シスプラチン
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シスプラチン
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IUPAC命名法による物質名 |
IUPAC名
(SP-4-2)-Diamminedichloroplatinum
|
臨床データ |
胎児危険度分類 |
|
法的規制 |
|
投与方法 |
点滴静注 |
薬物動態データ |
生物学的利用能 |
- |
血漿タンパク結合 |
98%(24時間) |
代謝 |
- |
半減期 |
20〜30分 |
排泄 |
尿中 |
識別 |
CAS番号
(MeSH) |
15663-27-1 |
ATCコード |
L01XA01 |
PubChem |
CID: 84691 |
DrugBank |
APRD00359 |
KEGG |
D00275 |
化学的データ |
化学式 |
Cl2H6N2Pt |
分子量 |
300.05 |
シスプラチン(cisplatin : CDDP)は白金錯体に分類される抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)。シスプラチンの「シス」は、立体化学の用語のシスに由来する。錯体の中心金属は白金、配位子はアンミンと塩化物イオンであり、物質名はシス-ジアミンジクロロ白金(II)(cis-diamminedichloro-platinum(II)、cis-[PtCl2(NH3)2])である。なお、日光によって分解されるため、直射日光を避けて保存する必要があり、点滴にかかる時間を長く取る必要がある場合は点滴容器の遮光が必要となることもある。世界保健機関 (WHO) の下部組織によるIARC発がん性リスク一覧のグループ2に属する。ヒトに対する発癌性の限られた証拠、動物実験での十分な証拠がある。
商品名は、ブリプラチン(ブリストル・マイヤーズ)、ランダ(日本化薬)など。白金製剤としては、ほかにカルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチンがある。 薬理作用を発現するのはシス型だけでトランス型は抗がん作用を示さない。
目次
- 1 開発経緯
- 2 合成経路
- 3 作用機序
- 4 効能・効果
- 5 主な副作用
- 5.1 腎毒性
- 5.2 悪心・嘔吐
- 5.3 聴器毒性
- 5.4 溶血性貧血
- 5.5 神経毒性
- 6 適用上の注意
- 7 関連事項
- 8 脚注
- 9 外部リンク
- 10 参考資料
開発経緯
シスプラチンは、1845年にイタリアの化学者ミケーレ・ペイローネ(Michele Peyrone、1813-1883年)により錯体の研究材料として合成され[1]、「ペイロン塩(Peyrone's salt)」と呼ばれた。
1965年、アメリカ合衆国のバーネット・ローゼンバーグ(w:Barnett Rosenberg)らは、細菌に対して電場が及ぼす影響を調べている時に、偶然プラチナ電極の分解産物が大腸菌の増殖を抑制し、フィラメントを形成させることを発見した。その後1969年には、ローゼンバーグらにより白金化合物の大腸菌に対する細胞分裂阻止作用を応用して癌細胞の分裂抑制に対する研究が行われ、その結果ペイロン塩、つまりシスプラチンが動物腫瘍において比較的広い抗腫瘍スペクトルを有する化合物であることが判明した。
1972年にはアメリカ国立癌研究所(NCI)の指導で臨床試験が開始されたが、強い腎毒性のため、いったんは開発が中断された。しかし、その後シスプラチン投与時に大量の水分負荷と、さらに利尿薬を使用することによって腎障害を軽減することが可能となった。その後の臨床開発により、1978年にカナダ、アメリカ等で承認され、1983年に日本で承認された。
合成経路
シスプラチンの合成反応は、トランス効果の典型例である。まず、テトラクロリド白金(II)酸カリウム([PtCl4]2−)を出発物質とする。最初のNH3基は4つのCl基どれとも無作為に置換される。しかし、Cl−はNH3より大きなトランス効果を持ち、そのトランス位を置換活性とするため、NH3基の置換は、すでに存在しているNH3基に対してトランスの位置にはあまりおこらず、Cl基のトランスの位置におきやすい。したがって、2番目のNH3基はシス型に置換される。一方、[Pt(NH3)4]2+が出発物質であれば、Cl基のトランス効果のため2番目のCl基は最初のCl基のトランスの位置に入り、生成物はトランス型になる。
