- 英
- krestin
- 商
- クレスチン、エトール、カルボクリン、キノレスパン、チオレスチン
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/04/03 11:57:59」(JST)
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クレスチン(Krestin)は、クレハと第一三共より共同販売されている抗悪性腫瘍剤(抗がん剤:生物学的応答調節剤)の商品名(登録商標)である。PSK (polysaccharide-Kureha) という略号で表されることもあるが、こちらも登録商標である。成分は、カワラタケ(Trametes versicolor)CM-101株菌糸体より得られる多糖類でタンパク質と結合している[1]。
本剤は手間のかからない経口投与で、深刻な副作用がないことから[2]、1977年の販売開始後、単独でかなり多く使われた時期があった。 しかし、現在では本剤単独では効果がないことが判明しており、他剤との併用で用いられる。 クレスチンは、担癌により低下した免疫応答機構に作用することにより抗腫瘍作用を発揮すると考えられる。
目次
- 1 構造
- 2 効能・効果
- 3 作用機序
- 4 用法・用量
- 5 製品
- 6 脚注
- 7 参考文献
- 8 関連項目
構造[編集]
カワラタケから抽出された多糖ータンパク質複合体が抗腫瘍活性を示すことは、1970年に報告された[3]。平均分子量は9.4 × 104。糖鎖部分はグルコース (74.6%)、ガラクトース (2.7%)、マンノース (15.5%)、キシロース (4.8%)、フコース (2.4%) を含むが、ほとんどはβ-グルカンである。グルカン部分にはβ1→3、1→4、1→6構造が存在し、糖数残基ごとに分岐していることが示唆されている。タンパク質部分と糖鎖部分は、O-あるいはN-グリコシド結合している[4]。
クレスチン製剤の外観は、褐色または褐色を帯びた細粒である[2]。
また、カワラタケ (Coriolus vesicolor Iwade) からは、抗腫瘍性多糖類としてコリオラン (coriolan) の単離が1971年に報告されている[5][6]。
効能・効果[編集]
- 胃癌(手術例)および結腸・直腸癌(治癒切除例)における化学療法との併用による生存期間の延長[2]
- 小細胞肺癌に対する化学療法等との併用による生存期間の延長[2]
作用機序[編集]
NK細胞活性、インターフェロン生産能、インターロイキン生産能の増強などの免疫系の活性化により抗悪性腫瘍効果を表す[2][7]。本剤が直接的に腫瘍細胞を攻撃するものではない。
用法・用量[編集]
1日3gを1~3回に分服する[2]。
製品[編集]
「クレスチン」(クレハ=第一三共)のほか、後発医薬品の「アスクレ」(日医工)、「カルボクリン末」(大洋薬品工業(現:テバ製薬))、「クレチール末」(沢井製薬)、「チオレスチン散」(長生堂製薬)なども発売されている。
脚注[編集]
- ^ Tsukagoshi, S.; Hashimoto, Y.; Fujii, G.; Kobayashi, H.; Nomoto, K.; Orita, K. Krestin (PSK). Cancer Treat. Rev. 1984, 11 (2), 131-155. DOI: 10.1016/0305-7372(84)90005-7. PMID 6238674. 総説
- ^ a b c d e f 株式会社クレハ・第一三共株式会社 (2008年10月). “クレスチン(第6版) (PDF)”. 2009年12月12日閲覧。 and references therein
- ^ Hirase, S.; Nakai, S.; Akatsu, T.; Kobayashi, A.; Oohara, M.; Matsunaga, K.; Fuji, M.; Ohmura, Y. Studies on antitumor activity of polysaccharide. Proc. Jpn. Canc. Assoc. 29th Annu. Meet. 1970, 288.
- ^ Kobayashi, H.; Matsunaga, K.; Oguchi, Y. Antimetastatic effects of PSK (Krestin), a protein-bound polysaccharide obtained from basidiomycetes: an overview. Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev. 1995, 4 (3), 275-281. PMID 7606203. 総説
- ^ Naruse, S.; Fujii, K.; Ito, H. Studies on antitumor activities of Basidiomycetes. Proc. Jpn. Cancer Assoc. 30th Ann. Meet. 1971, 171.
- ^ Ito, H.; Hidaka, H.; Suigura, M. Effects of coriolane, an antitumor polysaccharide, produced by Coriolus versicolor Iwade. Jap. J. Pharmacol. 1979, 29 (6), 953-957. DOI: 10.1254/jjp.29.953.
