ドネペジル
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/02/06 16:22:00」(JST)
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ドネペジル
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IUPAC命名法による物質名 |
(RS)-2-[(1-benzyl-4-piperidyl)methyl]-5,6-dimethoxy-2,3-dihydroinden-1-one |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
? |
法的規制 |
℞ Prescription only |
投与方法 |
Oral tablet, 5 & 10 mg |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
100 (%) |
血漿タンパク結合 |
96% |
半減期 |
70 hours |
排泄 |
0,11-0,13 (l/h/kg) |
識別 |
CAS登録番号 |
120014-06-4 |
ATCコード |
N06DA02 |
PubChem |
CID 3152 |
DrugBank |
APRD00039 |
ChemSpider |
3040 |
KEGG |
D07869 |
化学的データ |
化学式 |
C24H29NO3 |
分子量 |
379.492 g/mol |
SMILES
- COc1cc2c(CC(CC3CCN(CC3)
Cc3ccccc3)C2=O)cc1OC
|
ドネペジル (donepezil) は、アルツハイマー型認知症(痴呆)進行抑制剤の一種。エーザイの杉本八郎[1]らにより開発された。
ドネペジル塩酸塩は、アリセプトという商品名でエーザイから発売され、海外市場ではファイザーとの提携により、同名(Aricept)で販売されている。「新薬開発におき、欧米企業に遅れをとる」と批判されがちな日本の製薬業界であるが、アリセプトは日本国外市場でも市場占有率8割以上を誇る。
目次
- 1 適用・効能
- 2 作用機序
- 3 禁忌・副作用
- 4 エピソード
- 5 関連項目
- 6 脚注
- 7 外部リンク
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適用・効能
アルツハイマー型認知症の認知症症状の進行抑制に用いられる。アルツハイマー型認知症の早期に使用することによって認知機能の一時的な改善をもたらす。アルツハイマー型認知症の病態を治療したり、最終的に認知症が悪化することを防ぐ薬剤ではない。投与12週以降で臨床認知機能評価尺度の点数を改善する。しかし、数年以上の長期にわたる投与試験は行われておらず、現時点で長期投与の有効性についてのデータはない。これは、投薬対象人口が高齢であり、ランダムサンプルを用いた縦断的研究データ収集が難航しているからである。
作用機序
アルツハイマー型認知症では、脳内コリン作動性神経系の障害が認められる。 本薬は、アセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害することにより脳内アセチルコリン量を増加させ、脳内コリン作動性神経系を賦活する。
禁忌・副作用
ピペリジン誘導体に過敏反応のある者は使用できない。また心筋梗塞、消化性腸潰瘍、肝障害、錐体外路症状が現れた場合は医師に相談し服用を中止する。
エピソード
アリセプトの開発者の一人、杉本が認知症になった母親に誰かと尋ねられ「息子の八郎ですよ」と声をかけたところ、「そうですか、私にも八郎という子どもがいるんですよ」との返事を受けた[2]。これをきっかけに、杉本は、会社から2度も認知症の開発を中止するよう厳命を受けたにもかかわらず、拒否し、5年以上の歳月をかけて、認知症薬アリセプトの創製に結びつけた[要出典]。 1998年、杉本はドネペジル開発の功労が認められ、イギリスのガリアン賞を受賞している[3]。
関連項目
脚注
- ^ 現・京都大学大学院薬学研究科 客員教授
- ^ この人と話そう / 杉本八郎さん(京都新聞 2010年7月20日) 2011年4月17日閲覧
- ^ 杉本教授の略歴(バイオクルーズ株式会社ホームページ)
外部リンク
- エーザイ株式会社
- エーザイ医療関係者向けサイト
- 添付文書 - アリセプト錠3, 5, 10mg / アリセプト細粒0.5%
- 添付文書 - アリセプトD錠3, 5, 10mg
- アリセプトブランドサイト
- アリセプト英語サイト
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 外来における認知症の初期診療の要点 (特集 認知症診療の実際--初診から介護まで)
- 塩酸ドネペジル投与後に頸部ジストニアを呈したレビー小体型認知症の1例
Related Pictures
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ドネペジル塩酸塩OD錠3mg「NP」
組成
有効成分
含量(1錠中)
添加物
- アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、酸化チタン、タルク、ヒプロメロース、D-マンニトール、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、カルメロース、アスパルテーム、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、黄色三二酸化鉄注)
注)ドネペジル塩酸塩OD錠3mg「NP」にのみ添加
禁忌
- 本剤の成分又はピペリジン誘導体に対し過敏症の既往歴のある患者
効能または効果
- アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制
- アルツハイマー型認知症と診断された患者にのみ使用すること。
- 本剤がアルツハイマー型認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない。
- アルツハイマー型認知症以外の認知症性疾患において本剤の有効性は確認されていない。
- 通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1〜2週間後に5mgに増量し、経口投与する。高度のアルツハイマー型認知症患者には、5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により適宜減量する。
- 3mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として1〜2週間を超えて使用しないこと。
