirus - Eastern Mediterranean(21): Saudi Arabia" ProMED-mail 2013-05-09 10:10:04
- ^ コウモリ起源ではあるが、中間宿主の存在が必要である。
- ^ WHO Press Statement Related to the Novel Coronavirus Situation WHO,May 12,2013
- ^ 人工呼吸器と補液が治療のほとんどである。ワクチン開発は相当困難であるという報道がある。
- ^ 本当に中東地域で感染したのかどうかは感染方法が全く不明なので、断言できるわけではない。ただ全員が、中東地域居住か直前に中東地域に滞在していたというかなり強い状況証拠がある。
- ^ きわめて急速な病状の悪化だが、インフルエンザでは適切な投薬がない場合にこのような症例になることがある。またSARSでは午前中は元気だったのに、午後に重体になっている例が多い(以上の理由で「急性」と名前がついている)。
- ^ フクダ事務局長補は、5月中旬に直接サウジで現地調査をしている。
- ^ 関西福祉大学の勝田吉彰教授は指定感染症の指定を急ぐべきであると述べている。
- ^ 新型コロナウィルス世界的流行の恐れ 死亡率高く、治療薬もない危険な病気 J-CASTニュース、2013年5月10日
- ^ 「新型コロナウイルスNCoVはヒトヒト感染?子供の急速経過(脳炎?)」 新型インフルエンザ・ウォッチング日記 2013-05-06 13:12:55
- ^ 5月8日、フランスで1名、ドバイから帰国、滞在地不明。
"Deadly SARS-related coronavirus case found in France for first time"AP,Tronto Star,May 08 2013
- ^ "Novel coronavirus infection - update" 15 May 2013 ,Global Alert and Response(GAR)
- ^ また合計で関係者21人(死者9人)が医療機関関係者の感染者となる。
- ^ ヒト-ヒト感染は、イギリスで父子感染例がある。
- ^ まだ公式発表はないが、パンデミック・フェーズ3に相当する。また複数の国家にまたがる疑惑例があるので、フェーズ4に相当する可能性があるが、どこの国も旅行制限を出していない。新型インフルエンザの時に、パンデミック・フェーズにより対策を区別したことがあったが、フェーズの定義と実際の被害がかけ離れたために、WHOのチャン事務局長は「穏やかなパンデミック(mild pandemic)」という言葉を作り、パニックを鎮めたという由来がある。
- ^ 中東・欧州「新型コロナウイルス」ヒト・ヒト感染で拡大!日本防げるか? J-CAST 2013/5/14 15:19
- ^ 新型コロナウィルス世界的流行の恐れ 死亡率高く、治療薬もない危険な病気 J-CAST 2013/5/10 18:04
- ^ 当初中国当局により大規模な隠蔽工作が長期にわたって行われ、また検出が技術的に困難だったので、実際はこの数字よりも多いと考えられている。
気道感染 |
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上気道 |
風邪
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ライノウイルス - アデノウイルス - パラインフルエンザウイルス - RSウイルス - コロナウイルス - エコーウイルス - エンテロウイルス
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喉頭炎
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急性喉頭蓋炎 - クループ
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咽頭炎
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下気道 |
急性細気管支炎
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肺炎 |
原因
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定型肺炎
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グラム陽性
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肺炎球菌 - 黄色ブドウ球菌
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グラム陰性
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肺炎桿菌 - インフルエンザ菌 - モラクセラ - 大腸菌 - 緑膿菌
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非定型肺炎
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ウイルス性
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RSウイルス - インフルエンザ肺炎 - 重症急性呼吸器症候群
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肺真菌症
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ニューモシスチス肺炎 - クリプトコッカス症 - アスペルギルス症
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レジオネラ菌 - マイコプラズマ - クラミジア肺炎 - オウム病
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抗酸菌症
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結核 - 非結核性抗酸菌症
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機序
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市中肺炎 - 院内肺炎 - 誤嚥性肺炎
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病態
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肺胞性肺炎
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大葉性肺炎 - 気管支肺炎
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化膿性肺炎
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胸壁 |
膿胸
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- 小動物の感染症ノート(9)フェレットのコロナウイルス感染症
- ばんえい競馬場在厩馬に流行した馬コロナウイルス感染を疑う事例 (日本獣医師会学会学術誌) -- (産業動物臨床・家畜衛生関連部門)
- 平成22年杉浦賞論文 プロテアーゼ依存的なコロナウイルス細胞侵入
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- コロナウイルス(Coronavirus)は、一本鎖(+)RNAウイルスのニドウイルス目のコロナウイルス科のウイルスをさし、コロナウイルス亜科、トロウイルス亜科を含む。 エンベロープ表面に存在する突起によって太陽のコロナのような外観を ...
