抗血小板薬
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抗血小板剤(こうけっしょうばんざい、anti platelet agents)は、血小板の凝集を阻害することで、主に白色血栓を作らないようにする作用を持つ薬剤である。
抗凝固剤がフィブリンの形成を阻止して、赤色血栓を阻害するのとは異なり、動脈硬化巣での血栓形成を防止する。トロンボキサンやプロスタグランジンに関与する薬剤と、cAMP濃度とカルシウムイオン濃度が血小板凝集に関係するのでその2つを標的とする薬剤の2つに大きく分けられる。さらに、血小板凝集に関わる受容体グリコプロテインIIb/IIIaを遮断する3つめの薬が開発されている。
目次
- 1 薬理別の分類
- 1.1 トロンボキサンやプロスタグランジンに関係する薬剤
- 1.2 cAMPやカルシウムイオン濃度に関係する薬
- 1.3 GP IIb/IIIa
- 2 関連項目
薬理別の分類
トロンボキサンやプロスタグランジンに関係する薬剤
- COX-1阻害
- アスピリンに代表される。血小板には核が無く、分化して7日間の血小板寿命のあいだには新たな蛋白が合成されない。シクロオキシゲナーゼ (COX-1) にアスピリンが結合し不可逆的に酵素を失活させるので、トロンボキサンA2 (TXA2) が産生されず、血小板が凝集しない。アスピリンが少量であればタンパク質が補充される血管壁にはCOX-1は失活せず、COX-2も活性が保たれるので血管拡張作用や血小板凝集減弱作用のあるプロスタグランジンI3 (PGI3) は、血管壁から供給される。以前は保険適応を認められていなかったが、脳梗塞と虚血性心疾患に処方が認められるようになった。バファリン®(低用量81mg、鎮痛薬として用いるときは330mg)やバイアスピリン®が有名である。
- プロスタグランジン製剤
- 経口可能なPGI2誘導体製剤やPGE1誘導体製剤のほか、静脈内投与される薬もあり、リポ化製剤は血栓に集まるので、点滴ではなく注射で投与することが出来る。PGE1誘導体製剤リマプロストアルファテクス(オパルモン®、プロレナール®)やPGI2誘導体製剤ベラプロスト(ドルナー®、プロサイリン®)が経口剤としてある。ベラプロストは肺高血圧症にも適応があり、リマプロストアルファテクスは脊柱管狭窄症で用いられることがある。
- 魚油
- EPAやDHAなどは血小板凝集作用の弱いTXA3に代謝されるので、結果として血管拡張と抗血小板作用を示す。高脂血症と閉塞性動脈硬化症に適応をもつ。高脂血症の治療も兼ねるイコサペント酸エチル(エパデール®)が有名である。
- トロンボキサン合成酵素阻害剤
- 血小板凝集を促進し血管を攣縮させるTXA2の合成酵素を阻害する。そうすると、器質がに供給されてPGI2の産生も増える。脳梗塞の急性期に点滴で投与するほか、クモ膜下出血に伴う血管攣縮にも適応がある。
cAMPやカルシウムイオン濃度に関係する薬
- チエノピリジン誘導体
- 血小板表面にあるADP受容体にはATP受容体のP2Y1受容体、P2Y12受容体が機能的に存在しており、P2Y1受容体は血小板の形態変化に関与し、P2Y12受容体は血小板の凝集を促進する作用がある。チエノピリジン誘導体はP2Y12受容体の特異的な阻害薬であることが知られており、P2Y12-Giのシグナルを介したアデニル酸シクラーゼ活性化の抑制を抑制することにより血小板凝集を妨げる。GP IIb-IIIa 複合体の活性化も抑制する。塩酸チクロピジン(パナルジン®)があるが血小板減少症(TTP)や肝障害を注意深く観察していく必要がある。副作用の少ないクロピドグレル(プラビックス®)が2006年5月より国内でも販売されている。更にクロピドグレルを上回る心血管イベント抑制効果を示すプラスグレル(エフィエント®)が2014年2月に承認された。チクロピジンは脳梗塞、くも膜下出血後の合併症予防に用いられることがある。クロピドグレルはPCI後といった虚血性心疾患やアテローム血栓性脳塞栓でも用いられる。
- PDE3阻害
- ホスホジエステラーゼを阻害すると細胞内の環状アデノシン一リン酸濃度が上昇し、血小板が凝集しない。副作用として心拍数が増え、それを動悸と感じる場合がある。除脈の患者には有利に働く。シロスタゾール(プレタール®)などがある。プレタール®は心原性脳梗塞症の他、閉塞性動脈硬化症の疼痛改善効果も報告されている。
- 5−セロトニン受容体2拮抗剤
- 血小板に存在し、血栓ができるときに凝集を促進する、5-HT2受容体の拮抗剤。塩酸サルポグレラート(アンプラーク®)がある。
GP IIb/IIIa
- GP IIb/IIIa阻害
- 血小板が凝集するときの細胞表面糖タンパクでvWFやフィブリノーゲンの受容体に作用する。日本ではまだ販売されていない。抗体のAbciximabと、阻害剤のEpifibatideやTirofibanがある。
関連項目
薬理学:医薬品の分類 |
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消化器/代謝(A) |
胃酸中和剤(制酸薬、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬) • 制吐薬 • 瀉下薬 • 止瀉薬/止痢薬 • 抗肥満薬 • 血糖降下薬 • ビタミン • ミネラル
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血液、血液生成器官(B) |
抗血栓薬(抗血小板剤、抗凝固薬、血栓溶解薬) • 抗出血(血小板、凝固・線溶系、抗線維素溶解性)
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循環器系(C) |
心臓療法/狭心症治療薬(強心配糖体、抗不整脈薬、強心剤) • 高血圧治療薬 • 利尿薬 • 血管拡張薬 • 交感神経β受容体遮断薬 • カルシウム拮抗剤 • レニン-アンジオテンシン系(ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、レニン阻害薬) • 脂質降下薬(スタチン、フィブラート、胆汁酸捕捉因子)
