[中枢神経症状]意識混濁、昏睡 [ニコチン受容体を介した作用]全身痙攣、呼吸筋麻痺
症状 | 血中ChE (正常比) |
治療 | |
無症状 | なし | ≧50% | 6hr経過観察 |
軽度 | (歩行可能) 全身倦怠感、頭痛、眩暈、四肢痺れ、悪心、嘔吐、発汗、唾液分泌亢進、wheezing、腹痛、下痢 |
20-50% | アトロピン 1mg IV PAM 1g IV |
中等度 | (歩行不能) 軽度の症状に加え、 全身筋力低下、構語障害、筋攣縮、縮瞳 |
10-20% | アトロピン 1-2mg IV, 15-30分ごと。atropinazationまで PAM 1g IV |
重症 | 意識障害、四肢麻痺、筋攣縮、針先瞳孔、呼吸促迫、チアノーゼ | ≦10% | アトロピン 5mg IV, 15-30分ごと。atropinazationまで PAM 1-2g IV。奏効しない場合 0.5g/hr 点滴静注 |
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/06/24 13:26:52」(JST)
有機リン化合物(ゆうきリンかごうぶつ、 organophosphorus compound)は炭素−リン結合を含む有機化合物の総称である。リンは窒素と同じく第15族元素であり、それらを含む化合物は共通の性質を持つことが多い[1][2]。
リンは−3、−1、+1、+3、+5価の原子価をとりうる。一般に符号にかかわらず+3価と−3価の酸化状態を (III) と表すことが多い。IUPAC命名法には配位数 δ と結合数 λ を用いたものがある。この命名法に従えば、ホスフィンは δ3λ3 の化合物となる。
神経系・呼吸器系に対する毒性がある化合物が多いことから第二次世界大戦ごろから殺虫剤として農薬に使われている。「ホス(phos)」が付く農薬はたいてい有機リン剤である(ただしホスゲンは無関係)。また人への神経毒性が高い化合物も多いため、神経ガスとしてサリンなどが開発された。人の中毒症状としては縮瞳が特徴的である。公衆衛生学、労働安全衛生、労働災害では、毒性のある化合物について特に疾病原因や汚染物質として扱う。
また、化学兵器原料となるものも多く、これらの製造・使用・取引にあたり各種の法規制を受ける。
ホスフィン類 PR3の親化合物はホスフィン PH3 である。ホスフィン類の原子価は−3価であり(δ3λ3)、単純なアミンのリン類縁体である。トリフェニルホスフィンは有機化学でよく用いられる。
アミンと同様、ホスフィンは三角錐型の構造をとるが、結合角はアミンより大きい。トリメチルホスフィンの C−P−C 結合角は 98.6° であるが、メチル基を tert-ブチル基で置き換えると 109.7° まで増加する。
反転障壁はアミンよりもずっと大きい。そのため異なる3つの置換基を持つホスフィンは光学活性を持つ。一方アミンは容易に立体反転を起こすためラセミ体しか存在しない。
塩基性はアミンより低く、たとえばホスホニウムイオン PH4+ の pKa は −14 であるのに対してアンモニウムイオン NH4+ では 9.21、トリメチルホスホニウムの pKa 8.65 に対しトリメチルアンモニウムは 9.76 であり、トリフェニルホスホニウムの pKa 11.2) に対しトリフェニルアンモニウムは pKa 19 である。
アミンと同じく孤立電子対を持つが性質は異なる。ピリジンなどの孤立電子対は非局在化によって C=C 結合を含む共役系を形成するが、同様の構造を持つホスフィン (ホスホリン) ではそのようなことが起こらない。同じ理由でピロールのリン類縁体であるホスホールは芳香族性を持たない。
反応性は求核性があるという点でアミンに類似し、一般式 R4P+ X− で表されるホスホニウム塩をつくる。この性質はアルコールをハロゲン化アルキルに変換するアッペル反応などで利用される。
アミンと異なり、ホスフィンは容易に酸化されてホスフィンオキシドになる。
以下にホスフィンの合成法を示す。
ホスフィンを用いた反応には以下のようなものがある。。
単座ホスフィン配位子の例(PPh3)
二座ホスフィン配位子の例(dppm)
三座ホスフィン配位子の例(triphos)
