出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/09/04 00:04:44」(JST)
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尖圭コンジローマ(せんけいコンジローマ、ラテン語: condylomata acuminata)あるいは尖圭コンジロームとは、ヒト乳頭腫ウイルス (HPV) の感染によって発症する性行為感染症。
陰茎・亀頭・陰嚢・肛門・小陰唇・大陰唇・膣内・会陰部・大腿・まれに口唇・口腔内に、乳頭状・鶏冠状の疣贅(ゆうぜい)、俗に言う「イボ」を形成する。良性の病変で悪性化はない。
HPVは100種類以上のウイルス型があるDNAウイルスで、そのうち、尖圭コンジローマの主な原因ウイルスとなるのは、主にHPV6型と11型である。
一般に1 - 2ヶ月の潜伏期間を経て、陰部に先の尖った「イボ」を形成してくる。自覚症状はなく、痛みも痒みもない。しかし最初のイボを形成してから短期間で次々と新しいイボを形成し増殖していく。また治療しても他の部位への接触転移が多く再発を繰り返すことが多い。まれにサウナや公衆浴場などからも感染することもある。
しかし、感染しても無症状のまま、約1年ほどで自己の免疫力によって自然治癒する場合がある。すなはち必ずしもイボとして出現しない場合もあり、それがまた感染を容易に拡散させる原因でもある。潜伏期間は1ヶ月から8ヶ月の長期に渡ることがあり、感染源を特定できないこともしばしばある。
ForSex 尖圭コンジローマ(尖圭コンジローマの写真)
よく、亀頭周辺にイボができ、尖圭コンジローマかと悩む男性が多く居るが、その殆どはフォアダイスや真珠様陰茎小丘疹と呼ばれるものであり、病気ではない。フォアダイスとは黄色く、大体1mm未満で大きさの比較的一定のイボが竿から亀頭のくびれまでに発症するもので、脂線の独立したものである。言ってしまえば、毛穴の出来損ないであり、成人男性の65%に見られる、全くウイルスとは関係のない生理現象である。また、真珠様陰茎小丘疹とは、陰茎の環状溝に沿って揃った大きさのブツブツが並んでいる状態であり、これも全く無害の生理現象で、成人男性の20%に見られる。性交経験が無いのにぶつぶつが出来た、と言う場合、99%がこのフォアダイスか真珠様陰茎小丘疹である。
因みに害は全く無く自然で生理的な症状だが、外観が気になるのなら治療できる。ただし病気ではないので保険が利かず、平均3万円から10万円の治療費がかかる。
ただ、一見したところフォアダイスや真珠様陰茎小丘疹のようでも、専門家の目の方が確かなため、一応病院には行った方がいい。
また、女性の膣入り口やその周辺(膣前庭部)のひだ状、あるいは、乳頭状のできもの「前庭部乳頭」を尖圭コンジローマと誤診されることがある。これは「妖精のひだ」とよばれる正常変化である。産婦人科医でさえ誤診して治療してしまうことがあるが、HPV感染による尖圭コンジローマとは全く関係がない。小陰唇の内側などに左右対照に発生することや、乳頭が規則的で、内部に血管がみえないなどが鑑別点となる。
検査は男性と女性では方法が異なる。一般に尖圭コンジローマは表皮や粘膜上皮に感染するため、体内組織に移行することはなく、血液検査等はない。
しかし、手術などを要する場合、健康状態の確認のために採血をする場合がある。
最も確実な方法は組織を採取して行う病理診断である。局所麻酔をして組織を採取する。上記、前庭部乳頭と鑑別できる。尖圭コンジローマはlow riskグループのHPV感染によるため、子宮頚がんの原因であるhigh risk HPVを検出する検査(ハイブリッドキャプチャー法やクリニチップ法)では検出できない。HPV6, 11型を検出する必要があり、一般の婦人科では検査できない。しかし、外陰部に尖圭コンジローマのある女性では、高率に子宮頚部にもHPV感染がある (ハイリスクHPV) とされているため、子宮頚がん検診も同時に受けたほうがよいだろう。
検査については、男性の場合も女性と同じ。男性の場合はHPV感染による陰茎(ペニス)の癌は非常にまれであり、老人の病気である。
現在、薬剤治療と外科手術がある。
治療は視診で確認できるものしかできない。ウイルスは、イボ以外にも存在する可能性があり、現時点では発現するのを待つしかない。
自然に治癒する場合もあるが、パートナーに感染させる危険性があり、また、再発と増減を繰り返しながら症状が長期に及ぶ場合も多いので、性病科などの医師の診断を受けたほうがよい。
これまでは、凍結療法、外科的切除、蒸散治療が主体であったが、2007年12月に持田製薬から尖圭コンジローマ治療薬としてベセルナクリームが発売された。日本初の尖圭コンジローマ治療薬「ベセルナクリーム5%」は、免疫を活性化して治療する薬であり、サイトカインの産生促進によるウイルス増殖抑制作用と細胞性免疫応答の賦活化によるウイルス感染細胞障害作用を示し、患者の持つウイルス感染防御機構を利用して、病変を消失させると考えられている。アメリカ、タイなどではアルダラの名前ですでに認可済みの治療薬で、多くの患者の治療に以前から使用されており、治療の実績も高い。現在は、日本でも保険診療で使用できるようになった。治癒までに時間がかかる(1か月以上)が有効な方法である。確実に治療すれば再発率は低い。外科療法との併用も可能である。使用に慣れた産婦人科、皮膚科、泌尿器科医に相談することをお勧めする。
他の薬物治療は保険診療が認められていないので注意がいる。ポドフィリン、5FU軟膏、ブレオマイシン軟膏は正常の皮膚細胞にもダメージを与えるので、皮膚炎・皮膚糜爛(びらん)・皮膚潰瘍などの副作用が出現する可能性がある。また、ブレオマイシン軟膏は強力な抗生剤としての作用も持ち合わせているので、菌交代現象としてカンジダなどの真菌が増殖し、カンジダ性亀頭包皮炎やカンジダ性膣炎を併発する場合がある[1]。
