- 英
- chronic myeloproliferative disorders CMPD
- 関
- 骨髄増殖性疾患
慢性骨髄増殖性疾患
HIM.672
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2020/06/28 09:35:21」(JST)
[Wiki ja表示]
骨髄増殖性腫瘍(こつずいぞうしょくせいしゅよう、英名:Myeloproliferative neoplasms、略称MPN)とは骨髄系腫瘍の一つであり、造血幹細胞レベルの異常から幼弱細胞から成熟血球細胞までが骨髄で異常増殖を起こす疾患である。すなわち分化障害のない腫瘍性の疾患である。したがって急性骨髄性白血病の場合白血球裂孔が存在するのに対して、慢性骨髄増殖性疾患である慢性骨髄性白血病では白血球裂孔が存在しない。また悪性リンパ腫との差としてはWHO分類で示されているように悪性リンパ腫は由来細胞で分類される。多くの場合、骨髄増殖性疾患とは慢性型の事を言う。
尚、骨髄増殖性腫瘍はWHO分類では、骨髄増殖性疾患(こつずいぞうしょくせいしっかん、英名Myeloproliferative disease、略称MPD)から2008年改訂のWHO分類第4版にて改名されたものである。骨髄増殖性疾患(MPD)の名称も2010年現在、一般的に使われているが、両者は同じ疾患群のことを示している。
種類
- 慢性骨髄性白血病Chronic Myelogenous Leukemia:CML
- CMLはPhiladelphia染色体が原因で顆粒球系の増加が著しい。
- NAPスコアが低下しているのが特徴である。
- Philadelphia染色体ターゲットとした特効薬イマチニブメシル酸塩(商品名グリベック)が2001年承認され: 現在第一選択薬になっている。未治療の自然経過では100%急性転化を起こし、急性白血病となる。
- 真性多血症(真性赤血球増加症)Polycythemia Vera:PV
- 赤血球系の増加が著しい ほぼ全例でV617F変異JAK2遺伝子がみつかっている。自然経過では急性転化はまれである。ヒドロキシウレアによる二次性白血病の方が問題となる。
- 原発性骨髄線維症Myelofibrosis:MF
- 骨髄間質細胞の増加が著しい。骨髄線維症の予後は悪く、平均生存期間は5年ほどである。20%から30%は末期に急性白血病を引き起こすことが知られている。無症状であれば治療は経過観察であり、貧血に対してはタンパク同化ホルモン、巨脾と白血球数のコントロールにはヒドロキシ尿素と放射線治療が行われる。これらは支持療法であり、同種造血幹細胞移植が唯一の治癒的治療法である。骨髄線維症の三徴としては、骨髄の広範な線維化および、髄外造血による著しい肝脾腫、末梢血の白赤芽球症が有名である。白赤芽球症は赤芽球と顆粒球の幼若細胞が末梢血中にみられることで、leukoerythoroblastosisといい、骨髄線維症、癌の骨髄浸潤、粟粒結核で有名である。
- 本態性血小板血症Essential Thrombocythemia:ET
- 血小板の増加が著しい。自然経過では急性転化はまれである。ヒドロキシウレアによる二次性白血病の方が問題となる。
- 慢性好中球性白血病 Chronic Neutrophilic Leukemia:CNL
- 白血球の一種類、好中球が顕著に増加する。CMLに似るがPhiladelphia染色体は存在せず、NAPスコアは低下しない。非常に希である。
- 慢性好酸球性白血病/特発性好酸球増加症候群(CEL/HES)
- 白血球の一種好酸球が増加し、多くの臓器に好酸球が湿潤し傷害する。
- 分類不可能型
PVのほぼ全例、MF、ETのおおよそ半数においてチロシンキナーゼJak2遺伝子の点突然変異が発見され、JAK2V617F変異融合遺伝子と呼ばれている。これをターゲットとした創薬が研究され、JAK1/JAK2を標的とするチロシンキナーゼ阻害剤であるルキソリチニブが、原発性骨髄線維症に対する治療薬として承認申請中である[1]。
Dry Tapに関して
ドライタップを起こす疾患としては、慢性骨髄性白血病の急性転化、骨髄線維症、癌の骨髄浸潤が知られている。骨髄線維症に関しては少々定義が複雑である。骨髄増殖性疾患としては慢性骨髄性白血病は顆粒球系の増加が著しく、真性多血症では赤血球系の増加が著しく、本態性血小板血症では血小板の増加が著しく、骨髄線維症では骨髄間質細胞の増加が著しいのが特徴とされている。ところが骨髄の間質細胞がクローナルに増殖したという報告は存在しない。巨核球の異常クローンがサイトカインを分泌した二次的な結果なのではないのかと考えられている。骨髄線維症は特発性と二次性に分かれる。二次性に発生するものとして未治療の白血病やMDSは含まない。
- 特発性骨髄線維症