- コロナウイルス(Coronavirus)は、一本鎖(+)RNAウイルスのニドウイルス目のコロナウイルス科のウイルスをさし、コロナウイルス亜科、トロウイルス亜科を含む。 エンベロープ表面に存在する突起によって太陽のコロナのような外観を ...
- はじめに 人間を含む多くのほ乳類や鳥類にコロナウイルスは発見され、大体はその動物種だけに感染する弱いウイルスというのが一般的な性格ですが、最近になって感染力が強く、病気を起こす力も強いSARSコロナウイルスがみつかり ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 同
- 新型コロナウイルス感染症
- 関
- コロナウイルス、SARS-CoV-2
概念
- 2019年末頃にヒトへの感染が確認されている
- SARS-CoV-2による感染症である
感染経路
潜伏期間
- https://www.mhlw.go.jp/content/000609467.pdf
典型的な臨床経過
- 8割の罹患者は軽症であり、発症から一週間程度、感冒症状が持続し自然に軽快する。
- 2割程度の罹患者で、発症から7-10日程度で呼吸状態が悪化し、呼吸困難、咳嗽・喀痰が見られ入院を要する状態となる。
- 2-3%程度の罹患者では、重篤な肺炎のため10日前後の経過で気管挿管など集中治療室での治療を要する状態に陥る。
検査
CT
- https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32118615
- 胸膜下に小さいすりガラス影が散在しており、それら両肺、上葉、中葉/舌区、下葉に分布している。
- crazy-paving pattern (GGO with superimposed interlobular and intralobular septal thickening)が特徴的。
- 気管支肥厚や小葉間の肥厚を伴っている。
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する胸部 CT 検査の指針(Ver.1.0)
- 初期は片側性ないし両側性の胸膜直下のすりガラス影、背側または下葉優位
- 円形の多巣性のすりガラス影
- 進行すると crazy-paving pattern やコンソリデーションなどの割合が増加
- 器質化を反映した索状影の混在
- すりガラス影を伴わない区域性の浸潤影
- 空洞、境界明瞭な結節・腫瘤
- 小葉中心性の粒状影、tree-in-bud appearance
- 胸水(重症例ではみられることがある)
PCRによるウイルスゲノムの同定
- 咽頭粘膜より検体を得て、PCRにて核酸を増幅してSARS-CoV-2を検出する。
- 感度は高いが100%ではないものの、特異度は非常に高い。
- 時間がかかるというデメリットがあり、4-6時間程度かかる。さらに検査装置のある施設に検体を送ってからの検査となるので検査結果が出るのに7日間程度かかることもあるのが現状(2020/5/10時点)
抗原検査によるウイルスの検出
- インフルエンザの迅速検査と同様に粘膜より綿棒等によりぬぐって検体を採取し、適切な溶媒に懸濁してメンブレンの上に滴下し、メンブレン上の抗体と反応させ呈色反応にてウイルス検出を行う。
- 2020/5/9、米クイデル・コーポレーションの抗原検査の緊急使用が認可sれた
- 2020/5/13、国内初の抗原検査キットを薬事承認する方針の様子。みらかホールディングス子会社の富士レビオ(東京・新宿)の製品を承認する様子。(2020/5/10時点)
- デンカも抗原検査キットの開発をいそいでおり、栄研化学も開発をいそいでいるとのこと。
- 抗原検査キットが開発されれば、市中病院や診療所でインフルエンザの検査と同じような感覚で簡易に感染を判定できる。もちろん感度は劣るので感染の否定に使うのは不適切である。
診断
- 以下は私見 2020/5/10
- 症状がある人を対象として、PCRによりウイルスゲノムの検出するのがゴールドスタンダードと思われる。
