- 英
- exercise therapy, therapeutic exercise
- 関
- 機能訓練、物理療法、理学療法
- 同
- therapeutic exercise
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/04/30 14:31:06」(JST)
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運動療法(うんどうりょうほう、英語: functional therapy[1])とは、身体の全体または一部を動かすことで症状の軽減や機能の回復を目指す療法のこと[1]。治療体操、機能訓練などとも言う[1]。
目次
- 1 概説
- 2 運動療法の意義
- 3 糖尿病における運動療法
- 4 注意点
- 5 脚注
- 6 参考文献
- 7 関連事項
- 8 外部リンク
概説
運動療法というのは、その名称どおり、運動すること、つまり身体を動かすこと、を治療法として用いることである。 運動療法には関節可動域回復訓練、麻痺回復促進訓練、歩行訓練、筋力増強、心肺機能改善訓練などが含まれる。
理学療法士が行う治療では、日常生活活動訓練、物理療法などと並び主用な治療法のひとつである。
健康維持・増進における運動の効果が医学的に認識され、運動医学・スポーツ医学が研究されるようになって、生活習慣病などに効果が期待されている分野である。運動療法は、現在は主に生活習慣病(高血圧・動脈硬化・虚血性心疾患・糖尿病・高脂血症等)に効果的とされている。[2]
運動療法の意義
- 関節可動域、筋力、協調性の改善
- 肺活量の増大
- 最大酸素摂取量、最大酸素負債量の増加
- 心拍出量の増加と心拍数の低下
- 運動時の血圧上昇が低く抑えられる
- 糖代謝の改善
- 脂質代謝の改善
糖尿病における運動療法
糖尿病における運動療法の効果としては以下のようなことがあげられる。
- 運動の急性効果としてブドウ糖、脂肪酸の利用が促進され血糖が低下する。
- 運動の慢性効果としてインスリン抵抗性が改善する。
- エネルギー摂取量と消費量のバランスが改善され、減量効果がある。
- 加齢や運動不足による筋萎縮や骨粗鬆症の予防に有効である。
- 高血圧や脂質異常症の改善に有効である。
有酸素運動とレジスタンス運動がインスリン抵抗性の改善に有効とされている。前者としてはジョギング、水泳、後者としては水中歩行があげられる。治療効果が見込める運動量としては歩行として1回15分以上を一日二回、1週間に3日以上が望ましいとされている。消費エネルギーとしては200Kcal程度であり、運動による減量はほとんど期待できない。減量は食事療法によって行い、運動療法はあくまでもインスリン抵抗性を改善させる目的で行う。即ち、糖尿病治療中で運動をした分食事を増やすというのは全く治療になっていない。
治療目的で運動療法を行う患者の場合、糖尿病以外に不整脈といった疾患が合併している場合が多々ある。こういった場合のふさわしい運動強度というのはケースバイケースとなるので医療機関に相談することが望ましいとされている。但し、糖尿病を改善したいのなら基本的なことは変わらない。
糖尿病における運動療法で気をつけるべき点としては低血糖発作である。特にSU薬を用いていると空腹時低血糖を起こしやすいので、食前の運動を避けるといった工夫が必要な場合もある。
運動療法が細胞にグルコースを取り込ませ、血糖値を低下させるメカニズムは次にのとおりである。運動が持続するとアデノシン三リン酸(ATP)が消費されてアデノシン二リン酸(ADP)が蓄積する。蓄積されたADPはアデニル酸キナーゼ(AMPキナーゼ)によってATPとアデノシン一リン酸(AMP)へ変換される。AMPは、AMPキナーゼに結合してこれを活性化する。活性化されたAMPキナーゼは、通常はインスリンにしか反応しないインスリン感受性のグルコーストランスポーターであるGLUT4を膜の表面へ移動させ、グルコースを骨格筋内の細胞に取り込む作用がある。この運動によるグルコース取り込みはインスリンによる取り込みとは関係しない[3]。このことから、1型糖尿病であっても、発症初期にはインスリン非依存状態で食事療法と運動療法で良好な血糖値が得られる場合がある[4]。
運動療法を控えた方が良い場合
基本的には糖尿病慢性期合併症が生じてしまったら運動療法は行わない方が良いといわれている。網膜症があれば、低血糖をおこし交感神経が反応し高血圧になると網膜剥離を起こすこともある。腎症があれば、運動でタンパク尿は増えて、腎臓をさらに障害する。神経症があれば運動は怪我のリスクとなる。