- 急性の経過をとるものとして、MDSに伴うもの、AMLに伴うものが知られている。特にAML-M7(急性巨核芽球性白血病)での骨髄線維症は有名である。慢性の経過をとるものとしては原発性骨髄線維症、ほかの骨髄増殖性疾患でも骨髄線維症を合併することがある。
脚注
- ^ “骨髄線維症の治療薬としてルキソリチニブを承認申請”. ノバルティス ファーマ株式会社 (2013年9月30日). 2014年4月6日閲覧。
参考文献
- 新病態生理できった内科学 血液疾患 ISBN 9784871634076
- クリニカルアイ 血液造血器 ISBN 9784872118087
- 標準血液病学 ISBN 4260109782
- がん診療レジデントマニュアル ISBN 9784260003100
|
この項目は、医学に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(プロジェクト:医学/Portal:医学と医療)。 |
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
- 1. 骨髄増殖性腫瘍の概要overview of the myeloproliferative neoplasms [show details]
… Familial clustering of polycythemia vera (PV), essential thrombocythemia (ET), and primary myelofibrosis (PMF) has been well described . Abnormalities that have been described in such families include mutations …
- 2. 慢性骨髄性白血病の臨床症状および診断clinical manifestations and diagnosis of chronic myeloid leukemia [show details]
…transformation to acute myeloid leukemia (AML) can occur . Chronic eosinophilic leukemia (CEL) is a rare clonal chronic myeloproliferative disorder characterized by the overproduction of normal-appearing …
- 3. 本態性血小板血症の診断および臨床症状diagnosis and clinical manifestations of essential thrombocythemia [show details]
…having ET or primary myelofibrosis, respectively . A clonal JAK2 mutation positive chronic myeloproliferative disorder associated with an increased red cell mass defines polycythemia vera. A number of …
- 4. 原発性骨髄線維症の臨床症状および診断clinical manifestations and diagnosis of primary myelofibrosis [show details]
… Primary myelofibrosis (PMF) is one of the chronic myeloproliferative disorders, which are collectively characterized by clonal proliferation of myeloid cells with variable morphologic maturity and hematopoietic …
- 5. 真性多血症の臨床症状および診断clinical manifestations and diagnosis of polycythemia vera [show details]
… confined to patients with one of the other JAK2 mutation-positive myeloproliferative neoplasms (ie, essential thrombocythemia, primary myelofibrosis) who have an unrelated secondary cause for polycythemia …
Japanese Journal
- 本態性血小板症を合併した僧帽弁置換術前に化学療法を調節した1例
- 畠田 和嘉,石川 智啓,宮島 敬介,高橋 政夫
- 日本心臓血管外科学会雑誌 48(6), 401-404, 2019
