- 英
- methemoglobinemia
- 同
- MetHb血症
- 関
- 遺伝性メトヘモグロビン血症、メトヘモグロビン
定義
- メトヘモグロビンが約15g/L以上に増加し、チアノーゼに始まり、呼吸困難、頭痛、めまいなどを呈する病態。
- MetHbが1%以上に増加した病態
病因
- a) 酵素の欠損によりメトヘモグロビンを還元できない:NADHシトクロム還元酵素欠損:methemoglobin reductase, NADP diaphorase
- b) ヘムをferric stateに安定化できないヘモグロビン:Hb M Iwata(α87His→Tyr)
- a) 過酸化物による(亜硝酸ナトリウム、ニトログリセリン、サルファ剤、ニトロベンゼンなど)
- アセトアニリド、フェナセチン
病態生理
- HIM.640
- メトヘモグロビンは酸素との親和性が高く酸素運搬能がない → >50-60%以上で致死的
- メトヘモグロビンはbluish-brown muddy colorを呈しており、cyanosisに似る → メトヘモグロビン血症ではチアノーゼ様に見えやすい、ということか
治療
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/10/19 15:18:52」(JST)
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メトヘモグロビン血症(メトヘモグロビンけつしょう)とは、血液中にメトヘモグロビンが多い状態を言う。チアノーゼを起こす代表的疾患のひとつ。チアノーゼとは、唇や爪が鮮やかな赤ではなく、静脈血のような紫色になっている身体所見を指す言葉である。チアノーゼを起こす頻度の高い原因は、肺疾患(肺炎や肺気腫などで、直接的に血液に酸素を取り入れられなくなる)や心疾患(心不全を起こすと、肺に水がたまり酸素をうまく取り入れられなくなる、あるいは右左シャント)であるが、特に新生児を含む若い人がほかに原因のないチアノーゼをきたしているようならメトヘモグロビン血症の診断が検討される。(ブルー・ベビー症候群)
目次
- 1 病態
- 2 原因
- 3 症状
- 4 検査所見
- 5 メトヘモグロビンの飽和度
- 6 鑑別疾患
- 7 治療
- 8 ヒト以外の動物におけるメトヘモグロビン血症
- 9 脚注
- 10 参考文献
|
病態
メトヘモグロビンは、ヘモグロビンに配位されている二価の鉄イオンが三価になっているものである。メトヘモグロビンは正常な体内でもごくわずかに産生されており、シトクロームb5還元酵素によって二価に還元される。メトヘモグロビンは酸素を運搬できないため、何らかの原因によりこれが体内に過剰になると、体の臓器が酸素欠乏状態に陥る。
原因
- 先天性: まれ。
- シトクロームb5還元酵素欠乏症は、メトヘモグロビンを代謝する酵素の先天性の異常で、常染色体劣性遺伝形式を示す。世界で一例だけ、シトクロームb5還元酵素欠乏症によるメトヘモグロビン血症の報告がある。
- Mヘモグロビン血症は異常ヘモグロビンを原因とするメトヘモグロビン血症で、常染色体優性遺伝形式を示す。
- 後天性
- 解熱鎮痛剤のフェナセチン、虚血性心疾患治療剤の硝酸イソソルビドなどの医薬品による副作用。
- 飲食物中の硝酸態窒素(特に井戸水に混入したもの)が腸内細菌により亜硝酸(ヘモグロビンを酸化しうる)になると、乳児においてメトヘモグロビン血症を引き起こすことがある(欧米では死亡例も)。いわゆるブルーベビー症。複数の原因が考えられている。
- 乳児では、成人と比べて、胃内のpHが高く(胃酸が弱く)、結果として腸内細菌が増殖している。
- 乳児の持つヘモグロビンFは、酸化を受けやすいためメトヘモグロビンが産生されやすい。
- 乳児の場合まだシトクロームb5還元酵素の活性が50-60%でしかなく、メトヘモグロビンの還元が不十分である。
- 硝酸態窒素を含む肥料が大量に施肥され、上記のように地下水が硝酸態窒素に汚染されたり、葉物野菜の中に大量の硝酸態窒素が残留することがある。人間を含む動物がこのような硝酸態窒素を大量に摂取すると、体内で亜硝酸態窒素に還元され、この亜硝酸がヘモグロビンをメトヘモグロビンに酸化してメトヘモグロビン血症を引き起こす可能性がある[1][2]。
- 窒素酸化物(NO、NO2等)を吸入するとメトヘモグロビンが生成する[3]。
症状
- チアノーゼ
- 通常のチアノーゼは血中にデオキシヘモグロビンが5g/dLをこえると出現するが、メトヘモグロビンは1.5g/dL程度の濃度でもチアノーゼをきたす。デオキシヘモグロビンが5g/dL以上というのは重篤な状態を意味する。したがって、ほかに特に症状のない(元気な)単独のチアノーゼの所見はメトヘモグロビン血症を示唆する所見のひとつである。なお、通常のヘモグロビン濃度(Hb)は、男性13-18g/dL、女性11.5-16.5g/dL (基準下限値を下回ると貧血とされる)である[4]。このことからメトヘモグロビン1.5g/dLは、通常のヘモグロビン濃度と比較して10%あるいはそれ以上を占めていることになる。