- ^ Fisher, M.; Yang, L. X. Anticancer effects and mechanisms of polysaccharide-K (PSK): implications of cancer immunotherapy. Anticancer Res. 2002, 22 (3), 1737-1754. PMID 12168863. 総説
参考文献[編集]
- 『クレスチン』医薬品インタビューフォーム・2008年10月(第6版)(株式会社クレハ・第一三共株式会社)
関連項目[編集]
Japanese Journal
- 胃癌・大腸癌症例に対するクレスチン(PSK)療法のレスポンダー探索
- 吉永 敬士,佐伯 浩司,沖 英次 [他]
- 福岡医学雑誌 = Fukuoka acta medica 104(12), 549-558, 2013-12-25
- NAID 40020023071
- 腫瘍特異的抗原由来ペプチドを用いた癌ワクチン療法 : 臨床試験について
- 吉武 義泰,福間 大喜,篠原 正徳
- 日本口腔腫瘍学会誌 23(4), 111-116, 2011-12-15
- … 癌に対する第4の治療法として期待され続けてきた免疫療法であるが,これまでは溶連菌の乾燥菌体によるOK-432(ピシバニール®)やカワラタケから抽出した蛋白多糖複合体であるPSK(クレスチン®),シイタケより抽出された多糖類であるレンチナンなどが癌治療に用いられてきた。 …
- NAID 10030796035
- PS-183-1 胃癌・大腸癌に対するPSK(クレスチン)免疫療法の有効性を向上させるための標的遺伝子および臨床試験におけるバイオマーカーの探索(PS-183 ポスターセッション(183)免疫-2,第111回日本外科学会定期学術集会)
- 辻谷 俊一,吉永 敬士,杉山 雅彦,園田 英人,江頭 明典,大賀 丈史,森田 勝,江見 泰徳,掛地 吉弘,鴻江 俊治,前原 喜彦
- 日本外科学会雑誌 112(臨時増刊号_1・2), 823, 2011-05-25
- NAID 110008685586
Related Links
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- アスクレとは?クレスチンの効能,副作用等を説明,ジェネリックや薬価も調べられる(おくすり110番:薬事典版) ... 概説 がんに対する抵抗力を高めるるお薬です。 作用 体が持っている免疫反応を高めて、がんに対する抵抗力をつけます。
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
クレスチン細粒
組成
1包 (1g) 中に次の成分を含有
- たん白質と結合した多糖類で、かわらたけの菌糸体より得られたもの1g
効能または効果
- 胃癌 (手術例) 患者及び結腸・直腸癌 (治ゆ切除例) 患者における化学療法との併用による生存期間の延長
小細胞肺癌に対する化学療法等との併用による奏効期間の延長
薬効薬理
抗腫瘍作用
- in vitro の系でP388白血病10)、ヒト肝細胞株 (C-CH-20)11)等に対し細胞増殖抑制を示し、in vivo の系では、Sarcoma180、ラット肝癌AH-1312)等の同種腫瘍の他、MC誘発肉腫(MC-213)、MCS-814))、Lewis肺癌、B-16、X5563等15)の同系腫瘍に対しても抗腫瘍効果を示した。
作用機序
- in vivo においてマウス同系腫瘍細胞 (EL4) によって誘導される細胞障害活性を増強した16)。in vitro においてマウス脾細胞の同種腫瘍細胞 (P815) に対する細胞障害活性を増強した17)。
- 担癌 (Lewis肺癌など) による異種赤血球に対する抗体産生能及び遅延型足蹠反応の低下を防止した18)。
- 担癌 (EL4) によって亢進するサプレッサー細胞活性を抑制した18)。
- 正常19)、担癌 (MH134)20)及びウイルス感染マウス19)のNK細胞活性を増強した。
- 担癌 (EL4など) によって低下するマクロファージ走化性を回復した21)。正常ラット腹腔マクロファージの腫瘍細胞 (SMT-2) に対する増殖抑制活性を増強した22)。
- 担癌 (MM102) により低下したインターフェロン産生能を回復した23)。正常及び担癌 (Car.755) マウスのIL-1、IL-2産生能を増強した24)。
- 担癌 (Meth A) によって起こる胸腺の萎縮、細胞数の減少を防止した25)。
- 担癌個体由来免疫抑制物質による抗体産生能及び遅延型足蹠反応の低下を防止した26)。
- 経口投与によりパイエル氏板などの腸管免疫系の活性化を示した27)。
有効成分に関する理化学的知見
性状
- 本剤は褐色又は褐色を帯びた細粒で、わずかに特異なにおいがあり、味はない。水に溶けやすく、エタノール (95) にほとんど溶けない。
溶状
- 本剤1gに水100mLを加えて溶かすとき、液は褐色でわずかな濁りがある。
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