Th1細胞
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- the 20th letter of the Roman alphabet (同)t
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- tritiumの化学記号
- thorium の化学記号
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/07/31 19:51:16」(JST)
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Th1細胞(-さいぼう、英: Th1 Cell)は、CD4+T細胞(いわゆるヘルパーT細胞)の亜群であり、インターフェロン-γやインターロイキン-12(IL-12)の刺激を受けることによりナイーブT細胞とよばれる抗原タンパク質との接触経歴を持たないT細胞からの分化が誘導される。T細胞をはじめとした免疫系の細胞はサイトカイン産生能を有しているがTh1細胞により産生されるインターフェロン-γ(IFN-γ)をはじめとしたサイトカインは特にTh1サイトカインと呼ばれ、マクロファージや細胞障害性T細胞(CTL)などの細胞を活性化してウイルスや細胞内抗原の除去、自己免疫疾患の発症、抗腫瘍免疫を担う細胞性免疫などに関与していることが知られている。同様にナイーブT細胞から分化するTh2細胞はIL-4などのいわゆるTh2サイトカインを産生し、Th1細胞とTh2細胞はサイトカインを放出することにより互いの機能を抑制しあっている。
目次
- 1 機能
- 2 分化誘導
- 2.1 胸腺細胞からヘルパーT細胞への分化
- 2.2 Th1細胞への分化
- 3 出典
- 4 参考文献
- 5 関連項目
機能
細胞外に存在する細菌の除去はB細胞から分化した形質細胞が産生する免疫グロブリンなどが中心的役割を担う体液性免疫によって行われるが、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)などの細胞内寄生菌の除去においては細胞性免疫が重要な役割を担っている。通常、細菌に対する免疫応答の第一線はマクロファージ等の食細胞により行われているが結核菌は食細胞内の小胞において寄生することが可能である。Th1細胞はマクロファージへのMHCクラスII分子を介した抗原提示やCD40リガンド(CD40L)、IFN-γの分泌により活性化を引き起こし、食胞内で生き残る菌を殺すことができる。結核菌への感染には家族集積性が認められ、各個人におけるTh1細胞の活性が重要な役割を果たしていると考えられている[1]。また、Th1細胞由来のサイトカインにより活性化されたCTLは細胞障害活性を示し、感染を起こした細胞にアポトーシス(自発的細胞死)を誘導することによって破壊することが知られている。CTLは癌細胞に対してもアポトーシスを誘導するが、癌患者においてはT細胞の活性が低下しており、その機構の一つとして腫瘍細胞から放出されるTGF-βによるTh1細胞およびCTLの活性抑制が存在する。
また、Th1細胞の過活動はインターフェロン-γやリンフォトキシン(TNF-β)をはじめとした種々の炎症性サイトカインが産生を引き起こし、関節リウマチや実験的自己免疫性脳炎(EAE)、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病などの慢性炎症・自己免疫疾患にも関与していることが示されている。
さらに、Th1/Th2のバランスの破綻はある種の疾患の原因となることが知られている。これまでこの平衡がTh1系に強く傾くことによって過剰なTh1サイトカインが産生され自己免疫疾患の発症につながると考えられてきたが、最近の動向では自己免疫疾患の発症にはIL-17産生能を有した新しいT細胞のサブセットであるTh17細胞が関与しているという説も強く、自己免疫疾患がどちらの細胞によって引き起こされるものなのかははっきりしていない[2]。近年ではTh1細胞の分化メカニズムやTh1/Th17バランスなどに対して注目が集まっている。
分化誘導
胸腺細胞からヘルパーT細胞への分化
T細胞は胸腺に由来する細胞である(T細胞の"T"は胸腺(Thymus)の頭文字に由来)。しかし、新生T細胞はCD4抗原もCD8抗原もなければ(ダブルネガティブ、DN)T細胞受容体(TCR)も有しない未熟な細胞である。DN細胞は分裂の繰り返しによりCD8+シングルポジティブ(SP)細胞を経てCD4+CD8+T細胞へと分化し、この中でもTCRの発現の高い細胞においてポジティブセレクションおよびネガティブセレクションと呼ばれる現象が起こる。ポジティブセレクションとはCD4+CD8+T細胞の中から外来性抗原に対して反応性を持つTCRを有するものを選別する機構であり、胸腺皮質で行われる。一方、ネガティブセレクションとは自己抗原に対して反応性を持つ細胞を選別する反応であり、ネガティブセレクションを受けた細胞はアポトーシスに導かれこの段階で脱落する。また、これらの過程中においてTCR遺伝子の再編成が行われ、TCRの多様性の形成に関与している。ポジティブセレクションが行われた細胞はその後、CD4+CD8lowT細胞を経てCD4+CD8-T細胞(ヘルパーT細胞)へと分化誘導が行われる。
Th1細胞への分化
CD4+CD8-T細胞からIFN-γ産生能を有するTh1細胞への分化誘導は主にIL-12とIFN-γの刺激により行われる。
Th1分化の過程には樹状細胞をはじめとした抗原提示細胞が重要な役割を担っている。樹状細胞がToll様受容体からの刺激により成熟すると、細胞表面にCD80などの分子を発現してMHCクラスII分子を介したナイーブT細胞への抗原提示における共刺激分子として働き、T細胞を活性化させる。一方、樹状細胞への刺激はIL-12の産生を誘導することが知られており、活性化T細胞表面に存在するIL-12受容体を介して作用する。IL-12は転写因子STAT4を介してIFN-γの産生を誘導する。
また、IFN-γ自身によるIFN産生細胞(Th1)への分化誘導機構も知られており、IL-12の作用に対して協調的に働く。IFN-γの下流には転写因子STAT1が存在し、T-betの転写を活性化する。T-betタンパク質もまたT-boxファミリーに属する転写因子として機能し、IFN-γ遺伝子に作用して凝集したクロマチン構造を部分的に緩めて他の転写に関与する因子がDNAに結合しやすい状態することによりIFN-γの産生をさらに亢進させる[3]。