- 日本の場合、すぐにPCRできるというわけではない。濃厚接触歴があればPCRに回すと思われるが、接触歴がはっきりしない方に対しては、胸部CTをとり胸膜下のスリガラス影を探索し肺炎が疑わしいものについてPCRに回している。
治療
- ウイルス感染症であり、SARS-CoV-2に特異的な治療は現在開発・治験段階である。
- 生活療法:安静、飲水・食事
- 対症療法:解熱薬、鎮咳薬、酸素投与、気管挿管、人工肺(ECMO)
- 特異的治療:確固たるものはないが、抗ウイルス薬、抗原虫薬などが候補になっている
- 点滴製剤。
- 米医薬大手ギリアド・サイエンシズが開発
- 元々はエボラ出血熱の治療のために開発されていた薬剤。
- 錠剤
- 商品名はアビガン。
- 富士フイルムが開発
- 元々は新型インフルエンザの治療のために開発していた薬剤。
- RNA合成酵素阻害薬として作用する。すなわち、三リン酸化体(T-705RTP)がウイルスRNAポリメラーゼを阻害する。
- ヒトの核酸合成酵素とも作用するようであり、動物実験で催奇形性の報告があるため、妊婦、および妊娠が疑われる女性への投与は禁忌であるし、それ以外の男女に投与する場合には七日間は性交を避けること警告されている。
- プロテアーゼ阻害薬である。
- SARS、MERSに対して効果があったと言うことで、用いられている。
- 気管支喘息の吸入用治療薬であるシクレソニド(商品名オルベスコ)。
- 国立感染症研究所で、COVID-19に対して特異的な抗ウイルス作用を持つことが示されている。
- 感染早期から中期、ないし肺炎初期に使用するのが好ましいとされている。
- クロロキンはかつてはマラリアの治療薬として使われていたが、クロロキン耐性マラリアの増加により使われなくなってきている。ヒドロキシクロロキンはクロロキンと類似した構造を有し、日本では全身性エリテマトーデスに対して使用されており、抗炎症作用や免疫調節作用を有するとされている。クロロキンはSARS-CoV-2の複製を抑制することがin vitroの実験で示されている。
予防
- 手洗い、うがい。
- 定期的な空気の入れ換え
- 濃厚接触の予防。
- 清潔な環境の維持:ドアノブ、机の上、キーボード、イスの拭き掃除
- ワクチン接種:現在、開発中である。
パンデミックの経過
- 2019年12月、中華人民共和国の湖北省武漢市で肺炎患者の集団発生が報告された。
- 2020年1月15日、日本で最初の感染者が報告される。
- 2020年1月30日、世界保健機関が公衆衛生上の緊急事態を宣言。
- 2020年2月1日、新型コロナウイルス感染症が指定感染症に指定された。
- 2020年1月~2月に中国武漢から日本国内に侵入したCOVID-19は3月末から4月中旬に封じ込められた(第一波)。感染源の特定は可能であった。
- 2020年4月7日、緊急事態宣言(7都府県)が発令された。緊急事態措置を実施すべき期間は2020年4月7日から5月6日とした。緊急事態措置を実施すべき区域は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県及び福岡県とされた。
- 2020年4月16日、全都道府県を緊急事態措置の対象とする。
- 3月中旬~4月上旬あたりで、欧米から侵入したCOVID-19が国内で拡散している(第二波)。3月後半からはリンクが不明な発症例が増加してきた。
今後の見通し
- 2020/5外出制限が行われているが、解除された後は一過性に患者は増えるであろう。PCRに加えて抗原検査キットも加われば、今まで以上に迅速に疑い患者を同定でき、素早く外出制限・隔離を指導できる。懸念されている第三波は思ったより押さえ込めるのではないかと思われる。(2020/5/10)
- 緊急事態制限解除後は、一過性に患者が増え、そのうち一日数人レベルで患者が発生する日が続き、冬を迎えてインフルエンザと共に流行することが予想される。SAR-CoV-2の抗原を迅速に検出できるキットが医療現場に普及し、インフルエンザと同様に全国民レベルで予防ワクチンの接種が可能となれば、インフルエンザとほぼ同じ対応で対応できるようになる。そこに至れば、医療現場としては安心して仕事ができるのだが。来年に間に合うか。(2020/5/17)