- 慢性の経過をきたす先天性では、チアノーゼ以外の症状はほとんどない。ただし、シトクロームb5還元酵素がほぼ欠損している場合(Type II)には、種々の神経障害や発達遅延などをきたし、予後が悪い。
- 後天性における急性発症では、頭痛などの全身症状や呼吸苦、呼吸抑制、意識障害、さらには死に至ることもある。
検査所見
- 動脈血を採血したはずなのに、真っ黒(あるいはチョコレート色)な血がひかれることがある。
- もしメトヘモグロビン血症であるなら、その後測定した動脈血中酸素濃度とその色とが乖離している。
- パルスオキシメーターによる酸素飽和度は正確な値を示さず、低値を示す。
- 動脈血中酸素濃度から計算した酸素飽和度との差はsaturation gapと呼ばれ、診断に有用である。
- メトヘモグロビン濃度の上昇(確定診断)
- 血液を置いておくとメトヘモグロビン濃度は上昇するため、できるだけ早く検査する必要がある。
メトヘモグロビンの飽和度
メトヘモグロビンの飽和度は、メトヘモグロビンのヘモグロビンとのパーセンテージで表現される。以下で言うmetHbとはメトヘモグロビンのことをいい、ヘモグロビンとの比率を表す。
1-2%のmetHb 通常
10% 以下のmetHb – 症状なし
10-20% のmetHb – 皮膚の変色のみ(鼻粘膜で最も目立つ)
20-30% のmetHb – 不安、頭痛、作業時の呼吸困難
30-50% のmetHb – 疲労、精神錯乱、めまい、頻呼吸、動悸
50-70% のmetHb – 昏睡、発作、不整脈、アシドーシス
70% 以上のmetHb –死亡
鑑別疾患
- 冒頭で述べた肺疾患、心疾患
- スルフヘモグロビン血症
治療
- 急性期には、メチレンブルーの投与、交換輸血、酸素投与など。
- メトヘモグロビン血症の原因となったと思われる薬剤を中止し、今後の投与を避ける。
- 先天性においては、硝酸をふくむような飲食物の摂取を避ける。
ヒト以外の動物におけるメトヘモグロビン血症
ウシなどの反芻動物では、硝酸態窒素の過剰摂取があると、第一胃細菌の硝酸還元酵素によって亜硝酸が生成され、メトヘモグロビン血症の原因となる。富山市ファミリーパークでのグレビーシマウマが肺水腫による呼吸不全で死んだケース[5]では、血液検査により90ppmの硝酸態窒素が検出された[6]。
ヒトと同様に治療にはメチレンブルーの投与が有効である。
脚注
- ^ 硝酸態窒素
- ^ http://www.vegetea.affrc.go.jp/joho/manual/shousan/shousanmanual.pdf
- ^ http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/file/40746/20101214101718/101_473.pdf
- ^ 杉本恒明、矢崎義雄 総編集 『内科学』第9版p.1558、朝倉書店、2007年、ISBN 978-4-254-32230-9
- ^ http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20101125-OYT1T00387.htm
- ^ http://www.yomiuri.co.jp/feature/20090128-945694/news/20101123-OYT1T00500.htm
参考文献
- 鎌田信一ほか編 『獣医衛生学』 文永堂出版 2005年 ISBN 9784830031991
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 野菜ジュースの窒素汚染と次亜塩素酸ナトリウムによる除去について
- P-14 メトヘモグロビン血症を合併した摂食障害の一例(摂食障害1,ポスターディスカッション,ストレス時代の『こころ』と『からだ』,第51回日本心身医学会総会ならびに学術講演会)
- ソラマメ摂取により溶血性貧血・メトヘモグロビン血症を呈したグルコース6リン酸脱水素酵素異常症の1例
- 全身麻酔下口腔外科手術の導入時にSpO_2の低下により発見された遺伝性メトヘモグロビン血症の1症例
- 福森 洋平,宮本 智行,林 寧,真田 達夫,脇田 亮,小長谷 光,海野 雅浩
- 日本歯科麻酔学会雑誌 37(3), 321-322, 2009-07-15
- NAID 10025694542
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- メトヘモグロビン血症. メトヘモグロビンとは赤血球内のヘモグロビン中の核をなす2価の 鉄イオンが酸化されて3価の鉄イオンになったものであり,酸素結合・運搬能力が失われ た状態である。血液中のメトヘモグロビンが1‐2%以上に増加した状態をいう。遺伝性と ...