en:Image:trans_effect.png
作用機序
シスプラチンは、DNAの構成塩基であるグアニン、アデニンのN-7位に結合する。2つの塩素原子部位でDNAと結合するため、DNA鎖内には架橋が形成される。シス体に比べ、トランス体は架橋が形成されにくいため、投与量の制限により臨床的に用いることはできない。
シスプラチン抵抗
シスプラチンを使った癌治療は最近では多く見られるが、患者の多くは服用後しばらくしてからシプラチン抵抗の強い病に苦しむ事が多い。抵抗のメカニズムとしてとして、細胞外への薬の流出、薬の無効化、アポトーシスの抑圧、DNA修復の補助等がある。研究所内の実験においてはシスプラチン抵抗のある癌細胞には活発なオキサリプラチンが多く見られるが、患者の癌細胞にも同じ現象が起きている事を証明する事実は少ない。[2]シスプラチン抵抗のある癌細胞の治療にはパクリタキセルが有効と思われるが、そのメカニズムはまだ明らかになっていない。[3]
効能・効果
- 睾丸腫瘍、膀胱癌、腎盂・尿管腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、食道癌、子宮頸癌、神経芽細胞腫、胃癌、小細胞肺癌、骨肉腫、胚細胞腫瘍(精巣腫瘍、卵巣腫瘍、性腺外腫瘍)
- 悪性胸膜中皮腫・・ペメトレキセドと併用
- 以下の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
- 悪性骨腫瘍、子宮体癌(術後補助化学療法、転移・再発時化学療法)・・・ドキソルビシンと併用
- 再発・難治性悪性リンパ腫、小児悪性固形腫瘍(横紋筋肉腫、神経芽腫、肝芽腫その他肝原発悪性腫瘍、髄芽腫等)
- M-VAC療法(シスプラチン、メトトレキサート、ビンブラスチン及びドキソルビシンとの併用療法)
禁忌:重篤な腎障害
主な副作用
腎毒性
- シスプラチンは主に近位尿細管細胞を障害する。
- 腎組織内でのシスプラチン濃度を低下させ、毒性を軽減することを目的に水分負荷(水分を与えておくこと、ハイドレーションとも言う)及び強制利尿を行う。このため投与時は尿量を調べることが必須となる。総投与量が 300〜700 mg/m2 までは腎機能障害の発現頻度は低いとされている。なお、フロセミドによる強制利尿を行う場合には腎障害、聴器障害が増強されることがあるので、輸液等による水分補給を十分に行うことが重要となる。
悪心・嘔吐
- 延髄外側網様体に位置する嘔吐中枢が刺激されて発現する。
- 急性の悪心・嘔吐に対しては、オンダンセトロン、グラニセトロン、アザセトロンといった5-HT3受容体拮抗薬を投与することにより、発現を大幅に減少させることができる。遅延性の嘔吐や予測性の嘔吐に対しては、メチルプレドニゾロンやデキサメタゾン等のステロイドホルモンと5-HT3受容体拮抗薬あるいはメトクロプラミド等との併用が臨床的によく用いられている。
聴器毒性
- 聴力低下、難聴、耳鳴り
- 蝸牛の外側有毛細胞の障害と考えられ、総投与量で300mg/m2 以上になると発現頻度が高くなる。
- 不可逆的であり、根本的な治療法は見つかっていない。障害が軽度な場合は投与中止で改善する可能性もあるので、定期的な聴力検査(オーディオグラム)を行い、障害の徴候があらわれたら、投与継続の是非を考慮する必要がある。
溶血性貧血
- 長期間に渡るシスプラチンの服用が原因であり、体内にある抗体がシスプラチンと反応して溶血を引き起こすとされている。[4]
神経毒性
- シスプラチンの服用前と服用後の検査によって神経への損傷が示唆されており、主な症状として視覚障害や聴覚障害が上げられる。シスプラチンはDNAの複製を妨げ、アポトーシスを引き起こす事によって効果を発揮するが、これが神経障害の原因となっているとは証明されていない。最近の研究によってシスプラチンはNHE-1という酵素の働きを弱める事によって体内の電解質の均衡を崩す他、細胞骨格を変える事が明らかになった。ただしこれは服用量によって左右される。[5]
適用上の注意
調製時の注意
- 本剤を点滴静注する際、塩化物イオン濃度が低い輸液を用いるとSN2反応で加水分解し、細胞内に到達する前に、輸液中で塩化物イオンが水に置換した活性型となってしまい、腎毒性が現れやすくなるとともに、細胞内に入りにくくなってしまうため、必ず塩化物イオンがある程度含まれる輸液を用いること。また、この機序を利用した低張シスプラチン療法というものが考案された事もある[6]。
