エベロリムス
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エベロリムス
|
IUPAC命名法による物質名 |
dihydroxy-12-[(2R)-1-[(1S,3R,4R)-4-(2-hydroxyethoxy)-3-methoxycyclohexyl]propan-2-yl]-19,30-dimethoxy-15,17,21,23,29,35-hexamethyl-11,36-dioxa-4-azatricyclo[30.3.1.04,9]hexatriaconta-16,24,26,28-tetraene-2,3,10,14,20-pentone |
臨床データ |
ライセンス |
US FDA:リンク |
胎児危険度分類 |
|
法的規制 |
|
投与方法 |
Oral |
薬物動態的データ |
半減期 |
~30 hours[1] |
識別 |
CAS番号 |
159351-69-6 |
ATCコード |
L01XE10 L04AA18 |
PubChem |
CID 6442177 |
DrugBank |
DB01590 |
KEGG |
D02714 |
別名 |
42-O-(2-hydroxyethyl)rapamycin |
化学的データ |
化学式 |
C53H83NO14 |
分子量 |
958.224 g/mol |
エベロリムス(Everolimus)は 、免疫抑制剤・抗癌剤のひとつ。開発コード名'RAD-001',免疫抑制剤としては商品名 サーティカン®、悪性腫瘍治療薬としては商品名 アフィニトール® として、ノバルティス社から製造・発売されている。シロリムス(別名ラパマイシン)の誘導体であり、mTOR(mammalian target of rapamycin)阻害剤として作用する。日本での適応症は「心臓移植後の拒絶反応抑制」や腎細胞癌や膵神経内分泌腫瘍など。海外でも同様にエベロリムスは、免疫抑制剤としてのみならず腎細胞癌治療薬などとして承認されている。また乳癌、悪性リンパ腫、胃癌に対する臨床試験が進められている。[2]
目次
- 1 作用機序
- 2 適応症
- 3 臨床試験
- 4 脚注
- 5 関連事項
作用機序
他のmTOR阻害剤同様に、細胞内での信号伝達を阻害する。ただしエベロリムスはmTORC1 にのみ作用し、mTORC2 には影響しない。mTORC1のネガティブフィードバックはAKTキナーゼを活性化し、かつmTORC2を阻害しないためポジティブフィードバックがおこりAKTを活性化する。このAKTの活性化はある種の細胞をアポトーシスへ導く。
- TおよびBリンパ球を抑制し、移植臓器への拒絶反応を抑制する。
- 平滑筋の増殖抑制により、冠動脈ステントの再狭窄を抑制する。(アボット社のXience V®ステント)
- 腎細胞癌や乳癌における細胞増殖シグナルや血管発育シグナルの中継するmTORを阻害することによって、抗癌剤として処方されている。(ノバルティス社のアフィニトール)
適応症
サーティカンの適応症
アフィニトールの適応症
- 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
- 手術不能または再発乳癌
- 膵神経内分泌腫瘍
- 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫
- 結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫
臨床試験
- 肝細胞癌に対してフェイズ3の臨床試験が行われた。進行肝細胞癌においては、エベロリムスは全生存期間を延長させなかった。[3]
脚注
- ^ R.N Formica Jra, K.M Lorberb, A.L Friedmanb, M.J Biaa, F Lakkisa, J.D Smitha, M.I Lorber (March 2004). “The evolving experience using everolimus in clinical transplantation”. Elsevier 36 (2): S495–S499. http://www.transplantation-proceedings.org/article/S0041-1345(04)00016-8/abstract.
- ^ ノバルティス社の乳癌に対する申請 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201304/530295.html
- ^ Zhu AX, et al. Effect of Everolimus on Survival in Advanced Hepatocellular Carcinoma After Failure of SorafenibThe EVOLVE-1 Randomized Clinical Trial. JAMA. 2014;312(1):57-67. doi:10.1001/jama.2014.7189.
