アミトリプチリン
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アミトリプチリン
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|
IUPAC命名法による物質名 |
3-(10,11-dihydro-5H-dibenzo''a'',''d'' cycloheptene-5-ylidene)-N, N-dimethyl-1-propanamine |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
D(US) |
法的規制 |
Unscheduled (AU) POM (UK) |
投与方法 |
経口 |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
30–60%(初回通過代謝による) |
血漿タンパク結合 |
> 90% |
代謝 |
肝臓
CYP2C19, CYP1A2, CYP2D6 |
半減期 |
10–50時間、平均15時間 |
排泄 |
腎臓 |
識別 |
CAS登録番号 |
50-48-6 |
ATCコード |
N06AA09 |
PubChem |
CID 2160 |
DrugBank |
APRD00227 |
ChemSpider |
2075 |
KEGG |
D07448 |
化学的データ |
化学式 |
C20H23N |
分子量 |
277.403 g/mol |
SMILES
- c3cc2c(/C(c1c(cccc1)CC2)=C\CCN(C)C)cc3
|
アミトリプチリン(Amitriptyline)は、抗うつ薬、睡眠導入剤として用いられる有機化合物の一種。分子式は C20H23N。水、エタノール、酢酸に溶けやすくジエチルエーテルに溶けにくい。苦く麻痺性がある。
目次
- 1 概要
- 2 医療適応
- 3 禁忌
- 4 臨床成績
- 5 薬効薬理
- 6 用量・用法
- 7 脚注
概要[編集]
脳内においてノルエピネフリン及びセロトニンの再取り込みを抑制し、シナプス領域のモノアミンが増量することにより、抗うつ作用を示す。
三環系抗うつ薬の一種で、アミトリプチリン塩酸塩は、日医工よりトリプタノール®、山之内製薬からラントロン®、沢井製薬からノーマルン®という商品名で発売されている。うつ病・うつ状態、不眠症、夜尿症の治療薬に使用される。適応症ではないが線維筋痛症にも用いられることがある。ただし、2012年4月時点では、いずれも先発医薬品の特許期限に到達していないため、ジェネリック医薬品は発売されていない。
抗コリン作用が強く、口渇・便秘・めまい・眠気・排尿障害などの三環系抗うつ薬にありがちな副作用が強く現れやすい。
ただ、効果も高いとされているので、他の抗うつ薬で思わしい効果が出ない場合に処方されやすい。
獣医学領域ではイヌの分離不安症の治療に使用される。
医療適応[編集]
アミトリプチリンは、うつ病・不安障害・注意欠陥多動性障害・偏頭痛の予防・摂食障害・双極性障害・ポスト神経痛・不眠症などに用いられる。[1] アミトリプチリンの断薬は徐々に行う必要があり、それは全体で3ヶ月を超えてはいけない。(It should be gradually withdrawn at the end of the course, which overall should be of no more than three months)[2]
ランダム化比較試験において、有痛性糖尿病性神経障害に対し、アミトリプチリン、デュロキセチンおよびプレガバリンの三者は同等の効果がみられた。[3]
禁忌[編集]
- 緑内障のある者
- 心筋梗塞の回復初期の者
- 尿閉(前立腺疾患等)のある者
- モノアミン酸化酵素阻害剤(セレギリン)を服用中の者
臨床成績[編集]
うつ病 および うつ状態に対する一般臨床試験では、有効率60. 9%(357/586例)を示した。 夜尿症に対する一般臨床試験では、有効率75. 0%(379/505例)を示した [4]。
薬効薬理[編集]
三環系抗うつ薬(
TCA)であるアミトリプチリンはノルアドレナリン輸送体やセロトニン輸送体を阻害することで作用を発揮すると考えられている。
抗うつ作用に関する詳細な作用機序は明らかにされていないが、脳内におけるノルアドレナリンおよびセロトニン再取り込みを抑制する結果、シナプス領域にこれらモノアミン量が増量することにより、抗うつ作用を示すと考えられている。
アミトリプチリンは、ラット脳においてノルアドレナリンの再取り込み、およびマウス脳切片でのセロトニンの再取り込みを抑制することが確認されている。
また、レセルピン及びテトラベナジンに対する拮抗作用があり、アミトリプチリンはマウスにおいて、レセルピンによる体温降下、およびテトラベナジンによる鎮静作用を抑制する。
加えて、麻酔イヌにおけるノルアドレナリンの昇圧反応を、アミトリプチリンは増強する[4]。
用量・用法[編集]
うつ病・うつ状態の場合、通常、アミトリプチリン塩酸塩として成人に1日30~75mgを初期用量として、最大1日150mgまで漸増し、分割経口投与する。まれに300mgまで増量することもある。
不眠症、夜尿症の場合、アミトリプチリン塩酸塩として1日10~30mgを就寝前に経口投与する。なお年齢や症状により適宜減量する。
- 2009年9月16日、社会保険診療報酬支払基金より「慢性疼痛におけるうつ病・うつ状態」に対して処方した場合、審査上認める通知が行われた。[5]
脚注[編集]
- ^ “Amitriptyline Hydrochloride”. The American Society of Health-System Pharmacists. 2011年4月3日閲覧。
- ^ 英国国民医薬品集 en:British National Formulary 45 (March 2003).