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皮膚(D) |
皮膚軟化剤 • 瘢痕形成剤 • 鎮痒薬 • 乾癬治療薬 • 他の皮膚薬
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泌尿生殖器系(G) |
ホルモン避妊薬 • 排卵誘発治療 • SERM • 性ホルモン
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内分泌器(H) |
視床下部脳下垂体ホルモン • 副腎皮質ホルモン(糖質コルチコイド、ミネラルコルチコイド) • 性ホルモン • 甲状腺ホルモン/抗甲状腺薬
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感染(J、P、QI) |
抗菌薬 (抗生物質) • 抗真菌薬 • 抗ウイルス薬 • 抗寄生虫薬(抗原虫薬、駆虫薬) • 外部寄生虫駆除剤 • 静注用免疫グロブリン • ワクチン
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悪性腫瘍(L01-L02) |
抗がん剤(代謝拮抗薬、抗腫瘍性アルキル化薬、紡錘体毒、抗悪性腫瘍薬、トポイソメラーゼ阻害薬)
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免疫系(L03-L04) |
免疫調節薬(免疫賦活薬、免疫抑制剤)
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筋肉、骨、関節(M) |
アナボリックステロイド • 抗炎症薬(NSAIDs) • 抗リウマチ • 副腎皮質ホルモン • 筋弛緩剤 • ビスホスホネート
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脳、神経(N) |
鎮痛剤 • 麻酔剤(一般、局所・静脈) • 食欲低下薬 • ADHD治療 • 中毒医学 • 抗てんかん薬 • アルツハイマー治療 • 抗うつ薬 • 片頭痛治療 • 抗パーキンソン病薬 • 抗精神病薬 • 抗不安薬 • 抑制剤 • エンタクトゲン • エンセオジェン • 陶酔薬 • 幻覚剤(サイケデリック、解離性麻酔薬、デリリアント) • 催眠薬/鎮静薬 • 気分安定薬 • 神経保護 • スマートドラッグ • 神経毒 • 食欲促進 • セレニック • 精神刺激薬 • 覚醒促進物質
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呼吸器(R) |
鬱血除去薬 • 気管支拡張薬 • 鎮咳去痰薬 • 抗ヒスタミン薬
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感覚器(S) |
眼科学 • 耳科学
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その他ATC(V) |
解毒剤 • 造影剤 • 放射性薬理学 • 湿潤療法
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Japanese Journal
- 冠動脈ステントを併用したコイル塞栓術にて良好な経過をたどった後下小脳動脈起始部椎骨動脈解離によるくも膜下出血の1例
- 郡家 克旭,盛岡 潤,原田 啓,金 茂成
- 脳神経外科ジャーナル 21(7), 563-569, 2012-07-20
- … 小脳動脈起始部(PICA-involved type)解離性椎骨動脈瘤に対し冠動脈ステントを併用したコイル塞栓術を行った.PICAを含め母血管の血流を保ちつつ拡張部分のみを閉塞させた.再出血や梗塞をきたすことなく良好な経過をたどった.慢性期に一時的な再開通がみられたものの,抗血小板剤を中止することで改善した.一般に治療が困難といわれるPICA-involved type解離性椎骨動脈瘤に対し,本法は考慮されるべき治療法の1つと考えられる. …
- NAID 110009477220
- 急性出血性直腸潰瘍の臨床的・内視鏡的特徴および 潰瘍形態からみた臨床像の検討
- 香川 幸一,松枝 和宏,衣笠 秀明,尾崎 由直,濱口 京子,新井 修,藤田 英行,三好 正嗣,毛利 裕一,山本 博
- 日本消化器内視鏡学会雑誌 54(9), 3124-3130, 2012
- … 篤な基礎疾患をもつ長期臥床患者が大半を占めた.2)抗血小板薬9例NSAIDs 5例ステロイド10例であった.3)大半が肛門歯状線付近で露出血管が13例に認められた.4)HSEとクリップによる止血が最多であった.5)Dieulafoy型で止血術後再出血率が有意に高かった.結論:抗血小板剤,NSAIDs,ステロイド使用中の長期臥床患者の血便では,AHRUを念頭に置く必要があり,Dieulafoy型では止血術後の再出血が多く注意が必要である. …
- NAID 130002052371
- 低用量アスピリン内服中に発症した熱傷性食道壁内血腫の1例
- 馬場 健,志田 敦男,青木 寛明,横田 徳靖,栗原 英明,鈴木 博昭
- 日本消化器内視鏡学会雑誌 54(8), 2213-2218, 2012
- … 部つかえ感が出現し,固形物の摂取困難となり5月17日当科入院となった.上部消化管内視鏡検査で上部食道から食道胃接合部にかけて長軸方向に連続して暗紫色の血腫を認め,食道壁内血腫と診断した.抗血小板剤の中止,禁食,中心静脈栄養,プロトンポンプ阻害剤を投与し保存的に経過観察した.第7病日には自覚症状は消失し,血腫は完全に消失したが,粘膜脱落に伴う潰瘍形成を認めた.第21病日には粘膜剥離 …
- NAID 130002052358
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- 抗血小板剤の種類. 覚えておくべき重要事項:血小板の寿命は約10 ...