その他にも、IL-18が転写因子NF-κBを介してIFN-γの産生を亢進させる経路などが存在することが報告されている[4]。一方、Th2サイトカインであるIL-4の遺伝子はTh1分化に伴い不可逆的に抑制されTh1分化を完成させるが、その過程はよく分かっていない。
出典
- 谷口 克、宮坂 昌之 編『標準免疫学 第2版』医学書院 2002年 ISBN 4260104527
- 今堀 和友、山川 民夫 編集 『生化学辞典 第4版』東京化学同人 2007年 ISBN 9784807906703
- 笹月 健彦 監訳『免疫生物学 原書第5版』南江堂 2003年 ISBN 4524235221
参考文献
- ^ Lienhardt C, Azzurri A, Amedei A, Fielding K, Sillah J, Sow OY, Bah B, Benagiano M, Diallo A, Manetti R, Manneh K, Gustafson P, Bennett S, D'Elios MM, McAdam K and Del Prete G.(2002)"Active tuberculosis in Africa is associated with reduced Th1 and increased Th2 activity in vivo."Eur.J.Immunol. 32,1605-1613. PMID 12115643
- ^ 細胞工学 vol.27 No.2 加野らの稿 ISBN 9784879624819
- ^ Mullen AC, High FA, Hutchins AS, Lee HW, Villarino AV, Livingston DM, Kung AL, Cereb N, Yao TP, Yang SY, Reiner SL.(2001)"Role of T-bet in commitment of TH1 cells before IL-12-dependent selection."Science. 292,1907-10. PMID 11397944
- ^ Yang J, Murphy TL, Ouyang W, Murphy KM.(1999)"Induction of interferon-gamma production in Th1 CD4+ T cells: evidence for two distinct pathways for promoter activation."Eur.J.Immunol. 29,548-55. PMID 10064070
関連項目
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TH1 may refer to:
- Th1 cell, a type of T helper cells
- Tianhe-I (TH-1), a Chinese super computer
- TH1 the scripting language for web pages in fossil (software), the Fossil SCM
UpToDate Contents
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English Journal
- Association of WT1 IgG antibody against WT1 peptide with prolonged survival in glioblastoma multiforme patients vaccinated with WT1 peptide.
- Oji Y1, Hashimoto N2, Tsuboi A3, Murakami Y1, Iwai M1, Kagawa N2, Chiba Y2, Izumoto S4, Elisseeva O5, Ichinohasama R6, Sakamoto J7, Morita S8, Nakajima H9, Takashima S10, Nakae Y10, Nakata J3, Kawakami M3, Nishida S10, Hosen N1, Fujiki F9, Morimoto S9, Adachi M1, Iwamoto M1, Oka Y9,10,11, Yoshimine T2, Sugiyama H9.
- International journal of cancer.Int J Cancer.2016 Sep 15;139(6):1391-401. doi: 10.1002/ijc.30182. Epub 2016 May 31.
- We previously evaluated Wilms' tumor gene 1 (WT1) peptide vaccination in a large number of patients with leukemia or solid tumors and have reported that HLA-A*24:02 restricted, 9-mer WT1-235 peptide (CYTWNQMNL) vaccine induces cellular immune responses and elicits WT1-235-specific cytotoxic T lympho
- PMID 27170523
- New molecular targets for the treatment of sarcoidosis.
- Chiarchiaro J1, Chen BB, Gibson KF.
- Current opinion in pulmonary medicine.Curr Opin Pulm Med.2016 Sep;22(5):515-21. doi: 10.1097/MCP.0000000000000304.
- PURPOSE OF REVIEW: Sarcoidosis is a chronic granulomatous disease typically affecting the lung, lymph nodes, and other organ systems. Evidence suggests that the morbidity and mortality rates for sarcoidosis in the USA are rising, despite widespread use of anti-inflammatory therapies. In this review,
- PMID 27454074
- T-cell immunology in sarcoidosis: Disruption of a delicate balance between helper and regulatory T-cells.
