シロスタゾール
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シロスタゾール
|
IUPAC命名法による物質名 |
6-[4-(1-cyclohexyl-1H-tetrazol-5-yl)butoxy]-
3,4-dihydro-2(1H)-quinolinone |
臨床データ |
商品名 |
プレタール |
AHFS/Drugs.com |
monograph |
MedlinePlus |
a601038 |
胎児危険度分類 |
C(US) |
法的規制 |
? |
投与方法 |
経口 |
薬物動態的データ |
血漿タンパク結合 |
95–98% |
代謝 |
肝臓 (CYP3A4やCYP2C19による) |
半減期 |
11–13 時間 |
排泄 |
腎臓 |
識別 |
CAS登録番号 |
73963-72-1 |
ATCコード |
B01AC23 |
PubChem |
CID 2754 |
DrugBank |
DB01166 |
ChemSpider |
2652 |
UNII |
N7Z035406B |
KEGG |
D01896 |
ChEBI |
CHEBI:31401 |
ChEMBL |
CHEMBL799 |
化学的データ |
化学式 |
C20H27N5O2 |
分子量 |
369.46 g/mol |
SMILES
- O=C4Nc3c(cc(OCCCCc1nnnn1C2CCCCC2)cc3)CC4
|
InChI
-
InChI=1S/C20H27N5O2/c26-20-12-9-15-14-17(10-11-18(15)21-20)27-13-5-4-8-19-22-23-24-25(19)16-6-2-1-3-7-16/h10-11,14,16H,1-9,12-13H2,(H,21,26)
Key:RRGUKTPIGVIEKM-UHFFFAOYSA-N
|
シロスタゾール(英:Cilostazol( /sɪˈlɒstəzɒl/))は慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症)の治療や、ラクナ梗塞などの脳梗塞後の再発を防ぐために用いられる抗血小板薬である。大塚製薬からプレタール(Pletal)の商品名で販売されている。鬱血性心不全がある場合は、その症状を悪化させる恐れがあることから、禁忌となっている。
シロスタゾールはホスホジエステラーゼを阻害することにより、cAMPの分解を抑制することで、血小板の凝集抑制と血管拡張を引き起こす。
目次
- 1 作用機序
- 2 臨床
- 3 副作用
- 4 相互作用
- 5 出典
- 6 外部リンク
|
作用機序 [編集]
シロスタゾールはcAMPの分解に関わる3型ホスホジエステラーゼ(PDE3)に選択的に働くことで、cAMPによりプロテインキナーゼA(PKA)の活性型が増え、血小板の凝集を抑制する。PKAには平滑筋の収縮に関わっているミオシン軽鎖キナーゼを抑える働きがあるため、血管拡張作用も引き起こす。
臨床 [編集]
シロスタゾールは慢性動脈閉塞症による潰瘍や間欠性跛行などの症状の改善させる目的や、ラクナ梗塞などの心原性脳梗塞以外の脳梗塞後の治療で用いられる。通常の服用量は1回100mgの一日2回服用である。脳梗塞の再発防止効果に関しては、アスピリンとの比較試験(CSPS II)において出血合併症を増加させることなく有意に脳血管疾患を予防することがわかっている[1]。
心不全がある場合 [編集]
シロスタゾールを鬱血性心不全の患者に使用した場合の長期予後は明らかになっていないが、他のPDE阻害薬であるミルリノンやベスナリノンを高度の心不全患者に用いたプラセボ対照長期比較試験において、生存率がプラセボよりも低かったこと[2][3]から、鬱血性心不全の患者に対するシロスタゾールの使用は禁忌となっている。
副作用 [編集]
副作用としては頭痛が最も多く、その他、下痢や頻脈、動悸などである[4]。
相互作用 [編集]
シロスタゾールはシトクロムP450の1種であるCYP3A4 やCYP2C19によって代謝を受けるので、CYP3A4を阻害するイトラコナゾールやケトコナゾール、エリスロマイシン、ジルチアゼム、それにCYP2C19を阻害するプロトンポンプ阻害薬のオメプラゾールはシロスタゾールの活性型の濃度を上昇させることが知られている[4]。また、グレープフルーツジュースも血中濃度を上昇させるという報告がある[5]。
出典 [編集]
- ^ 内山真一郎 (2010). “脳梗塞患者におけるシロスタゾールとアスピリンのランダム化比較試験(CSPS II)の成績”. 臨床神経 50 (11). PMID 21921460. https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/50/11/50_11_832/_pdf.
- ^ Milton Packer et al (1991). “Effect of Oral Milrinone on Mortality in Severe Chronic Heart Failure”. the New England Journal of Medcine 325 (21): 1468-1475. doi:10.1056/NEJM199111213252103. PMID 1944425.
- ^ Jay N. Cohn et al (1998). “A Dose-Dependent Increase in Mortality with Vesnarinone among Patients with Severe Heart Failure”. the New England Journal of Medcine 339 (25): 1810-1816. doi:10.1056/NEJM199812173392503. PMID 9854116.