★リンクテーブル★
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- 英
- antiplatelet agent、antiplatelet drug、platelet antagonist
- 関
- 血小板凝集阻害薬、血小板凝集阻害剤、血小板凝集抑制薬、血小板抑制薬、抗血小板剤
- 関
- 血小板凝集抑制薬
シクロオキシゲナーゼ阻害薬
ホスホジエステラーゼ阻害薬
- ジピリダモール
- シロスタゾール(プレタール):セロトニン放出を抑制、トロンボキサンA2による血小板凝集を抑制、cAMPホスホジエステラーゼ活性を阻害(PDE3)
ADP受容体阻害薬
- チクロピジン(パナルジン):(副作用)肝障害、白血球減少、血小板減少
- クロピドグレル(プラビックス):チクロピジンに比べて副作用の発現減少
ガイドライン
- 循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_hori_h.pdf
[★]
商品名
会社名
成分
薬効分類
薬効
- 1)以下のリスク因子を1つ以上有する陳旧性心筋梗塞のうち、アテローム血栓症の発現リスクが特に高い場合
- 65歳以上、薬物療法を必要とする糖尿病、2回以上の心筋梗塞の既往、血管造影で確認された多枝病変を有する冠動脈疾患、又は末期でない慢性の腎機能障害*
- 2)経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)(ただし、アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切である場合で、かつ、アスピリンと併用する他の抗血小板薬の投与が困難な場合に限る)を効能・効果とする新有効成分含有医薬品
[★]
- 英
- antiplatelet agent、antiplatelet drug、platelet aggregation inhibitor
- 関
- 抗血小板薬、血小板凝集阻害剤、血小板凝集抑制薬、血小板抑制薬、血小板凝集抑制剤、抗血小板剤、トロンボキサン合成酵素阻害薬
[★]
- 英
- antiplatelet drug、platelet aggregation inhibitor
- 関
- 血小板凝集阻害薬、抗血小板薬、血小板凝集抑制薬、血小板凝集抑制剤、抗血小板剤
[★]
- 英
- platelet (Z), blood platelet (Z), PLT
- 同
- 栓球 thrombocyte
- 関
- 血小板血栓。血小板数 platelet count PLC
- GOO. 1468(血小板凝集 platelet aggregation)
- 半減期:1週間(異常値の出るメカニズム第2版)。4日 (SP.505)。
- 寿命:10日
- 体積:5-10 fl
- 直径:2-5μm。
- 無核。
基準値
- 15万 - 40万 /μl (2007前期解剖学授業プリント, SP.505)
- 15万 - 35万 /μl (2007前期生理学授業プリント, PT.233)
新生児
- 出典不明
産生組織
- トロンボポエチンにより巨核球の細胞質がちぎれて血流に放出される (SP.505)
貯蔵組織
組織学
- P-セレクチンを膜上に持つ
- フィブリノーゲン、フィブロネクチン、第V因子、第VIII因子、platelet factor 4、PDGF、TGF-α (BPT.89)
- ADP、ATP、Ca2+、ヒスタミン、セロトニン、エピネフリン (BPT.89)
機能 (SAN.236-237)
1.一次止血
- TXA2,セロトニンは血管収縮作用
- ADP, TXA2,セロトニンは血小板凝集
- 血小板のGpIIb/GpIIIa複合体がフィブリノゲンと結合し編み目を形成
2.血液凝固の促進
3.毛細血管機能の維持
- 毛細血管内皮細胞に融合し血管内皮を補強している → 血小板減少により点状出血を来すことになる。
膜タンパク
血小板減少による症状
- 5-10万 :症状なし-やや止血しにくい程度
- 2-3万 :下肢に点状出血 (→皮下出血)
- 1万以下 :粘膜出血→臓器出血の危険あり
検査
- 抗凝固剤としてEDTAを用いた場合、EDTA依存性偽血小板減少をきたすことがある。
臨床関連
数の異常
機能の異常
[★]
- 英
- drug、agent
- 関
- 薬、作用薬、ドラッグ、媒介物、病原体、麻薬、薬剤、薬物、代理人、薬品
[★]
- 関
- 胚盤、盤状体