分岐鎖アミノ酸
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分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acids、BCAA)とは、分岐(任意の炭素原子に2以上の別の炭素眼原子が結合)のある脂肪族側鎖を有するアミノ酸である。タンパク質を構成するアミノ酸では、ロイシン、イソロイシンおよびバリンの3種の分岐鎖アミノ酸がある[1]。
先述の3種の分岐鎖アミノ酸はヒトでは必須アミノ酸であり、筋タンパク質中の必須アミノ酸の35%を占め、哺乳類にとって必要とされるアミノ酸の40%を占める[2]。分岐鎖アミノ酸は臨床では、火傷の治療や[3]、肝性脳症の治療に用いられている[4]。
目次
- 1 分解
- 2 出典
- 3 参考文献
- 4 関連項目
- 5 外部リンク
分解
分岐鎖アミノ酸の分解には分岐鎖α-ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体(BCKDH)が関与している。この複合体が欠損すると、分岐鎖アミノ酸およびその毒性副産物が血液や尿に蓄積し、メープルシロップ尿症が発症する。関与する酵素は分枝鎖アミノトランスフェラーゼと3-メチル-2-オキソブタン酸デヒドロゲナーゼ (2-メチルプロパノイル基転移)である。BCKDH複合体によって分枝鎖アミノ酸はアシルCoA誘導体に変換され、これは続いてアセチルCoAもしくはスクシニルCoAとなり、最終的にクエン酸回路に組み込まれる[5]。
出典
- ^ Sowers, Strakie. “A Primer On Branched Chain Amino Acids”. Huntington College of Health Sciences. 2011年3月22日閲覧。
- ^ "Exercise Promotes BCAA Catabolism: Effects of BCAA Supplementation on Skeletal Muscle during Exercise". J. Nutr. 134 (6): 1583S–1587S. 2004. Retrieved 22 March 2011.
- ^ "Therapeutic use of branched-chain amino acids in burn, trauma, and sepsis". J. Nutr. 1 Suppl 136 (30): 8S–13S. 2006. Retrieved 22 March 2011.
- ^ "Nutrition in hepatic encephalopathy". Nutr Clin Pract. 25 (3): 257–64. 2010. doi:10.1177/0884533610368712.
- ^ "Mechanisms of human insulin resistance and thiazolidinedione-mediated insulin sensitization". Proc. Nat. Acad. Sci. USA 106 (44): 18745–18750. 2009. doi:10.1073/pnas.0903032106. Retrieved 22 March 2011.
参考文献
- Karlsson HK, Nilsson PA, Nilsson J, Chibalin AV, Zierath JR, Blomstrand E (2004). "Branched-chain amino acids increase p70S6k phosphorylation in human skeletal muscle after resistance exercise". Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 287 (1): E1–7. doi:10.1152/ajpendo.00430.2003. PMID 14998784.
- Blomstrand E, Eliasson J, Karlsson HK, Köhnke R (2006). "Branched-chain amino acids activate key enzymes in protein synthesis after physical exercise". J. Nutr. 136 (1 Suppl): 269S–73S. PMID 16365096.
- Norton LE, Layman DK (2006). "Leucine regulates translation initiation of protein synthesis in skeletal muscle after exercise". J. Nutr. 136 (2): 533S–537S. PMID 16424142.
