骨肉腫 | ユーイング肉腫 | |
概念 | 類骨を形成する悪性骨腫瘍 骨組織に原発し、腫瘍細胞が直接類骨あるいは骨組織を形成する。 |
分化の高悪性度小円形細胞肉腫。発生母細胞は神経外胚葉 |
疫学 | 15歳ピーク 10歳代:60% 20歳代:15% 男性にやや多い |
10-30歳で見られるが、10代から10代未満に好発し、80%が20歳以下である。骨肉腫より若年者に好発する。 男女比 = 2:1 |
原発性悪性骨腫様のなかで最多 | 骨肉腫、骨髄腫、軟骨肉腫に次いで多い。 | |
好発部位 |
大腿骨遠位 脛骨近位 合わせて75% 次いで上腕骨近位 |
長幹骨の骨幹部 骨盤、大腿骨、上腕骨、脛骨の順に好発する |
症状 | 腫脹、疼痛、腫瘍の増大で発赤、局所熱感、静脈怒張 | 疼痛、腫脹、全身症状(白血球増多、発熱) |
血液検査 | 血清アルカリフォスファターゼ、乳酸脱水素酵素 | 白血球増多、CRP上昇、赤沈亢進 |
単純X線写真 | 骨硬化を伴わない骨破壊、種々の程度の腫瘍性骨新生(境界不明瞭の淡い綿花様、綿球様の骨硬化) 外骨膜反応(コットマン三角、スピクラ形成) |
骨皮質を破壊しつくす前にフォルクマン管を介して軟部組織に浸潤し骨外に浸潤する。このために骨膜を持ち上げ骨膜反応(たまねぎの皮様(onion skin appearance))を呈する。 斑点状、蚕喰状の骨吸収破壊像 |
転移 | 血行性、肺転移 | |
予後 | 5年生存率50-70% | 予後不良 日本での5年累積生存率は45% |
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/07/04 22:07:09」(JST)
骨肉腫(こつにくしゅ、osteosarcoma)とは肉腫の組織型の1つで、悪性の間葉性腫瘍のうち造骨細胞への分化ポテンシャルをわずかでも有し、腫瘍骨を形成する能力を持つものである。別名は悪性骨形成性腫瘍(あくせいこつけいせいせいしゅよう)。ほとんどが骨に生じるが、稀に骨とは離れた軟部組織からも生じることがあり、これは骨外性骨肉腫 と呼ばれる。
骨肉腫は多発性骨髄腫と悪性リンパ腫を除く骨の悪性腫瘍のうち、最も発症頻度が高い原発性骨腫瘍である。
単一の病変ではなく、いくつもの亜型を含む。その中で最も頻度が高いものが骨内通常型骨肉腫であり、予後が悪いものの1つである。長幹骨の骨幹端が好発部位であり、50%が膝周辺に発生する。以下、特に断りのないかぎり、この記事では「骨内通常型骨肉腫」について述べる。
小児期の腫瘍の5%であると言われている。二峰性の分布を持ち、75%が20歳未満の患者で起こる。2番目のピークは初老期にあり、骨パジェット病、骨髄梗塞の様な骨の症状や以前の被曝に関係する事が多い。
長幹骨、特に脛骨や上腕骨の近位側および大腿骨遠位側の、骨幹端のが好発部である。X線検査では、骨膜反応=骨表面から垂直に外側へ伸びている、濃い不規則な陰影を認める。
組織病理学的には、腫瘍細胞は多形性の強い核を有し、しばしば巨細胞を交え、異常有糸分裂像に富む。細胞間に、不整な=不定形で好酸性に染まる骨梁即ち腫瘍骨(好塩基性顆粒状に染まる中心石灰化は、あるときもないときもある)や、類骨基質を形成する。軟骨基質が混在している場合もある。
未熟な血管が存在することもあり、この場合血行性転移を起こしやすい。[1]
持続する痛みだが、激しいものではない。スポーツをしている年代なら、筋肉痛と間違う場合もありがち。スポーツ中の病的骨折で発見される場合もある。小児の場合は「痛い」とは言わず、運動を嫌がる、手足を持たれたり、特定の手足を動かされるのを嫌う(腕を上げたがらない、足を曲げたがらない、その他等)、理由も無く患部をかばいながら動く場合もある。初期の場合レントゲンでの所見で異常が見つからず、痛がらないため、精神的なものとされる場合もあるが、次第に患部が膨らんでくることにより異常が発見されることがある。
なりやすい遺伝的な素因は存在する[2]。しかしラジウム[3]、フッ化物[4]、飲料水が環境的要因として骨肉腫の発生率を上げるかどうかという疑問が残っている。
基本的な療法では外科手術と化学療法を骨軟部悪性腫瘍(骨肉腫、悪性線維性組織球腫、滑膜肉腫、明細胞肉腫など)では併用する。骨膜性骨肉腫(通常型骨肉腫より異型度の低い細胞から成り、骨膜から骨皮質外方のみに成長して骨中心側へは殆ど増殖せず、比較的予後の良い亜型) 等の場合は主に外科手術が中心。
悪性の場合、癌の進行は早いが、その分抗がん剤の効果も大きいため、基本的には、多剤併用化学療法(抗がん剤治療)を行い、その後外科手術で正常細胞で包むように原発巣を広範切除し、引き続き化学療法を行う。肺や骨に転移しやすいため、CT、MRI、骨シンチの検査が定期的に行われる。
