敗血症性ショック
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 尿管結石による腎盂腎炎敗血症ショックに対しエンドトキシン吸着療法が著効した1例
- 三井 要造,安食 春輝,井上 圭太 [他]
- 島根医学 : the journal of the Shimane Medical Association 32(2), 70-73, 2012-06
- NAID 40019382860
- Levofloxacin耐性大腸菌により経直腸的前立腺生検後に敗血症ショックに陥った1例
- 加藤 廉平,鈴木 泰,松浦 朋彦 [他]
- 泌尿器科紀要 56(8), 453-456, 2010-08
- A 64-year-old man took levofloxacin 100 mg three times a day from the day before trans-rectal prostate needle biopsy. He suddenly fell into septic shock about 12 hours after the biopsy. We performed p …
- NAID 120002383986
Related Links
- 敗血症(はいけつしょう、英: sepsis)は、病原体によって引き起こされた全身性炎症反応 症候群(SIRS)である。細菌感染症の全身に波及したもので非常に重篤な状態であり、 無治療ではショック、DIC、多臓器不全などから早晩死に至る。もともとの体力低下を ...
- 敗血症,重症敗血症,および敗血症性ショックは,全身性細菌感染の結果として起こる 炎症状態である。重症敗血症および敗血症性ショックでは,組織灌流の重大な減少がみ られる。一般的な原因には,グラム陰性菌,ブドウ球菌,および髄膜炎菌などがある。
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- septic shock
- 同
- 敗血症ショック、感染性ショック、細菌性ショック、エキソトキシンショック(厳密には定義が違う?)
- 関
- ショック、敗血症
概念
- 微生物の感染によって起こる。グラム陰性菌(endotoxic shock)で起こるが、グラム陽性菌・真菌でも起こりうる。(BPT.102)
- 必ずしも全身性の菌血症は必須ではない。局所の生物の血管外感染にたいする宿主の炎症反応で十分おこりうる。(BPT.102)
- 敗血症ショックの70%がグラム陰性菌由来のエンドトキシンによる(endotoxic shock)
特徴
- warm shock:LPSによるショックでは末梢血管の血管透過性が亢進し、末梢血管抵抗が低下するが、体液が組織に移行して体が温かく感じられる。
- 血管末梢抵抗の低下により、代償的に高心拍出量状態となるり、ついには低心拍出量状態、多臓器不全となる。末期では体温は下がる。
病態生理 BPT.103
- 1. LPSが血中に放出される
- 2. 循環血液中のLPS-binding proteinと結合する
- 3. 2.の複合体は単球、マクロファージ、好中球上に発現しているCD14に結合する
- 4. CD14と共役しているTLR-4が細胞内にシグナルを伝達する。
- 5. TLR-4からのシグナルにより、IL-1, TNF等のサイトカインを放出
- 6. IL-1, TNFは血管内皮細胞に作用して抗凝固因子(TFPI、thrombomodulin)の産生を低下させる。 ← この作用は血管内皮上のTLR-4-CD14にLPSが結合することで増強される。
低用量のLPS
- 1. 単球、マクロファージ、好中球を活性化。補体系の直接の活性化。
- 2. LPSに反応してTNFを産生した単球性の食細胞はこんどはIL-1を産生する
- 3. 血管内皮はTNFとIL-1に反応してIL-6, IL-8を産生し、接着分子を発現する。
高用量のLPS
- 1. サイトカインにより産生されたエフェクター(NO、血小板活性化因子(PAF))が増加
- 2. 多量のTNFとIL-1によって発熱、急性相反応物(APR)の産生、好中球の増多
- 3. 血管内皮細胞は前凝固状態になる
高用量のLPSによってもたらされる帰結
- (1) 全身性の血管拡張(低血圧)
- (2) 心筋収縮力の減弱
- (3) びまん性の血管内皮障害と活性化、これにより白血球の血管内皮の接着が促進され、肺における肺胞のびまん性血管内皮損傷がおこる。
- (4) 凝固系の亢進がDICを引き起こす。
症状
- warm shock: 初期は発熱を伴う。発汗、呼吸促迫、頚静脈平坦、脈圧増大(高心拍出量状態を反映。低血圧の代償)、頻脈(発熱による)、心拍数増加、末梢血管抵抗低下、意識低下、尿量減少。
- cold shock: 末期には体温は低下する。
- 呼吸性アルカローシス:乳酸蓄積とサイトカイン増加で頻呼吸となるため(CBT QB vol2 p.554)
新生児
治療・管理
対症療法
- 初期におけるショックに対する治療 → 輸液負荷、昇圧薬、
- Dellinger RP, Levy MM, Carlet JM, et al: Surviving Sepsis Campaign: international guidelines for management of severe sepsis and septic shock: 2008. Crit Care Med 2008; 36:296-327.
