リツキシマブ
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リツキシマブ ?
モノクローナル抗体 |
原料 |
chimeric (mouse/human) |
抗原 |
CD20 |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
C(US) (no adequate human studies) |
法的規制 |
℞-only (US) |
投与方法 |
intravenous infusion only (never bolus or "push") |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
100% (IV) |
半減期 |
30 to 400 hours (varies by dose and length of treatment) |
排泄 |
Uncertain: may undergo phagocytosis and catabolism in RES |
識別 |
CAS登録番号 |
174722-31-7 |
ATCコード |
L01XC02 |
DrugBank |
BTD00014 |
KEGG |
D02994 |
化学的データ |
化学式 |
C6416H9874N1688O1987S44 |
分子量 |
143859.7 g/mol |
リツキシマブ(rituximab)は、抗ヒトCD20ヒト・マウスキメラ抗体からなるモノクローナル抗体であり、その製剤は分子標的治療薬のひとつとして抗癌剤などとして使用されている。製剤としてのリツキシマブが注射剤であり、日本はリツキサン(Rituxan)®の商品名で中外製薬から発売されている。
リツキシマブは2011年現在、金額ベースにおいて世界でベストセラーの抗癌剤となっている。この背景には各国での治療適応疾患の拡大のほか、薬剤価格が高価であることがあり、日本でも1瓶(500mg/50mL)あたりの薬価(保険適用前)が約21万円(2008年薬価改正時点)に設定されている。
概要
ヒトCD20はヒトB細胞のみに発現し、正常・腫瘍細胞は問わず、preB~成熟Bにかけて細胞膜表面に認められる。preB、形質細胞はみられない。ヒトCD20に対する抗体はヒトは持たないため、マウスのヒトCD20に対する抗体のFabとヒトFcをキメラとして、1991年米国のIDEC Pharmaceuticals社(現Biogen Idec社)がリツキシマブを創製した[1]。 日本での健康保険適応は、CD20陽性の低悪性度又は濾胞性B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫。 単独での使用も行われるが、CHOP療法との併用も行われている。
近年では臓器移植の際の拒絶反応治療や、腎炎などこれまで治療が困難であった一部の自己免疫疾患への効果も期待されており、関節リウマチ、ループスエリテマトーデス(SLE)[2]については各国で治験が進んでいる。また日本では2008年より小児難治性ネフローゼ症候群での治験が行われている。ウェゲナー肉芽腫症、後天性血友病に対しても投与される症例報告がみられる(日本では2010年9月現在、保険適用外)。
同効薬に90Y Ibritumomab, 131I Tositumomabがある。
副作用
B型肝炎ウイルスキャリアの患者で、本剤の投与により、劇症肝炎又は肝炎が増悪することがある。なお、投与開始前にHBs抗原陰性の患者においても、B型肝炎ウイルスによる劇症肝炎を発症し、死亡に至った症例も報告されている。
参考文献
- ^ 「開発の経緯-医薬品インタビューフォーム リツキサン注10mg/mL」全薬工業、中外製薬、2008年8月改訂(第10版)
- ^ 「全身性エリテマトーデス リンパ腫の治療薬が効果」熊本日日新聞2004年5月12日夕刊
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 陳 憲生,藤村 正亮,関田 信之,三上 和男,上島 修一,鈴木 啓悦,市川 智彦
- 日本泌尿器科學會雜誌 100(7), 698-702, 2009-11-20
- … られ,前立腺癌を合併した前立腺悪性リンパ腫と診断された.B細胞型悪性リンパ腫に対しては,リツキサンを使用した多剤併用化学療法(R-CHOP)により,画像上完全寛解が得られた.前立腺癌に対しては,アンドロゲン除去療法を行い,現在PSA値は0.2以下である.悪性リンパ腫に対する治療は,抗CD20抗体であるリツキサンの併用により,予後の改善が期待されている.今回われわれは,自験例を含め,24例の前立腺悪性 …
- NAID 110007482833
- 骨髄移植後の骨腫瘤形成性再発にリツキサン併用化学療法が有効であった急性リンパ性白血病