著名人
- 志村けん:3月17日から倦怠感があり。自宅静養中に発熱と呼吸困難が出現。20日に重度の肺炎と診断されて入院。23日新型ウイルスが陽性と判明して以降、人工心肺装置などを装着するも3月29日ご逝去される。
- 岡江久美子:4月3日に発熱し、6日朝に容体が急変して緊急入院。その後の検査で新型ウイルスが陽性と判明。4月23日ご逝去される。
- 岡本行夫:3月下旬ご逝去。橋本政権などで首相補佐官を務めた外交評論家。
勉強会
- 第117回 日本内科学会講演会 緊急シンポジウム 開催日:2020年4月12日(日)
疫学
- 感染例には性差があり、男性患者が60%である。
- 20-50歳代が7割、60歳代以降の高齢者は3割である。
- 60歳以上の患者では集中治療での治療例が増加する。
重症化のリスク因子
- 単変量回帰
|
肺炎
|
人工呼吸器
|
死亡
|
男性
|
1.6
|
4.7
|
|
60歳以上
|
3.2
|
17
|
|
糖尿病
|
2.7
|
6.6
|
8.3
|
高血圧
|
|
3
|
|
脂質異常症
|
3.3
|
5.9
|
|
喘息
|
関係があるとはいえない
|
担癌
|
|
3
|
9.6
|
心血管
|
|
4.5
|
|
典型的な経過
- 感染後の症状があった例を対象とした解析
- 感染後 -(5.1日)→ 発症 -(6.3日)→ 診断 →
- -(16.6日)→ 退院
- -(13.3日)→ 死亡
- 診断時に症状が無くとも、3.5日後に半数が発症し、5/80の例で集中治療を要する。
SARSとCOVID-19の違い
- SARSでは殆どの感染例が重症化していた。
- COVID-19の感染例では、無症状、軽症、重症、死亡に分類される。
- COVID-19の軽症例では、上気道炎を呈する。感染力は高い。
- COVID-19の重症例では、肺炎を呈する。感染力は低い。
- COVID-19の感染者が全員感染力を持っているわけではない。ごく少数の人が二次感染を起こしている、
- SARSの場合、肺で増殖するので、エアロゾルを発生させるような手技を行わなければ、基本的には感染しない。このような手技は普通医療機関で行われる。
- COVID-19の場合、クラスターが可視化できない例がある。多くが無症候、軽症例のためであるからである。
- 三密の環境ではくしゃみや咳がなくても感染の可能性がある。
- クラスターを形成する人はウイルス量の量が多い人であり、咳やくしゃみ、発熱がない人がいる。
中国44672人COVID-19確定患者の重症度ピラミッド
- 2.3%死亡
- 4.7%重篤 呼吸不全、ショック、多臓器不全
- 13% 重症 R≧30, SpO2 < 93, PaO2/FiO2 <300, 浸潤影50%以上
- 80% 軽症 肺炎なし ~ 軽度肺炎
参考
- http://www.kansensho.or.jp/
- https://www.mhlw.go.jp/index.html
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
[★]
- 英
- severe acute respiratory syndrome SARS
- 関
- コロナウイルス。SARSコロナウイルス(SARS-CoV-1)
概念
- SARSコロナウイルス(SARS-CoV-1)の感染に起因する急性呼吸促迫症候群(ARDS)である。
- 2003年一類感染症に指定されたが、2020年現在は二類感染症に分類されている
歴史
- 2002年11月から2003年2月まで中国広東省に多数の感染者が発生し、香港、ハノイ、カナダ、シンガポール台湾で感染が拡大
病原体
感染経路
- 飛沫感染 空気感染ではない
- 病初期にウイルスの排出量は少ない
- ACE2受容体を介して感染が成立する
潜伏期
症状
- 38℃以上の発熱、悪寒、筋肉痛、頭痛、倦怠感などのインフルエンザ様症状で発症する。
- 発症後3-7日後に、乾性咳嗽、呼吸困難などの下気道症状が
咳嗽、呼吸困難、頭痛、下痢、全身倦怠感など
