- 英
- blood brain barrier,blood-brain barrier, BBB
- 同
- 血液-脳関門
- 関
- 胎盤関門、血液空気関門
概念
- 図:SCN.146(血液脳関門が存在しない部位)
- 脂溶性の物質は通過しやすい
- アストロサイトは血管周囲を連続的に覆って層を形成し、血液脳関門を維持している (HIS.166)
- 脳の血管内皮細胞から排出ポンプであるP-glycoproteinが薬物を除去している (HAR.30,32f)
血液脳関門が存在しない部位
新生児における血液脳関門の機能低下(SPE.110)
- → 核黄疸(ビリルビン脳症)のリスクファクター (G10M.331)
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/04/26 11:49:21」(JST)
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血液脳関門(けつえきのうかんもん、英語: blood-brain barrier, BBB)とは、血液と脳(そして脊髄を含む中枢神経系)の組織液との間の物質交換を制限する機構である。これは実質的に「血液と脳脊髄液との間の物質交換を制限する機構」=血液髄液関門 (blood-CSF barrier) でもあることになる。ただし、血液脳関門は脳室周囲器官(松果体、脳下垂体、最後野など)には存在しない。これは、これらの組織が分泌するホルモンなどの物質を全身に運ぶ必要があるためである。
歴史
BBBの存在に最初に気づいたのは細菌学者のパウル・エールリッヒで、19世紀後半のことで、ある組織の染色実験中のときであった。この当時盛んに使用していた染料であるアニリンを使用して染色すると脳だけが染色されなかったためである。ただし、このときエールリッヒは、この現象を単に「アニリンの特性」としていた。
BBBの存在が決定的なものなったのは1913年のことで、エールリッヒの学生であったエドウィン・ゴールドマンが脊柱に直接染料を注入すると脊柱および脳は染色されるが逆にほかの組織は染色されないことを発見したためである。このとき両者との境界には膜のようなものは発見されず、血管がその役割を担っているものと推測された。これが証明されたのは走査型電子顕微鏡が発明された1960年代のことである。
構造
血液脳関門は、毛細血管の内皮細胞の間隔が極めて狭いことによる物理的な障壁であるが、これに加え、中枢神経組織の毛細血管内皮細胞自体が有する特殊な生理的機能、すなわち、グルコースをはじめとする必須内因性物質の取り込みと異物を排出する積極的なメカニズムが関与している。脂肪酸は脳関門を通れないため、脳は通常、脳関門を通過できるグルコースをエネルギー源としている[1]。グルコースが枯渇した場合、肝臓でアセチルCoAから生成されたケトン体も脳関門を通過でき[2]、脳関門通過後に再度アセチルCoAに戻されて脳細胞のミトコンドリアのTCAサイクルでエネルギーとして利用される[1]。血液脳関門の働きにより、中枢神経系の生化学的な恒常性は極めて高度に維持されている。
その一方で、アルコール、カフェイン、ニコチン、抗うつ薬は、脳内へ通過できる[3]。かつては分子量500を超える分子(多くの蛋白質など)や、脂溶性が低い荷電したイオンは脂質二重膜を透過できず、血液循環から中枢神経系の中に入ることができないとされていた(分子量閾値説)が[4]、近年の研究により、脳毛細血管内皮細胞の細胞膜に存在するタンパク質が、脳内から血管へ物質を積極的に排出していることが明らかにされている[5]。こうした毛細血管内皮細胞の機能はリンパ球やマクロファージや神経膠細胞から放出されるサイトカインによってコントロールされ得る。このため、脳炎や髄膜炎のときは血液脳関門の機能は低下する。また、膿瘍その他の感染巣形成や腫瘍といった、よりマクロなレベルの破壊を起こす疾患の存在によっても、血液脳関門は破綻する。
脚注
- ^ a b “ケトン体合成”. 講義資料. 福岡大学機能生物化学研究室. 2011年10月18日閲覧。
- ^ [出典無効] 太田成男「体が若くなる技術」Q&A Q4
- ^ “脳”. メルクマニュアル医学百科 最新家庭版. メルク. 2011年10月28日閲覧。
- ^ Levi VA (1980). “Relationships of octanol/water partition coefficient and molecular weight to rat brain capillary permeability”. J. Med. Chem. 23: 682-684. doi:10.1021/jm00180a022. PMID 7392035.
