流行性耳下腺炎
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流行性耳下腺炎のデータ |
ICD-10 |
B26 |
統計 |
出展: |
世界の患者数 |
人
(20xx年xx月xx日) |
日本の患者数 |
人
(20xx年xx月xx日) |
学会 |
日本 |
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世界 |
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流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)は、ムンプスウイルスの感染によって発生するウイルス性の病気。一般にはおたふく風邪として知られる。1967年にワクチンが開発される以前は、小児の疾患として全世界で一般的であり、今日でも発展途上国では脅威となっている。
目次
- 1 原因
- 2 臨床像
- 2.1 症状
- 2.2 合併症
- 2.3 診断
- 2.4 治療
- 2.5 予防
- 2.6 予後
- 3 各国において
- 4 註
- 5 外部リンク
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原因
原因はパラミクソウイルス科のムンプスウイルスで、飛沫感染、ならびに接触感染により感染する。2歳から12歳の子供への感染が一般的であるが、他の年齢でも感染することもある。通常耳下腺が関わるが、上記年齢層よりも年上の人間が感染した場合、睾丸、卵巣、中枢神経系、膵臓、前立腺、胸等、他の器官も関わることがある。場合によっては、治った後も生殖機能に後遺症が残る。
潜伏期間は通常12日〜14日である。
臨床像
症状
耳下腺が腫脹して顔が膨れた様になった流行性耳下腺炎の患者
- 顔面の疼痛
- 発症から12〜24時間以内に唾液腺(耳下腺)の腫脹(60〜70%で発生)。2日目に最もひどく3〜4日でゆっくり消失。
- 発熱
- 頭痛
- 咽頭痛
- こめかみや顎の腫脹
- 膵炎
感染しても症状が出ない場合もある。しかし、成人が感染すると症状が重い場合が多い。
合併症
- 無菌性髄膜炎
- 10人に1人と合併症としては最多[1](40%が耳下腺の腫脹無しで発生)。
- 難聴(ムンプス難聴)
- 重篤な難治性難聴が後遺症として残ることがある。頻度は教科書的には稀もしくは1万5000人に1人程度とされていることが多いが、近年はもっと高頻度とする報告が多く、184〜533人に1人とする調査結果もある[2]。
- 睾丸の痛み、拡大
- 思春期以降に感染した男性の約20%で精巣炎・副精巣炎。両方の精巣が侵されることは少ないため、不妊症になることもあるが頻度は高くない[3]。
- 陰嚢腫脹
診断
身体検査で唾液腺の腫脹を確認する。通常この病気は臨床の根拠で診断され、試験室での確定検査は必要ないが、一般的には血清学的診断を行う。RT‐PCR 法でウイルス遺伝子を検出すれば、ワクチン株と野生株の鑑別ができる[4]。
類似の耳下腺炎症状を呈する他感染症は、パラインフルエンザウイルス、コクサッキーウイルスなどによるもので、軽度の痛みの耳下腺腫脹を繰り返し、1〜2週間で自然に軽快する。『流行性耳下腺炎に何度もかかる』という場合、疑う必要がある。
治療
流行性耳下腺炎の特異的治療法は存在しない。首やほかの腫脹箇所を冷やしたり暖めたりすることで症状が軽減される場合もある。また、アセトアミノフェンやイブプロフェンを鎮痛のために経口投与する(ライ症候群発症の可能性のため、アスピリンをウイルス性疾患を持つ子供には投与しない)。また、暖かい塩水のうがい薬、柔らかい食物、および特別な流動食は、兆候を軽減するかもしれない。発熱による脱水症状を軽減するため水分の摂取を行う。酸味のある果実ジュースは、飲み込む際に耳下腺の痛みを感じさせる場合がある。膵炎により強い吐き気や嘔吐が生じた場合は輸液を行う。
予防
ワクチン接種