- Early goal-directed therapy(Grade 1B)
- 敗血症ショックにおける指標を定めた初期輸液療法
- 敗血症ショックの治療開始後6時間の輸液療法はクリスタロイドであれば1-2l/hrとし、5%アルブミン液であれば0.6-1l/hrとする。
- 以下の4項目を達成目標とする
- 輸液負荷により低血圧が持続する場合に適応となる(ICU.646)
- ドパミンは腹腔内臓器の血流を低下させ組織アシドーシスを促進する可能性があるが、ノルアドレナリンにはこれはない。
根治療法
- 感染巣の同定、起炎菌の同定(血液培養の感度は30-40%程度)と薬物感受性の検索
ステロイド治療
- 昇圧薬を必要とする全ての敗血症性ショック患者にステロイドが推奨されている (ICU.646)
[★]
- 英
- inflammatory cytokine
- 関
- サイトカイン、急性相反応物質 APR
LPSと炎症性サイトカインのカスケード
炎症性サイトカインと生体の反応
炎症性サイトカイン
|
反応
|
症状
|
少量
|
局所炎症反応
|
白血球や内皮細胞による炎症反応
|
中程度の量
|
全身性反応
|
発熱、急性期タンパク質産生
|
多量
|
敗血症ショック
|
血圧低下、心拍出量低下、血栓形成、低血糖症
|
[★]
- 英
- infectious shock, septic shock
- 関
- 毒素ショック、敗血症ショック、敗血症性ショック、毒素性ショック症候群、内毒素ショック、細菌性ショック
[★]
- 英
- sepsis, (昔の概念→)septicemia
- 関
定義
- 感染症による全身性炎症反応症候群(SIRS)をセプシス(sepsis, 広義の敗血症?)とする
- 感染症の病原体は、一般細菌(グラム陽性菌・陰性菌)、真菌、寄生虫、ウイルスなど
- 皮膚や粘膜の傷とか、種々の臓器にある感染巣から、細菌がリンパ流から血中に入り、全身に播種されて、新たに転移性の感染巣をつくり、重篤な全身症状を引き起こす。
全身性炎症反応症候群の診断基準
- 1. 体温>38℃ or 体温<36℃
- 2. 心拍数>90bpm
- 3. 呼吸数>20回/min or PaCO2<32mmHg
- 4. (白血球数>12,000/ul or 白血球数<4,000/ul) or ( 幼若好中球>10% ) ← ここでいう幼若好中球とは桿状好中球のことである。
敗血症の周辺疾患概念
- 発熱や白血球増加などの全身の炎症の徴候によって特徴づけられる病態(SIRSの診断基準に合致する病態)
病態生理
- LPSが血液凝固を促進→血小板、フィブリノゲン、凝固因子消費 → 血栓形成 → プラスミノゲンを消費して血栓溶解 (FDP産生) →
- →出血傾向 → 皮下出血、歯肉出血、顕微鏡的血尿(出血性敗血症)
原因となる病原体
症状
- 悪寒、戦慄を伴う発熱、頻脈、頻呼吸、全身倦怠感、呼吸困難、意識障害、ショック、乏尿
- 敗血症による多臓器不全で障害を受けやすい臓器:肺、腎臓、心血管系、中枢神経系
検査
血液検査
- 白血球:12,000/ul以上のことが多い(SIRSの定義)
- 左方移動、重症例では白血球減少
- 血小板数:血管内凝固に伴い低下
- CRP:基準値以上
- 凝固系・線溶系:凝固能低下、線溶系亢進
培養
- 血液培養
- カテーテルの先端(留置カテーテルがある場合)
治療 (ICU.644)
酸素投与
