- 英
- anthracycline, anthracyclines
- 商
- ダウノマイシン、アドリアシン
- 関
- 抗悪性腫瘍薬
アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/05/26 10:31:10」(JST)
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アントラサイクリン(anthracycline)類あるいはアントラサイクリン系抗生物質(anthracycline antibiotics)は、ストレプトマイセス属微生物Streptomyces peucetius var. caesiusに由来するがん化学療法に用いられる薬剤の一群である[1]。
これらの化合物は、白血病、リンパ腫、乳がん、子宮がん、卵巣がん、肺がんを含む多くのがんの治療に用いられている。
アントラサイクリン類は、これまで開発された中でも非常に効果的な抗がん治療であり、その他の抗がん剤よりも多くの種類のがんに対して有効である[2][3][4]。主な副作用は心毒性であり、このため有用性がかなり制限されている。その他の副作用には嘔吐などがある。
初めて発見されたアントラサイクリンは、放線菌Streptomyces peucetiusによって天然で生産されているダウノルビシンである。ドキソルビシンは程なく開発され、その他多くの関連化合物が続いたが、臨床で使用されているものはほとんどない[2]。
例
- ダウノルビシン(ダウノマイシン)
- ダウノルビシン(リポソーム製剤)
- ドキソルビシン(アドリアマイシン)
- ドキソルビシン(リポソーム製剤)
- エピルビシン
- イダルビシン
- バルルビシン(膀胱がん治療にのみ使用される)
- ミトキサントロン(アントラサイクリンアナログ)
作用機序
アントラサイクリンには3つの作用機序がある。
- DNA/RNA鎖の塩基対間にインターカレーションすることによってDNAおよびRNA合成を阻害する。ゆえに増殖の速いがん細胞の複製を妨げる[5]。
- II型トポイソメラーゼを阻害し、DNAスーパーコイルの弛緩を妨げる。これによってDNA転写およびDNA複製を妨げる。ある研究では、II型トポイソメラーゼ阻害剤は、トポIIと核酸基質の解離に必要なトポIIのターンオーバーを妨害するとされる[6][7]。
- DNAおよび細胞膜に損傷を与える鉄媒介酸素ラジカルを発生させる[5]。
脚注
- ^ Fujiwara, A.; Hoshino, T.; Westley, J. W. (1985). “Anthracycline Antibiotics”. Critical Reviews in Biotechnology 3 (2): 133. doi:10.3109/07388558509150782.
- ^ a b Weiss RB (December 1992). “The anthracyclines: will we ever find a better doxorubicin?”. Semin. Oncol. 19 (6): 670–86. PMID 1462166.
- ^ Minotti G, Menna P, Salvatorelli E, Cairo G, Gianni L (June 2004). “Anthracyclines: molecular advances and pharmacologic developments in antitumor activity and cardiotoxicity”. Pharmacol. Rev. 56 (2): 185–229. doi:10.1124/pr.56.2.6. PMID 15169927.
- ^ Peng X, Chen B, Lim CC, Sawyer DB (June 2005). “The cardiotoxicology of anthracycline chemotherapeutics: translating molecular mechanism into preventative medicine”. Mol. Interv. 5 (3): 163–71. doi:10.1124/mi.5.3.6. PMID 15994456.
- ^ a b Takimoto CH, Calvo E. "Principles of Oncologic Pharmacotherapy" in Pazdur R, Wagman LD, Camphausen KA, Hoskins WJ (Eds) Cancer Management: A Multidisciplinary Approach. 11 ed. 2008.
- ^ Osheroff Neil (1986). “Eukaryotic Topoisomerase II: characterisation of enzyme turnover”. J. Biol. Chem. 261 (21): 9944-9950. PMID 3015913.
- ^ Jensen PB, Sørensen BS, Sehested M, Demant EJ, Kjeldsen E, Friche E, Hansen HH (1993). “. Different modes of anthracycline interaction with topoisomerase II: Separate structures critical for DNA-cleavage, and for overcoming topoisomerase II-related drug resistance”. Biochem. Pharmacol. 45 (10): 2025-2035. doi:10.1016/0006-2952(93)90013-M. PMID 8390259.
関連項目
|
ウィキメディア・コモンズには、アントラサイクリンに関連するカテゴリがあります。 |
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- P2-13-18 子宮頸部腺癌に対するパクリタキセル,アントラサイクリン系抗腫瘍性抗生物質,プラチナ製剤を用いた多剤併用化学療法の検討(Group94 子宮頸部腫瘍・治療5,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 木村 敏啓,宮武 崇,横山 拓平,松崎 慎哉,三好 ゆかり,上田 豊,太田 行信,吉野 潔,藤田 征巳,上浦 祥司,榎本 隆之,木村 正
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 775, 2011-02-01
- NAID 110008509746
- 細貝 亮介,渡辺 輝浩,小川 淳,浅見 恵子,窪田 正幸
- 小児がん : 小児悪性腫瘍研究会記録 47(1), 116-120, 2010-02-25
- 肝芽腫に対する化学療法から約6年経過後,治療関連性白血病を発症した1例を経験した.本邦における肝芽腫治療後の治療関連性白血病は本例を含め10例が報告されている.一方欧米における6つの主な多施設臨床研究では2例の発症が確認されている.しかし,いずれも未報告例が存在する可能性がある.肝芽腫治療後の治療関連性白血病に関しては,発症率,危険因子など不明な点が多く,今後詳細な疫学的調査が望まれる.
