ファンコーニ症候群 |
分類および外部参照情報 |
ICD-10 |
E72.0 |
ICD-9-CM |
270.0 |
DiseasesDB |
11687 |
MedlinePlus |
000333 |
eMedicine |
ped/756 |
MeSH |
D005198 |
ファンコーニ症候群(ファンコーニしょうこうぐん)は、腎臓の近位尿細管の疾患で、ブドウ糖、アミノ酸、尿酸、リン酸、炭酸水素塩が再吸収されずに尿中にそのまま排泄されるものである。ファンコーニ症候群は、原尿が糸球体で濾過されてから最初に通過する部位である近位尿細管に影響を及ぼす。遺伝性のものや、薬剤性、重金属によるものがある。[1]
目次
- 1 解説
- 2 名称について
- 3 臨床症状
- 4 原因
- 5 治療
- 6 出典
- 7 脚注
- 8 外部リンク
解説
ファンコーニ症候群は、その型によって近位尿細管に及ぼす影響が異なり、合併症も異なる。炭酸水素塩の逸失はタイプ2すなわち近位尿細管性アシドーシスをもたらす。リン酸の逸失は、リン酸が骨形成に必要な物質であるがために、ビタミンDやカルシウムが十分量ある場合でも、くる病をもたらす。.[2]
名称について
ファンコーニ症候群は、スイスの小児科医であるグイドー・ファンコーニにちなんで名づけられた名称である。しかし、ファンコーニ自身はこの疾患を症候群としては報告していないところから、誤った名づけ方と言えるかもしれない。しかしながら、グッドパスチャー症候群の場合を見ればわかるとおり、一連の症状が同時に生じていることを記録した人物の名前を付けることは、習慣となっている。
臨床症状
小児における症状は「発育不全」「成長遅滞」「低リン酸性くる病」。乳幼児では、多尿に伴う高度脱水により反復する発熱を認める場合がある。成人における症状は「骨軟化症」と「筋力低下」。
詳細は「腎尿細管性アシドーシス」を参照
近位尿細管性アシドーシスでみられる臨床症状は以下のようなものがある。
- 多尿症、多飲症、脱水症
- 成長障害
- アシドーシス
- 低カリウム血症
- 低ナトリウム血症
- 高クロール血症
もっと一般的なファンコーニ症候群での近位尿細管障害には次のようなものが挙げられる。
- 低リン酸血症/リン酸尿
- 腎性糖尿
- タンパク尿/アミノ酸尿
- 高尿酸尿症(低尿酸血症)
原因
ハートナップ病(おもにトリプトファンの吸収に影響を及ぼす)やその類似の尿細管障害と比較して、ファンコーニ症候群は異なったさまざまな種類の物質の輸送に影響を及ぼしているので、ある特定の輸送チャネルの障害によって起きる障害ではなく、近位尿細管のもっと一般的な機能障害によって生じていると考えられている。[3]
ファンコーニ症候群の影に別の疾患が隠れていることもある。遺伝性のもの、先天性のもの、後天性のものがある。
遺伝性疾患
小児ではシスチン尿症がファンコーニ症候群の最も多い原因となる。
ほかに原因として確認されているものでは、ウィルソン病(銅の代謝に関する遺伝的疾患)、ロウ症候群(眼脳腎症候群)、チロシン血症(タイプI)[4]、ガラクトース血症、糖原病、遺伝性フルクトース不耐症がある。
デント病とロウ症候群とは伴性遺伝(X連鎖性遺伝)である。[5]
後天性疾患
成長してからでもファンコーニ症候群に罹患することがある。
要因としては、ビタミンDの欠乏や期限切れのテトラサイクリンの服用[6]や、腎不全が先行していた場合のテノフォビル服用の副作用が挙げられる[7][8]。HIV感染者では、テノフォビルやジダノシンを含む抗レトロウイルス療法の利用によって二次的にファンコーニ症候群を生じることがある[9]。重金属(カドミウム(イタイイタイ病)、水銀、鉛、ウラン、白金など)の摂取もファンコーニ症候群を生じる[10]。
多発性骨髄腫や意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症 (MGUS)でもファンコーニ症候群を引き起こしうる[11]。
治療
対症療法として尿と共に失われる物質の補充が中心となる。先天性の場合、完治させることは出来ないが適切な治療で症状の悪化を止め改善する事は可能である。
- 薬剤性の病態では薬剤中止。
- 血液の酸性度が高くなった状態のアシドーシスでは、重炭酸ナトリウムの溶液の飲用。
- 血液中のカリウム濃度が低い場合は、カリウムの経口補充。
- リン酸塩とビタミンDの経口補充。
- 小児が腎不全発症した場合は、救命のための腎移植。
出典
- ファンコニ症候群 メルクマニュアル
- ファンコーニ(Fanconi)症候群 小児慢性特定疾病情報センター
脚注
- ^ Fanconi Syndrome at Merck Manual Home Health Handbook
- ^ Magen D, Berger L, Coady MJ, et al. (March 2010). “A loss-of-function mutation in NaPi-IIa and renal Fanconi's syndrome”. N. Engl. J. Med. 362 (12): 1102–9. doi:10.1056/NEJMoa0905647. PMID 20335586.
- ^ Fanconi Syndrome - eMedicine
- ^ Cochat P, Pichault V, Bacchetta J et al. (March 2010). “Nephrolithiasis related to inborn metabolic diseases”. Pediatr. Nephrol. 25 (3): 415–424. doi:10.1007/s00467-008-1085-6. PMC 2810370. PMID 19156444. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=2810370.
- ^ Vilasi A, Cutillas PR, Maher AD et al. (August 2007). “Combined proteomic and metabonomic studies in three genetic forms of the renal Fanconi syndrome”. Am. J. Physiol. Renal Physiol. 293 (2): F456–F467. doi:10.1152/ajprenal.00095.2007. PMID 17494094. http://ajprenal.physiology.org/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=17494094.
- ^ 山本章:テトラサイクリン分解産物による乳酸アシドーシスとファンコーニ症候群 日本薬学会 ファルマシア 18(4), 313, 1982-04-01
- ^ Viread Label Information, U.S. Food and Drug Administration (FDA)), 2008-04-11
- ^ Tenofovir (Viread) Associated with Mild Kidney Function Impairment, but not Clinically Relevant Renal Disease, hivandhepatitis.com, 2008-10-14
- ^ Irizarry-Alvarado JM, Dwyer JP, Brumble LM, Alvarez S, Mendez JC (March 2009). “Proximal tubular dysfunction associated with tenofovir and didanosine causing Fanconi syndrome and diabetes insipidus: a report of 3 cases”. AIDS Read 19 (3): 114–21. PMID 19334328. http://theaidsreader.consultantlive.com/display/article/1145619/1386653.
- ^ Barbier O, Jacquillet G, Tauc M, Cougnon M, Poujeol P (2005). “Effect of heavy metals on, and handling by, the kidney”. Nephron Physiol 99 (4): p105–p110. doi:10.1159/000083981. PMID 15722646. http://content.karger.com/produktedb/produkte.asp?typ=pdf&file=NEP2005099004105.
- ^ Hashimoto T, Arakawa K, Ohta Y et al. (2007). “Acquired fanconi syndrome with osteomalacia secondary to monoclonal gammopathy of undetermined significance”. Intern. Med. 46 (5): 241–245. doi:10.2169/internalmedicine.46.1882. PMID 17329920. http://dx.doi.org/10.2169/internalmedicine.46.1882.
外部リンク
- 慢性腎臓病(CKD)の臨床的重要性と考え方 動物臨床医学 Vol.20 (2011) No.3 p.71-75