敗血症における組織の酸素化
- 敗血症では細胞の酸素摂取能が損なわれている → 重症敗血症患者の組織酸素濃度がなぜ健常者よりも高くなる (ICU.645)
- 重症敗血症や敗血症性ショックにおいては
敗血症における酸素摂取量(ICU.645)
初期蘇生
- 重症敗血症や敗血症性ショックの患者に対する最初の6時間の管理目標
- 1.中心静脈庄8-12mmHg
- 2.平均動脈庄≧65mmHg
- 3.尿量≧0.5 mL/kg/h
- 4.SVO2≧70% or SCVO2≧70%
- SVO2:混合静脈血酸素飽和度、肺動脈血酸素飽和度
- SCVO2:中心静脈血酸素飽和度、上大静脈血酸素飽和度
輸液負荷
- 1. 500-1,000mLの晶質液 or 300-500mLの膠質液を30分かけて投与
- 2. 初期蘇生の目標値に達するまで、または輸液過多寸前になるまで1)を行う。
昇圧薬(ICU.646)
- 1. 輸液負荷を行っても低血圧が持続する場合、ドパミン or ノルアドレナリンを投与
- ドパミン:5-20 ug/kg/min:心拍出量増加:腹腔内蔵機の血流減少
- ノルアドレナリン:0.2-1.3 ug/kg/min:心拍出量不変、血管収縮
- パソプレシン:0.01-0.04 U/min:血管収縮薬:心拍出量減少→心不全の既往で慎重
経験的抗菌薬治療(ICU.646)
- 重症敗血症や敗血症性ショックと診断したら1時間以内に抗菌薬を静脈内投与する
- 抗菌薬投与前に少なくとも2セットの血液検体を採取 → 血液培養&感受性検査のため
- イミペネム/メロペネムの単剤
- MRSAのリスクリスク有り:イミペネム/メロペネム + バンコマイシン/リネゾリド
コルチコステロイド(ICU.646)
- 昇庄薬を必要とするすべての敗血症性ショック患者に推奨
- ヒドロコルチゾン:200-300mg用を2-3回に分割して静脈内投与もしくは経口投与、7日間継続
- 副腎不全の改善
[★]
- 英
- shock
- 同
- 虚脱状態
- 関
- 産科ショック
メジャー
- 心筋梗塞、致死的不整脈、心不全
- 心タンポナーデ、収縮性心膜炎、肺血栓塞栓症、緊張性気胸
- 低容量性ショック hypovolemic shock = 循環血液量減少性ショック
- 出血性ショック、体液喪失(熱傷)・脱水
マイナー
ショックの5P
ショックの判断
簡便
循環モニターのためのデバイス・検査項目
- 血圧・脈拍
- 心電図
- 心エコー
- 呼吸・血ガス
- 血液検査・尿検査
- バルーンカテーテル:残尿を排泄し、30分ごとに尿量、血圧、脈拍を測定する
- 中心静脈圧
- スワン・ガンツカテーテル
- PiCCO
- 胃トノメトリー
治療
心原性ショック
|
原疾患の治療
|
低容量性ショック
|
輸液、輸血、止血、昇圧剤は原則使用しない
|
敗血症性ショック
|
抗菌薬、昇圧薬、エンドトキシン吸着カラム、輸血、血糖コントロール、低容量ステロイド
|
神経原性ショック
|
輸液、昇圧薬
|
アナフィラキシーショック
|
エピネフリン、輸液、抗ヒスタミン剤、ステロイド、昇圧薬、H2ブロッカー
|
閉塞性ショック
|
緊張性気胸
|
胸腔穿刺、胸腔ドレナージ
|
心タンポナーデ
|
心嚢穿刺、心膜開窓
|
肺塞栓
|
塞栓除去術、血栓溶解術
|
[★]
- 英
- sis, pathy
[★]
- ラ
- septicus、septic
- 関
- 敗血症、敗血性