ブルガダ症候群
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ブルガダ症候群(ブルガダしょうこうぐん、英: Brugada syndrome)は、1992年にスペイン人医師ペドロ・ブルガダとその兄弟によって報告された心疾患[1]。ブルガーダ症候群とも呼ばれる。重篤な不整脈である心室細動により失神し、死に至る場合がある。
概要[編集]
心筋細胞の細胞膜上にあるナトリウム・チャンネルのαサブユニットをコードしている遺伝子の変異に原因がある例が認められる。問題の遺伝子SCN5Aは第3染色体の短腕 (3p21) 上に位置する。遺伝子の変異により右室心外膜における活動電位時間が著明に短縮し、貫壁性の再分極状態のばらつきが大きくなるため、心室細動を起こしやすくなると考えられている。変異したナトリウム・イオンチャンネルがアンキリン-Gと結合できないため、心臓活動電位が変化すると考えられている。アンキリン-Gは、細胞骨格とイオンチャンネルの相互作用を調停する膜骨格タンパク質である。なお遺伝子の変異は、常染色体優性で遺伝する。しかし、遺伝子異常は検索されても20%程度のみにしか認められず、すべての症例がSCN5Aの異常で説明されるわけではない。
ブルガダ症候群に見られる心電図の波形 A:健康な心臓 B:ブルガダ症候群 V2ではST上昇(赤矢印)がはっきり現れている
心電図で、典型的には右脚ブロック様波形(V1,2のrSR’パターン)とV1~V3にかけてのcoved型、またはsaddleback型のST上昇を来す。心室細動の他に発作性心房細動を来すこともある。自律神経の影響から夜間に突然死することもある。
キャリアの90%が男性で、1000人に1〜2人の割合で存在する。発作は心室細動でAED(体外用除細動器)またはICD(体内埋め込み型除細動器)などの電気ショックで回復する。心室細動の発作がいつ起こるか解らないため、ICDの利用が多くなってきている。ICDは電磁波によって誤作動の危険性もあり、社会的な環境保全が待たれる。電子調理器・盗難防止用電子ゲート・大型のジェネレーターなどが誤作動を誘発する恐れがある。
疫学[編集]
- Brugada症候群での不整脈イベントの発生は30~50歳で多いことが疫学調査から知られている。
- Brugada症候群をもち不整脈イベントを起こす患者の90%を男性が占める。
参考文献[編集]
- ^ Brugada, P.; Brugada, J. (1992). "Right bundle branch block, persistent ST segment elevation and sudden cardiac death: a distinct clinical and electrocardiographic syndrome. A multicenter report." J. Am. Coll. Cardiol. 20(6):1391–6. PMID 1309182
外部リンク[編集]
徳島大学名誉教授 森博愛によるBrugada症候群の解説
心血管疾患 |
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心疾患
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内科的治療
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心臓作動薬
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抗不整脈薬
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Ia群: プロカインアミド, キニジン
Ib群: リドカイン, フェニトイン
Ic群: フレカイニド, プロパフェノン
II群: 交感神経β受容体遮断薬(プロプラノロールなど)
III群: アミオダロン, ソタロール
IV群: カルシウム拮抗剤(ベラパミル, ジルチアゼムなど)
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心不全治療薬
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利尿薬 | 血管拡張薬 | 強心配糖体 | 強心剤
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狭心症治療薬
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交感神経β受容体遮断薬 | 硝酸薬
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血管作動薬
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高血圧治療薬
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利尿薬 | 交感神経β受容体遮断薬 | レニン-アンジオテンシン系 (ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、レニン阻害薬) | カルシウム拮抗剤 | アドレナリン作動薬 | 脂質降下薬
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循環器系の正常構造・生理 |
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Japanese Journal
- 特発性心室細動/Brugada症候群患者のリスク層別化 (シンポジウム 第64回福岡不整脈同好会)
- 症例報告 健康診断でBrugada型心電図が見逃されていた一例
Related Links
- Brugada症候群(ブルガダ症候群)とは. 近年、心臓突然死が社会的問題として広く注目 を集めています。心臓突然死の70~80%は心室細動が原因ですが、その中には明らか な器質的基礎疾患がない例があり、特発性心室細動(idiopathic ventricular ...