関連項目
外部リンク
- Branched-chain amino acids - the US National Library of Medicine Medical Subject Headings (MeSH)
タンパク質を構成するアミノ酸 |
|
主なトピック |
|
|
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特性 |
脂肪族
|
- 分枝鎖アミノ酸 (バリン
- イソロイシン
- ロイシン)
- メチオニン
- アラニン
- プロリン
- グリシン
|
|
芳香族
|
- フェニルアラニン
- チロシン
- トリプトファン
- ヒスチジン
|
|
極性なし
|
|
|
正電荷 (pKa)
|
- リシン (≈10.8)
- アルギニン (≈12.5)
- ヒスチジン (≈6.1)
|
|
負電荷 (pKa)
|
- アスパラギン酸 (≈3.9)
- グルタミン酸 (≈4.1)
- システイン (≈8.3)
- チロシン (≈10.1)
|
|
|
分類 |
- 必須アミノ酸
- ケト原性アミノ酸
- 糖原性アミノ酸
- タンパク質を構成しないアミノ酸(英語版)
|
|
主要な生体物質:炭水化物(アルコール、糖タンパク質、配糖体) · 脂質(エイコサノイド · 脂肪酸/脂肪酸の代謝中間体 · リン脂質 · スフィンゴ脂質 · ステロイド) · 核酸(核酸塩基 · ヌクレオチド代謝中間体) · タンパク質(タンパク質を構成するアミノ酸/アミノ酸の代謝中間体) · テトラピロール · ヘムの代謝中間体 |
|
アミノ酸代謝の代謝中間体 |
|
ケト原性アミノ酸(K)
→アセチルCoA |
リシン→
|
サッカロピン - アリシン - α-アミノアジピン酸 - グルタリルCoA - グルタコニルCoA - クロトニルCoA - β-ヒドロキシブチリルCoA
|
|
ロイシン→
|
α-ケトイソカプロン酸 - イソバレリルCoA - 3-メチルクロトニルCoA - 3-メチルグルタコニルCoA - ヒドロキシメチルグルタリルCoA
|
|
トリプトファン→アラニン→
|
N'-ホルミルキヌレニン - キヌレニン - アントラニル酸 - 3-ヒドロキシキヌレニン - 3-ヒドロキシアントラニル酸 - 2-アミノ-3-カルボキシムコン酸セミアルデヒド - 2-アミノムコン酸セミアルデヒド - 2-アミノムコン酸 - グルタリルCoA
|
|
|
糖原性アミノ酸(G) |
G→ピルビン酸→クエン酸
|
グリシン→セリン→
|
3-ホスホグリセリン酸
グリシン→クレアチン: グリコシアミン · クレアチンリン酸 · クレアチニン
|
|
|
G→グルタミン酸→
α-ケトグルタル酸
|
ヒスチジン→
|
ウロカニン酸 - イミダゾール-4-オン-5-プロピオン酸 - ホルムイミノグルタミン酸 - グルタミン酸-1-セミアルデヒド
|
|
プロリン→
|
1-ピロリン-5-カルボン酸
|
|
アルギニン→
|
オルニチン - プトレシン - アグマチン
|
|
他
|
システイン+グルタミン酸→グルタチオン: γ-グルタミルシステイン
|
|
|
G→プロピオニルCoA→
スクシニルCoA
|
バリン→
|
α-ケトイソ吉草酸 - イソブチリルCoA - メタクリリルCoA - 3-ヒドロキシイソブチリルCoA - 3-ヒドロキシイソ酪酸 - 2-メチル-3-オキソプロパン酸
|
|
イソロイシン→
|
2,3-ジヒドロキシ-3-メチルペンタン酸 - 2-メチルブチリルCoA - チグリルCoA - 2-メチルアセトアセチルCoA
|
|
メチオニン→
|
S-アデノシルメチオニン - S-アデノシル-L-ホモシステイン - ホモシステイン - シスタチオニン - α-ケト酪酸
|
|
トレオニン→
|
α-ケト酪酸
|
|
プロピオニルCoA→
|
メチルマロニルCoA
|
|
|
G→フマル酸
|
|
フェニルアラニン→チロシン→
|
4-ヒドロキシフェニルピルビン酸 - ホモゲンチジン酸 - 4-マレイルアセト酢酸 - 4-フマリルアセト酢酸
|
|
|
G→オキサロ酢酸
|
尿素回路を参照
|
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|
その他 |