- 糖尿病の代謝コントロールが極端に悪い時(空腹時血糖値250mg/dl以上、または尿中ケトン体中等度以上陽性)
- 増殖網膜症による新鮮な眼底出血がある場合(運動によって網膜症が悪化し失明する恐れがある、眼科医と相談が必要である)。
- 腎不全の状態にあるとき。
- 虚血性心疾患や心肺機能に障害がある場合
- 骨、関節疾患がある場合
- 急性感染症
- 糖尿病性壊疽
- 高度の糖尿病性自律神経障害
これらが認められた場合は運動療法は制限した方がよいとされている。ただし、運動療法の制限の適応になったとしても日常動作まで制限されることは稀であり、安静臥床を必要とするということではない。
1(不可):他動運動
0(ゼロ):他動運動
- マットおよび訓練台:基本動作訓練など用途は広い
- 傾斜台(斜面台):起立性低血圧予防などに用いる
- 階段:必要な時に組み立てることのできるものもある
- トレッドミル:速度と傾斜を調整できるものがほとんどである
- 鏡:姿勢矯正などに用いる
- その他:心電図モニター、肺活量計など
注意点
体調に不安がある場合は、医師や専門のトレーナーの指導を受けることが望ましい。
運動は適度な範囲に収める必要がある。過剰な運動は逆効果となる。
- 「症状にあったお薬をもらうように、運動にもあなたにあった方法や量があり、決められた量と用法を守ってこそ効果があります」(関西医科大学健康科学センターのHPから)
脚注
- ^ a b c 平凡社『世界大百科事典』「運動療法」
- ^ 今後は、心臓疾患・脳疾患など、「生活習慣+ストレス」により生ずるその他の疾病についても、運動により生活習慣を改め、運動によりストレスを軽減することで、予防・治療効果を得ることも期待される[要出典]。
- ^ 鎌田勝雄. “9. 運動とインスリン抵抗性改善作用”. 糖尿病の基礎知識 (星薬科大学). http://polaris.hoshi.ac.jp/openresearch/kamata(pathophysiol).html#DM-BASE21.
- ^ 1型糖尿病とは?
参考文献
- 『糖尿病治療ガイド2008-2009』 日本糖尿病学会、文光堂、2008年。ISBN 9784830613708。
関連事項
- 健康
- 生活習慣病
- スポーツ
- フィットネス
- 有酸素運動
- リハビリ
- 理学療法
外部リンク
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 骨粗鬆症に対する運動療法 (特集 今,改めて骨粗鬆症の重要性を考える)
- 小児2型糖尿病 : 診断と治療 (特集 症例から学ぶ糖尿病)
Related Links
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- 運動療法の注意点 (1)血糖値は食後1時間から1時間半位でピークに達します。食後1時間くらいに運動を開始すると、高くなる血糖を抑えられます。 (2)糖に対する運動療法の効果は、およそ48時間位持続するといわれています。
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- 次の文を読み、26、27の問いに答えよ。
- 40歳の男性。性格の変化を主訴に妻と実姉とに伴われて来院した。
- 現病歴 最近、すぐ怒り出すようになった。自己中心的に生活しており、常識的な対応ができなくなってきた。自閉症である8歳の長男の世話を頼まれても、飲酒し放置している。家族がアルコールの飲み過ぎを指摘すると否定し、隠れ飲みをしている。しばしば仕事を休んでは朝から焼酎を飲んでいる。患者本人は特別な症状では悩んでいない。家族に説得されてしぶしぶ一般内科を受診した。
- 既往歴 35歳時に痛風。
- 生活歴 会社員。夜勤が多い。飲酒歴は焼酎4合/日(本人の申告: 2台/日)を15年間。喫煙歴はない。
- 家族歴 長男が自閉症。
- 現症 意識は清明。身長172cm.体重82kg。体温36.4℃。脈拍72/分、整。血圧150/100mmHg。眼瞼結膜に貧血を認めない。眼球結膜に黄染を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。肝・脾を触知しない。
[正答]
※国試ナビ4※ [105C026]←[国試_105]→[105C028]