- 阿部 崇,北嶋 俊樹,本間 圭一郎,倉崎 桃里,岡塚 貴世志,柴崎 康彦,桃井 明仁,黒羽 高志,増子 正義,八木沢 久美子,古川 達雄,鳥羽 健,相澤 義房
- 臨床血液 49(11), 1556-1561, 2008-11-30
- NAID 10024455290
Related Links
- リツキサンは、非ホジキンリンパ腫に用いる薬で、モノクローナル抗体薬の一つです。 2001年に発売が開始された比較的新しい薬です。 白血球の一種であるリンパ球には、B 細胞やT細胞などがあり、リツキサンはこのうち、B細胞が悪性化するタイプの非ホジキン ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
リツキサン注10mg/mL (100mg/10mL)
組成
成分・含量 (1瓶中)
有効成分
- リツキシマブ(遺伝子組換え)※ 100mg
*※本剤は、チャイニーズハムスター卵巣細胞を用いて製造される。マスターセルバンク構築時にはウシの血清由来成分(ウシ胎児血清及びフェツイン)を使用している。また、製造工程において、培地成分としてウシの乳由来成分(D-ガラクトース)を使用している。
添加物
- ポリソルベート80 7mg
塩化ナトリウム 90mg
クエン酸ナトリウム 71.4mg
無水クエン酸 1.4mg
pH調整剤 適量
禁忌
- 本剤の成分又はマウスタンパク質由来製品に対する重篤な過敏症又はアナフィラキシー反応の既往歴のある患者
効能または効果
※CD: cluster of differentiation
- インジウム (111In) イブリツモマブ チウキセタン (遺伝子組換え) 注射液及びイットリウム (90Y) イブリツモマブ チウキセタン (遺伝子組換え) 注射液投与の前投与
- 本剤投与の適応となる疾患の診断は、病理診断に十分な経験をもつ医師又は施設により行うこと。
- CD20抗原は、免疫組織染色法又はフローサイトメトリー法等により検査を行い、陽性であることが確認されている患者のみに投与すること。
- <CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫に用いる場合>
通常成人には、リツキシマブ(遺伝子組換え)として1回量375mg/m2を1週間間隔で点滴静注する。最大投与回数は8回とする。
<インジウム (111In) イブリツモマブ チウキセタン (遺伝子組換え) 注射液及びイットリウム (90Y) イブリツモマブ チウキセタン (遺伝子組換え) 注射液投与の前投与に用いる場合>
通常成人には、リツキシマブ (遺伝子組換え) として250mg/m2を1回、点滴静注する。
- 本剤は用時生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液にて10倍に希釈調製し使用する。
- 本剤投与時に頻発してあらわれるinfusion reaction(発熱、悪寒、頭痛等)を軽減させるために、本剤投与の30分前に抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛剤等の前投与を行うこと。
- 初回投与時は、最初の1時間は25mg/時の速度で点滴静注を開始し、患者の状態を十分観察しながら、その後注入速度を100mg/時に上げて1時間点滴静注し、さらにその後は200mg/時まで速度を上げることができる。なお2回目以降の注入開始速度は、初回投与時に発現した副作用が軽微であった場合、100mg/時まで上げて開始できる。
- 注入速度に関連して血圧下降、気管支痙攣、血管浮腫等の症状が発現するので本剤の注入速度を守ること。これらの症状は注入速度を上げた直後から30分以内に発現しやすいので、十分観察すること。症状が発現した場合は注入速度を緩めるかもしくは中止する。重篤な症状の場合は直ちに投与を中止し、適切な処置を行う。また、投与を再開する場合は症状が完全に消失した後、25mg/時の注入速度で投与を開始する。
慎重投与
- 感染症(敗血症、肺炎、ウイルス感染等)を合併している患者[免疫抑制作用により病態を悪化させるおそれがある。HBs抗体陽性患者に本剤を投与した後、HBs抗体が陰性の急性B型肝炎を発症した例が報告されている。]
- 心機能障害のある患者又はその既往歴のある患者[投与中又は投与後に不整脈、狭心症等を悪化又は再発させるおそれがある (「重大な副作用」の項参照)。]
- 肺浸潤、肺機能障害のある患者又はその既往歴のある患者[投与中又は投与直後に気管支痙攣や低酸素症を伴う急性の呼吸器障害があらわれ、肺機能を悪化させるおそれがある (「重大な副作用」の項参照)。]
- 重篤な骨髄機能低下のある患者あるいは腫瘍細胞の骨髄浸潤がある患者[好中球減少及び血小板減少を増悪させ重篤化させるおそれがある (「重大な副作用」の項参照)。]
- 降圧剤による治療中の患者[本剤投与中に一過性の血圧下降があらわれることがある。]