- ^ Schinkel AH, Smit JJM, van Tellingen O, Beijnen JH, Wagenaar E, van Deemter L, Mol CAAM, van der Valk MA, Robanus-Maandag EC, te Riele HPJ, Berns A, and Borst JMP (1994). “Disruption of the mouse mdr1a P-glycoprotein gene leads to a deficiency in the blood-brain barrier and to increased sensitivity to drugs”. Cell 77: 491-502. doi:10.1016/0092-8674(94)90212-7. PMID 7910522.
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Japanese Journal
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- 高血糖肥満モデルマウスの血液脳関門に関する機能解析
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- donepezil
- 化
- 塩酸ドネペジル
- 商
- アリセプト Aricept
- 関
- アルツハイマー病。その他の中枢神経系用薬
- 抗認知症薬
- アルツハイマー型認知症の治療薬である。
- コリンエステラーゼ阻害薬。可逆的
- 血液脳関門を抜けて脳内でのアセチルコリン濃度を上昇させ、コリン作動性ニューロンの運動を活発にすることで、認知症の症状(認知症の中核症状)をを和らげる。症状を和らげるので対症療法である。
- 脳への移行が多い
- 末梢性副作用が少ない。(ドネペシルは偽性コリンエステラーゼの阻害が少ない)
- 肝毒性が少ない
- 血漿中濃度消失半減期が長く1日1回投与でよい。
- アセチルコリンエステラーゼの阻害作用によるコリン作動性作用に基づく。
- 消化器症状
- 循環器系症状:アセチルコリンエステラーゼの阻害作用による心臓刺激
- 1)洞不全症候群、心房内及び房室接合部伝導障害等の心疾患(迷走神経刺激作用により徐脈あるいは不整脈の可能性)
- 2)消化性潰瘍の既往歴、NSAIDs投与中(胃酸分泌の促進及び消化管運動の促進により消化性潰瘍を悪化の可能性)
- 3)気管支喘息又は閉塞性肺疾患の既往歴(気管支平滑筋の収縮及び気管支粘液分泌の亢進により症状悪化の可能性)
- 4)錐体外路障害(パーキンソン病、パーキンソン症候群等)(線条体のコリン系神経の亢進により症状誘発又は増悪の可能性)
- → 既往歴のチェック、12誘導心電図、聴診、予防的PPI投与 (以上はエビデンスなし)
- 錠剤:3mgから開始して、1-2週間後に5mgに増量する。症状に応じて5mgにしてから4週間以上空けて10mgまで増量できる。
[★]
- 英
- trihexyphenidyl
- ラ
- trihexyphenidylum
- 化
- 塩酸トリヘキシフェニジル トリヘキシフェニジル塩酸塩 trihexyphenidyl hydrochloride
- 商
- アーテン Artane、セドリーナ、トリフェジノン、トリヘキシン、トレミン Tremin、パーキネス、パキソナール、ピラミスチン
- 関
- プロサイクリディン、ビペリデン。ムスカリン受容体。抗パーキンソン剤
- ドパミン系機能とアセチルコリン系機能とを平衡させる
副作用
- 視力障害、口渇、尿閉、便秘、混乱、せん妄 (SPC.191)
[★]
- 英
- biperiden
- 化
- 塩酸ビペリデン biperiden hydrochloride
- 商
- アキネトン、アキリデン、タスモリン、ビカモール
- 関
- トリヘキシフェニジル、プロサイクリディン
- 三級アミン
- 抗コリン作用薬
- 血液脳関門を通過する
- パーキンソン病治療薬