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- 62歳の男性。2か月前からの下肢のむくみと視力低下とを主訴に来院した。45歳ころから健康診断で尿糖陽性と高血糖とを指摘されていたが放置していた。55歳ころには高血糖とともに尿蛋白と高血圧とを指摘されたが自覚症状がないため受診しなかった。身長170cm、体重82kg。血圧188/94mmHg。貧血と黄疸とを認めない。眼底には点状・しみ状出血と綿花様白斑とが多数認められ、一部に新生血管も認められる。胸部と腹部とに異常を認めない。尿蛋白3+。血清生化学所見:空腹時血糖164mg/dl、HbA1C8.5%(基準4.3~5.8)、総蛋白5.8g/dl、尿素窒素30mg/dl、クレアチニン2.1mg/dl、総コレステロール280mg/dl、トリグリセライド128mg/dl。1日摂取エネルギー量を指導し、インスリン治療を開始した。
- ほかに必要なのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [101A050]←[国試_101]→[101A052]
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- 40歳の男性。労作時の呼吸困難と動悸とを主訴に来院した。 2か月前から急いで歩いたときに呼吸困難と動悸とを自覚するようになり、次第に増悪してきたため受診した。 3年前から糖尿病のために食事療法と運動療法とを行っている。弟が35歳で突然死したという。意識は清明。身長168cm、体重52kg。脈拍72/分、不整。血圧102/76mmHg。呼吸数20/分。心尖拍動を鎖骨中線から2cm外側に触知する。 III音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。心電図で心房細動を認める。心エコー図(別冊No. 27A、 B、 C)を別に示す。
- 治療薬として適切なのはどれか。 3つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [106D058]←[国試_106]→[106D060]
[★]
- 36歳の男性。健康診断で高脂血症を指摘され来院した。父親に心筋梗塞がある。喫煙歴はない。飲酒歴は日本酒3合/日、10年間。身長169cm、体重85kg。血圧136/86mmHg。尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血清生化学所見:総蛋白6.8g/dl、アルブミン3.8g/dl、クレアチニン0.7mg/dl、総コレステコール189mg/dl、トリグリセライド420mg/dl、HDL-コレステロール31mg/dl、AST34単位、ALT56単位。心電図に異常はない。対応として適切なのはどれか。
- (1) 飲酒制限
- (2) 摂取エネルギー制限
- (3) 運動療法
- (4) β遮断薬投与
- (5) HMG-CoA還元酵素阻害薬投与
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [099G049]←[国試_099]→[099G051]
[★]
- 75歳の男性。歩行時の下肢痛を主訴に来院した。半年前から200m程度の歩行で右下腿が痛み出して立ち止まらなければならなくなった。改善しないため受診した。痛みは2、3分で消失し、再び歩行が可能になる。右大腿動脈の触知は左大腿動脈に比べて弱い。腹部・骨盤部CT血管造影写真(別冊No. 15)を別に示す。
- 治療法として適切でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109A033]←[国試_109]→[109A035]
[★]
- 60歳の男性。眼のかすみと下肢のむくみとを主訴に来院した。健康診断で数年前から尿糖陽性を指摘されていたが放置していた。身長170cm、体重90kg、腹囲95cm。血圧158/92mmHg。両眼底に硝子体出血を認める。尿所見:蛋白3+、糖3+、ケトン体(-)。血液生化学所見:血糖 280 mg/dl、HbA1c 9.5%、尿素窒素 22mg/dl、クレアチニン 1.0 mg/dl、尿酸7.4 mg/dl、総コレステロール245 mg/dl、トリグリセリド205 mg/dl。
- 適切でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [103A031]←[国試_103]→[103A033]
[★]