- NAID 110007575327
Related Links
- 製品名 形状 分類 製薬会社名 アクラシノン注射用 注射用剤 抗腫瘍性抗生物質(アントラサイクリン系) マイクロバイオ=アステラス アドリアシン注用 注射用剤 抗腫瘍性抗生物質(アントラサイクリン系) 協和キリン イダマイシン静注用
- 日本で開発されたアントラサイクリン系の抗がん性抗生物質で、ドキソルビシンの難点であった心臓への副作用を軽減する目的で開発されました。 アムルビシン(カルセド) 小細胞肺がん、非小細胞肺がんの治療に用いられます。小 ...
- 抗がん性抗生物質(アントラサイクリン系): 細胞の増殖に必要なDNAやRNAの合成を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす薬
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 24歳の女性。四肢の紫斑と歯肉出血とのため来院し、当日入院した。3日前に手足の紫斑に気付き、1日前から歯肉出血が止まらなかった。意識は清明。体温37.5℃。脈拍88/分、整。血圧106/56mmHg。上腕と下腿との皮膚に点状出血と径1cmの紫斑とが散在している。眼瞼結膜は蒼白。口腔内では歯肉の出血と頬粘膜の点状出血とを認める。腹部は平坦、軟で、肝・肺は触知しない。血液所見:赤血球290万、Hb8.7g/dl、Ht28%、白血球5,600、血小板1.2万、フィプリノゲン120mg/dl(基準200~400)、血清FDP34μg/ml(基準10以下)。血清生化学所見:総蛋白6.7g/dl、アルブミン4.3g/dl、尿素窒素22mg/dl、クレアチニン1.3mg/dl、尿酸8.8mg/dl、総コレステロール130mg/dl、総ビリルビン0.8mg/dl、AST38単位、ALT35単位、LDH520単位(基準176~353)。骨髄血塗抹May-Giemsa染色標本を以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [099G032]←[国試_099]→[099G034]
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- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- 英
- acute leukemia, AL
- 関
- 白血病、FAB分類
概念
分類
- 急性リンパ性白血病:MPO染色において(leukemic blastの)3%未満が陽性の場合
- 急性骨髄性白血病 :MPO染色において(leukemic blastの)3%以上が陽性の場合
M0
|
|
minimally differentiated acute myeloblastic leukemia
|
AML
|
M1
|
|
acute myeloblastic leukemia, without maturation
|
M2
|
|
acute myeloblastic leukemia, with granulocytic maturation
|
M3
|
|
promyelocytic, or acute promyelocytic leukemia
|
APL
|
M4
|
|
急性骨髄単球性白血病
|
acute myelomonocytic leukemia
|
AMMoL
|
M4eo
|
|
myelomonocytic together with bone marrow eosinophilia
|
M5
|
M5a
|
急性単芽球性白血病
|
acute monoblastic leukemia
|
AMoL
|
M5b
|
急性単球性白血病
|
acute monocytic leukemia
|
M6
|
M6a
|
赤白血病
|
acute erythroid leukemias, including erythroleukemia
|
|
M6b
|
and very rare pure erythroid leukemia
|
|
M7
|
急性巨核芽球性白血病
|
acute megakaryoblastic leukemia
|
|
M8
|
急性好塩基球性白血病
|
acute basophilic leukemia
|
|
L1
|
小細胞型
|
|
|
L2
|
大細胞型
|
|
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L3
|
Burkitt型
|
|
|
病態
- 白血球系芽球の腫瘍性増殖
- 骨髄機能障害
- 腫瘍細胞の臓器浸潤
- 腫瘍細胞の破壊亢進
徴候
- 全身:息切れ、全身倦怠感、発熱(免疫力低下による感染症、腫瘍細胞の崩壊)
- 皮膚:点状出血、紫斑
- 口腔内:歯肉出血
- 骨・関節:骨痛、関節痛 ← 腫瘍細胞の関節への浸潤
- 肝臓・脾臓:肝脾腫
- リンパ節:腫脹(頚部リンパ節、鼡径リンパ節)
- 唾液腺:顎下唾液腺腫大
検査
治療
小児
- 化学療法:小児のALLでは著効する
- 骨髄移植:小児のALLでは再発例に行う
成人
急性骨髄性白血病
急性前骨髄球性白血病
急性リンパ性白血病
- VACAP
予後
小児急性白血病の予後不良因子
- YN.G-44改変
小児急性白血病の予後不良因子
- 1. 年齢:1歳以下、10歳以上
- 2. 男児
- 3. FAB分類:L2, L3
- 4. 非リンパ球性
- 5. WBC:2万以上
- 6. Ph染色体 t(9;22) (小児のALLの数%)
成人急性白血病の予後不良因子
- YN.G-44改変
AMLの予後不良因子
- 染色体核型、年齢、初発時白血球数、FAB分類、3系統の形態異常、二次性白血病
NCCNガイドラインに基づくAMLの予後分類
- 参考1
|
染色体核型
|
遺伝子異常
|