- ^ a b “Cilostazol: Official FDA information, side effects and uses.”. Drugs.com (2008年2月). 2008年9月22日閲覧。
- ^ Taniguchi K, Ohtani H, Ikemoto T, Miki A, Hori S, Sawada Y (October 2007). “Possible case of potentiation of the antiplatelet effect of cilostazol by grapefruit juice”. J Clin Pharm Ther 32 (5): 457–9. doi:10.1111/j.1365-2710.2007.00844.x. PMID 17875111.
外部リンク [編集]
- U.S. National Library of Medicine: Drug Information Portal - Cilostazol
- 大塚製薬プレタール添付文書
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
プレタール散20%
組成
有効成分
添加物
- D-マンニトール、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸、香料
禁忌
- 出血している患者(血友病、毛細血管脆弱症、頭蓋内出血、消化管出血、尿路出血、喀血、硝子体出血等)[出血を助長するおそれがある。]
- うっ血性心不全の患者[症状を悪化させるおそれがある。](「重要な基本的注意4.」の項参照)
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
効能または効果
- 慢性動脈閉塞症に基づく潰瘍、疼痛及び冷感等の虚血性諸症状の改善
- 脳梗塞(心原性脳塞栓症を除く)発症後の再発抑制
- 無症候性脳梗塞における本剤の脳梗塞発作の抑制効果は検討されていない。
- 通常、成人には、シロスタゾールとして1回100mgを1日2回経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。
慎重投与
- 抗凝固剤(ワルファリン等)、血小板凝集を抑制する薬剤(アスピリン、チクロピジン塩酸塩、クロピドグレル硫酸塩等)、血栓溶解剤(ウロキナーゼ、アルテプラーゼ等)、プロスタグランジンE1製剤及びその誘導体(アルプロスタジル、リマプロスト アルファデクス等)を投与中の患者(「相互作用」の項参照)
- 月経期間中の患者[出血を助長するおそれがある。]
- 出血傾向並びにその素因のある患者[出血した時、それを助長するおそれがある。]
- 冠動脈狭窄を合併する患者[本剤投与による脈拍数増加により狭心症を誘発する可能性がある。](〔警告〕の項、「重要な基本的注意3.」の項、「副作用 重大な副作用1.うっ血性心不全、心筋梗塞、狭心症、心室頻拍」の項及び〔臨床成績〕の項参照)
- 糖尿病あるいは耐糖能異常を有する患者[出血性有害事象が発現しやすい。]
- 重篤な肝障害のある患者[シロスタゾールの血中濃度が上昇するおそれがある。(〔薬物動態〕の項参照)]
- 腎障害のある患者[腎機能が悪化するおそれがある。また、シロスタゾールの代謝物の血中濃度が上昇するおそれがある。(「副作用 重大な副作用7.急性腎不全」の項及び〔薬物動態〕の項参照)]
- 持続して血圧が上昇している高血圧の患者(悪性高血圧等)(「その他の注意2.」の項参照)
重大な副作用
うっ血性心不全、心筋梗塞、狭心症(各0.1〜5%未満)、心室頻拍(頻度不明※)
- うっ血性心不全、心筋梗塞、狭心症、心室頻拍があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
出血
脳出血等の頭蓋内出血(0.1〜5%未満)
- 脳出血等の頭蓋内出血(初期症状:頭痛、悪心・嘔吐、意識障害、片麻痺等)があらわれることがある。このような場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
肺出血(0.1%未満)、消化管出血、鼻出血、眼底出血(各0.1〜5%未満)等
- 肺出血、消化管出血、鼻出血、眼底出血等があらわれることがある。このような場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
,*胃・十二指腸潰瘍(0.1〜5%未満)
- 出血を伴う胃・十二指腸潰瘍があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
汎血球減少、無顆粒球症(いずれも頻度不明※)、血小板減少(0.1〜5%未満)
- 汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
間質性肺炎(0.1%未満)
- 発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常、好酸球増多を伴う間質性肺炎があらわれることがある。このような場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
肝機能障害(0.1〜5%未満)、黄疸(頻度不明※)
- AST(GOT)、ALT(GPT)、Al-P、LDH等の上昇や黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
,*急性腎不全(0.1%未満)
- 急性腎不全があらわれることがあるので、腎機能検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
抗血小板作用
In vitro
