- 英
- high-calorie infusion, total parenteral nutrition
- 関
- 中心静脈栄養法
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/09/08 19:04:36」(JST)
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高カロリー輸液(こう-ゆえき) TPN(Total Parenteral Nutrition)は輸液の一種である。
目次
- 1 概要
- 2 輸液内容
- 3 副作用
- 4 関連項目
- 5 外部リンク
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概要
1968年、米国の外科医スタンリー・ダドリックによって開発され、経口栄養のできない重症患者の長期管理に革命的な影響を与えた。なお、当時ダドリックは一介の外科レジデントに過ぎなかった。
通常の末梢血管への輸液では、ことに高濃度ブドウ糖の使用によって血管炎を引き起こすリスクがある為、生命維持に必要なだけのエネルギーをそれだけで充分供給することが困難であった。つまり、大手術などで、2〜3週間以上のスパンで患者の経口摂取ができない場合、その疾患自体でなく、異化亢進による栄養失調によって患者が衰弱していくことになる。
この問題を解決する為にダドリックは、通常は点滴を行わないような太い静脈(いわゆる中心静脈・・・通常は鎖骨下静脈、内頸静脈、大腿静脈などの身体表層の静脈が用いられる)をあえて輸液ラインとして確保することを試みた。これにより、血液による希釈が起き、血管炎を起こさずに高濃度のブドウ糖を患者へ投与することが可能になった。この新技術により、時には1年以上にもわたり、患者を経口の栄養摂取なしで生存させることができる。TPNは周術期や慢性疾患の患者にとっては大変な福音となった。ただし、重症患者の管理に新たな倫理的問題をもたらした面も否定できない。
TPH製剤は、歴史的経緯からもわかるように、高濃度のブドウ糖を含むことが多く、中心静脈経路(central venous line;CV line)から投与が原則となる。IVH (Intravenous Hyperalimentation)とも呼び、在宅で高カロリー輸液を受ける時は在宅中心静脈栄養(HPN: Home Parenteral Nutrition)とも呼称する。消耗性疾患や消化器疾患などで長期間、経口摂取が出来ない時に使用する。消化管が使用可能であれば、胃瘻を用いるなど、経腸栄養(EN : Enteral Nutrition)に切り替えて行く。
輸液内容
栄養の3大要素である、糖質・アミノ酸をバランス良く含んだ上でビタミンや微量元素を加えた物である。さらに脂質についても配合した製剤も上市されている。しかし、脂肪製剤は別途に末梢から投与する場合が多い。栄養が多い分高浸透圧で組織障害性があり末梢血管では血管炎を起こすので中心静脈から投与する。 十分な栄養を投与する為に高濃度のブドウ糖(100g~250g)とアミノ酸(20g~40g)が800ml~1000mlに含まれる様に調整する。糖とアミノ酸はメイラード反応を起こし変成するので、二室式と言って一つのバックの中央を圧着してあり押し破って混合する製剤が主流である。さらにビタミンを入れた小部屋を持つ三室式の製剤もある。メイラード反応を防ぐ工夫を施した一室式の製剤もある。以前は別々の瓶に入った糖とアミノ酸を一つのバックに入れていた。その場合は特に慎重に調合しないと病原体が輸液に混じて敗血症を起こし易い。施設によっては、無菌ドラフトで薬剤師が調合する場合もある。
副作用
- ビタミンが配合されていない製剤を用いていた頃はしばしばビタミンB類の不足からウェルニッケ=コルサコフ症候群(ビタミンB1欠乏症の一つ)や代謝性アシドーシス、脚気心を来した例が報告され訴訟になった。その背景には保険診療でビタミン剤の査定が多く行われていた時期があった。訴訟により査定は緩くなりビタミン剤があらかじめ配合された製剤も上市される様になった。
- 長期間TPNを使うと必須脂肪酸や、鉄・亜鉛・セレンやマンガンといった微量元素も不足するので、脂肪製剤やミネラルの補充も行う。ミネラルについては過量投与で脳に沈着する副作用も報告されている。
- 高濃度のブドウ糖液が投与されるので、糖尿病患者以外にも、事前に耐糖能障害の有無が明確でない症例、感染や侵襲がきっかけとなる外科的糖尿病の症例で、高血糖を来し、糖尿病性昏睡:高浸透圧性昏睡や糖尿病性ケトアシドーシスを起こす場合も報告されている。低濃度の製剤から血糖をみながら順に移行し、躊躇わずにインスリンを使用して血糖をコントロールするべきである。高血糖を放置すると易感染性となり、また脱水を来すなど、全身状態の悪化を招く。
