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この項目では、抗コリン薬全般について説明しています。抗精神病薬の副作用に対して用いられる抗コリン作用のあるパーキンソン病薬については「抗パーキンソン病薬」をご覧ください。 |
抗コリン薬(こうこりんやく、英: anticholinergic agent)は、アセチルコリンがアセチルコリン受容体に結合するのを阻害する薬物のことである。抗コリン作動薬とも呼ばれる。この抗コリン作用によって副交感神経が抑制される。副交感神経遮断薬とも言われていたが、コリン作動性線維は副交感神経節後線維だけではない。代表的なものに、アトロピンやスコポラミンがある。これと逆の作用を示すのはコリン作動薬である。
過剰摂取や、あるいは他の抗コリン作用のある薬物三環系抗うつ薬との併用により、コリン中毒によるせん妄、昏睡、けいれん、高熱などが生じることがある[1]。
目次
- 1 歴史
- 2 機序
- 3 用途
- 3.1 胃腸の過活動、失禁、吐き気の抑制
- 3.2 抗コリン性抗パーキンソン病薬
- 4 抗コリン作用の強い他の薬物
- 5 抗コリン中毒
- 6 認知症リスクの増加
- 7 脚注
- 8 関連項目
歴史
ベラドンナは、学名Atropa belladonnaと呼ばれ、古くから用いられてきた。ベラドンナには、アトロピンやスコポラミンといった成分が含まれ、これらは抗コリン薬として用いられる。
機序
アセチルコリンは神経伝達物質として、身体の様々な機能に関わっている。このアセチルコリンが作用するときに結合する部位が、アセチルコリン受容体である。さらにアセチルコリン受容体には、ムスカリン受容体とニコチン受容体が存在する。抗コリン薬は、このうちムスカリン受容体にアセチルコリンが結合して作用するのを阻害する。つまり、アンタゴニストである。
用途
胃腸の過活動、失禁、吐き気の抑制
スコポラミン(ブスコパン)のような抗コリン薬は、胃腸の過活動による、胃痛や腹痛、また乗り物酔いの抑制などにも用いられる。
抗コリン性抗パーキンソン病薬
「抗パーキンソン病薬#抗コリン作用」も参照
代表的には、ビペリデン(アキネトン、タスモリン)や、トリヘキシフェニジル(アーテン)のような抗コリン性抗パーキンソン病薬が存在する[1]。1960年代にはパーキンソン病の治療にドーパミン補充療法が登場し、現在は抗コリン性抗パーキンソン病薬は、主に抗精神病薬との併用において用いられてきた[1]。しかし、そのような併用は避けることが推奨されている[1]。
抗コリン作用の強い他の薬物
詳細は「抗コリン作用」を参照
- 第一世代の抗ヒスタミン薬[2]:ジフェンヒドラミン(レスタミン、ドリエル)や プロメタジン(ヒベルナ、ピレチア)など。改良された抗コリン作用のない第二世代抗ヒスタミン薬が、1980年代より登場している[2]。
- 低力価の抗精神病薬[3]:フェノチアジン系 の クロルプロマジン や レボメプロマジン など。
- 三環系抗うつ薬:イミプラミン や アミトリプチリン など。
- ベンゾジアゼピン:ジアゼパム(セルシン)エチゾラム(デパス)など。
- 胃腸鎮痙薬:塩酸ジサイクロミン(レスポリミン)、臭化プロパンテリン など。
抗コリン中毒
抗コリン剤の過剰摂取や、抗コリン作用のある三環系抗うつ薬との併用によって生じる中毒状態であり、せん妄、昏睡、けいれん、幻覚、低血圧、高熱などの症状が生じる救急状態である[1]。
認知症リスクの増加
抗コリン作用のある薬剤を長期間、摂取するとアルツハイマー病などの認知症の発症リスクが高まる可能性があることが報告され、10年間で91日分から365日分の使用では1.19倍、1095日まででは1.23倍、1096日以上では1.54倍であった[4][5]。
脚注
- ^ a b c d e 山田武史 「12 抗コリン性抗パーキンソン薬について教えて下さい。抗コリン性パーキンソン病を併用することによるデメリットはどのようなものがあるでしょうか?本当に認知機能に影響するのでしょうか?」『統合失調症の薬物療法100のQ&A』 藤井康男(編集)、稲垣中(編集協力)、星和書店、2008年5月、35-37頁。ISBN 978-4791106677。
- ^ a b Church, Diana S.; Church, Martin K. (2011). "Pharmacology of Antihistamines". World Allergy Organization Journal 4 (Supplement): S22–S27. doi:10.1097/WOX.0b013e3181f385d9. PMC 3666185. PMID 23282332.