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★リンクテーブル★
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- 25歳の女性。呼吸困難を主訴に来院した。5日前から38℃前後の発熱、咽頭痛、上腹部痛および食欲低下があり、3日前に自宅近くの診療所で感冒に伴う胃腸炎と診断され総合感冒薬と整腸薬とを処方されたが症状は改善しなかった。昨夜から前胸部不快感が出現し、本日、呼吸困難が出現したため受診した。既往歴に特記すべきことはない。妊娠歴はない。最終月経は2週間前。意識は清明だが表情は苦悶様。体温 36.8℃。脈拍 92/分、整。血圧 72/48mmHg。呼吸数 36/分。SpO2 82%(room air)。四肢末梢の冷感を認める。口唇にチアノーゼを認める。頸静脈の怒張を認める。心音にⅢ音とⅣ音とを聴取する。呼吸音は両側でwheezesとcoarse cracklesとを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球 482万、Hb 14.1g/dL、Ht 41%、白血球 14,200、血小板 17万。血液生化学所見:総蛋白 6.4g/dL、アルブミン 3.8g/dL、総ビリルビン 1.1mg/dL、AST 519U/L、ALT 366U/L、LD 983U/L(基準 176~353)、CK 222U/L(基準 30~140)、尿素窒素 23mg/dL、クレアチニン 1.0mg/dL、血糖 199mg/dL、Na 128mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 99mEq/L。CRP 2.1mg/dL。心筋トロポニンT陽性。動脈血ガス分析(room air):pH 7.32、PaCO2 20Torr、PaO2 55Torr、HCO3- 10mEq/L。仰臥位のポータブル胸部エックス線写真(別冊No. 8A)、心電図(別冊No. 8B)及び心エコー図(別冊No. 8C)を別に示す。
- 最も可能性の高い疾患はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112A027]←[国試_112]→[112A029]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [107E033]←[国試_107]→[107E035]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [104D016]←[国試_104]→[104D018]
[★]
- 英
- Brugada syndrome
- 同
- Brugada症候群
- 関
概念
- 特発性心室細動をもたらす症候群の一つ。
- 基礎疾患を有さない若年者~中年の失神発作が特徴的
- 非発作時には無症状であるが、発作時には突然死を来す可能性がある。
- 反復する多型性心室頻拍、心室細動を来たし、放置すれば突然死に至。
歴史
- 1992年、Brugadaらは洞調律時に右脚ブロック様QRS波形、V1-V3においてST上昇を示し、心室細動を来した、器質疾患を有さない8例を報告。
病因
- SCN5A geneの突然変異 → Naの流入が緩徐@RV流出路心外膜領域 → 活動電位の短縮(action potential shortening → 正常な心外膜とrapidly depolarized RV outflow epicardiumの間の電位差によりV1-V3でのST上昇を起こす → 局所的リエントリ誘発 → 致死性心室不整脈 (HIM.1442)
- 心筋Naチャネル遺伝子SCN5Aの以上がが原因の20%を占めるが、その他CACNA1C,CACNB2,GPD1-L,SCN1B,KCNE3,SCNE3Bなど多くの遺伝子異常と関係があるとされる。
疫学
- 30-50歳代の男性に多い
- 若年から中年の男性に多く、20-30%は突然死の家族歴を有する。
- 日本や東南アジアに多く、日本では成人の1%にBrugada型心電図を認める。
症状
- 前駆症状を伴わない失神発作が初発症状。
- 反復する多型性心室頻拍、心室細動。
- 放置により突然死する可能性が大きい
- uptodate
- 突然死(sudden cardiac arest)は初発症状の1/3を占める。