幼児期の予防接種が欠かせないとされている全世界105カ国(2004年時点)ではMMRワクチンとして定期接種を行っているが、日本ではMMR接種の行われた1988年から1993年迄の期間を除き、任意接種としておたふくかぜワクチンの単独接種が行われており、一部の自治体では公費助成が行われている。
おたふくかぜワクチンの抗体陽転率は90〜98%と他のワクチンと比べて低いが、流行時の有効率は星野株で約90%とされている。ワクチン接種後のおたふくかぜ罹患の多くは二次性ワクチン不全と考えられており、MMRを接種する多くの国では2回接種により二次性ワクチン不全を防いでいる。
予防効果
ワクチンの2回接種率が高い米国で、2006年1月から年末までに、18〜24歳の大学生を中心に計6,584人が発症、85人が入院、死亡0人と言う20年ぶりの流行が発生した。疫学的な調査の結果、ワクチン2回接種でも予防効果は不十分である事が示唆された[5]。レポートによれば、18〜24歳で1,020人中858人(84%)が2回接種を受けていたが発症している。詳細はNEJM誌2008年4月10日号に掲載されている[6]。
予後
予後は一般的によい。耳下腺の腫脹がなくなれば感染力はなくなる。高度感音性難聴になることがあるが、頻度は1万分の1から数百分の1と、文献により異なる。男性が不妊症になることもある。通常、一度感染すると一生有効な免疫を獲得する。
各国において
日本
日本において、流行性耳下腺炎の予防接種は一歳以上の子供への任意接種となっている。
また、学校保健安全法上の学校感染症に指定されており、感染時は出席停止などの処置が執られる。5類感染症定点把握疾患指定。
註
- ^ 病気とワクチン おたふくかぜ 北里研究所
- ^ ムンプス難聴の発生頻度調査(pdf) 近畿外来小児科学研究グループ、2004年
- ^ おたふくかぜ メルクマニュアル家庭版
- ^ 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)国立感染症研究所
- ^ おたふくかぜ、ワクチン2回接種でも青年期の発症防げず2006年に米国で起こったアウトブレイクの調査結果(2008年4月22日 日経メディカルオンライン)
- ^ NEJM -- Recent Resurgence of Mumps in the United States Volume 358:1580-1589 April 10, 2008 Number 15NEJM
外部リンク
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ウィキメディア・コモンズには、流行性耳下腺炎に関連するカテゴリがあります。 |
- 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ) - 国立感染症研究所感染症情報センター
- おたふくかぜ メルクマニュアル家庭版
- 病気とワクチン おたふくかぜ 社団法人北里研究所 生物製剤研究所
- おたふくかぜワクチンの公費助成について - 厚生労働省健康局結核感染症課
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 大学生の健康観 : 喫煙およびムンプスに対する認識 : 日本福祉大学2010年アンケート調査からの検討
- 石川 達也,高橋 薫
- 日本福祉大学社会福祉論集 (124), 27-37, 2011-03-31
- … 学生の健康教育に資するため, 喫煙およびムンプス (おたふくかぜ) の学内流行に対する認識に関し, 無記名のアンケート調査を講義時に実施した. …
- NAID 110008452302
- 乾燥弱毒生おたふくかぜワクチン (医薬品・医療機器等安全性情報(No.279)) -- (重要な副作用等に関する情報)
Related Links
- 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)の概要。唾液をつくる耳下腺(耳の前~下)、顎下腺(あごの下)がはれて痛む発熱性の病気です。 ムンプスウイルスが原因です。飛沫感染し、潜伏期間は2~3週間です。 突然の発熱、両側 ...