- 10mg/日に増量する場合は、消化器系副作用に注意しながら投与すること。
- 医療従事者、家族等の管理のもとで投与すること。
慎重投与
- 本剤はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤であり、コリン作動性作用により以下に示す患者に対しては症状を誘発又は増悪する可能性があるため慎重に投与すること。
- 洞不全症候群、心房内及び房室接合部伝導障害等の心疾患のある患者[迷走神経刺激作用により徐脈あるいは不整脈を起こす可能性がある。]
- 消化性潰瘍の既往歴のある患者、非ステロイド性消炎鎮痛剤投与中の患者[胃酸分泌の促進及び消化管運動の促進により消化性潰瘍を悪化させる可能性がある。]
- 気管支喘息又は閉塞性肺疾患の既往歴のある患者[気管支平滑筋の収縮及び気管支粘液分泌の亢進により症状が悪化する可能性がある。]
- 錐体外路障害(パーキンソン病、パーキンソン症候群等)のある患者[線条体のコリン系神経を亢進することにより、症状を誘発又は増悪する可能性がある。]
重大な副作用
失神、徐脈、心ブロック、QT延長、心筋梗塞、心不全(頻度不明)
- 失神、徐脈、心ブロック(洞房ブロック、房室ブロック)、QT延長、心筋梗塞、心不全があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
消化性潰瘍、十二指腸潰瘍穿孔、消化管出血(頻度不明)
- 本剤のコリン賦活作用による胃酸分泌及び消化管運動の促進によって消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)、十二指腸潰瘍穿孔、消化管出血があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
肝炎、肝機能障害、黄疸(頻度不明)
- 肝炎、肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
脳性発作、脳出血、脳血管障害(頻度不明)
- 脳性発作(てんかん、痙攣等)、脳出血、脳血管障害があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
錐体外路障害(頻度不明)
- 寡動、運動失調、ジスキネジア、ジストニア、振戦、不随意運動、歩行異常、姿勢異常、言語障害等の錐体外路障害があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
悪性症候群(Syndrome malin)(頻度不明)
- 無動緘黙、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合は、投与を中止し、体冷却、水・電解質管理等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。本症発症時には、白血球の増加や血清CK(CPK)の上昇がみられることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。
横紋筋融解症(頻度不明)
- 横紋筋融解症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇等があらわれた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、横紋筋融解症による急性腎不全の発症に注意すること。
呼吸困難(頻度不明)
- 呼吸困難があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
急性膵炎(頻度不明)
- 急性膵炎があらわれることがあるので、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
急性腎不全(頻度不明)
- 急性腎不全があらわれることがあるので、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
原因不明の突然死(頻度不明)
薬効薬理
- ドネペジル塩酸塩はアルツハイマー型認知症治療薬。作用機序はアセチルコリンエステラーゼの可逆的阻害。これにより脳内アセチルコリン量を増加させ、アルツハイマー型認知症で認められる脳内コリン作動性神経系の機能低下を改善する。ただし、脳の変性過程そのものを抑制する作用はない。3)
有効成分に関する理化学的知見
一般名
- ドネペジル塩酸塩(Donepezil Hydrochloride)
化学名
- (2RS)-2-[(1-Benzylpiperidin-4-yl)methyl]-5,6-dimethoxy-2,3-dihydro-1H-inden-1-one monohydrochloride
分子式
分子量
性状
- 白色の結晶性の粉末である。
水にやや溶けやすく、エタノール(99.5)に溶けにくい。
水溶液(1→100)は旋光性を示さない。
★リンクテーブル★
[★]
- 関
- Aricept、donepezil
[★]
- 英
- donepezil
- 化
- 塩酸ドネペジル
- 商
- アリセプト Aricept
- 関
- アルツハイマー病。その他の中枢神経系用薬
- 抗認知症薬
- アルツハイマー型認知症の治療薬である。
- コリンエステラーゼ阻害薬。可逆的
- 血液脳関門を抜けて脳内でのアセチルコリン濃度を上昇させ、コリン作動性ニューロンの運動を活発にすることで、認知症の症状(認知症の中核症状)をを和らげる。症状を和らげるので対症療法である。
- 脳への移行が多い
- 末梢性副作用が少ない。(ドネペシルは偽性コリンエステラーゼの阻害が少ない)
- 肝毒性が少ない
- 血漿中濃度消失半減期が長く1日1回投与でよい。
- アセチルコリンエステラーゼの阻害作用によるコリン作動性作用に基づく。
- 消化器症状
- 循環器系症状:アセチルコリンエステラーゼの阻害作用による心臓刺激
- 1)洞不全症候群、心房内及び房室接合部伝導障害等の心疾患(迷走神経刺激作用により徐脈あるいは不整脈の可能性)
- 2)消化性潰瘍の既往歴、NSAIDs投与中(胃酸分泌の促進及び消化管運動の促進により消化性潰瘍を悪化の可能性)
- 3)気管支喘息又は閉塞性肺疾患の既往歴(気管支平滑筋の収縮及び気管支粘液分泌の亢進により症状悪化の可能性)
- 4)錐体外路障害(パーキンソン病、パーキンソン症候群等)(線条体のコリン系神経の亢進により症状誘発又は増悪の可能性)
- → 既往歴のチェック、12誘導心電図、聴診、予防的PPI投与 (以上はエビデンスなし)
- 錠剤:3mgから開始して、1-2週間後に5mgに増量する。症状に応じて5mgにしてから4週間以上空けて10mgまで増量できる。
[★]
- 英
- acid
- 関
- 塩基
ブランステッド-ローリーの定義
ルイスの定義
[★]
- 英
- hydrogen chloride
- 同
- 塩化水素
- 関