チアマゾール
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チアマゾール
|
IUPAC命名法による物質名 |
1-メチル-3H-イミダゾール-2-チオン |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
|
法的規制 |
?
|
投与方法 |
経口 |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
93% |
血漿タンパク結合 |
なし |
代謝 |
肝臓 |
半減期 |
5-6 時間 |
排泄 |
腎臓 |
識別 |
CAS番号 |
60-56-0 |
ATCコード |
? |
PubChem |
CID 1349907 |
DrugBank |
APRD00002 |
化学的データ |
化学式 |
C4H6N2S |
分子量 |
114.17 g/mol |
物理的データ |
融点 |
146 °C (295 °F) |
水への溶解量 |
2.75 mg/mL (20 °C) |
チアマゾール(英: Thiamazole)は、抗甲状腺薬の一種である。メチマゾール(英: Methimazole)とも呼ばれる。プロピルチオウラシルと同様、甲状腺ホルモンを抑制する作用を持つ。チオアミドに属する。日本ではメルカゾールの商品名で発売されている。
目次
- 1 適応
- 2 作用機序
- 3 副作用
- 4 内服前、内服中の注意
- 5 脚注
適応
チアマゾールは 甲状腺機能亢進症、すなわち血中の甲状腺ホルモンが過剰になった状態の治療に用いられる。この薬は、甲状腺手術や放射性ヨード治療の前にも、血中甲状腺ホルモン濃度を低下させ甲状腺の操作の影響を最小にする目的で用いられる。
作用機序
チオアミドは甲状腺ホルモンの生合成の多くの段階をブロックする。この中にはサイロキシン(en)の生合成に必須な段階である、酵素甲状腺ペルオキシダーゼによるサイログロブリンのヨード化を含む。
副作用
無顆粒球症
もしチアマゾール内服中に発熱やのどの痛みがあったときには直ちに主治医に連絡する必要がある。これは、これらの症状が無顆粒球症(血液中の白血球数、とくに好中球数の低下。まれだが重篤であり、死亡例もある副作用)に由来する可能性があるためである。白血球数と分画の測定が行われる。無顆粒球症の際にはチアマゾールは中止される。治療のために組み替えヒトG-CSF製剤が用いられる。
その他の副作用
以下のものがあげられる。皮膚症状の頻度が比較的高い。(掻痒感・皮疹をあわせると10-20%に出現するといわれる)
- 皮膚紅斑
- 掻痒感
- 肝機能異常
- 脱毛
- 悪心嘔吐
- 食欲低下
- 筋肉痛
- 倦怠感
- 血小板減少
- MPO-ANCA関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎など。出現頻度はPTUに比べると少ない。)
- 劇症肝炎[1]
内服前、内服中の注意
- 以下に該当する人は、内服前に医師や薬剤師に相談のこと。
- 本剤チアマゾール、プロピルチオウラシル(商品名プロパジール)あるいはほかの薬に対してアレルギーをもつ人。
- 処方薬、市販薬にかかわらず薬を内服している人、とくにワルファリン(商品名ワーファリン)などの抗凝固薬、ジゴキシンを内服中の人。
- かつて白血球減少症、血小板減少症、再生不良性貧血、肝疾患にかかっていた人、あるいは現在かかっている人。
- 妊娠中の人、妊娠の予定のある人、授乳中の人。MMI embryopathyと呼ばれる新生児への影響を避けるため、プロピルチオウラシルやヨウ化カリウムへの変更が推奨されている。[2]
- もしチアマゾール内服中に発熱やのどの痛みがあったときには直ちに主治医に連絡すること(前述)。
- 外科手術、歯科手術を受ける予定の人は、外科または歯科の主治医にチアマゾール内服中であることを伝えること。
脚注
- ^ 甲状腺 日本内分泌学会雑誌 Vol.87 (2011) No.Supplement-1 特集号 第20回臨床内分泌代謝Update Proceeding p. 35-43
- ^ 妊娠初期のチアマゾール投与に関する注意喚起について(2011.11.30) 日本甲状腺学会
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Japanese Journal
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[★]
- 25歳の女性。動悸と手の震えとを主訴に来院した。2か月前から疲れやすくなり、動悸を感じるようになった。食欲は旺盛であるが体重は変化していない。汗が多く、イライラするようにもなった。10日前から安静時の手の震えを感じる。意識は清明。身長158cm、体重50kg。体温37.2℃。脈拍112/分、整。血圧156/42mmHg。眼裂は大きく、上眼瞼縁と角膜との間に強膜が認められる。う歯と歯槽膿漏とを認める。びまん性甲状腺腫を認める。血清生化学所見:総コレステロール100mg/dl、AST30IU/l、ALT22IU/l、ALP380IU/l(基準260以下)、γ-GTP 42IU/l(基準8~50)、TSH 0.01μU/ml以下(基準0.2~4.0)、FT3 12pg/ml(基準2.5~4.5)、FT4 7.6ng/dl(基準0.8~2.2)。