- おたふくかぜワクチン(任意接種・生ワクチン)で予防します。おたふくかぜはかかっても軽症の場合が多いのですが、重い合併症を引き起こすことがあるので、ワクチン接種が重要です。1歳で1回、1回目の接種後2~4年たったら2回目 ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
乾燥弱毒生おたふくかぜワクチン「タケダ」
組成
製法の概要
- 本剤は、弱毒生ムンプスウイルス(鳥居株)を伝染性の疾患に感染していないニワトリ胚初代培養細胞で増殖させ、得たウイルス液を精製し、安定剤を加え分注した後、凍結乾燥したものである。本剤は製造工程でウシの血清、乳由来成分(ラクトアルブミン水解物)、ブタの膵臓由来成分(トリプシン)を使用している。
組 成
- 本剤は添付の溶剤(日本薬局方 注射用水)0.7mLで溶解した時、0.5mL当たり次の成分を含有する。
有効成分
- 弱毒生ムンプスウイルス(鳥居株) 5,000CCID50以上
安定剤
- 乳糖水和物:ウシの乳抽出物 25mg
L−グルタミン酸カリウム 0.24mg
リン酸水素ナトリウム水和物 0.3125mg
リン酸二水素カリウム 0.13mg
抗生物質
- カナマイシン硫酸塩 12.5μg(力価)以下
エリスロマイシンラクトビオン酸塩:ウシの乳抽出物 7.5μg(力価)以下
着色剤
- フェノールレッド 0.005mg
- 抗生物質及び着色剤は細胞培養に用いるTCM−199(培地)中に含有する。
禁忌
(予防接種を受けることが適当でない者)
- 被接種者が次のいずれかに該当すると認められる場合には、接種を行ってはならない。
- 明らかな発熱を呈している者
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
- 本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者
- 明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けている者(「相互作用」の項参照)
- 妊娠していることが明らかな者
- 上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者
効能または効果
- 本剤を添付の溶剤(日本薬局方 注射用水)0.7mLで溶解し、通常、その0.5mLを1回皮下に注射する。
接種対象者
- 接種対象は、生後12月以上のおたふくかぜ既往歴のない者であれば性、年齢に関係なく使用できる。ただし、生後24月から60月の間に接種することが望ましい。
輸血及びガンマグロブリン製剤投与との関係
- 輸血又はガンマグロブリン製剤の投与を受けた者は通常、3か月以上間隔を置いて本剤を接種すること。
また、ガンマグロブリン製剤の大量療法(200mg/kg以上)を受けた者は、6か月以上間隔を置いて本剤を接種すること。(「相互作用」の項参照)
他のワクチン製剤との接種間隔
- 他の生ワクチンの接種を受けた者は、通常、27日以上間隔を置いて本剤を接種すること。(「相互作用」の項参照)
また、不活化ワクチンの接種を受けた者は、通常、6日以上間隔を置いて本剤を接種すること。
ただし、医師が必要と認めた場合には、同時に接種することができる(なお、本剤を他のワクチンと混合して接種してはならない)。
慎重投与
(接種の判断を行うに際し、注意を要する者)
- 被接種者が次のいずれかに該当すると認められる場合は、健康状態及び体質を勘案し、診察及び接種適否の判断を慎重に行い、予防接種の必要性、副反応、有用性について十分な説明を行い、同意を確実に得た上で、注意して接種すること。
- 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する者
- 予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた者及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
- 過去にけいれんの既往のある者
- 過去に免疫不全の診断がなされている者及び近親者に先天性免疫不全症の者がいる者
- 本剤の成分に対してアレルギーを呈するおそれのある者
重大な副作用
,*ショック、アナフィラキシー(0.1%未満)
- ショック、アナフィラキシー(蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫等)があらわれることがあるので、接種後は観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