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[★]
- 英
- cyanosis
- 同
- 青色症 cyanopathy
- 関
- デオキシヘモグロビン
定義
- 皮膚や粘膜の赤青色(暗赤色)に変化すること
- デオキシヘモグロビン(還元Hb)が5g/dl以上
- 異常ヘモグロビン(methemoglobin, sulfhemoglobinなど)が0.5 g/dL以上
- 救急医学の分野ではSpO2<70%をチアノーゼとしている、らしい(日本救急医学会の出版物参照)
分類
病態生理
- 中心性チアノーゼ:呼吸器疾患、肺内・心内シャント、中枢神経系疾患による低酸素血症。異常ヘモグロビン血症
- 末梢性チアノーゼ:末梢循環不全(心不全などの心拍出量や動脈閉塞など)
- 解離性チアノーゼ:動脈管開存症に大動脈縮窄症を伴う場合(上半身ピンク、下半身チアノーゼ)など
チアノーゼを来す疾患
- IMD.497 YN.C-16
病態生理
- 中心性チアノーゼの病態は低酸素血症といえるので、低酸素血症の病態に準じた症状が出現する、と思う。
身体所見
- 末梢では、口唇、頬部、鼻尖部、耳たぶ、爪床でチアノーゼが目立つ。
[★]
- 英
- hemoglobinopathy, abnormal hemoglobin disease
- 同
- ヘモグロビノパシー、異常血色素症
- グロビン自体の蛋白質のしての質的異常により引き起こされる異常 ⇔ グロビンの量的なバランスの異常により引き起こされるのはサラセミアであろう。
分類
- IMD.960
- Hb Geneva , β鎖
- Hb Hammersmith , β鎖
- Hb Tochigi , β鎖
- Hb Bristol , β鎖
- Hb Mizuno , β鎖
- Hb Koln , β鎖*低酸素親和性ヘモグロビン症
- Hb Kansas
- Hb Yoshizuka
- Hb Rahere
- Hb Province
- Hb Chesapeake
- Hb SanDiego
- Hb Hiroshima
- Hb M Boston
- Hb M Iwate
- Hb M Saskatoon
- Hb M Hyde Park
症状
[★]
- 英
- methylene blue
- 同
- メチルチオニン methylthionine、Urolene Blue
- 関
- 染色法、メトヘモグロビン血症
構造
- 強酸との塩なので、液性は塩基性
臨床関連
- intravenous methylene blue for methemoglobin fraction > 30%, symptomatic hypoxia, or ischemia (contraindicated in G6PD deficiency) (HIM. Chapter e35)
参考
- 1. [charged] メトヘモグロビン血症の臨床的特徴、診断、および治療 - uptodate [1]
- 2. wiki ja
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%81%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC
商品名
会社名
成分
薬効分類
薬効
[★]
- 英
- calcium hypochlorite poisoning
- 関
- 次亜塩素酸カルシウム
有害作用
- 局所刺激作用のほか、酸化作用(→メトヘモグロビン血症)がある。
症状
[★]
メトヘモグロビン血症
[★]
- 英
- idiopathic methemoglobinemia
- 関
- ストックフィス-タルマ症候群、メトヘモグロビン血症
[★]
- 英
- congenital methemoglobinemia
- 関
- 遺伝性メトヘモグロビン血症、メトヘモグロビン血症
[★]
- 英
- acquired methemoglobinemia
[★]
- 英
- methemoglobin, metHb, MetHb, MHg
- 同
- 酸化ヘモグロビン、フェリヘモグロビン ferrihemoglobin
- 関
- ヘモグロビン, Hemoglobin M
- ヘモグロビンは4つのサブユニット(α鎖2つ、β鎖2つ)からなり、それぞれがFe2+を配位したヘムを有する。
- この4分子存在するヘムがすべて酸化されFe3+となったヘモグロビンをメトヘモグロビンと呼ぶ
- メトヘモグロビンはO2のへ結合能を失う
- 血液の色は茶色っぽくなる? (FB.111)
メトヘモグロビンを生成させる物質
治療薬
[★]
- 英
- sis, pathy
[★]
- 英
- globin
- 同
- グロビン蛋白質 globin protein
- 関
[★]
- 英
- bottle
- 関
- ビンづめ