- Broos CE1, Hendriks RW, Kool M.
- Current opinion in pulmonary medicine.Curr Opin Pulm Med.2016 Sep;22(5):476-83. doi: 10.1097/MCP.0000000000000303.
- PURPOSE OF REVIEW: Although the aetiology of sarcoidosis is not yet completely understood, immunological changes within the T-cell compartment are characteristic for an exaggerated antigen-driven immune response. In this review, we describe the most recent findings on T-cell subset responses and reg
- PMID 27379969
Japanese Journal
- 老年における免疫反応の低下とIL-6 (特集 免疫寛容と免疫抑制)
- 臨床免疫・アレルギー科 = Clinical immunology & allergology 65(4), 316-322, 2016-04
- NAID 40020822901
- 鍼灸と抗アレルギー作用・免疫調整作用 (特集 アレルギー・免疫疾患と東洋医学)
Related Links
- Th1細胞とTh2細胞 リンパ球には、T細胞と、抗体(免疫グロブリン)を産生するB細胞とがある。 T細胞には、さらに、単球・マクロファージから抗原を提示され、免疫反応を調節する、ヘルパーT細胞(CD4抗原陽性)と、ウイルス感染 ...
- 「イムバランス」の働きを理解するために知っておきたい免疫の働きについて紹介するページです。獲得免疫「Th1細胞」と「Th2細胞」の働きとは?
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- helper T cell、Th、TH
- 同
- ヘルパーTリンパ球、Th細胞
- 関
- T細胞、キラーT細胞、抗原提示細胞、Th1、Th2
- T細胞の中で最も多い
- (CD4陽性T細胞)CD4 + T cellとも呼ばれる
- Th17もあるらしい。IL-17を分泌しアレルギー反応、自己免疫疾患に関与する。
機能
- B細胞の項を参照
抗原認識
サイトカイン
Th1とTh2 (SMB.46)
[★]
- 英
- T cell
- 同
- Tリンパ球、T lymphocyte
- 関
- TCR、B細胞、MHC
- 図:IMM.315(T細胞の成熟)
- 胸腺で成熟したT細胞は血流によって移動し、リンパ節の傍皮質、白脾髄のリンパ性動脈周囲鞘、パイエル板の傍濾胞域に集まる(人間の正常構造と機能 VIIA血管・免疫 p.28)
種類
- ヘルパーT細胞(Th細胞)
- キラーT細胞(Tc細胞)
- サプレッサーT細胞(Treg細胞)
T細胞の抗原認識 (SP.248)
CD4+ T細胞のサイトカイン放出とその原因
Th細胞活性化と接着分子
[★]
- 英
- natural killer cell, NK cell
- 同
- NK細胞
- 関
- 単球、自然免疫、LAK細胞、ナチュラルキラー細胞活性、natural killer
概念
- Large granular lymphocytes(LGLs) or NK cells account for 5-10% of periphral blood plymphocytes.(HAR.2024)
- 単球と共に自然免疫に関与
- ウイルス感染細胞やガン細胞を傷害する細胞で、T細胞に特異的なマーカをもたずに直接標的細胞を攻撃する (人間の正常構造と機能 VIIA血管・免疫 p.29)
- II型アレルギーにかかわる
分子細胞学的な定義
機能
自然免疫
- activation signalにより、IFN-γの放出や顆粒(パーフォリン、グランザイム)を放出する(IMM.96)
- IgGのFc部を結合し、顆粒を放出する(IMM.96)
分子マーカー
~
- CD8:IL-2に反応してNK細胞が増殖
- CD57:多くの細胞表面で発現
ケモカイン
- IL-2により活性化し、細胞障害能が高まる (SPU.65)
受容体
- MHC class Iを認識して攻撃を抑制。MHC class Iが少ないと抑制が外れる(IMM.96)
[★]
- 英
- NK T cell, NKT cell, natural killer/T-cell
- 同
- NKT細胞、NK/T細胞、NK-T細胞、ナチュラルキラーT細胞
- 関
- NK細胞
- NK細胞のマーカーをもち、かつTCRを発現する細胞 (SMB.42)
- CD1に結合した結核菌由来の脂質(リポアラビノマンナン、ミコール酸含有糖脂質)を認識しうる
ケモカイン (SMB.42)
[★]
- 英
- TH1 cell T-helper 1 cell
- 関
- ヘルパーT細胞、Th2細胞
- Th0細胞がIL-12の誘導を受けて分化する
- Th1型のCD4+ T細胞は通性細胞内寄生体による感染宿主に強く誘導される (SMB.46)
- IL-2やIFN-γを産生して細胞性免疫を活性化するヘルパーT細胞
機能
- 感染防御
サイトカイン
[★]
[★]
[★]