無菌性髄膜炎(0.1%未満)
- 接種後、ワクチンに由来すると疑われる無菌性髄膜炎が発生することがある。接種後3週間前後に、おたふくかぜワクチン(鳥居株)に由来すると疑われる無菌性髄膜炎が、1,600人接種あたり1人程度発生するとの報告がある1)。本剤接種後、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)(頻度不明)
- 急性散在性脳脊髄炎(ADEM)があらわれることがある。通常、2週間程度で発熱、頭痛、けいれん、運動障害、意識障害等があらわれる。本症が疑われる場合には、MRI等で診断し、適切な処置を行うこと。
脳炎・脳症(頻度不明)
- 脳炎・脳症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、MRI等で診断し、適切な処置を行うこと。
血小板減少性紫斑病
- 血小板減少性紫斑病があらわれることがある(100万人接種あたり1人程度)。通常、接種後数日から3週ごろに紫斑、鼻出血、口腔粘膜出血等があらわれる。本症が疑われる場合には、血液検査等の観察を十分に行い、適切な処置を行うこと。
難聴(0.1%未満)
- ワクチン接種との関連性が疑われる難聴があらわれたとの報告がある。通常一側性のため、出現時期等の確認が難しく、特に乳幼児の場合注意深い観察が必要である。本症が疑われる場合には、聴力検査等を行い、適切な処置を行うこと。
精巣炎(0.1%未満)
- ワクチンに由来すると疑われる精巣炎があらわれたとの報告がある。通常、接種後3週間前後に精巣腫脹等が、特に思春期以降の男性にみられるので、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
薬効薬理
- ムンプスウイルスは患者の唾液を介して、主として飛沫感染により上気道、唾液腺及び所属のリンパ節に侵入、増殖後、ウイルス血症を起こし、全身の標的臓器に運ばれるものと考えられている。潜伏期は14〜24日(平均18日)で、主として有痛性の耳下腺腫脹をもって発症する6)。しかし、臨床症状は多彩で、髄膜炎等多くの合併症が知られている。予め本剤の接種により、ムンプスウイルスに対する液性免疫及び細胞性免疫が獲得されていると、感染したウイルスの増殖は抑制され、発症は阻止される。
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- vaccine
- 関
- 予防接種 immunization、感染症、感染症予防法、シードロット・システム。immunization
種類
副反応
風疹ワクチン
おたふくかぜワクチン
- 2-3週間後、まれに、発熱、耳下腺腫脹、咳、鼻水
- MMRの際に無菌性髄膜炎が数千人に一人
- 髄膜炎の症状:発熱、頭痛、嘔吐
学校伝染病、予防接種、ワクチン (学校伝染病、予防接種、ワクチン.xls)
日本で使われているワクチン
その他マイナーなワクチン
- 1ヶ月に1回、6ヶ月続けて。
- 適応は低体重児と免疫不全児だった気がする
接種間隔
参考
- 1. 国立感染症研究所 感染症情報センター:予防接種のページ
- http://idsc.nih.go.jp/vaccine/vaccine-j.html
- 2. 日本で接種可能なワクチンの種類 - 国立感染症研究所
- http://idsc.nih.go.jp/vaccine/atopics/atpcs003.html
[★]
- 英
- epidemic parotiditis
- 同
- ムンプス mumps、おたふくかぜ
- 関
- ムンプスウイルス
特徴
病原体
疫学
- 幼稚園、保育所、小学校で流行
- 晩秋-春
- 5-10歳
潜伏期間
感染経路
症状
[show details]
合併症
- YN.H-79改変 uptodate.1
経過
検査
- 確定診断:急性期と回復期のペア血清でHIが4倍以上
治療
予防
免疫
妊娠との関連
- 胎児の流産、死産、催奇形性、心疾患が示唆されている
法令
- 第二種学校感染症:耳下腺腫脹が消失するまで出席停止
参考
uptodate
- 1. [charged] ムンプスの疫学、臨床症状、診断および管理 - uptodate [1]
- 2. [charged] ムンプスウイルスワクチン - uptodate [2]
国試
[★]
- 英
- mumps vaccine
- 商
- 乾燥弱毒生おたふくかぜワクチン
- 関
- ムンプスウイルス、流行性耳下腺炎
[★]
- 関
- ムンプスウイルス