|
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- COPD患者の低栄養の対策 (特集 COPD治療の新時代 : 21世紀の「社会的」生活習慣病) -- (全身疾患COPDの治療と対策)
- 脾静脈-下大静脈短絡による高アンモニア血症を呈し, balloon-occluded retrograde transvenous obliteration ; B-RTO(バルーン下逆行性経静脈的塞栓術)により著明に改善した血液透析患者の1例
- 小島 史子,上田 美緒,斎藤 まどか [他],田中 好子,唐鎌 優子,輿石 剛,新田 孝作,秋葉 隆
- 日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy 45(3), 267-272, 2012-03-28
- … た脾静脈を認め,脾静脈から左精巣静脈を経て下大静脈へ至る短絡を認めた.血管造影で短絡が確認され,門脈大循環系短絡による高アンモニア血症と診断された.高アンモニア血症の原因として,肝硬変は否定された.分枝鎖アミノ酸製剤の点滴後も血中アンモニア値の充分な低下を認めなかったため,B-RTOを施行した.術後血中アンモニア値は正常化し,現在9か月を経過しているが,再発を認めず経過良好である. …
- NAID 10030813542
- SF-072-5 生体肝移植術後菌血症に対する分枝鎖アミノ酸の効果に関する研究(SF-072 サージカルフォーラム(72)肝 移植-1,第112回日本外科学会定期学術集会)
- 的野 る美,調 憲,吉屋 匠平,武藤 純,間野 洋平,本村 貴志,戸島 剛男,橋本 直隆,森田 和豊,萱島 寛人,池上 徹,吉住 朋晴,武冨 紹信,前原 喜彦
- 日本外科学会雑誌 113(臨時増刊号_2), 382, 2012-03-05
- NAID 110009548277
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- タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、ヒトの体内で合成できない9種類を必須 アミノ酸という。そのうち側鎖に枝分かれした炭素鎖をもつアミノ酸、すなわちバリン・ ロイシン・イソロイシンを分枝鎖アミノ酸(BCAA)という。 筋肉を構成している必須 アミノ酸の ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- branched-chain amino acid branched chain amino acid BCAA
- 同
- 分枝鎖アミノ酸 分枝アミノ酸 分岐鎖アミノ酸
- 商
- ヘパンED、アミノレバンEN、ヒカリレバン、テルフィス、リバレバン、フズレバン
- 関
- 芳香族アミノ酸 AAA、アミノ酸、フィッシャー比
[show details]
治療目的として
- 外傷患者や肝性脳症患者の栄養剤に含まれる。(ICU.737)
- 外傷患者 :分岐鎖アミノ酸は骨格筋の栄養源として利用され、筋肉の他の蛋白がエネルギー産生のために分解されるのを防ぐ。(ICU.737)
- 肝性脳症患者:芳香族アミノ酸の中枢神経系への取り込みが分岐鎖アミノ酸によって拮抗される。これにより肝性脳症の発症と関わっている偽神経伝達物質(芳香族アミノ酸の分解による)の産生を防ぐことができる。(ICU.737)
[★]
- 英
- amino acid
- 関
- ケト原性アミノ酸、糖原性アミノ酸
定義
- L-アミノ酸、D-アミノ酸がある。一般的に生合成されるポリペプチドはL-アミノ酸を材料としている。D-アミノ酸は細菌が産生し、ごく短いペプチドとして特に、細胞壁に存在する。これはペプチダーゼによる分解を免れるためと言われている。D-アミノ酸を含むポリペプチドは、通常の翻訳経路で生合成されない。(FB.58)
- ケト原性:Leu, Lys
- 糖原性/ケト原性:Ile, Phe, Trp
- 糖原性:Met, Thr, Val, Arg, His
- ArgとHisは成長期に必要
- PriVaTe TIM HALL
一覧
分類
|
極性
|
電荷
|
名前
|
1
|
3
|
糖原性
|
ケトン原性
|
必須アミノ酸
|