- ^ 精神医学講座担当者会議(監修)、佐藤光源、丹羽真一、井上新平(編集) 『統合失調症治療ガイドライン』 医学書院、2008年、第2版、124頁。ISBN 978-4-260-00646-0。
- ^ “風邪や花粉症など、身近な薬がアルツハイマー病を増やす、飲むほど影響、米国グループ報告 10年間に飲んだ薬の蓄積次第でリスク高まる”. Medエッジ. (2015年2月7日). http://www.mededge.jp/a/drge/8260 2015年3月1日閲覧。
- ^ Gray, Shelly L.; Anderson, Melissa L.; Dublin, Sascha; Hanlon, Joseph T.; Hubbard, Rebecca; Walker, Rod; Yu, Onchee; Crane, Paul K. et al. (2015). "Cumulative Use of Strong Anticholinergics and Incident Dementia". JAMA Internal Medicine. doi:10.1001/jamainternmed.2014.7663. PMID 25621434.
関連項目
- 抗パーキンソン病薬#抗コリン作用
- 抗コリン作用
- 遅発性ジスキネジア
- ビペリデン
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Japanese Journal
- 持続型PGF_<2α>類似体フェンプロスタレンの分割投与と臭化プリフィニウム前投与による犬の分娩誘起効果と安全性
- 森好 政晴,丸山 夕賀子,井関 葉月,中田 健,中尾 敏彦
- The journal of veterinary medical science 61(7), 781-786, 1999-07-25
- … 長時間持続型PGF_<2α>類似体フェンプロスタレンの分割投与と副交感神経遮断薬である臭化ブリフィニウムの前投与によって犬の分娩誘起を行い, 分娩誘起効果と副作用の程度を調べた. …
- NAID 110003920175
- マウスにおけるピロカルピン誘導唾液分泌反応に及ぼすレセルピンの影響
Related Links
- 副交感神経遮断薬は、副交感神経節後線維支配効果器官のムスカリン受容体を競合的に遮断する薬物である。 図 3.32 (p.103) 副交感神経遮断薬の分類 ・ベラドンナアルカロイド ・アトロピン代用薬 ・ ベラドンナアルカロイド ...