関連事項
- タクロリムス
- シロリムス
- テムシロリムス
- サイクロスポリン
- 結節性硬化症
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
*アフィニトール錠2.5mg
組成
*成分・含量
添加物
- 乳糖、ヒプロメロース、クロスポビドン、ジブチルヒドロキシトルエン、ステアリン酸マグネシウム
禁忌
- 本剤の成分又はシロリムス誘導体に対し過敏症の既往歴のある患者
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
効能または効果
- 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
- 膵神経内分泌腫瘍
- **結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫
- **結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫
根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
- スニチニブ又はソラフェニブによる治療歴のない患者に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない。
- 本剤の術後補助化学療法としての有効性及び安全性は確立していない。
膵神経内分泌腫瘍
- 臨床試験に組み入れられた患者の病理組織型等について、【臨床成績】の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
**結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫及び結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫
- 臨床試験に組み入れられた患者の腫瘍径等について、【臨床成績】の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、本剤以外の治療の実施についても慎重に検討し、適応患者の選択を行うこと。
**腎細胞癌、膵神経内分泌腫瘍、結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の場合
- 通常、成人にはエベロリムスとして1日1回10mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
**結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫の場合
- 通常、エベロリムスとして3.0mg/m2を1日1回経口投与する。なお、患者の状態やトラフ濃度により適宜増減する。
- サイトカイン製剤を含む他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
- 食後に本剤を投与した場合、Cmax及びAUCが低下するとの報告がある。本剤の投与時期は、臨床試験における設定内容に準じて選択し、食後又は空腹時のいずれか一定の条件で投与すること。(【薬物動態】、【臨床成績】の項参照)
- **結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫患者では、本剤の全血中濃度を測定し、トラフ濃度が5?15ng/mLとなるように投与量を調節すること。トラフ濃度は、本剤の投与開始又は用量変更から2週間後を目安に測定するとともに、本剤の血中濃度に影響を及ぼす患者の状態に応じて適宜測定を行うこと。(「慎重投与」、「相互作用」、【薬物動態】の項参照)
- **間質性肺疾患が発現した場合は、症状、重症度等に応じて、以下の基準を考慮して、減量、休薬又は中止すること。
間質性肺疾患に対する減量、休薬及び中止基準
グレード注1)(症状):グレード1(無症候性の画像所見)
グレード注1)(症状):グレード2(症候性:日常生活に支障なし)
- 投与の可否等:症状が改善するまで休薬すること。投与を再開する場合は、半量の投与とする。
グレード注1)(症状):グレード3(症候性:日常生活に支障あり、酸素療法を要する)
- 投与の可否等:本剤の投与を中止し、原則として再開しないこと。ただし、症状が改善し、かつ治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合のみ、半量の投与で再開可能とする。
グレード注1)(症状):グレード4(生命を脅かす:人工呼吸を要する)
- 投与の可否等:投与中止
- 注1)NCI-CTCAE v.3.0
- **肝機能障害患者では、本剤の血中濃度が上昇するとの報告があるため、減量を考慮するとともに、患者の状態をより慎重に観察し、有害事象の発現に十分注意すること。また、結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫患者では、本剤のトラフ濃度に基づいて投与量を調節すること。(「慎重投与」、【薬物動態】の項参照)
慎重投与
- 肺に間質性陰影を認める患者〔間質性肺疾患が発症、重症化するおそれがある。〕
- 感染症を合併している患者〔免疫抑制により感染症が悪化するおそれがある。〕
- **肝機能障害のある患者〔血中濃度が上昇するおそれがある。小児の肝機能障害のある患者への使用経験はない。〕(〈用法及び用量に関連する使用上の注意〉、【薬物動態】の項参照)
- 高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
- 肝炎ウイルス、結核等の感染又は既往を有する患者〔再活性化するおそれがある。〕(「重要な基本的注意」の項参照)
重大な副作用
**間質性肺疾患(12.4%)
- 間質性肺疾患(肺臓炎、間質性肺炎、肺浸潤、胞隔炎、肺胞出血、肺毒性等を含む)があらわれることがあり、未回復のまま死亡に至った例が報告されている。投与開始後は観察を十分に行い、異常が認められた場合には、症状に応じて休薬又は減量するなど適切な処置を行うこと。(【警告】、〈用法及び用量に関連する使用上の注意〉、「慎重投与」、「重要な基本的注意」の項参照)
**感染症(21.7%)
- 細菌、真菌、ウイルスあるいは原虫による重篤な感染症(肺炎、アスペルギルス症、カンジダ症、敗血症等)や日和見感染が発現又は悪化することがあり、死亡に至った症例が報告されている。また、B型肝炎ウイルスの再活性化により、肝不全に至り、死亡した症例が報告されている。これらの感染症の診断がされた場合、直ちに本剤を休薬又は中止し、適切な処置を行うこと。侵襲性の全身性真菌感染の診断がされた場合、直ちに本剤の投与を中止し、適切な抗真菌剤を投与すること。この場合は、本剤の投与は再開しないこと。(【警告】、「重要な基本的注意」の項参照)
**腎不全(1.3%)
- 重篤な腎障害があらわれることがあり、腎不全が急速に悪化した例も報告されているので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には休薬又は投与を中止し、適切な処置を行うこと。(「重要な基本的注意」の項参照)