- 治療として適切なのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [101A047]←[国試_101]→[101A049]
[★]
- 23歳の女性。嘔吐と意識障害のため搬入された。付き添ってきた友人によると数日前から嘔吐が始まり、今朝から「錯乱状態となっている」という。高校生のころ甲状腺の病気で一時通院したが、薬疹が出たため中止したという。閉眼のまま身体をねじらせてうなるだけで呼びかけに反応しない。体温37.4℃。脈拍180/分、整。血圧104/60mmHg。眼球突出とびまん性の甲状腺腫大とを認める。著明な発汗を認める。血液所見:赤血球480万、Hb 14.5g/dl、Ht 46%、白血球9,000、血小板31万。血液生化学所見:尿素窒素34mg/dl、クレアチニン0.8mg/dl、総コレステロール119mg/dl、ALT 187IU/l、FT4 13.8ng/dl(基準0.8~1.7)。
- 治療として適切でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [107A047]←[国試_107]→[107A049]
[★]
- 英
- Graves' disease, Graves disease
- 同
- バセドー病 バセドウ病 (国試)Basedow病 Basedow disease Basedow's disease、グレーヴス病 Graves病、exophthalmic goitre、中毒性びまん性甲状腺腫 toxic diffuse goiter、パリー病 Parry disease
- ラ
- morbus Basedowii
- 関
- 甲状腺中毒症
概念
病因
- 甲状腺刺激免疫グロブリン thyroid stimulating immunoglobulin
- 甲状腺増殖刺激免疫グロブリン thyroid re-growth-stimulating immunoglobulin (TGI)
- TSH結合阻害免疫グロブリン TSH-binding inhibitor immunoglobulin (TBIIs)
- 自己抗体であるTSH受容体抗体の産生 → 甲状腺濾胞上皮細胞のTSH受容体に結合して活性化 → 甲状腺ホルモン分泌↑
- 抗TSH受容体抗体は95-98%の症例で出現する。
疫学
頻度
- 住民検診などで見つかる Basedow病は、1,000人に対し 1-6人と報告されている。
- 男女比は1:4で女性に多い。特に、20-50歳の女性に多い。
- 家族内集積が高い。
病変形成&病理
- 自己抗体により、濾胞のホルモン産生が刺激され、甲状腺は瀰漫性に腫大(正常の数倍から200gまで)。
症状
- 頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加等
- 心臓肥大、リンパ組織過形成、真皮の肥厚
- 2. びまん性甲状腺腫大(表面は平滑で柔らかい、血管雑音)
- 3. 眼球突出または特有の眼症状
- 未治療or適切な治療が行なわれていなかった状態、感染、外傷などの誘因が加わった時に機能亢進症が急速に増悪する状態。頻脈、ショック。
合併症
検査
- 1. FT4、FT3のいずれか一方または両方高値
- 2. TSH低値
- 3. TSH受容体抗体陽性、または甲状腺刺激抗体陽性
- 4. 放射線ヨード甲状腺摂取率高値 ← 甲状腺ホルモンの生合成が亢進
エコー
診断
(Basedow病の診断ガイドライン(日本甲状腺学会 第7次案))
- 所見
- 1. 頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加等の甲状腺中毒症所見
- 2. びまん性甲状腺腫大
- 3. 眼球突出または特有の眼症状
- 1. 遊離T4、遊離T3のいずれか一方または両方高値
- 2. TSH低値(0.1μU/ml以下)
- 3. 抗TSH受容体抗体(TRAb,TBII) 陽性、または刺激抗体(TSAb) 陽性
- 4. 放射線ヨード(またはテクネシウム) 甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性
- 診断
- a) の1つ以上に加えて、b) の4つを有するもの
- a) の1つ以上に加えて、b) の1、2、3を有するもの
3) Basedow病の疑い
- a) の1つ以上に加えて、b) の1と2を有し、遊離T4、遊離T3高値が3カ月以上続くもの
- 付記
- 1. コレステロール低値、アルカリフォスターゼ高値を示すことが多い.