- 感染症専門医テキスト 第1部 解説編
|
香港
|
香港
|
シンガポール
|
トロント
|
Peiris,et al
|
Lee,et al
|
Hsu,et al
|
Booth,et al
|
(n=50)
|
(n=138)
|
(n=20)
|
(n=144)
|
発熱
|
100
|
100
|
100
|
99.3
|
悪寒
|
74
|
73.2
|
15
|
27.8
|
筋肉痛
|
54
|
60.9
|
45
|
49.3
|
咳嗽
|
62
|
57.3
|
75
|
69.4
|
呼吸因難
|
20
|
ー
|
40
|
41.7
|
頭痛
|
20
|
55.8
|
20
|
35.4
|
めまい
|
12
|
42.8
|
ー
|
4.2
|
喀痰
|
ー
|
29
|
ー
|
4.9
|
下痢
|
10
|
19.6
|
25
|
23.6
|
悪心,嘔吐
|
20
|
19.6
|
35
|
19.4
|
咽頭痛
|
20
|
23.2
|
25
|
12.5
|
倦怠感
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50
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ー
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45
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31.2
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検査
- 血液検査:リンパ球・血小板数減少、APTT延長、LDH・CPK・トランスアミナーゼ上昇が見られる
- 胸部CT:ARDS様のスリガラス影
鑑別疾患
- インフルエンザウイルスによる肺炎、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎
予後
- 致死率:10%
- 基礎疾患を有するものや65歳以上では予後が不良である。
- 小児は相対的に予後が良好
[★]
- 英
- cold syndrome, common cold syndrome
- 同
- 上気道症候群 upper airway syndrome、急性上気道炎 acute upper respiratory tract infection
- 関
概念
- 上気道粘膜の急性カタル性炎症(急性カタル性上気道炎)の総称
- 急性鼻炎や咽頭炎を呈し、全身症状は軽微。
- 予後良好、2-5日で軽快し予後は良好。
病因
-
- 環境要因:個体条件(アレルギー、免疫不全、脱水、疲労、飲酒など)、物理化学的刺激(乾燥、寒冷)
疫学
- 多くの人が1年に1回以上罹患。冬期に多い。
- 小児において罹患回数が多い → 成人になると記憶T細胞、記憶B細胞が増加するため、なんとなくウイルスに対して抵抗性が付与される、はず。
病理
- ウイルスの場合、上気道粘膜に付着して、粘膜上皮を冒す。上気道線毛円柱上皮(呼吸上皮)に付着し、上皮細胞は変性・脱落・壊死する。上皮を失った部位から細菌が侵入しやすくなる。
病型
症状
- 鼻かぜ:鼻汁、鼻閉などの鼻症状が主体
- のどかぜ:咽頭痛、嗄声など咽頭症状が主体
- 気管支かぜ:咳、痰などの気管支症状が主体
共通の症状
- まず、鼻炎症状が緩徐に発現し、鼻咽頭不快感・乾燥感、くしゃみ、鼻閉、水様鼻汁を呈する。
病原体に特異的な症状
診断
- 臨床的診断
- 検査はほとんどの場合行わないが、インフルエンザ、溶連菌などを鑑別する場合には迅速診断キットを使う。 → つかえる迅速診断キットがあればのはなし
検査
- 血液検査:ウイルス感染の場合、WBCやCRPは動かないが、細菌感染があれば上昇する。
- ウイルス分離は一般臨床では行われない。 → 高コストだし、培養している内に治癒する。
- 血清抗体価測定ではペア血清で 4 倍以上の上昇で陽性とする。 → 高コストだし、ペア血清を取った時点で治癒する。