- 腎障害や肝不全を来している場合は別の配慮が必要である。腎障害では高尿素血症が起きない様にアミノ酸製剤を少なくする他、元々酸塩基平衡が保たれていない例が多くアミノ酸は酸なのでアシドーシスが助長される場合もある。肝性脳症を来し易い時は分枝鎖アミノ酸(BCAA)を用い芳香族アミノ酸(AAA)を減らしてFischer比を保つ。
- 場合によってはアナフィラキシーショックを起こす事例もある事が判明した為、アレルギー体質の患者や病気により極端に体力が落ちている場合等には意識障害等を引き起こす事がある事を留意する必要と説明が必要である。また、このような症状が出た場合は早急に投与を中止してそちらの治療をもしなければならない。
関連項目
外部リンク
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Japanese Journal
- 高カロリー輸液の基本を教えてください (特集 輸液にトライ! : 処方のポイントと注意点がわかるQ&A) -- (輸液の基本を身につけるためのQ&A)
- P-0446 高カロリー輸液用遮光袋の細菌汚染状況(一般演題 ポスター発表,感染制御(その他),Enjoy Pharmacists' Lifestyles)
- 細見 健悟,原 裕美子,杉田 裕貴,小牧 佐知子,増本 憲生,高子 優子,大槻 裕明,高尾 宜久,沖元 京子,名徳 倫明,廣谷 芳彦
- 日本医療薬学会年会講演要旨集 21, 256, 2011-09-09
- NAID 110008909912
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- 高カロリー輸液の種類 高カロリー輸液用基本液の種類 ベースとなる輸液は、高カロリー輸液用基本液と呼ばれ、 以下の成分別によって、様々な輸液が使用されています。 糖質+電解質 をベースとした ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 67歳の男性。突然の嚥下困難のため救急車で搬入された。
- 現病歴:本日、昼食中に突然、後頭部痛、めまい及び悪心を感じて嘔吐した。しばらく横になり様子をみていたが、帰宅した妻から声を掛けられ返答したところ、声がかすれて話しにくいことに気が付いた。水を飲もうとしたがむせて飲めなかった。心配した妻が救急車を要請した。
- 既往歴:40歳から高血圧症。生活歴:妻と人暮らし。喫煙は10本/日を45年間。飲酒は機会飲酒。現症:意識は清明。身長 165cm、体重 60kg。体温 36.6℃。心拍数 72/分整。血圧 160/90mmHg。呼吸数 12/分。SpO2 97%(マスク 4L/分酸素投与下)。甲状腺腫と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察では、眼球運動に制限はなく複視はないが、構音障害と嚥下障害を認める。左上下肢の温痛覚が低下している。腱反射に異常を認めず、Babinski徴候は陰性である。
- 検査所見:血液所見:赤血球 452万、Hb 13.1g/dL、Ht 40%、白血球 5,300、血小板 32万。血液生化学所見:総蛋白 8.1g/dL、アルブミン 4.2g/dL、総ビリルビン 1.0mg/dL、AST 15U/L、ALT 18U/L、LD 280U/L(基準 176~353)、ALP 213U/L(基準 115~359)、γ-GTP 18U/L(基準 8~50)、CK 50U/L(基準 30~140)、尿素窒素 20mg/dL、クレアチニン 0.7mg/dL、尿酸 4.2mg/dL、血糖 82mg/dL、トリグリセリド 185mg/dL、HDLコレステロール 40mg/dL、LDLコレステロール 200mg/dL、Na 145mEq/L、K 3.9mEq/L、Cl 104mEq/L。CRP 0.2mg/dL。頭部MRI拡散強調像(別冊No. 14)を別に示す。
- 入院後に行った嚥下造影検査で、造影剤の気道内流入が認められた。この時点の対応として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113F081]←[国試_113]→[113F083]
[★]
- 次の文を読み、10~12の問いに答えよ。
- 68歳の男性。嚥下障害を主訴に来院した。