- 42歳の男性。高血圧症治療中の父が脳梗塞を発症したため、自身の血圧を心配して来院した。職場の健康診断は毎年受診しているが、異常を指摘されたことはない。喫煙歴はない。12年前からビ-ル350mlを毎日飲んでいる。運動は月に1回のゴルフを10年間。身長175cm、体重70kg。脈拍72/分、整。血圧164/92mmHg。心音に異常を認めない。腹部に血管性雑音を聴敬しない。浮腫を認めない。
- まず勧めるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105G038]←[国試_105]→[105G040]
[★]
- 33歳の男性。1か月前に交通事故で搬入された。同日、腹部大動脈損傷の診断で血管置換術を受け、術後に両下肢の完全麻痺が出現した。両下肢は現在も完全麻痺のままで、肛門周囲の感覚脱失を認める。
- 現時点の対応として適切なのはどれか。
- a 脊髄の手術を勧める。
- b 歩行を治療目標として示す。
- c 社会復帰のための退院を勧める。
- d 患者の反応を見つつ麻痺の予後を説明する。
- e 体幹に関する運動療法メニューを提示する。
[正答]
※国試ナビ4※ [105H020]←[国試_105]→[105H022]
[★]
- 57歳の女性。1か月前からの視力低下を訴えて来院した。10年前に近医で糖尿病を指摘されていたが、通院せず放置していた。視力は右0.3(矯正不能)、左0.2(矯正不能)。空腹時血糖200mg/dl、HbA1c9.0%(基準4.3~5.8)。左眼の眼底写真と光眼底造影写真とを以下に示す。
- a. 経過観察
- b. 運動療法
- c. 止血薬投与
- d. 循環改善薬投与
- e. レーザー光凝固
[正答]
※国試ナビ4※ [095C039]←[国試_095]→[095C041]
[★]
- 53歳の女性。 6か月前から糖尿病外来に毎月通院し、食事療法と運動療法とを行っている。 HbA1cは先月7.0%(基準4.3-5.8)で、今月7.2%であった。本人は「今月は来客が多く、忙しくて散歩もままならず、食事も付き合いで普段よりもたくさん食べる日が多かった」と話した。
- この患者の心理的反応を説明する用語はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106H025]←[国試_106]→[106H027]
[★]
- 45歳の男性。会社の健康診断で初めて尿糖陽性を指摘され来院した。身長175cm、体重90kg。血圧144/86mmHg。尿所見:蛋白(-)、糖2+。血液生化学所見:随時血糖280mg/dl、HbA1c 7.5%(基準4.3~5.8)、総コレステロール230mg/dl。トリグリセライド165mg/dl。まず行うのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [102I058]←[国試_102]→[102I060]
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- 78歳の女性。自宅内の段差につまずいて転倒し、歩行不能となったため搬入された。全身状態は良好である。精査の結果、右大腿骨頚部骨折(内側骨折)と診断され、 2日後に人工骨頭置換術を予定した。
- 手術までの対応として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106E053]←[国試_106]→[106E055]
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[正答]
※国試ナビ4※ [106B025]←[国試_106]→[106B027]
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- 英
- general therapy, general treatment
- 関
- 食事療法、運動療法
- 疾患特異的な病因に対する個別的な治療ではなく、回復を効率に促すための支持的な治療。
- 保清、環境温度、空調、食事、運動、精神、睡眠、更衣などを指す。
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- 英
- method、law
- 関
- 測定法、測定方法、訴訟、方法、法律学、手法、方式、法律
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- 英
- therapy、regimen、cure、remedy、therapeutic