- ^ Diabetes Care 2012 Dec; 35:2451.
- ^ a b 「トリプタノール錠 添付文書」 日医工 株式会社(2011年2月9日閲覧)
- ^ 日本医事新報 No.4457, 26
抗うつ薬 (N06A) |
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再取り込み阻害薬 |
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選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIs)
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フルオキセチン フルボキサミン パロキセチン セルトラリン
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セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 (SNRIs)
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デュロキセチン ミルナシプラン ヴェンラファキシン
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ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 (NRIs)
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アトモキセチン
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ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬 (NDRIs)
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ブプロピオン
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受容体拮抗薬 / 再取り込み阻害薬 |
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セロトニン2受容体拮抗・再取り込み阻害薬 (SARIs)
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トラゾドン
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ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬 (NaSSAs)
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ミアンセリン ミルタザピン セチプチリン
|
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ノルアドレナリン・ドパミン脱抑制薬 (NDDIs)
|
アゴメラチン フリバンセリン
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三環系抗うつ薬 と 四環系抗うつ薬 (TCAs/TeCAs) |
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三環系: アミトリプチリン クロミプラミン イミプラミン ノルトリプチリン アモキサピン 四環系: マプロチリン ミアンセリン ミルタザピン セチプチリン
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アザピロン と 5-HT1A阻害薬 |
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アリピプラゾール タンドスピロン
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サプリメント (ビタミン, ミネラル, アミノ酸など) |
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アスコルビン酸 (Vitamin C) 魚油 葉酸 (Vitamin B9) L-5-HTP (Oxitriptan) レボドパ (Levodopa) L-Methionine フェニルアラニン トリプトファン チロシン マグネシウム メラトニン ナイアシン/Niacinamide (Vitamin B3) ω-3脂肪酸 ピリドキシン (Vitamin B6) S-アデノシルメチオニン 亜鉛
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Related Links
- ノーマルン(うつ病・うつ状態の治療薬 )について主な作用 副作用 用い方と注意点を説明します ... 副作用 血圧の低下または上昇、動悸、筋肉のこわばり、手のふるえ、口やのどの渇き、排尿障害などが起こることがあります。
- 沢井製薬株式会社のノーマルン錠10mg(中枢神経用薬)、一般名アミトリプチリン塩酸塩(Amitriptyline hydrochloride) の効果と副作用、写真、保管方法等を掲載。 ... 脳内の神経伝達物質(ノルアドレナリン、セロトニン)の再取り込み ...