関連事項
脚注
- ^ Michele Peyrone (1813–1883), Discoverer of Cisplatin, "Platinum Metals Review", 2010, 54, (4) 250-256
- ^ Stordal B, Davey M (November 2007). "Understanding cisplatin resistance using cellular models". IUBMB Life 59 (11): 696–9. doi:10.1080/15216540701636287. PMID 17885832.
- ^ Stordal B, Pavlakis N, Davey R (December 2007). "A systematic review of platinum and taxane resistance from bench to clinic: an inverse relationship". Cancer Treat. Rev. 33 (8): 688–703. doi:10.1016/j.ctrv.2007.07.013. PMID 17881133.
- ^ Levi JA, Aroney RS, Dalley DN (June 1981). "Haemolytic anaemia after cisplatin treatment". Br Med J (Clin Res Ed) 282 (6281): 2003–4. doi:10.1136/bmj.282.6281.2003. PMC 1505958. PMID 6788166.
- ^ Milosavljevic N, Duranton C, Djerbi N, Puech PH, Gounon P, Lagadic-Gossmann D, Dimanche-Boitrel MT, Rauch C, Tauc M, Counillon L, Poët M (2010). "Nongenomic effects of cisplatin: acute inhibition of mechanosensitive transporters and channels without actin remodeling". Cancer Res. 70 (19): 7514–22. doi:10.1158/0008-5472.CAN-10-1253. PMID 20841472. /releases/2010/10/101005141117.htm Lay summary Check |laysummary= value (help) – ScienceDaily.
- ^ Katano K. “Pharmacokinetics of hypotonic cisplatin chemotherapy administered into the peritoneal and the pleural cavities in experimental model.”. 2011年11月4日閲覧。
外部リンク
参考資料
- 『ブリプラチン®注』医薬品インタビューフォーム・新様式第2版(ブリストル・マイヤーズ)
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Japanese Journal
- がんの薬事典(15)エビデンスが確立した胆道がんの標準治療 胆道がんのGC療法 : ジェムザール(一般名ゲムシタビン) ブリプラチン/ランダ(一般名シスプラチン)
- がんの薬事典(8)シスプラチン(商品名ブリプラチン/ランダ) : 1980年代から変わらぬ化学療法の中心的存在
- 卵巣癌に対する化学療法(パクリタキセル/パラプラチン)により短期間で骨髄異形成症候群を発症した一例
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- ブリプラチン注10mg 販売名コード 4291401A1089 承認・許可番号 承認番号 21900AMX01258 欧文商標名 BRIPLATIN INJECTION 薬価基準収載年月 2007年12月 販売開始年月 1984年3月 貯法・使用期限等 貯法 遮光・室温保存 3年 ...