分枝アミノ酸
|
|
pK1 α-COOH
|
pK2 α-NH2
|
pKR 側鎖
|
側鎖
|
疎水性アミノ酸
|
無
|
無
|
グリシン
|
G
|
Gly
|
|
|
|
|
|
2.35
|
9.78
|
|
―H
|
無
|
無
|
アラニン
|
A
|
Ala
|
|
|
|
|
|
2.35
|
9.87
|
|
―CH3
|
無
|
無
|
バリン
|
V
|
Val
|
|
|
○
|
○
|
|
2.29
|
9.74
|
|
―CH(CH3)2
|
無
|
無
|
フェニルアラニン
|
F
|
Phe
|
○
|
○
|
○3
|
|
|
2.2
|
9.31
|
|
―○C6H5
|
無
|
無
|
プロリン
|
P
|
Pro
|
|
|
|
|
|
1.95
|
10.64
|
|
αCとNH2の間に ―CH2CH2CH2-
|
無
|
無
|
メチオニン
|
M
|
Met
|
|
|
○2
|
|
|
2.13
|
9.28
|
|
―CH2CH2-S-CH3
|
無
|
無
|
イソロイシン
|
I
|
Ile
|
○
|
○
|
○
|
○
|
|
2.32
|
9.76
|
|
―CH(CH3)CH2CH3
|
無
|
無
|
ロイシン
|
L
|
Leu
|
|
○
|
○
|
○
|
|
2.33
|
9.74
|
|
―CH2CH(CH3)2
|
荷電アミノ酸
|
有
|
酸性
|
アスパラギン酸
|
D
|
Asp
|
|
|
|
|
|
1.99
|
9.9
|
3.9 β-COOH
|
―CH2COOH
|
有
|
酸性
|
グルタミン酸
|
E
|
Glu
|
|
|
|
|
|
2.1
|
9.47
|
4.07 γ-COOH
|
―CH2CH2COOH
|
有
|
塩基性
|
リシン
|
K
|
Lys
|
|
○
|
○
|
|
|
2.16
|
9.06
|
10.54 ε-NH2
|
側鎖のCH2は4つ ―-CH2CH2CH2CH2NH2
|
有
|
塩基性
|
アルギニン
|
R
|
Arg
|
|
|
○1
|
|
|
1.82
|
8.99
|
12.48 グアニジウム基
|
側鎖のCH2は3つ ―CH2CH2CH2-NH-C-(NH2)NH
|
極性アミノ酸
|
有
|
無
|
セリン
|
S
|
Ser
|
|
|
|
|
|
2.19
|
9.21
|
|
―CH2OH
|
有
|
無
|
スレオニン
|
T
|
Thr
|
○
|
○
|
○
|
|
|
2.09
|
9.1
|
|
―CH(CH3)OH
|
有
|
無
|
チロシン
|
Y
|
Tyh
|
○
|
○
|
|
|
|
2.2
|
9.21
|
10.46 フェノール
|
―CH2-φ
|
有
|
塩基性
|
ヒスチジン
|
H
|
His
|
|
|
○
|
|
|
1.8
|
9.33
|
6.04 イミダゾール基
|
―CH2-C3H3N2
|
有
|
無
|
システイン
|
C
|
Cys
|
|
|
|
|
|
1.92
|
10.7
|
8.37 -SH基
|
―CH2-SH
|
有
|
無
|
アスパラギン
|
N
|
Asn
|
|
|
|
|
|
2.14
|
8.72
|
|
―CH2-CO-NH2
|
有
|
無
|
グルタミン
|
Q
|
Gln
|
|
|
|
|
|
2.17
|
9.13
|
|
―CH2-CH2-CO-NH2
|
無
|
無
|
トリプトファン
|
W
|
Trp
|
○
|
○
|
○
|
|
|
2.46
|
9.41
|
|
―Indol ring
|
1 人体で合成できるが、不十分。
|
2 Cysが足らなければ、Metから合成することになる。
|
必須アミノ酸
参考
[★]
- 英
- branching、arborization、arbor、branched chain、ramification、branch、branched
- 関
- 枝分れ、側鎖、部門、ブランチ、分岐部、分枝鎖、分枝状、木本、支流、枝、分岐鎖
[★]
- 英
- acid
- 関
- 塩基
ブランステッド-ローリーの定義
ルイスの定義
[★]
- 英
- chain、strand
- 関
- 鎖式、鎖状、ストランド、チェーン
[★]
- 英
- branched chain
- 関
- 側鎖、分枝、分岐鎖