Related Pictures
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ノーマルン錠10mg
組成
- ノーマルン錠10mg:1錠中に日局アミトリプチリン塩酸塩10mgを含有する。
添加物として、カルナウバロウ、カルメロースCa、結晶セルロース、酸化チタン、ステアリン酸Mg、乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、マクロゴール6000、青色1号アルミニウムレーキ、黄色4号(タートラジン)アルミニウムレーキを含有する。
禁忌
- 緑内障のある患者〔抗コリン作用を有するため、緑内障が悪化するおそれがある。〕
- 三環系抗うつ剤に対し過敏症の患者
- 心筋梗塞の回復初期の患者〔循環器系に影響を及ぼすことがあり、心筋梗塞が悪化するおそれがある。〕
- 尿閉(前立腺疾患等)のある患者〔抗コリン作用を有するため、症状が悪化するおそれがある。〕
- モノアミン酸化酵素阻害剤(セレギリン)を投与中あるいは投与中止後2週間以内の患者(「相互作用」の項参照)
効能または効果
- アミトリプチリン塩酸塩として、通常、成人1日30〜75mgを初期用量とし、1日150mgまで漸増し、分割経口投与する。まれに300mgまで増量することもある。
- 夜尿症
- 1日10〜30mgを就寝前に経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜減量する。
- 抗うつ剤の投与により、24歳以下の患者で、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加するとの報告があるため、本剤の投与にあたっては、リスクとベネフィットを考慮すること。
慎重投与
- 排尿困難のある患者〔抗コリン作用を有するため、症状が悪化するおそれがある。〕
- 眼内圧亢進のある患者〔抗コリン作用を有するため、症状が悪化するおそれがある。〕
- 心不全・心筋梗塞・狭心症・不整脈(発作性頻拍・刺激伝導障害等)等の心疾患のある患者〔循環器系に影響を及ぼすことがあり、これらの症状が悪化するおそれがある。〕
- 甲状腺機能亢進症の患者〔循環器系に影響を及ぼすことがある。〕
- てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者〔痙攣を起こすことがある。〕
- 躁うつ病患者〔躁転、自殺企図があらわれることがある。〕
- 脳の器質障害又は統合失調症の素因のある患者〔精神症状を増悪させることがある。〕
- 衝動性が高い併存障害を有する患者〔精神症状を増悪させることがある。〕
- 自殺念慮又は自殺企図の既往のある患者、自殺念慮のある患者〔自殺念慮、自殺企図があらわれることがある。〕
- 小児(「小児等への投与」の項参照)
- 高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
重大な副作用
- 次のような副作用があらわれることがあるので、症状があらわれた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
- 悪性症候群(Syndrome malin):無動緘黙、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合は、投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。本症発症時には、白血球の増加や血清CK(CPK)の上昇がみられることが多く、またミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。なお、高熱が持続し、意識障害、呼吸困難、循環虚脱、脱水症状、急性腎不全へと移行し、死亡した例が報告されている。
- セロトニン症候群:不安、焦燥、せん妄、興奮、発熱、発汗、頻脈、振戦、ミオクロヌス、反射亢進、下痢等を主症状とするセロトニン症候群があらわれることがあるので、これらの症状があらわれた場合には投与を中止し、水分の補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。
- 心筋梗塞:心筋梗塞があらわれることがあるので、症状があらわれた場合には、直ちに投与を中止し適切な処置を行うこと。
- 幻覚、せん妄、精神錯乱、痙攣:このような症状があらわれた場合には減量又は休薬等の適切な処置を行うこと。
- 顔・舌部の浮腫:顔・舌部の浮腫があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
- 無顆粒球症、骨髄抑制:重篤な血液障害があらわれることがあるので、定期的に検査を実施するなど観察を十分に行うこと。
- 麻痺性イレウス:腸管麻痺(食欲不振、悪心・嘔吐、著しい便秘、腹部の膨満あるいは弛緩及び腸内容物のうっ滞等の症状)を来し、麻痺性イレウスに移行することがあるので、腸管麻痺があらわれた場合には投与を中止すること。なお、この悪心・嘔吐は、本剤の制吐作用により不顕性化することもあるので注意すること。
- 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH):低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム排泄量の増加、高張尿、痙攣、意識障害等を伴う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)があらわれることがあるので、このような場合には投与を中止し、水分摂取の制限等適切な処置を行うこと。
薬効薬理
- 第三級アミン三環系抗うつ薬であり、脳内におけるノルアドレナリン及びセロトニンの神経終末への再取込みを抑制する。ドパミンの再取込み抑制作用は弱い。モノアミン取込み阻害作用と抗うつ作用の関連については不明の点が多いが、シナプス領域におけるモノアミン濃度の上昇が抗うつ作用に関与すると考えられている。1)
有効成分に関する理化学的知見
一般名
- アミトリプチリン塩酸塩(Amitriptyline Hydrochloride)
化学名
- 3‐(10,11‐Dihydro‐5H‐dibenzo[a,d]cyclohepten‐5‐ylidene)‐N,N‐dimethylpropylamine monohydrochloride
分子式
分子量
融点
性状
- アミトリプチリン塩酸塩は無色の結晶又は白色〜微黄色の結晶性の粉末で、味は苦く、麻ひ性である。水、エタノール(95)又は酢酸(100)に溶けやすく、無水酢酸にやや溶けやすく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。1.0gを水20mLに溶かした液のpHは4.0〜5.0である。
★リンクテーブル★
[★]
- 関
- 抗精神病薬
商品
[★]
- 英
- amitriptyline
- 化
- 塩酸アミトリプチリン amitriptyline hydrochloride
- 商
- アミプリン、トリプタノール、ラントロン、ノーマルン
- 関
- 抗うつ薬
- 精神神経用剤
[★]
- 英
- noma
- 関
- 壊疽性口内炎