- 細菌感染を疑ったら、喀痰検査(培養は時間がかかるので検鏡でしょう?)、血液検査(血算)のちに、培養して薬物感受性検査を行う(けど時間がどのくらいかかるのやら)
治療
- 一般療法(安静、保温・保湿、栄養補給、脱水予防、入浴制限)
- 対症療法:解熱・鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬、蛋白分解酵素製剤、含嗽薬、鎮咳去痰薬、抗ヒスタミン薬
- 細菌感染が疑われるときのみ、抗生物質を使用する。予防的に使うのはいかがな最中
予後
予防
- RSウイルス:適応が限られるが、ワクチンを使うことができる。
[★]
- 英
- acute pharyngitis
- 同
- カタル性咽頭炎 catarrhal pharyngitis
- 関
- 咽頭炎、急性扁桃炎
病因の鑑別
- IRE.475改変
-
治療
- ペニシリン系抗菌薬:ペニシリンアレルギーがある場合には使えない。また病原体が不明であるときに投与すると、疾患が伝染単核球症の場合皮疹を生じさせてしまうので、これを否定できるまで投与しない。(IRE.999)
- マクロライド系抗菌薬:クラリスロマイシンやアジスロマイシン。日本ではマクロライド耐性溶連菌が多いらしい。(IRE.999)
国試
[★]
- 英
- SARS coronavirus、SARS virus、SARS-associated coronavirus、severe acute respiratory syndrome-associated coronaviarus
- 関
- コロナウイルス, SARS
概念
- 2002年11月中国で発生した新しい種のコロナウイルスで、感染することで重篤な肺炎(SARS, severe acute respiratory syndrome)を引きおこし、2003年に世界に広がった。
- 2020年新型コロナウイルスが出現したことから、旧来のSARSコロナウイルスは、SARS-CoV-1と命名されるに至っている。
ウイルス学
感染症
- severe acute respiratory sundrome SARS
感染経路
[★]
-
[★]
- 英
- SARS-associated coronavirus
- 関
- SARSウイルス、SARSコロナウイルス
[★]
- 英
- human coronavirus OC43
[★]
- 英
- virus
- 同
- ウイルス粒子 virus particle、ビリオン virion
- 関
- 微生物学、抗ウイルス薬、国試に出がちなウイルス
感染経路による分類 SMB.374
学名
目(order, -virales), 科(family, -viridae), 亜科(subfamily, -virinae), 属(genus, -virus), 種(species)
増殖過程
- 吸着 absorption
- 侵入 penetration
- 脱殻 uncoating
- ゲノムの複製 replication、遺伝子発現 transcription
- ウイルス粒子の組み立て assembly
- 放出 release
感染の分類
持続時間
ゲノム
- 一本鎖RNA(-)をゲノムとするウイルスはウイルス粒子内にRNA依存性RNA合成酵素を有する。
[★]
- 英
- koro
- ここではかわいい犬の名前ではない。
- 原語はおそらくマレーシアのものであり,陰茎(ないし女性の場合は外陰と乳頭)が身体の中に陥入しそして死んでしまうのではないかという不安が突然激しく生じる症状を指す用語である。この症候群は南アジア,東アジアで報告されており,そこではさまざまな現地語の用語が用いられている。例えばshuk yang,shook yong,suo yang(中国),jininia bemar(アッサム),rok-joo(タイ)などである。また時に西欧でもみられる。コロは東アジアでは,時に局地的な伝染病の形態で生じる。中国の精神疾患分類第2版(Chinese classication of Mental disorders:CCMD-2)にも,この診断は含まれている。(Kaplan p578より)