- … <p>本態性血小板血症 (essential thrombocythemia : ET) は慢性骨髄増殖性疾患に分類される比較的稀な疾患である.血小板数の異常増加となり,血栓形成傾向と易出血性の両方を発症しやすくなる.今回われわれは術前すでにETの診断がなされ抗悪性腫瘍剤ハイドレア (ヒドロキシカルバミド) による治療中であった僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症の患者に僧帽弁置換術を予定した.感染と創傷治癒遅延を憂慮し,ハイドレアを術前2 …
- NAID 130007753738
- 肺動脈血吸引細胞診が有用であった悪性腫瘍関連肺高血圧症の 2 例
- 松尾 梢恵,熊坂 利夫,中 昂一,橋本 昭一,藤原 睦憲,武村 民子
- 日本臨床細胞学会雑誌 56(3), 143-148, 2017
- … : 悪性腫瘍関連肺高血圧症はまれな疾患であり, 固形癌や慢性骨髄増殖性疾患にみられることが多く, 呼吸不全を伴うため診断困難な場合が多い. … また, 真性多血症を含めた慢性骨髄増殖性疾患の肺高血圧症の機序の解明にも寄与すると考える.</p> …
- NAID 130006854147
- 経気管支生検が診断に有用であった左片麻痺で発症したクリプトコッカス髄膜炎の1例
- 森 秀法,舟口 祝彦,垣内 大蔵,柳瀬 恒明,森下 めぐみ,伊藤 文隆,遠渡 純輝,大野 康
- 気管支学 37(2), 173-177, 2015
- … 69歳男性.慢性骨髄増殖性疾患と陳旧性心筋梗塞で通院中であった.めまい,脱力発作を初発症状として,数日で進行する左片麻痺と顔面神経麻痺を認めた.脳内に造影効果を有する結節を複数認め,胸部CTにて中葉に15mmの結節および左肺尖部に5mmの小結節を認めた.中葉結節に対する経気管支生検組織にてperiodic acid-Schiff染色およびGrocott染色陽性の小球状物を多数認めた.肺組織および髄液培養よりクリプトコッカス属を検出し, …
- NAID 110009930830
Related Links
- 慢性骨髄増殖性疾患 骨髄増殖性疾患とは 血液細胞 私たちの体はおおよそ60兆個の細胞から出来上がっています。皮膚、筋肉、神経、内臓など随分たくさんの種類の細胞がありますが、元はといえばお父さんの精子1個とお母さんの 卵子1個が一緒になって、命が誕生します。
- 慢性骨髄増殖性疾患(腫瘍)とは 血液中には、酸素を運ぶ役割をする赤血球や、感染防禦をする白血球や、出血を止める働きをする血小板という細胞が含まれています。これらの赤血球、白血球、血小板は、骨の中心にあるゼラチン様の骨髄で造られ、血液中で一定の数に保たれています。
- 骨髄増殖性疾患(こつずいぞうしょくせいしっかん英名Myeloproliferative disease)とは骨髄系腫瘍の一つであり、急性型と慢性型に分けられる。急性型は腫瘍細胞に分化障害があり、慢性型は造血幹細胞レベルの異常から幼弱細胞から成熟血球細胞までが骨髄で異常増殖を起こす疾患である。
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 32歳の女性。皮膚の出血斑を主訴に来院した。5か月前から誘因なく肩や膝に径2~3cmの皮下出血斑が出現するのに気付いた。2週前から歯磨きで血がにじんだり、入浴時に強くこすった部位に点状出血斑がでるようになった。常用薬はない。貧血、黄疸、リンパ節腫大および肝脾腫を認めない。血液所見:赤沈15mm/1時間、Hb10.5g/dl、白血球4,500、血小板2万、網赤血球15‰。プロトロンビン時間(PT)95%(基準80~120)、APTT33秒(基準対照32.2)、フィブリノゲン243mg/dl(基準200~400)、FDP10μg/ml以下(基準10以下)。血清生化学所見に異常はない。免疫学所見:CRP陰性、抗核抗体陰性、直接Coombs試験陰性。骨髄穿刺所見:有核細胞数は正常。巨核球は増加しているが異型細胞を認めない。
[正答]
※国試ナビ4※ [096D034]←[国試_096]→[096D036]
[★]
- 英
- primary myelofibrosis, PMF
- 同
- 特発性骨髄線維症 idiopathic myelofibrosis IMF, agnogenic myeloid metaplasia
- 関
- 骨髄線維症、原因不明性骨髄様化生、急性骨髄線維症、続発性骨髄線維症。慢性特発性骨髄線維症 CIMF
- 造血系腫瘍、慢性骨髄増殖性疾患 CMPD
[show details]
検査
[show details]
[show details]
予後予測因子
- 70歳以下のPMF例
- 低リスク:0-1個:10年生存率84%
- 高リスク:2個以上:10年生存率31%
- 1. Hb 10g/dl未満の貧血
- 2. 37.5℃以上の発熱あるいは発熱の持続、あるいは6ヶ月で10%以上の体重減少