- 薬物過敏症の既往歴のある患者
- アレルギー素因のある患者
重大な副作用
アナフィラキシー様症状、肺障害、心障害
(頻度不明注))
- 低血圧、血管浮腫、低酸素血症、気管支痙攣、肺炎(間質性肺炎、アレルギー性肺炎等を含む)、閉塞性細気管支炎、肺浸潤、急性呼吸促迫症候群、心筋梗塞、心室細動、心原性ショック等がinfusion reactionの症状としてあらわれることがある (「警告」欄参照)。
バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数等)のモニタリングや自他覚症状の観察など、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合は直ちに投与を中止し、適切な処置(酸素吸入、昇圧剤、気管支拡張剤、副腎皮質ホルモン剤の投与等)を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察すること。
腫瘍崩壊症候群
(頻度不明注))
- 腫瘍崩壊症候群があらわれることがあるので、血清中電解質濃度及び腎機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合は直ちに投与を中止し、適切な処置(生理食塩液、高尿酸血症治療剤等の投与、透析等)を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察すること。
B型肝炎ウイルスによる劇症肝炎、肝炎の増悪
(頻度不明注))
- B型肝炎ウイルスによる劇症肝炎又は肝炎の増悪による肝不全があらわれることがあるので、肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど患者の状態を十分に観察すること (「重要な基本的注意」の項参照)。
肝機能障害、黄疸
(0.1?5%未満)
- AST(GOT)、ALT(GPT)、Al-P、総ビリルビン等の肝機能検査値の上昇を伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがあるので、肝機能検査を行うなど患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合は投与を中止し、適切な処置を行うこと。
皮膚粘膜症状
(頻度不明注))
- 皮膚粘膜眼症候群 (Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死融解症 (Toxic Epidermal Necrolysis: TEN)、天疱瘡様症状、苔癬状皮膚炎、小水疱性皮膚炎等があらわれ、死亡に至った例が報告されている。これらの症状があらわれた場合は直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
汎血球減少、白血球減少、好中球減少、血小板減少
( 汎血球減少(頻度不明注))、白血球減少、好中球減少(10%以上)、血小板減少(5%未満) )
- 重篤な血球減少があらわれることがあり、好中球減少については、本剤の最終投与から4週間以上経過して発現する例が報告されているので、本剤の治療期間中及び治療終了後は定期的に血液検査を行うなど、患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合は休薬等の適切な処置を行うこと。
感染症
(頻度不明注))
- 細菌、真菌、あるいはウイルスによる重篤な感染症 (敗血症、肺炎等) があらわれることがあるので、本剤の治療期間中及び治療終了後は患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合は投与を中止し、適切な処置を行うこと。
進行性多巣性白質脳症 (PML)
(頻度不明注))
- 進行性多巣性白質脳症 (PML) があらわれることがあるので、本剤の治療期間中及び治療終了後は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知障害、麻痺症状 (片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等の症状があらわれた場合は、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
間質性肺炎
(頻度不明注))
- 間質性肺炎があらわれることがあるので、患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合は直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
心障害
(頻度不明注))