抗がん剤としては、シスプラチン、ドキソルビシン、イホスファミド、シクロホスファミド、ブレオマイシンなど。また、カフェイン併用化学療法が、厚生労働省の承認した高度先進医療として、金沢大学、福島県立医科大学、杏林大学、大阪市立大学、高知大学、愛媛大学他で行われている。この療法はシスプラチンとアドリアシンにカフェインを併用した化学療法(シスプラチン4時間投与後にカフェインを体重60kgの人の場合1.5gを24時間で3日間連続、3週1コース)で、転移がない場合の有効率は特に高い(78%が転移も再発もない)とされる。
かつては四肢に発生した場合は四肢切断したが、現在では化学療法や補助療法の進歩もあり、切断せずに腫瘍を切除する(切除した骨部は、人工骨を埋め込む)ことも可能となり、患者のクオリティ・オブ・ライフ (QOL) が大幅に改善された。
30年ほど前までは、5年生存率30~40%だったが、今は60~70%、補助療法の併用で最大90%以上(転移のない場合は最大で78%の完全寛解 complete response ・CR)に改善している。 肺などへの転移がなく、適切な治療が行われれば治癒の可能性は高く、若干の転移があっても抗がん剤への薬剤耐性が生じなければ治癒する例も多くなってきている。
骨肉腫はイヌにも発症し、四肢の長い犬種(例えば、グレイハウンドやジャーマンシェパード)の、中年の犬に好発する。ヒトとイヌの骨肉腫の一つの大きな違いは、イヌの場合、より肺転移を起こしやすいことである。ネコの骨肉腫の発生は原発性悪性骨腫瘍の中で最も多く、発生年齢は平均で10歳と老齢のネコに多い。イヌの骨肉腫とほぼ同様であるが、転移は遅く、少ない。
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概念 | 類骨を形成する悪性骨腫瘍 骨組織に原発し、腫瘍細胞が直接類骨あるいは骨組織を形成する。 |
分化の高悪性度小円形細胞肉腫。発生母細胞は神経外胚葉 |
疫学 | 15歳ピーク 10歳代:60% 20歳代:15% 男性にやや多い |
10-30歳で見られるが、10代から10代未満に好発し、80%が20歳以下である。骨肉腫より若年者に好発する。 男女比 = 2:1 |
原発性悪性骨腫様のなかで最多 | 骨肉腫、骨髄腫、軟骨肉腫に次いで多い。 | |
好発部位 |
大腿骨遠位 脛骨近位 合わせて75% 次いで上腕骨近位 |
長幹骨の骨幹部 骨盤、大腿骨、上腕骨、脛骨の順に好発する |
症状 | 腫脹、疼痛、腫瘍の増大で発赤、局所熱感、静脈怒張 | 疼痛、腫脹、全身症状(白血球増多、発熱) |
血液検査 | 血清アルカリフォスファターゼ、乳酸脱水素酵素 | 白血球増多、CRP上昇、赤沈亢進 |
単純X線写真 | 骨硬化を伴わない骨破壊、種々の程度の腫瘍性骨新生(境界不明瞭の淡い綿花様、綿球様の骨硬化) 外骨膜反応(コットマン三角、スピクラ形成) |
骨皮質を破壊しつくす前にフォルクマン管を介して軟部組織に浸潤し骨外に浸潤する。このために骨膜を持ち上げ骨膜反応(たまねぎの皮様(onion skin appearance))を呈する。 斑点状、蚕喰状の骨吸収破壊像 |
転移 | 血行性、肺転移 | |
予後 | 5年生存率50-70% | 予後不良 日本での5年累積生存率は45% |
良性 | 悪性 | |
腫瘍骨産生型 | 骨腫 類骨骨腫 骨芽細胞腫 骨形成性線維腫 線維性骨異形成 |
骨肉腫 傍骨性骨肉腫 骨膜性骨肉腫 |
腫瘍軟骨産生型 | 内軟骨腫 骨軟骨腫 軟骨芽細胞腫 |
軟骨肉腫 |
その他 | 非骨化性線維腫 孤立性骨嚢腫 血管腫 |
線維肉腫 悪性線維性組織球腫 血管肉腫 ユーイング肉腫 悪性リンパ腫 |
原発 | 転移 |
肺 | リンパ節が最多。肝臓、胸膜、対側肺、副腎、心膜、骨(肋骨、椎骨)、大脳(圧迫症状出現) 遠隔転移:肺内>骨>脳>肝>副腎 小細胞癌が最も転移しやすい。 |
胃 | 分化型:血行性に肝臓、未分化型:腹膜播種 |
大腸 | 肝臓、肺 |
卵巣 | 腹腔内播種、リンパ性転移(後腹膜)。血行性は希 |
腎臓 | 肺>骨>肝。副腎もありうる。能は多くない。 |
骨肉腫 | 肺>骨 発見時に10-20%の症例で肺転移。 |
特徴 | 癌腫 carcinoma |
肉腫 sarcoma |
由来 | 上皮 | 間葉系組織 |
良悪性 | 悪性 | 悪性 |
発生頻度 | 比較的多い | 稀 |
転移形式 | 多くがリンパ行性 | 多くが血行性 |
in situ時期 上皮内癌 粘膜内癌 |
有り | 無し |
年齢 | 老人・中年(50歳以上) | 若年・壮年(50歳以下) |
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