- 栄養・生化学辞典 - 副交感神経遮断薬の用語解説 - 副交感神経の作用を阻害する薬品で,アトロピンなどがある. ... 【胃腸薬】より …これに対しては次のような薬物がある。制酸薬(炭酸水素ナトリウム,水酸化アルミニウム,ケイ酸 ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 足指先端部の膿瘍を切開排膿するために局所浸潤麻酔を行うことにした。正しいのはどれか。
- a. 前投薬として副交感神経遮断薬を投与する。
- b. 膿瘍壁や膿瘍内にも麻酔薬を注入する。
- c. 血管収縮薬添加局所麻酔薬を使用する。
- d. 足関節部まで麻酔範囲に含める。
- e. 血液の逆流が見られたら麻酔薬の注入を中止する。
[正答]
※国試ナビ4※ [098E041]←[国試_098]→[098E043]
[★]
- 英
- anticholinergics, anticholinergic, anticholinergic agent, anticholinergic drug anticholinergic drugs, cholinolytic, cholinolytic drug, cholinergic antagonist
- 同
- 抗コリン剤、抗コリン作用薬、コリン作用遮断薬 cholinergic blocking agent
- 関
- ムスカリン性受容体拮抗薬 muscarinic antagonist。副交感神経遮断薬
- 副交感神経ムスカリン受容体拮抗薬であり、副交感神経作用を抑制する。
抗コリン薬の主な作用
- (YN2010 抗コリン薬(神経精神))
- 1. 散瞳作用:眼底検査や虹彩炎治療など
- 2. 膀胱利尿筋弛緩作用:尿路結石症鎮痙
- 3. 腺分泌抑制作用:麻酔前投与
- 4. 胃酸分泌抑制作用:抗胃潰瘍
- 5. 消化管運動抑制作用
- 6. 抗Parkinson作用
- 7. 抗迷走神経作用:徐脈性不整脈の治療
- 8. 農薬解毒作用:有機リン剤、カーバメート剤の解毒
therapeutic uses of muscarinic receptor antagonists
- GOO.195
- 呼吸器:気道分泌抑制。(アトロピンは気道分泌を抑制し、分泌物が乾固しうるが、イプラトロピウム、チオトロピウムはmucociliary clearanceにおける副作用を呈しないので、気道疾患に用いられている)
- 泌尿器:過活動性膀胱、夜尿症、対麻痺における頻尿
- 消化器:抗潰瘍薬(M1受容体選択性のある薬剤。ピレンゼピン、テレンゼピン)。鎮痙薬
[★]
- 英
- anhidrosis、anhydrosis, anidrosis, adiaphoresis
- 同
- 無発汗症
- 関
- 発汗低下、乏汗症 oligohidrosis、減汗症 hypohidrosis
- 発汗刺激があっても発汗がまったくない状態である
- 全身性のものと局所性のもの、原因により先天性、後天性(続発性)のものがある。
- 皮膚は乾燥して粗造化し、鱗屑を付着する。掻痒感を呈することもある。
- これらは汗腺の機能的変化あるいは汗腺およびその周囲組織の器質的変化によって起こる。
- 病態からの分類
[★]
- 英
- antispasmodic agent、antispastic drug、antispasmodic drug、spasmolytic、antispasmodic
- 関
- 鎮痙、鎮痙剤、副交感神経遮断薬
[★]
副交感神経遮断薬
- 関
- antispasmodic agent、antispasmodic drug、antispasmodics、parasympatholytic、spasmolytic
[★]
- 関
- parasympatholytics
[★]
- 英
- parasympathetic nerve (B)
- ラ
- pars parasympathica
- 関
- 自律神経系、副交感神経系 parasympathetic nervous system
- CN III, CN VII, CN IX, CN X
- S2-S4
分布
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
[★]
- 英
- nerve
- ラ
- nervus
- 関
- ニューロン
解剖で分類
- 中枢神経 central nervous systen CNS
- 末梢神経 peripheral nervous system PNS
情報で分類
- 感覚神経 sensory nerve = 求心性線維 afferent nerve
- 運動神経 motor nerve = 遠心性線維 efferent nerve
機能で分類
- 体性神経 somatic nervous system SNS
- 自律神経 autonomic nervous system ANS
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- 英
- sympathetic nerve (B), sympathetic nervous system
- ラ
- pars sympathica
- 関
- 自律神経、交感神経系、交感神経節前線維、交感神経節後線維
[★]
- 英
- drug, agent
- 同
- 薬物
- 関
- 作用薬、剤、ドラッグ、媒介物、病原体、麻薬、薬剤、薬物、代理人、薬品
[★]
- 英
- block、blockade、turn off、block
- 関
- 阻害。塊、阻止、封鎖、ブロック、オフにする