- 現病歴 : 6か月前から胸骨後部の不快感を自覚していた。1か月前、食事中に肉片がつかえたがお茶を飲んで通過した。その後、固形物が頻回につかえるようになった。最近1か月で5kgの体重減少がみられた。
- 既往歴 : 特記すべきことはない。
- 生活歴 : 飲酒:日本酒2合/日、40年間。喫煙:30本/日、40年間。
- 現症 : 身長162cm、体重47kg。左側の頚部と鎖骨上窩とにリンパ節を触知する。
- 検査所見 : 血液所見:赤血球280万、Hb9.5g/dl、白血球7,900。血清生化学所見:総蛋白5.8g/dl、アルブミン3.2g/dl、AST18単位(基準40以下)、ALT16単位(基準35以下)。入院後の食道造影写真(別冊No.4)を別に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [097C011]←[国試_097]→[097C013]
[★]
- 83歳の男性。意識障害のため救急車で搬入された。夏の日中に長時間の草刈り作業中、ふらつきを訴えていた。その後、意識がもうろうとなっているところを周囲の作業者が気付き、救急車を要請した。2型糖尿病と高血圧症で内服治療中である。意識レベル JCSⅢ-100。体温 38.3℃。心拍数 120/分、整。血圧 92/50mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 98%(マスク 5L/分酸素投与下)。口腔内は乾燥しており、全身に発汗を認める。血液所見:Hb 15.2g/dL、Ht 53%。血液生化学所見:Na 148mEq/L、K 4.6mEq/L、Cl 104mEq/L、血糖 98mg/dL、尿素窒素 30mg/dL、クレアチニン 1.2mg/dL。
- 初期対応に用いる輸液として適切なのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [113F063]←[国試_113]→[113F065]
[★]
- 20歳の男性。火災で受傷したため搬入された。 2時間前に自宅で就寝中に火炎となり、廊下で倒れているところを発見された。意識レベルはJCS I-2。体温37.0℃。呼吸数34/分。脈拍112/分、整。血圧90/62mmHg。嗄声があり、喘鳴を聴取する。顔面、胸部、右上肢に水疱形成を伴う熱傷創がみられる。心音に異常を認めない。動脈血ガス分析(自発呼吸、マスクで酸素投与6L/分) :pH 7.36、PaC02 45Torr、PaO2 160Torr、HCO3- 25.0mEq/l、血中一酸化炭素ヘモグロビン濃度 15%(基準1以下)。
- まず行うべき対応はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105C019]←[国試_105]→[105C021]
[★]
- 82歳の男性。意識障害のため搬入された。家族からの情報では、ここ数日は頻繁に下痢をしていたという。意識レベルはJCS III-100。体温38.2℃。心拍数110/分、整。収縮期血圧78mmHg(触診)。呼吸数28/分。 SpO2 97%(room air)。頚静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。全身に発汗を認める。末梢静脈路を確保した。
- 現時点で使用する輸液製剤として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106F017]←[国試_106]→[106F019]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [098E040]←[国試_098]→[098E042]
[★]
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
[★]
- 英
- fatty liver、steatosis、hepatic steatosis、liver steatosis
- 関
- 脂肪過多症、脂肪症、アルコール性肝障害
概念
病態生理
- see BPT.654 uptodate.2
原因
- YN.B-36改変 uptodate.1
検査
- AST・ALT:正常かやや上昇(ALT優位) (YN.B-36) ⇔ アルコール性脂肪肝ではAST優位
- 思うに、小葉辺縁(門脈域)にはALTが多いが、脂肪滴を蓄えた肝細胞はこの領域に多いのでは?だとすれば、lipid peroxidation productによる肝障害によりALTがleakしてALT優位となる説明がつくのだが。どうなの?