- 心室性あるいは心房性の不整脈、狭心症、心筋梗塞が報告されている。これらの症状があらわれた場合は直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
腎障害
(頻度不明注))
- 透析を必要とする腎障害が報告されていることから、患者の状態を十分に観察し、尿量減少、血清クレアチニンやBUNの上昇が認められた場合は投与を中止し、適切な処置を行うこと。
消化管穿孔
(頻度不明注))
- 消化管穿孔があらわれることがあるので、消化管穿孔の初期症状としての腹痛、腹部膨満感、下血、吐血、貧血等の観察を十分に行い、異常が認められた場合は、直ちにX線、CT検査等を実施して出血部位、穿孔所見の有無を確認し、適切な処置を行うこと。
血圧下降
(頻度不明注))
- 一過性の血圧下降が発現することがあるので、このような症状があらわれた場合は投与を中止し、適切な処置を行うこと。
可逆性後白質脳症症候群等の脳神経症状
(頻度不明注))
- 可逆性後白質脳症症候群(症状:痙攣発作、頭痛、精神症状、視覚障害、高血圧等)があらわれることがある。また、本剤の治療終了後6か月までの間に、失明、難聴等の視聴覚障害、感覚障害、顔面神経麻痺等の脳神経障害が報告されている。患者の状態を十分に観察し、このような症状があらわれた場合は投与を中止し、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
CD20抗原8)
- ヒトCD20抗原は、Pro-B細胞、形質細胞を除くほとんど全ての正常及び腫瘍化したBリンパ球に発現している分化抗原(リンタンパク質)であり、Bリンパ球以外の細胞には発現していない。
薬理作用8) 9)
in vitro CD20抗原特異的結合作用
- IDEC-2B8 (リツキシマブと同一のCD20抗原認識部位(可変部領域)を有するマウス型CD20モノクローナル抗体) は、既存の抗CD20抗体であるB1のヒトCD20抗原に対する結合を濃度依存的に阻害し、そのIC50(50%阻害濃度)値はB1、Leu16(抗ヒトCD20抗体)の1/2?1/3と、ヒトCD20抗原に対して強い抗原特異的結合能を示した。この強い抗原特異的結合能は、本剤(マウス?ヒトキメラ型抗体)でも維持されていた。
in vitro Bリンパ球特異的結合作用
- 本剤は、ヒト末梢血Bリンパ球やヒト低悪性度Bリンパ腫細胞と特異的に結合し、他の免疫系細胞とは反応しなかった。
in vivo Bリンパ球傷害作用
- カニクイザルに週1回4週間及び4日間連日静注投与した結果、末梢血液、骨髄及びリンパ節中のBリンパ球は著明に減少した。なお、Tリンパ球には変化を認めなかった。
ヒト正常組織との交叉反応性
- 成人ヒト正常組織の凍結切片との交叉反応性を調べた結果、本剤が反応性を示したのは、リンパ節、骨髄、末梢血細胞、扁桃、脾臓のみで、これ以外の非リンパ系組織とは反応しなかった。
作用機序8)
補体依存性細胞傷害作用 (complement-dependent cytotoxicity, CDC)
- 本剤はヒト補体の存在下、2.2μg/mLの濃度でSB細胞(ヒト由来CD20陽性細胞)の50%を溶解したが、HSB細胞(ヒト由来CD20陰性細胞)は溶解せず、CD20抗原を有する細胞に対して補体依存性細胞傷害作用を有することが確認された。
また、ヒト補体存在下、造血幹細胞(CD34陽性細胞)のコロニー形成能に影響しなかった。
抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用 (antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity, ADCC)
- 本剤はヒトエフェクター細胞の存在下、3.9μg/mLの濃度でSB細胞の50%を溶解したが、HSB細胞は溶解せず、CD20抗原を有する細胞に対して抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用を有することが確認された。
有効成分に関する理化学的知見
一般名:
rituximab (genetical recombination) (JAN)
本質:
- ヒトBリンパ球表面に存在する分化抗原CD20(リンタンパク質)に結合するモノクローナル抗体で、CD20抗原の認識部位(可変部領域)がマウス由来、それ以外の部分(定常部領域)がヒト由来(IgG1κ)のマウス?ヒトキメラ型抗体であり、1,328個のアミノ酸から構成されている。
分子量:
★リンクテーブル★
[★]
商品
[★]
- 英
- rituximab
- 同
- anti-CD20
- 商
- リツキサン
GOO.1375t,
分類
-
概念
- CD20に対するモノクローナル抗体
- 放射性同位体をラベルしたものも使われている
- 131I-tositumomab
- 90Y-ibritumomab tiuxetan
標的
作用機序
薬理作用
適応
注意
禁忌