- 英
- Philadelphia chromosome, Ph
- 同
- Ph染色体, Ph chromosome
- 関
概念
- 転座によりサイズの小さくなった22番染色体
- t(9;22)(q34;q11)
- 融合遺伝子:BCR-ABL → 強力なチロシンキナーゼ活性 → 細胞の腫瘍性増殖
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/08/16 22:05:44」(JST)
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フィラデルフィア染色体(フィラデルフィアせんしょくたい; Ph染色体)とは、慢性骨髄性白血病および一部の急性リンパ性白血病に見られる染色体の異常。22番染色体と9番染色体間での転座によって、c-ablとbcrという遺伝子が融合し、異常なタンパク質を生じる。造血幹細胞を無制限に増殖させるようになる。以前は急性リンパ性白血病や急性期転化した慢性骨髄性白血病の強力な予後不良因子であったが、現在は一部の点突然変異を起こしたものだけが予後不良とされている。
目次
- 1 分子標的薬
- 2 薬剤耐性
- 3 セカンドオピニオン
- 4 歴史
- 5 外部リンク
- 6 参照
分子標的薬
この染色体により作られる酵素(abl-bcrチロシンキナーゼ)の働きを特異的に抑える分子標的薬が開発されている。その先鋒となり、慢性骨髄性白血病の治療を大きく進歩させたのがイマチニブ(商品名:グリベック)である。この薬は2001年に慢性骨髄性白血病の治療薬として日本国内での製造販売承認が取得され、その後2007年1月には急性リンパ性白血病の治療薬としても製造販売の追加承認が取得された。イマチニブに治療抵抗性又は忍容性のないフィラデルフィア染色体陽性白血病に対しては、2009年1月、新たにニロチニブ(商品名:タシグナ)が「イマチニブ抵抗性の慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病」治療薬として、またダサチニブ(商品名:スプリセル、2006年7月米国で承認、2006年11月EUで承認)が「イマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病」および「再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病」治療薬として、同時に日本国内での製造販売承認が取得された。
このほか、点突然変異 に対してはponatinibが臨床試験中(2012年4月現在)である。また、チロシンキナーゼを標的としたものではないが、このタイプの白血病にも有効とされるomacetaxine(商品名:OMAPRO)が米国で審査中(2012年4月現在)である。
薬剤耐性
フィラデルフィア染色体がさらに点突然変異を起こし薬剤に耐性を持つことがある。その場合、薬剤の増量・変更あるいは造血幹細胞移植などを行う必要がある。特に急性期転化したCMLやPh+ALLでは耐性を持ちやすいので適用可能であれば造血幹細胞移植を選択することが多い。点突然変異は30種類ほどが知られているが、中でも というタイプは発現頻度が高く、最も難治性である。
セカンドオピニオン
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病 (Ph+ALL) に関しては事実上標準的に使用されていた薬が承認されたことにより予後が大幅に改善されると思われる。しかしなお予後不良と診断された場合は、セカンド・オピニオンとして他の医療機関の医師の見解も聞くべきである。地域の癌拠点病院といえども最新の治療ができない場合があるからである。医療機関の選択の目安としては骨髄移植(造血幹細胞移植)の実施例の多い病院、あるいはJALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)標準に基づく治療を行っているという病院がよい。
歴史
フィラデルフィア染色体はペンシルベニア大学 医学大学院のピーター・ノーウェルとフォックス・チェイス・癌センターのデイビット・ハンガーフォードによって、1960年に発見された。[1] 染色体の名前は両機関があるフィラデルフィアから名付けられた。1973年にシカゴ大学のジャネット・ラウリーにより、転座によるメカニズムが特定された。[2]
外部リンク
- JALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)
- ノバルティス(グリベック)
- ノバルティス(タシグナ)
- Bristol-Myers (スプリセル)
- ワイス (Bosutinib)
- Cephalon (OMAPRO)
- ARIAD (ponatinib)
参照
- ^ Nowell P, Hungerford D. "A minute chromosome in chronic granulocytic leukemia." Science 1960;132:1497.
- ^ Rowley JD (1973). "Letter: A new consistent chromosomal abnormality in chronic myelogenous leukaemia identified by quinacrine fluorescence and Giemsa staining". Nature 243 (5405): 290–3. doi:10.1038/243290a0. PMID 4126434.