- 抗ガン剤 シスプラチン(一般名) 【毒】 商品名 「ブリプラチン」「ランダ(Randa)」 作用機序 白金醋化合物。ガン細胞のDNAに結合し細胞増殖にブレーキをかける。 塩素イオンの低い細胞内では反応性に富み、核酸塩基と結合する
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ブリプラチン注10mg
組成
1バイアル中の分量
有効成分
シスプラチンの含量
添加剤
禁忌
- 重篤な腎障害のある患者 [腎障害を増悪させることがある。また,腎からの排泄が遅れ,重篤な副作用が発現することがある。]
- 本剤又は他の白金を含む薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「妊婦,産婦,授乳婦等への投与」の項参照)
効能または効果
◇シスプラチン通常療法
効能又は効果
- **睾丸腫瘍,膀胱癌,腎盂・尿管腫瘍,前立腺癌,卵巣癌,頭頸部癌,非小細胞肺癌,食道癌,子宮頸癌,神経芽細胞腫,胃癌,小細胞肺癌,骨肉腫,胚細胞腫瘍(精巣腫瘍,卵巣腫瘍,性腺外腫瘍),悪性胸膜中皮腫,胆道癌
以下の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
- 悪性骨腫瘍,子宮体癌(術後化学療法,転移・再発時化学療法),再発・難治性悪性リンパ腫,小児悪性固形腫瘍(横紋筋肉腫,神経芽腫,肝芽腫その他肝原発悪性腫瘍,髄芽腫等)
<効能・効果に関連する使用上の注意>
- **胆道癌での本剤の術後補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。
- 睾丸腫瘍,膀胱癌,腎盂・尿管腫瘍,前立腺癌には,A法を標準的用法・用量とし,患者の状態によりC法を選択する。
卵巣癌には,B法を標準的用法・用量とし,患者の状態によりA法,C法を選択する。
頭頸部癌には,D法を標準的用法・用量とし,患者の状態によりB法を選択する。
非小細胞肺癌には,E法を標準的用法・用量とし,患者の状態によりF法を選択する。
食道癌には,B法を標準的用法・用量とし,患者の状態によりA法を選択する。
子宮頸癌には,A法を標準的用法・用量とし,患者の状態によりE法を選択する。
神経芽細胞腫,胃癌,小細胞肺癌には,E法を選択する。
骨肉腫には,G法を選択する。
胚細胞腫瘍には,確立された標準的な他の抗悪性腫瘍剤との併用療法として,F法を選択する。
悪性胸膜中皮腫には,ペメトレキセドとの併用療法として,H法を選択する。
**胆道癌には,ゲムシタビン塩酸塩との併用療法として,I法を選択する。
A法:
- シスプラチンとして15〜20mg/m2(体表面積)を1日1回,5日間連続投与し,少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。
B法:
- シスプラチンとして50〜70mg/m2(体表面積)を1日1回投与し,少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。
C法:
- シスプラチンとして25〜35mg/m2(体表面積)を1日1回投与し,少なくとも1週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。
D法:
- シスプラチンとして10〜20mg/m2(体表面積)を1日1回,5日間連続投与し,少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。
E法:
- シスプラチンとして70〜90mg/m2(体表面積)を1日1回投与し,少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。
F法:
- シスプラチンとして20mg/m2(体表面積)を1日1回,5日間連続投与し,少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。
G法:
- シスプラチンとして100mg/m2(体表面積)を1日1回投与し,少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。
- なお,A〜G法の投与量は疾患,症状により適宜増減する。
H法:
- シスプラチンとして75mg/m2(体表面積)を1日1回投与し,少なくとも20日間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。
- なお,H法の投与量は症状により適宜減量する。