- ドパミン系機能とアセチルコリン系機能とを平衡させる
副作用 (SPC.191)
[★]
- 英
- neostigmine
- ラ
- neostigminum
- 同
- プロスチグミン prostigmin
- 化
- メチル硫酸ネオスチグミン、臭化ネオスチグミン
- 商
- ワゴスチグミン(臭化ネオスチグミン)、アトワゴリバース。(点眼液)マイピリン、ミオピン
- 関
- フィゾスチグミン
作用機序
薬理作用
動態
[★]
- 英
- area postrema (KL)
解剖
- 第四脳室底(菱形窩)の下方に位置する (KL.690)
- 迷走神経三角の下方で、薄束結節との間の領域 (KL.690)
- 小型の神経細胞からなり、血管に富む特異な部位 (KL.691)
- 血液脳関門が働いていない脳における数少ない部分のうちの一つ (B.21)
[★]
- 英
- blood (PT,Z)
- ラ
- sanguis
- 関
- 全血球計算値、循環血液量、血球、血液量
概念
- 血液は45%の細胞成分と55%の血漿成分から構成される。
- 弱アルカリ性(pH7.4)でやや粘稠の鮮紅色から暗赤色の体液 (HIS.189)
- 成人の血液量は約5L (HIS.189)
- 体重の1/13 (SP.484),体重の約7% (HIS.189), 体重の約8% (2007年度前期解剖学授業)
- 全血液量の約1/3が失われると死亡する
構成
- 血漿(約55%)
- 水(血漿のうち91%)
- 無機塩類(0.9%)
- 有機物
- 血球(約45%)
血液の量
- 091208II 麻酔
|
新生児
|
乳児
|
幼児以降
|
高齢者
|
循環血液量(ml/kg)
|
90
|
80
|
70
|
60
|
体重に対する血液量(%)
|
9
|
8
|
7
|
6
|
血液に関する標準値
- SP.484
|
男性
|
女性
|
単位など
|
ヘマトクリット
|
45
|
40
|
%
|
血液量
|
75
|
65
|
ml/kg
|
比重
|
1.057
|
1.053
|
(血漿1.027)
|
浸透圧
|
275-290
|
mOsm/Kg・H2O
|
基準値
- ♂:4.95±0.75 x 10^6 (/μl)
- ♀:4.65±0.85 x 10^6 (/μl)
- 白血球 (2007前期解剖学プリント)
- 血小板 (2007前期解剖学プリント)
- ヘマトクリット
- ♂:40-50 (%) 45%
- ♀:35-45 (%) 40%
LAB.1790
項目名
|
|
性別/ 種類
|
|
赤血球
|
|
♂
|
414~563
|
x10^4/ul
|
♀
|
373~495
|
ヘモグロビン
|
Hb
|
♂
|
12.9~17.4
|
g/dl
|
♀
|
10.7~51.3
|
ヘマトクリット
|
Ht
|
♂
|
38.6~50.9
|
%
|
♀
|
33.6~45.1
|
平均赤血球容量
|
MCV
|
♂
|
84.3~99.2
|
fl
|
♀
|
80.4~101.0
|
平均赤血球血色素量
|
MCH
|
♂
|
28.2~33.8
|
pg
|
♀
|
25.5~34.6
|
平均赤血球血色素濃度
|
MCHC
|
♂
|
32.2~35.5
|
%
|
♀
|
30.8~35.4
|
網赤血球
|
|
♂
|
0.5~1.8
|
%
|
♀
|
0.4~1.6
|
血小板
|
Plt
|
♂
|
14.3~33.3
|
x10^4/ul
|
♀
|
13.7~37.8
|
白血球
|
WBC
|
♂
|
2970~9130
|
/ul
|
♀
|
3040~8720
|
好中球桿状核
|
0~9
|
%
|
好中球分葉核
|
28~68
|
%
|
好酸球
|
0~10
|
%
|
好塩基球
|
0~2
|
%
|
リンパ球
|
17~57
|
%
|
単球
|
0~10
|
%
|
[★]
- 英
- barrier
- 関
- 障害、障壁、バリヤー、バリア、バリアー
[★]
- 英
- phylum
- 関
- 分類学
- 門->亜門->綱