**高血糖(9.5%)、糖尿病の発症又は増悪(3.9%)
- 高血糖の発現、糖尿病が発症又は増悪することがあるので、定期的に空腹時血糖値の測定を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には休薬又は減量するなど適切な処置を行うこと。(「重要な基本的注意」の項参照)
**貧血(21.5%)、ヘモグロビン減少(3.2%)、白血球減少(5.7%)、リンパ球減少(7.7%)、好中球減少(5.2%)、血小板減少(10.1%)
- 貧血、ヘモグロビン減少、白血球減少、リンパ球減少、好中球減少、血小板減少があらわれることがあるので定期的に血液検査(血球数算定等)を実施するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には休薬又は減量するなど適切な処置を行うこと。なお、血小板減少が生じた結果、消化管出血等の出血に至った症例も報告されている。(「重要な基本的注意」の項参照)
**口内炎(55.7%)
- 口内炎、口腔粘膜炎及び口腔内潰瘍等があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には休薬又は減量するなど適切な処置を行うこと。
アナフィラキシー様症状(頻度不明)
- アナフィラキシー様症状(呼吸困難、顔面紅潮、胸痛、血管浮腫等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
急性呼吸窮迫症候群(0.2%)
- 急性呼吸窮迫症候群があらわれることがあるので、観察を十分に行い、急速に進行する呼吸困難、低酸素症、両側性びまん性肺浸潤影等の胸部X線異常等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
**肺塞栓症(0.7%)、深部静脈血栓症(頻度不明)
- 肺塞栓症、深部静脈血栓症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、休薬又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
悪性腫瘍(二次発癌)(0.2%)
- 悪性リンパ腫、リンパ増殖性疾患、悪性腫瘍(特に皮膚)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明)
- 進行性多巣性白質脳症(PML)があらわれることがあるので、本剤の治療期間中及び治療終了後は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等の症状があらわれた場合は、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
BKウイルス腎症(頻度不明)
- BKウイルス腎症があらわれることがあるので、このような場合には減量又は投与を中止し、適切な処置を行うこと。
血栓性微小血管障害(頻度不明)
- 溶血性尿毒症症候群(HUS:血小板減少、溶血性貧血、腎不全を主徴とする)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)様症状(血小板減少、微小血管性溶血性貧血、腎機能障害、精神症状を主徴とする)等の血栓性微小血管障害があらわれることがあるので、このような場合には減量又は投与を中止し、適切な処置を行うこと。
肺胞蛋白症(頻度不明)
- 肺胞蛋白症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
心嚢液貯留(0.2%)
- 心嚢液貯留があらわれることがあるので、使用に際しては心電図、心エコー、胸部X線検査を行うなど、患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
薬効薬理
抗腫瘍作用
- In vitro試験において、エベロリムスはヒト及びげっ歯類由来腫瘍細胞株の増殖を抑制した。16?19)また、in vivo試験において、エベロリムスはヒト腫瘍細胞株を異種移植したマウス20?31)、同系腫瘍移植マウス32)及び同系腫瘍移植ラット33,34)の腫瘍増殖を抑制した。
血管新生阻害作用
- In vitro試験において、エベロリムスは血管内皮増殖因子(VEGF)及び塩基性線維芽細胞増殖因子によるヒト臍帯静脈内皮細胞の増殖を阻害した。35)また、エベロリムスは腫瘍細胞からのVEGF産生を阻害した。32)In vivo試験において、エベロリムスはマウスに皮下移植したVEGF含有チャンバー内の血管新生を阻害した。36)B16/BL6メラノーマ細胞を同所性移植したマウスにおいて、エベロリムスは移植部位及び転移部位の腫瘍血管密度を減少させた。32)
**TSC遺伝子欠損マウスに対する作用
- エベロリムスは、結節性硬化症の原因遺伝子と考えられているTuberous sclerosis(TSC)遺伝子のうち、TSC1遺伝子を神経細胞で欠損させたマウスの生存日数を延長し、脳内のリン酸化S6を低下させた。37)また、エベロリムスは、TSC2遺伝子をヘテロで欠損させたマウスでみられる腎腫瘍形成を抑制した。38)
作用機序
- エベロリムスは、細胞内イムノフィリンであるFKBP(FK506 binding protein)12に結合した。39)エベロリムスとFKBP12の複合体がセリン・スレオニンキナーゼであるmTORを選択的に阻害すると考えられている。mTORは、p70S6キナーゼ及び4E-BP1をリン酸化することによって蛋白質合成を調節し、細胞の成長、増殖及び生存に関与する。
エベロリムスを投与された担癌マウス40)及び担癌ラット33)の腫瘍においてp70S6キナーゼが阻害され、エベロリムスを投与された担癌ラットの腫瘍において4E-BP1のリン酸化が阻害された。33)
有効成分に関する理化学的知見
一般名
化学名
- (1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28E,30S,32S,35R)-1,18-Dihydroxy-12-{(1R)-2-[(1S,3R,4R)-4-(2-hydroxyethoxy)-3-methoxycyclohexyl]-1-methylethyl}-19,30-dimethoxy-15,17,21,23,29,35-hexamethyl-11,36-dioxa-4-azatricyclo[30.3.1.04,9]hexatriaconta-16,24,26,28-tetraene-2,3,10,14,20-pentaone
分子式
分子量
性状
- 白色?淡黄色の粉末で、エタノール(99.5)に溶けやすく、水にほとんど溶けない。
★リンクテーブル★
[★]
商品
[★]
- 英
- everolimus
- 同
- RAD001
- 商
- サーティカン Certican、アフィニトール
- 関
- その他の腫瘍用薬
- 他に分類されない代謝性医薬品