**I法:
- シスプラチンとして25mg/m2(体表面積)を60分かけて点滴静注し,週1回投与を2週連続し,3週目は休薬する。これを1クールとして投与を繰り返す。
- なお,I法の投与量は患者の状態により適宜減量する。
- 以下の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法の場合
悪性骨腫瘍の場合
- ドキソルビシン塩酸塩との併用において,シスプラチンの投与量及び投与方法は,シスプラチンとして100mg/m2(体表面積)を1日1回投与し,少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。本剤単剤では,G法を選択する。
なお,投与量は症状により適宜減量する。
子宮体癌の場合
- ドキソルビシン塩酸塩との併用において,シスプラチンの投与量及び投与方法は,シスプラチンとして50mg/m2(体表面積)を1日1回投与し,少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。
なお,投与量は症状により適宜減量する。
再発・難治性悪性リンパ腫の場合
- 他の抗悪性腫瘍剤との併用において,シスプラチンの投与量及び投与方法は,1日量100mg/m2(体表面積)を1日間持続静注し,少なくとも20日間休薬し,これを1クールとして投与を繰り返す。または1日量25mg/m2(体表面積)を4日間連続持続静注し,少なくとも17日間休薬し,これを1クールとして投与を繰り返す。
なお,投与量及び投与日数は症状,併用する他の抗悪性腫瘍剤により適宜減ずる。
小児悪性固形腫瘍(横紋筋肉腫,神経芽腫,肝芽腫その他肝原発悪性腫瘍,髄芽腫等)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法の場合
- 他の抗悪性腫瘍剤との併用において,シスプラチンの投与量及び投与方法は,シスプラチンとして60〜100mg/m2(体表面積)を1日1回投与し,少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。
もしくは,他の抗悪性腫瘍剤との併用において,シスプラチンの投与量及び投与方法は,シスプラチンとして20mg/m2(体表面積)を1日1回,5日間連続投与し,少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。
なお,投与量及び投与日数は疾患,症状,併用する他の抗悪性腫瘍剤により適宜減ずる。
- 本剤の投与時には腎毒性を軽減する為に下記の処置を行うこと。
成人の場合
- 本剤投与前,1,000〜2,000mLの適当な輸液を4時間以上かけて投与する。
- 本剤投与時,投与量に応じて500〜1,000mLの生理食塩液またはブドウ糖−食塩液に混和し,2時間以上かけて点滴静注する。
なお,点滴時間が長時間に及ぶ場合には遮光して投与すること。
- 本剤投与終了後,1,000〜2,000mLの適当な輸液を4時間以上かけて投与する。
- 本剤投与中は,尿量確保に注意し,必要に応じてマンニトール及びフロセミド等の利尿剤を投与すること。
小児の場合
- 本剤投与前,300〜900mL/m2(体表面積)の適当な輸液を2時間以上かけて投与する。
- 本剤投与時,投与量に応じて300〜900mL/m2(体表面積)の生理食塩液またはブドウ糖−食塩液に混和し,2時間以上かけて点滴静注する。
なお,点滴時間が長時間に及ぶ場合には遮光して投与すること。
- 本剤投与終了後,600mL/m2(体表面積)以上の適当な輸液を3時間以上かけて投与する。
- 本剤投与中は,尿量確保に注意し,必要に応じてマンニトール及びフロセミド等の利尿剤を投与すること。
- 胚細胞腫瘍に対する確立された標準的な他の抗悪性腫瘍剤との併用療法(BEP療法(ブレオマイシン塩酸塩,エトポシド,シスプラチン併用療法))においては,併用薬剤の添付文書を熟読すること。
- 再発又は難治性の胚細胞腫瘍に対する確立された標準的な他の抗悪性腫瘍剤との併用療法(VeIP療法(ビンブラスチン硫酸塩,イホスファミド,シスプラチン併用療法))においては,併用薬剤の添付文書を熟読すること。
- 再発・難治性悪性リンパ腫に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法においては,関連文献(「抗がん剤報告書:シスプラチン(悪性リンパ腫)」等)及び併用薬剤の添付文書を熟読すること。
- 小児悪性固形腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法においては,関連文献(「抗がん剤報告書:シスプラチン(小児悪性固形腫瘍)」等)及び併用薬剤の添付文書を熟読すること。