ホスフィンオキシド (δ3λ3) は R3P=O で表され、酸化数は −1 である。水素結合により多くは親水性である。P=O 結合はかなり分極しており、例えばトリフェニルホスフィンオキシドの双極子モーメントは 4.51 D である。
リンと酸素の結合は古くから議論の的だった。5価のリンはオクテット則に反しており、昔はアミンオキシドと同じく R3P→O のように配位結合として記述された。酸素の電子対からリンの(窒素には無い)空のd軌道への逆供与による完全な二重結合という説もあったが、P=O 結合は C=C 結合と違って付加反応をしないことを説明できなかった。いまでは計算化学の発達によりイオン性の単結合 P+−O− にかなり近いことがわかっている[6]。結合距離がふつうの単結合より短く強いのはイオン間のクーロン力による。硫酸、リン酸および過塩素酸の結合も強く分極した単結合である。
ホスホン酸エステル(ホスホナート)は一般式 RP(=O)(OR)2 で表される。ホーナー・ワズワース・エモンズ反応やセイファース・ギルバート増炭反応において、カルボニル化合物と反応させる安定化カルボアニオンとして用いられる。多くの工業用途があり、ビスホスホナートは医薬品として用いられる。
亜リン酸エステル(ホスファイト)は一般式 P(OR)3 で示され、リンの酸化数は +3 である。パーコー反応 (Perkow reaction) やアルブーゾフ反応に利用される。リン酸エステル(ホスフェート)は一般式 P(=O)(OR)3 で示され、リンの酸化数は +5 である。難燃剤や可塑剤として工業的に重要である。P−C 結合を持たないので、これらは厳密には有機リン化合物には含まれない。
ホスホランは −5 の酸化数を持ち (δ5λ5)、親化合物 PH5 はホスホランまたは λ5-ホスファンと呼ばれる。リンイリドは不飽和結合を持つホスホランであり、ウィッティヒ反応などで使われる。
リン−炭素二重結合を持つ化合物 (R2C=PR) はホスファアルケン (phosphaalekene)、三重結合を持つもの (RC≡P) はホスファアルキン (phosphaalkyne) と呼ばれる。ホスホリン(ホスファベンゼン)はベンゼン中の炭素1個がリンで置き換えられた構造を持つ化合物である。ホスファアルケンの反応性は多くの場合イミンとは異なり、アルケンと類似する。これはホスファアルケンの最高被占軌道 (HOMO) がリン上の孤立電子対ではなく二重結合にあるためである(イミンでは窒素原子の孤立電子対が HOMO である)。ゆえに、ホスファアルケンはアルケンと同様、ウィッティヒ反応、コープ転位、ディールス・アルダー反応などを起こす。
ベッカー (Becker) らはブルック転位と類似したケト-エノール互変異性を利用し、1974年に最初にホスファアルケンを合成した。
同年、ハロルド・クロトーは (CH3)2PH の熱分解により CH2=PCH3 が生成することを分光学的に示した。
ホスファアルケンの一般的な合成法は適切な前駆体の 1,2-脱離反応を用いるものであり、反応は熱またはジアザビシクロウンデセン (DBU)、DABCO、トリエチルアミンなどの塩基で補助される。
ベッカーが用いた方法は、リン原子を含有するポリフェニレンビニレンの合成にも用いられている[1]。
プラリドキシムヨウ化メチル(pralidoxime iodide)は、有機リン剤中毒の特異的な解毒剤である。商品名はパム(PAM)、またオキシム剤と呼ばれることもある。化学的にはピリジニウム環にオキシム部位が置換した構造を持つ。
サリンやVXガスなどの解毒剤として知られているが、本来想定していた用途は、有機リン系の農薬中毒に対してであった。しかし、サリンなどの神経ガスも有機リン剤の一種であるため、効果を発揮する。1995年の地下鉄サリン事件では、全国各地のPAMを新幹線で集め、600人以上の被害者の命を救ったことで、一躍有名となった。
また、アトロピンも有機リン剤中毒等の治療にも用いられ、地下鉄サリン事件での治療にも用いられた。 米軍では神経ガスに暴露してしまった時にアトロピンを打つ事が規定されており、「各BC兵器のタイプ別の症状をイラスト化した」簡易マニュアルが配布されている。
表・話・編・歴
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