一般に予後はよいが完治するまで長期となるばあいがある。女性も男性も、症状がなくなり、病変が消えて半年以上再発がなければ完治と考える。 次々と再発する場合には根気が必要となってくる。再発の多くは完治していないことが原因である。HPVはいぼの周辺の正常組織にも潜伏していることがあるからである。外科切除の場合は、やや大きめに切除する必要がある。AIDS患者など免疫が抑制されている患者や免疫抑制剤を内服している患者では難治性であり、再発を繰り返す。外科的治療のみでは再発することが多いため、再発者には、上記、ベセルナクリームを併用することをお勧めする。
VD(性行為感染症)である本病は禁欲が最大の予防策である。 一般にコンドームの使用による予防効果は極めて高いが、性器の周囲にもウイルスが潜伏していることがあるため、最近の疫学調査では必ずしも完全ではないとされている。よく、相手の性器を確認することが重要とされているが、無症候の潜伏期間である場合も多く不完全である。完全な予防法としては、以下があげられる。いずれもお互いに1年以上誰とも性行為を行っていないことが最低条件である。
米国メルク社より尖圭コンジローマと子宮頸癌の原因ウイルスであるHPV6,11,16,18型のワクチン、商品名「GARDASIL(ガーダシル)」が開発され、2011年8月、日本国内でも承認され、接種可能となった。
さらに9月より、中1から高2生を対象が助成対象となり、原則無料接種が可能となっている。
HPVに感染していない女性を対象にした大規模臨床試験では80%近い予防効果があったと報告されている。すでにHPVに感染した人に対する治験は行われていないが、HPVを排除する効果はない。英国グラクソスミスクライン社の開発ワクチンが2009年10月に日本でも認可された。
他に、HPV感染によって発症する疾患としては、以下が挙げられる。
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リンク元 | 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則」「性感染症」「産婦人科学」「ヒトパピローマウイルス」「condylomata acuminata」 |
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(五類感染症)
第三章 感染症に関する情報の収集及び公表
(医師の届出)
(指定届出機関の指定の基準)
一 | RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、水痘、手足口病、伝染性紅斑、突発性発しん、百日咳、ヘルパンギーナ及び流行性耳下腺炎 | 診療科名中に小児科を含む病院又は診療所 |
二 | インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。) | 診療科名中に内科又は小児科を含む病院又は診療所 |
三 | 急性出血性結膜炎及び流行性角結膜炎 | 診療科名中に眼科を含む病院又は診療所 |
四 | 性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ及び淋菌感染症 | 診療科名中に産婦人科若しくは産科若しくは婦人科、医療法施行令(昭和二十三年政令第三百二十六号)第三条の二第一項第一号ハ及びニ(2)の規定により性感染症と組み合わせた名称を診療科名とする診療科又は泌尿器科若しくは皮膚科を含む病院又は診療所 |
五 | クラミジア肺炎、(オウム病を除く。)、細菌性髄膜炎、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、マイコプラズマ肺炎、無菌性髄膜炎、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、薬剤耐性アシネトバクター感染症及び薬剤耐性緑膿菌感染症 | 患者を三百人以上収容する施設を有する病院であって、その診療科名中に内科及び外科を含むもの |
(感染症の発生の状況及び動向の把握)
♂:淋菌性尿道炎 > クラミジア性尿道炎 > 性器ヘルペス > 尖圭コンジローマ ♀:クラミジア性尿道炎 > 性器ヘルペス > 尖圭コンジローマ > 淋菌性尿道炎
病原体 | 感染症 | 原因ウイルス |
ウイルス | 性器ヘルペス | 単純ヘルペスウイルス |
尖圭コンジローマ、子宮頚癌 | ヒト乳頭腫ウイルス | |
B型肝炎 | B型肝炎ウイルス | |
C型肝炎 | C型肝炎ウイルス | |
エイズ | ヒト免疫不全ウイルス | |
成人T細胞白血病 | ヒトTリンパ球向性ウイルス | |
サイトメガロウイルス感染症 | サイトメガロウイルス | |
伝染性軟属腫 | 伝染性軟属腫ウイルス | |
伝染性単核症 | EBウイルス | |
細菌 | 梅毒 | 梅毒トレポネーマ |
性器クラミジア感染症 | クラミジア・トラコマチス | |
淋病 | 淋菌 | |
軟性下疳 | ヘモフィルス・デュクレイ | |
鼠径部肉芽腫 | 肉芽腫カリマトバクテリウム | |
赤痢 | 赤痢菌 | |
非淋菌性尿道炎 | クラミジア・トラコマチス、マイコプラズマ、ウレアプラズマ | |
真菌 | 口腔カンジダ症 | カンジダ |
非淋菌性尿道炎 | カンジダ | |
寄生虫、 原虫 |
いろいろ | トリコモナス |
非淋菌性尿道炎 | 腟トリコモナス | |
アメーバ赤痢 | 赤痢アメーバ | |
毛ジラミ症 | Phthirus pubis | |
疥癬 | 疥癬虫 | |
白癬 | Trichophyton rubrum, Trichophyton mentagrophytes | |
ランブル鞭毛虫下痢症 | ランブル鞭毛虫 |
-condylomata
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