- 悪性胸膜中皮腫に対するペメトレキセドとの併用療法においては,ペメトレキセドの添付文書を熟読すること。
◇M-VAC療法
効能又は効果
- メトトレキサート,ビンブラスチン硫酸塩及びドキソルビシン塩酸塩との併用において,通常,シスプラチンとして成人1回70mg/m2(体表面積)を静注する。
標準的な投与量及び投与方法は,メトトレキサート30mg/m2を1日目に投与した後に,2日目にビンブラスチン硫酸塩3mg/m2,ドキソルビシン塩酸塩30mg(力価)/m2及びシスプラチン70mg/m2を静注する。15日目及び22日目にメトトレキサート30mg/m2及びビンブラスチン硫酸塩3mg/m2を静注する。これを1コースとし,4週毎に繰り返す。
- シスプラチンの投与時には腎毒性を軽減するために,シスプラチン通常療法の用法及び用量の3.に準じた処置を行うこと。
慎重投与
- 腎障害のある患者[腎機能が低下しているので,副作用が強くあらわれることがある。]
- 肝障害のある患者[代謝機能等が低下しているので,副作用が強くあらわれることがある。]
- 骨髄抑制のある患者[骨髄抑制を増悪させることがある。]
- 聴器障害のある患者[聴器障害を増悪させることがある。]
- 感染症を合併している患者[骨髄抑制により,感染症を増悪させることがある。]
- 水痘患者[致命的全身症状があらわれるおそれがある。]
- 高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
- 小児 (「小児等への投与」の項参照)
- 長期間使用している患者[腎障害,骨髄抑制等が強くあらわれ,遷延性に推移することがある。]
重大な副作用
急性腎不全(0.1%未満):
- 急性腎不全等の重篤な腎障害があらわれることがあるので,頻回に臨床検査を行うなど,患者の状態を十分に観察すること。BUN,血清クレアチニン,クレアチニン・クリアランス値等に異常が認められた場合は投与を中止し,適切な処置を行うこと。その他,血尿,尿蛋白,乏尿,無尿があらわれることがある。
汎血球減少(0.1%未満)等の骨髄抑制:
- 汎血球減少,貧血,白血球減少,好中球減少,血小板減少等があらわれることがあるので,頻回に血液検査を行うなど観察を十分に行い,異常が認められた場合には減量,休薬,中止等の適切な処置を行うこと。
ショック,アナフィラキシー様症状(0.1%未満):
- ショック,アナフィラキシー様症状を起こすことがあるので,観察を十分に行い,チアノーゼ,呼吸困難,胸内苦悶,血圧低下等の症状があらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
聴力低下・難聴(1.4%),耳鳴(1.7%):
- 高音域の聴力低下,難聴,耳鳴があらわれることがある。また,投与量の増加に伴い聴器障害の発現頻度が高くなり,特に1日投与量では80mg/m2以上で,総投与量では300mg/m2を超えるとその傾向は顕著となるので十分な観察を行い投与すること。
うっ血乳頭,球後視神経炎,皮質盲(すべて0.1%未満):
- うっ血乳頭,球後視神経炎,皮質盲等の視覚障害があらわれることがあるので,異常が認められた場合には投与を中止すること。
脳梗塞(0.1%未満),一過性脳虚血発作(0.1%未満):
- 脳梗塞,一過性脳虚血発作があらわれることがあるので,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
溶血性尿毒症症候群(0.1%未満):
- 血小板減少,溶血性貧血,腎不全を主徴とする溶血性尿毒症症候群があらわれることがあるので,定期的に血液検査(血小板,赤血球等)及び腎機能検査を行うなど観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
心筋梗塞,狭心症,うっ血性心不全,不整脈(すべて0.1%未満):
- 心筋梗塞,狭心症(異型狭心症を含む),うっ血性心不全,不整脈(心室細動,心停止,心房細動,徐脈等)があらわれることがあるので,観察を十分に行い,胸痛,失神,息切れ,動悸,心電図異常等が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
溶血性貧血(0.1%未満):
- クームス陽性の溶血性貧血があらわれることがあるので,異常が認められた場合には投与を中止すること。
間質性肺炎(0.1%未満):
- 発熱,咳嗽,呼吸困難,胸部X線異常等を伴う間質性肺炎があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(0.1%未満):