CT
- 脂肪肝:単純CTで肝実質のCT値が脾臓よりも低くなる。正常な肝臓は脈管より高CT値を示すが、脂肪肝の場合はより低CT値を示すようになる
- 肝臓CT値低下の鑑別診断:肝炎に伴う浮腫、肝臓の線維化、腫瘍浸潤(悪性リンパ腫、びまん性肝細胞癌)、アミロイドーシス
==参考==liver disease - wiki en
- http://en.wikipedia.org/wiki/Non-alcoholic_fatty_liver_disease
uptodate
- 1. [charged] 成人における甲状腺機能亢進症の臨床症状の概要 - uptodate [1]
- 2. [charged] 非アルコール性脂肪性肝疾患の病因 - uptodate [2]
[★]
- 英
- hypophosphatemia、hypophosphataemia
- 同
- (国試)低リン血症、低P血症
- 関
- リン。低リン血症性。低リン血症性。hypophosphatemic、hypophosphataemic
[show details]
概念
原因
uptodate
- 改変
生体内での再分布
腸管からの吸収低下
- 摂取量低下
- リン酸の吸収を阻害する薬剤の摂取(制酸剤(アルミニウム制酸剤)、リン酸結合物質(炭酸カルシウム)、ナイアシンなど)
- 嘔吐
- 脂肪便、下痢
- 吸収不良症候群
- ビタミンD欠乏、ビタミンD抵抗性
尿からの排泄増加
腎代替療法による除去
臨床関連
- リンは骨や歯を形成するのに不可欠な物質であり、血清リン酸の低下が持続すると骨石灰化障害を来す
参考
- Hypophosphatemia - Sandeep Sharma; Muhammad F. Hashmi; Danny Castro.
- https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK493172/
[★]
- 英
- total parenteral nutrition TPN
- 同
- 全非経腸栄養法、高カロリー輸液 hyperalimentation、intravenous hyperalimentation IVH → なんか使わない方が良いんだそうだ・・・?
- 関
- 経静脈栄養法
[★]
完全静脈栄養、完全非経口栄養法、中心静脈栄養法、高カロリー輸液
- 関
- parenteral nutrition、total parenteral nutrition
[★]
- 英
- total parenteral nutrition、TPN
- 関
- 中心静脈栄養法、完全静脈栄養、高カロリー輸液、非経口完全栄養
[★]
- 英
- multivitamin supplement for IVH
- 商
- M.V.I.-3、M.V.I.、ネオM.V.I.-9注、ネオラミン・マルチV、オーツカMV注、ソービタ、マルタミン
[★]
- 商
- ミネラミック、ミネラリン、ミネリック-4、ミネリック-5
- 関
- 微量金属補充液
[★]
- 英
- intravenous hyperalimentation
- 関
- 中心静脈栄養、高カロリー静脈栄養輸液
[★]
- 英
- infusion, transfusion
- 同
- 輸注
種類
- NSU. 731
-
- 維持輸液剤:一日の水・電解質バランスを保つべく作成される
- 輸液期間が長くなる場合に用いられる。
- Na+, Cl-は少なく、K+、HPO4-ブドウ糖を含む
乳幼児
- 1. 脱水になりやすい。
- 2. 腎機能が未熟。(K排泄能が低い)
- 3. 低血糖になりやすい
輸液量
- 新生児:80-120 ml/kg/日 ← 成人よりも多い
- 乳児下痢症に対する初期輸液:Na 90mEq/l, Cl 70mEql/L, ブドウ糖 2.6%, 乳酸 20mEq/L
投与量の計算
- 体重には身長とBMI22としたときの標準体重を用いる。
- 尿量 + 不感蒸泄(700ml) + 代謝水(5ml x 体重)
乳幼児
- 小児の薬の選び方・使い方
- 10kg以下 100ml/hr
- 10-20kg 200ml/hr
- 20-30kg 300ml/hr
- 30-40kg 400ml/hr
- 成人用のクレンメ:20滴で1ml (1滴 50ul)
- 小児用のクレンメ:60滴で1ml
- x (ml/hr) = 20x (滴/時) = x/3 (滴/分) = x/180 (滴/秒)
- ∴ x (ml/hr) で輸液するためには 180/x (秒/滴) となるようにクレンメの滴下速度を調節する。
[★]
- 英
- calorie
- 同
- 熱量
- 関
- カロリー価