予後良好群
|
inv(16), t(8;21), t(15;17)(付加的染色体異常の有無を問わない)
|
正常核型におけるNPM1のみの異常
|
中間群
|
正常核型, +8, t(9;11),その他の予後良好にも不良にも属さない染色体異常
|
t(8;21), inv(16)患者におけるc-kit異常
|
予後不良群
|
複雑核型(3以上の異常), -5, -7, 5q-, 7q-,11q23異常(t(9;11)を除く), inv(3), t(3;3),t(6;9), t(9;22)
|
正常核型におけるFLT3-ITDのみの異常
|
参考
- 1. 造血細胞移植ガイドライン - 急性骨髄性白血病
- http://www.jshct.com/guideline/pdf/2009AML.pdf
[★]
- 英
- doxorubicin
- 同
- アドリアマイシン adriamycin ADM
- 化
- 塩酸ドキソルビシン 塩酸ドキソルビシン doxorubicin hydrochloride、ドキソルビシン塩酸塩
- 商
- Adriamycin, Rubex、アドリアシン
- 関
- アントラサイクリン
- 抗腫瘍性抗生物質製剤
- first aid step1 2006 p.207,233,307,309
特徴
構造
作用機序
- 腫瘍細胞のDNAの二本鎖間にインターカレーションにより複合体を形成する。これによりDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼの反応を阻害し、DNAの複製、RNAの合成を阻害
- generate free radicals and noncovalently intercalate in DNA(first aid step1 2006 p.309)
- 1. These compounds can intercalate with DNA, directly affecting transcription and replication.(GOO.1358)
- 2. A more important action is the ability of these drugs to form a tripartite complex with topoisomerase II and DNA. Formation of the tripartite complex with anthracyclines and with etoposide inhibits the re-ligation of the broken DNA strands, leading to apoptosis.(GOO.1358)
- 3. Anthracyclines can form semiquinone radical intermediates, which in turn can react with oxygen to produce superoxide anion radicals. These can generate both hydrogen peroxide and hydroxyl radicals (·OH), which attack DNA and oxidize DNA bases.(GOO.1358)
適応
- part of the ABVD combination regimen for Hodgkin’s and for myelomas, sarcomas, and solid tumors (breast, ovary, lung) (first aid step1 2006 p.309)
副作用
- cardiotoxicity; also myelosuppression and marked alopecia. Toxic extravasation(first aid step1 2006 p.309)
[★]
- 英
- pirarubicin
- 化
- 塩酸ピラルビシン pirarubicin hydrochloride
- 同
- THP
- 商
- テラルビシン、ピノルビン
- 関
- アントラサイクリン
- ドキソルビシンの4'-O-位にテトラヒドロピラニル基を有するアントラサイクリン系抗悪性腫瘍抗生物質。
添付文書
- テラルビシン注射用10mg/テラルビシン注射用20mg
- http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4235403D1042_1_03/4235403D1042_1_03?view=body
[★]
アントラサイクリン系、アントラサイクリン
[★]
アントラサイクリン
[★]
- 英
- phosphorus P
- 関
- serum phosphorus level
分子量
- 30.973762 u (wikipedia)
- 単体で化合物としてはP4、淡黄色を帯びた半透明の固体、所謂黄リンで毒性が高い。分子量124.08。
基準値
- 血清中のリンおよびリン化合物(リン酸イオンなどとして存在)を無機リン(P)として定量した値。
- (serum)phosphorus, inorganic 2.5–4.3 mg/dL(HIM.Appendix)
- 2.5-4.5 mg/dL (QB)
代謝
- リンは経口的に摂取され、小腸から吸収され、細胞内に取り込まれる。
- 骨形成とともに骨に取り込まれる。
- 腎より排泄される。
尿細管での分泌・再吸収
- 排泄:10%
尿細管における再吸収の調節要素
臨床検査
- 無機リンとして定量される。
基準範囲
血清
- 小児:4-7mg/dL
- 閉経後女性は一般集団より0.3mg/dL高値となる
尿
測定値に影響を与える要因
臨床関連
参考
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B3