- ヒト血小板において、ADP、コラーゲン、アラキドン酸、アドレナリン24)、トロンビンによる血小板凝集を抑制する。また、ずり応力によって誘発される血小板凝集を抑制する25)。
- ヒト血小板において、ADP、アドレナリンによる血小板の一次凝集をも抑制し、また、凝集惹起物質により一旦凝集した血小板凝集塊を解離させる24)。
- ヒト血小板において、トロンボキサンA2産生を抑制する26)。
- ヒト血小板の血液凝固促進活性を抑制する27)。
In vivo
- ビーグル犬24)及びブタ28)への経口投与で、ADP、コラーゲンによる血小板凝集を抑制する。
- ラットへの連続経口投与で、ADPによる血小板凝集に対する抑制作用は減弱しない。
- 慢性動脈閉塞症患者及び脳梗塞患者への経口投与で、ADP、コラーゲン、アラキドン酸、アドレナリンによる血小板凝集を抑制する29,30)。
- ヒトにおける血小板凝集抑制効果は投与後速やかに発現し、反復投与によってもその効果は減弱しない30)。
- 本剤の投与中止により、抑制された血小板凝集能は本剤の血漿中濃度の減衰とともに48時間後には投与前値に復し、リバウンド現象(凝集亢進)も認められていない30)。
抗血栓作用
- マウスにADP、コラーゲンを静脈内投与することにより誘発される肺塞栓致死を抑制する24)。
イヌの大腿動脈にラウリン酸ナトリウムを投与することにより誘発される血栓性後肢循環不全の進展を抑制する31)。
イヌの大腿動脈を人工血管で置換した際に、その部位に誘発される血栓性閉塞を抑制する32)。
ブタの頸動脈での電気刺激により誘発される血栓形成を抑制する28)。
ウサギの内頸動脈にアラキドン酸を注入することにより出現する脳梗塞域を減少させる33)。
一過性脳虚血発作患者において発作回数の減少が認められている34)。
血管拡張作用
- KCl、プロスタグランジンF2αにより収縮させたイヌ摘出大腿動脈、中大脳動脈及び脳底動脈を弛緩させる。
麻酔イヌの大腿動脈、椎骨動脈、総頸動脈及び内頸動脈血流量を増加させる35)。
麻酔イヌ及び麻酔ネコの脳皮質血流量を増加させる35)。
無麻酔ラットの脳皮質あるいは視床下部の血流量を増加させる。
慢性動脈閉塞症患者において、足関節部、腓腹部の組織血流量を増加させることがプレチスモグラフィーにより認められている36,37)。更に四肢の皮膚温度の上昇、皮膚血流量の増加がサーモグラフィーにより認められている38)。
虚血性脳血管障害患者において、脳血流量を増加させることがキセノン吸入法により認められている39)。
血管平滑筋細胞に対する作用
- ヒトの培養血管平滑筋において血管平滑筋細胞の増殖を抑制する40)。
ラット頸動脈内膜バルーン損傷後の内膜肥厚を抑制する41)。
血管内皮細胞に対する作用
- ヒトの培養内皮細胞からのNO産生を促進する42)。
ヒトの培養内皮細胞の障害を抑制する43〜45)。
ヒトの培養内皮細胞をホモシステインあるいはリポポリサッカライドにて刺激することによる乳酸脱水素酵素の漏出を抑制する。
作用機序
- 本剤はウサギ血小板のセロトニン放出を抑制するが、セロトニン、アデノシンの血小板への取り込みには影響を与えない。また、トロンボキサンA2による血小板凝集を抑制する46)。
本剤は血小板及び血管平滑筋のPDE3(cGMP-inhibited phosphodiesterase)活性を選択的に阻害することにより47)、抗血小板作用及び血管拡張作用を発揮する。
本剤のヒト血小板での血小板凝集抑制作用は培養ヒト血管内皮細胞26)又は、プロスタグランジンE125)の存在下で増強する。
本剤のイヌ血小板での血小板凝集抑制作用はプロスタグランジンI2或いはアデノシンの存在下で増強する。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
化学名
- 6-[4-(1-Cyclohexyl-1H-tetrazol-5-yl)butyloxy]-3, 4-dihydroquinolin-2(1H)-one
分子式
分子量
融点
性状
- 白色〜微黄白色の結晶又は結晶性の粉末である。本品はメタノール、エタノール(99.5)又はアセトニトリルに溶けにくく、水にほとんど溶けない。
★リンクテーブル★
[★]
商品
[★]
- 英
- cilostazol
- 商
- アイタント、エクバール、エジェンヌ、グロント、コートリズム、シロシナミン、シロステート、シロスレット、ファンテゾール、プラテミール、プレスタゾール、プレタール、プレタールOD、プレトモール、フレニード、プレラジン、ホルダゾール、ラノミン
- 関
- 抗血小板薬、脳卒中
- その他の血液・体液用薬
概念
- PDE3阻害薬;血小板凝集抑制
- 血小板凝集抑制作用と末梢血管拡張作用を併せもつ。
作用機序
- 1. ウサギ血小板のセロトニン放出を抑制するが、セロトニン、アデノシンの血小板への取り込みには影響を与えない。
- 2. トロンボキサンA2による血小板凝集を抑制する。
- 3. cAMPホスホジエステラーゼ活性を阻害することで、抗血小板作用及び血管拡張作用を発揮する
適応
- 1. 慢性動脈閉塞症に基づく潰瘍、疼痛及び冷感等の虚血性諸症状の改善
- 2. (プレタールのみ)脳梗塞(心原性脳塞栓症を除く)発症後の再発抑制 [注意]無症候性脳梗塞における本剤の脳梗塞発作の抑制効果は検討されていない
参考
- シロスタゾール錠50mg「タナベ」/シロスタゾール錠100mg「タナベ」
- http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3399002F1214_1_03/3399002F1214_1_03?view=body
[★]
- 英
- letter
- 関
- 手紙、短報