- 3. 3ヶ月以上持続する末梢血での芽球の出現
- 4. 男性
治療
- 予後不良因子が存在しなければ治療の必要はなく、10年以上の生命予後が望める。(参考2)
参考
- 1. [charged] 原発性骨髄線維症の臨床症状および診断 - uptodate [1]
- 2. [charged] 原発性骨髄線維症の予後および治療 - uptodate [2]
- 3. [charged] 原発性骨髄線維症における病態 - uptodate [3]
- 4. 骨髄線維症 - 難病情報センター
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/262
- http://www.med.osaka-cu.ac.jp/labmed/page082.html
- http://www.midb.jp/blood_db/db.php?module=WHO&id=32
国試
[★]
- 英
- chronic idiopathic myelofibrosis, CIMF
- 関
- 骨髄線維症。骨髄増殖性疾患 MPD、慢性骨髄増殖性疾患 chronic myeloproliferative disorders CMPD
概念
クローン性の造血幹細胞の疾患で、骨髄の線維化、髄外造血、脾腫をきたし、病因は不明である。慢性特発性骨髄線維症は最も一般ではないCMPDの一つであり、特定のクローンのマーカーが無い場合、診断は困難である。これは骨髄の線維化や脾腫は多血症や慢性骨髄性白血病でもみられるためである。また骨髄の線維化は様々な疾患でみられるためである(骨髄線維症#病因)。 (HIM.674)
疫学
- 60歳以降。 ⇔ 他のCMPDにおけるや二次性の骨髄線維症では全年齢で起こりう
検査
末梢血
- IMD
- 髄外造血を反映。未分化な血球の末梢への出現。狭小化した細網系を血球が通過することによる血球の変形。
- 赤血球:正球性貧血。奇形赤血球(涙滴赤血球)、赤芽球
- 白血球:症例の半数で増加(1万-2万/μl)、減少例もあり。骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球などを認める。
- 血小板:正常~減少。形態異常(巨大血小板、小型の巨核球)
- 好中球アルカリホスファターゼスコア:上昇
骨髄穿刺
骨髄生検
- 線維増生著明
- 有核細胞減少、造血細胞減少
- 巨核球系細胞増加 (IMD)
鑑別診断(IMD.977)
[★]
- 英
- myeloproliferative disorder MPD, myeloproliferative disorders
- 関
- 慢性骨髄増殖性疾患 CMPD
- 造血幹細胞レベルで生じたクローン性の疾患
- 真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症は鑑別が難しい
骨髄増殖性疾患
- 急性骨髄増殖性疾患 ← 急性白血病の病型として扱われる。
- 慢性骨髄増殖性疾患 ← 骨髄増殖性疾患といえばこちらを指す
[★]
- 英
- essential thrombocythemia ET
- 同
- 出血性血小板血症, hemorrhagic thrombocythemia、本態性血小板血症, primary thrombocythemia
- 関
- 原発性血小板血症、特発性血小板血症、本態性血小板増多症。慢性骨髄増殖性疾患
国試
[★]
- 関
- 脾腫
巨大脾腫をきたす疾患
- 慢性骨髄増殖性疾患 CMPDでは血球が増加し、髄外造血を行う傾向がある(HIM.671)ため、巨大脾腫をきたしやすいのではないか?
QB.G-255
[★]
- 英
- chronic myeloproliferative diseases CMPD
[★]
- 英
- bone marrow (Z)
- ラ
- medulla ossium
- 関
- 骨髄組織
分類
性状
細胞成分の過少
造血
加齢変化
- 6歳以後は加齢とともに脂肪化が進み、黄色骨髄が増加
- 長管骨の末端から黄色骨髄に置換されていく。成人では脊椎骨、胸骨、肋骨などで造血が起こる
- 乏血、低酸素状態では黄色骨髄が赤色骨髄に置換され、造血ができるようになる。
[★]
- 英
- disease, disorder, disturbance, illness, sickness, malady
- 同
- 疾病、病気
- 関
- 疾病、障害、病、乱れ、無秩序、病害、病気、病弊
[★]
- 英
- productive、proliferative、proliferating、multiplicative、productively
- 関
- 生産的
[★]
- 英
- proliferation, growth
- 同
- 繁殖
- 関
- 過形成、肥大
[★]
- 英
- chronicity
- 関
- 慢性的、慢性型