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Japanese Journal
- 志村 華絵/森 直樹/岡田 美智子/榎本 有希/渡邉 彩/石森 紀子/丁 曄/兒玉 聖子/田中 紀奈/三橋 健次郎/石山 みどり/風間 啓至/吉永 健太郎/今井 陽一/志関 雅幸/寺村 正尚/泉二 登志子
- 東京女子医科大学雑誌 83(E2), E556-E562, 2013-03-31
- … leukemia : ALL) 35例 (B-ALL 27例、T-ALL 8例) を対象とし、臨床経過と治療成績を後方視的に解析した.追跡期間中央値は930日、年齢中央値は43歳 (16歳-90歳) で、男性16人 (45.7%)、女性19人 (54.3%) であった.フィラデルフィア染色体 (Ph) 陽性ALL (Ph+ ALL) は14例 (40%) であった.日本成人白血病研究グループ (Japan Adult Leukemia Study Group) プロトコール (ALL202, Ph +ALL202, Ph +ALL208IMA) による治療を受けた症例は20例 (57.1%) みられた.造血幹細胞移 …
- NAID 110009575065
- フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病 (特集 白血病の新しい治療戦略)
- 急性リンパ性白血病に対する分子標的療法 (抗がん剤治療の最前線 : 分子標的薬剤の使用による進歩(後篇)) -- (各臓器別の最新治療と新薬の動向)
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- acute leukemia, AL
- 関
- 白血病、FAB分類
概念
分類
- 急性リンパ性白血病:MPO染色において(leukemic blastの)3%未満が陽性の場合
- 急性骨髄性白血病 :MPO染色において(leukemic blastの)3%以上が陽性の場合
M0
|
|
minimally differentiated acute myeloblastic leukemia
|
AML
|
M1
|
|
acute myeloblastic leukemia, without maturation
|
M2
|
|
acute myeloblastic leukemia, with granulocytic maturation
|
M3
|
|
promyelocytic, or acute promyelocytic leukemia
|
APL
|
M4
|
|
急性骨髄単球性白血病
|
acute myelomonocytic leukemia
|
AMMoL
|
M4eo
|
|
myelomonocytic together with bone marrow eosinophilia
|
M5
|
M5a
|
急性単芽球性白血病
|
acute monoblastic leukemia
|
AMoL
|
M5b
|
急性単球性白血病
|
acute monocytic leukemia
|
M6
|
M6a
|
赤白血病
|
acute erythroid leukemias, including erythroleukemia
|
|
M6b
|
and very rare pure erythroid leukemia
|
|
M7
|
急性巨核芽球性白血病
|
acute megakaryoblastic leukemia
|
|
M8
|
急性好塩基球性白血病
|
acute basophilic leukemia
|
|
L1
|
小細胞型
|
|
|
L2
|
大細胞型
|
|
|
L3
|
Burkitt型
|
|
|
病態
- 白血球系芽球の腫瘍性増殖
- 骨髄機能障害
- 腫瘍細胞の臓器浸潤
- 腫瘍細胞の破壊亢進
徴候
- 全身:息切れ、全身倦怠感、発熱(免疫力低下による感染症、腫瘍細胞の崩壊)
- 皮膚:点状出血、紫斑
- 口腔内:歯肉出血
- 骨・関節:骨痛、関節痛 ← 腫瘍細胞の関節への浸潤
- 肝臓・脾臓:肝脾腫
- リンパ節:腫脹(頚部リンパ節、鼡径リンパ節)
- 唾液腺:顎下唾液腺腫大
検査
治療
小児
- 化学療法:小児のALLでは著効する
- 骨髄移植:小児のALLでは再発例に行う
成人
急性骨髄性白血病
急性前骨髄球性白血病
急性リンパ性白血病
- VACAP
予後
小児急性白血病の予後不良因子
- YN.G-44改変
小児急性白血病の予後不良因子
- 1. 年齢:1歳以下、10歳以上
- 2. 男児
- 3. FAB分類:L2, L3
- 4. 非リンパ球性
- 5. WBC:2万以上
- 6. Ph染色体 t(9;22) (小児のALLの数%)
成人急性白血病の予後不良因子
- YN.G-44改変
AMLの予後不良因子
- 染色体核型、年齢、初発時白血球数、FAB分類、3系統の形態異常、二次性白血病
NCCNガイドラインに基づくAMLの予後分類
- 参考1
|
染色体核型
|
遺伝子異常
|
予後良好群
|
inv(16), t(8;21), t(15;17)(付加的染色体異常の有無を問わない)
|
正常核型におけるNPM1のみの異常
|
中間群
|
正常核型, +8, t(9;11),その他の予後良好にも不良にも属さない染色体異常
|
t(8;21), inv(16)患者におけるc-kit異常
|
予後不良群
|
複雑核型(3以上の異常), -5, -7, 5q-, 7q-,11q23異常(t(9;11)を除く), inv(3), t(3;3),t(6;9), t(9;22)
|
正常核型におけるFLT3-ITDのみの異常
|
参考
- 1. 造血細胞移植ガイドライン - 急性骨髄性白血病
- http://www.jshct.com/guideline/pdf/2009AML.pdf
[★]
- 英
- myeloproliferative disorder MPD, myeloproliferative disorders
- 関
- 慢性骨髄増殖性疾患 CMPD
- 造血幹細胞レベルで生じたクローン性の疾患
- 真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症は鑑別が難しい
骨髄増殖性疾患
- 急性骨髄増殖性疾患 ← 急性白血病の病型として扱われる。
- 慢性骨髄増殖性疾患 ← 骨髄増殖性疾患といえばこちらを指す
[★]
- 英
- translocation
- 同
- トランスロケーション
- 関
- 相互転座
概念
- ある染色体が切断され、他の染色体のものと置き換わった染色体構造異常。
分類
- 均衡型 :染色体が失われない転座 (遺伝子の欠失、重複が生じていない)
- 不均衡型:染色体が失われている転座(遺伝子の欠失、重複が生じている)
臨床関連
[★]
- 関
- フィラデルフィア染色体
[★]
[★]
- 英
- Philadelphia chromosome-positive
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- 英
- chromosome
- 関
- 染色体異常
染色体分析の表記
- ISCN(1995)(An International System for Human Cytogenetic Nomenclature (1995))
ヒトの染色体
臨床関連
[★]
- 英
- body
- ラ
- corpus、corpora
- 関
- 肉体、身体、本体、コーパス、ボディー
[★]
- 英
- staining
- 関
- 染色法