- 低ナトリウム血症,低浸透圧血症,尿中ナトリウム排泄量の増加,高張尿,痙攣,意識障害等を伴う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)があらわれることがあるので,このような症状があらわれた場合には投与を中止し,水分摂取の制限等の適切な処置を行うこと。
劇症肝炎(0.1%未満),肝機能障害(頻度不明),黄疸(0.1%未満):
- 劇症肝炎,肝機能障害,黄疸があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には減量,休薬,中止等の適切な処置を行うこと。
消化管出血,消化性潰瘍,消化管穿孔(すべて0.1%未満):
- 消化管出血,消化性潰瘍,消化管穿孔があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には減量,休薬,中止等の適切な処置を行うこと。
急性膵炎(0.1%未満):
- 急性膵炎があらわれることがあるので,観察を十分に行い,血清アミラーゼ値,血清リパーゼ値等に異常が認められた場合には投与を中止すること。
高血糖(0.1%未満),糖尿病の悪化(0.1%未満):
- 高血糖,糖尿病の悪化があらわれることがあり,昏睡,ケトアシドーシスを伴う重篤な症例も報告されているので,血糖値や尿糖に注意するなど観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
横紋筋融解症(0.1%未満):
- 横紋筋融解症があらわれることがあるので,CK(CPK)上昇,血中及び尿中ミオグロビン上昇等が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
*白質脳症(可逆性後白質脳症症候群を含む)(頻度不明):
- 白質脳症(可逆性後白質脳症症候群を含む)があらわれることがあるので,歩行時のふらつき,舌のもつれ,痙攣,頭痛,錯乱,視覚障害等が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
薬効薬理
抗腫瘍作用21)〜23)
- マウスのエーリッヒ癌(腹水,固型),サルコーマ180(腹水,固型),L1210及びP388白血病,B16メラノーマ,colon38大腸癌,WHT扁平上皮癌等に対して抗腫瘍作用が認められた。
作用機序21),22),24)
- 癌細胞内のDNA鎖と結合し,DNA合成及びそれに引き続く癌細胞の分裂を阻害するものと考えられている。殺細胞効果は,濃度依存性である。
有効成分に関する理化学的知見
一般名:
化学名:
- (SP-4-2)-Diamminedichloroplatinum
- シスプラチンは黄色の結晶性の粉末である。
N,N-ジメチルホルムアミドにやや溶けにくく,水に溶けにくく,エタノール(99.5)にほとんど溶けない。
★リンクテーブル★
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商品
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- 英
- cisplatin
- 同
- シスプラチナム cis-platinum, シスジアミンジクロロプラチナム cis-diamine-dichloroplatinum CDDP
- 商
- Platinol。ブリプラチン、プラトシン、ランダ、アイエーコール
- 関
- アルキル化剤
- first aid step1 2006 p.208,307,309
特徴
- 抗悪性腫瘍薬
- 白金錯化合物 platinum coordination complexes
- 細胞周期非依存的に作用 (GOO.1320)
- DNAと共有結合してDNA合成、細胞分裂を阻害
- 静脈内投与のみ
- 腎排泄
- the aquated species of the drug then reacts with nucleophilic sites on DNA and proteins
適応
- 精巣癌、卵巣癌、頭頚部癌、膀胱癌、食道癌、肺癌、直腸癌
- testicular, bladder, ovary, and lung carcinomas(first aid step1 2006 p.309)
副作用
- 重篤な腎障害、骨髄抑制、聴力障害、消化器毒性
- 視覚障害、脳梗塞、うっ血性心不全、悪心嘔吐
- nephrotoxicity and acoustic nerve damage(first aid step1 2006 p.309)
禁忌
-CDDP