- 不整脈は22-65歳で見られ、副交感神経が活発となる日中より夜間、起床中よりも就寝中にみられる。
- 突然死と運動とは無関係とされている。
検査
心電図
- 1)完全あるいは不完全右脚ブロック様QRS波形(つまり、V1-V3でJ波が見られる)
- V1,V2のrSの後ろにJ波が出現している。右脚ブロックのV1誘導の心電図ではrSr'が認められるが、さきのJ波があたかもr'の様に見え、右脚ブロック様QRS波形と称している
- 2)右側胸部誘導(V1-V2(V3))のST上昇(coved型あるいはsaddle back型)
- ST上昇はcoved型(右下がり。陰性T波)、saddle back型(J波とT波が高く、その間が低くなって鞍状のSTを呈する)のパターンを示す。J波の高さが2mm以上でcoved型ST上昇と陰性T波を示す所見が最も診断価値が高い。
[show details]
薬物誘発検査?(HIM.1442)
薬物負荷試験
- ピルシカイニドでcoved型ST上昇を誘発できるとされる。心室頻拍や心室細動を誘発することがある。
診断
治療
予後
ガイドライン
- QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_ohe_h.pdf
国試
[★]
- 英
- polymorphic ventricular tachycardia polymorphic VT, polymorphous ventricular tachycardia
- 関
- トルサード・ド・ポアンツ、不整脈、心室頻拍
概念
- 多形性心室頻拍は頻拍中のQRS波形が刻々と変化し、QRS波形が基線を中心にしてねじれているように見える。多くは非持続性で自然停止するが、時に心室細動に移行する。
分類
- QT延長を伴う:Torsades de pointes TdP → QT時間の延長を伴い、T波に続く心室性期外収縮によって誘発され、QRS波形が刻々と変化する多型性心室頻拍で、QRS波の振幅が基線の周りを捻じれるように変動する。
-
- 後天性QT延長症候群:薬剤(抗不整脈薬(Ia群、III群)、非心臓薬(向精神薬、抗生剤、抗アレルギー薬など)など)が多い。
- 心疾患有り:虚血、心不全、ショックなどの心機能低下に伴って起こる場合が多い
- 心疾患なし: → 特発性多形性心室頻拍
- Brugada症候群:胸部誘導(V1-V3)のST上昇が特徴。若年-壮年男性の突然死の原因
- カテコラミン誘発多形性心室頻拍:感情の高まり、運動、イソプロテレノールで誘発
- QT短縮症候群(SQTS)
- 明らかな誘因や心電図学的特徴が認められない特発性多形性心室頻拍・心室細動
治療
予防
参考
- 1. 不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)
- [display]http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf
[★]
- 英
- ST segment elevation
- 関
- ST segment
原因
- EAB.44
-
-
- ECGP.188
疾患とST上昇
[★]
- 英
- syndrome, symptom-complex
- 同
- 症状群
- 関
- [[]]
- 成因や病理学的所見からではなく、複数の症候の組み合わせによって診断される診断名あるいは疾患。
内分泌
先天的代謝異常
高プロラクチン血症
- 分娩後の視床下部障害によるプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制のため、高プロラクチン血症を呈する。
- 分娩に関係なくプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制をきたし、高プロラクチン血症を呈する。
性腺機能低下
- 嗅覚の低下・脱出、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
- 肥満、網膜色素変性症、知能低下、低ゴナドトロピン性性器発育不全、多指症、低身長
性早熟
- 思春期早発症、多発性線維性骨異形成症、皮膚色素沈着
- 女性型の肥満、性器の発育障害の2主徴を示し、視床下部に器質的障害をもつ疾患群。
脳神経外科・神経内科
[★]
- 英
- group
- 関
- グループ、集団、分類、群れ、基、グループ化
[★]
- 英
- symptom and sign
- 関
- 症状, 徴候 兆候