- 2. 遊離T4正常で遊離T3のみが高値の場合が稀にある.
- 3. 眼症状がありTRAbまたはTSAb陽性であるが、遊離T4およびTSHが正常の例はeuthyroid
Graves’diseaseまたはeuthyroidophthalmopathyといわれる.
- 4. 高齢者の場合、臨床症状が乏しく、甲状腺腫が明らかでないことが多いので注意をする.
- 5. 小児では学力低下、身長促進、落ち着きの無さ等を認める.
- 6. 遊離T3(pg/ml) /遊離T4(ng/dl) 比は無痛性甲状腺炎の除外に参考となる
治療
の二種類である。薬効の高さや作用持続時間の長さの利点からMMIを第一選択とするが、胎盤移行や乳汁移行、副作用の出現頻度を考慮しPTUを用いることもある。治療中止の時期は甲状腺機能の正常化はもちろんのこと、抗TSH受容体抗体が陰性であることも必要である。
- 治療期間:長い。1-2年維持量でコントロールし、TSH受容体抗体が陰性化したら減量し、さらに6ヶ月したら休薬(YN.D-31)
治療の中止
- 4点がそろえば中止。中止後、10-25%が再発する。
- 1. メルカゾール1錠/日-1錠/隔日で甲状腺機能が正常 (TSH, FT4の両方が正常)
- 2. 投薬継続期間が2年以上
- 3. 甲状腺腫が小さくなった
- 4. TSH受容体抗体が陰性
βブロッカー
- 脈拍、動悸、振戦を軽減 ← 甲状腺ホルモンの「心筋細胞のカテコールアミン受容体を増加させる作用」に対して
放射性ヨード療法
- 131Iのβ線により甲状腺組織を破壊
- 効果は2-3週後に出現し、最大効果は6-12週後。
外科的治療法
比較
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放射性ヨード療法 131療法
|
外科的治療法
|
抗甲状腺薬
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長所
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治療法が簡単
|
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どの年代の患者でも可能(妊娠・妊娠中も可能)
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成人合併例でも治療可能
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|
通院での治療可能
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比較的短期間で寛解
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短期間に治癒
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永続寛解率が高い
|
高い寛解率
|
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侵襲が少ない
|
|
不可逆的な甲状腺機能低下は稀
|
短所
|
特別な施設が必要
|
手術侵襲
|
副作用(無顆粒球症・肝障害)
|
永続的甲状腺機能低下症が年ごとに増加
|
永続的甲状腺機能低下症
|
|
妊娠、授乳期では禁忌
|
瘢痕
|
治療期間が長い
|
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術後合併症(反回神経麻痺、テタニー)
|
永続寛解率が低い
|
|
術後再発
|
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回避・禁忌
|
30歳以下は避ける
|
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|
妊娠予定、妊娠中、授乳中は禁忌
|
|
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適応
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欧米の第一選択
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日本の第一選択
|
老人で早期治療を望む場合
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早期治癒を望む場合(社会的・妊娠希望)
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小児、妊婦
|
抗甲状腺薬で副作用の例
|
抗甲状腺薬で副作用の例
|
外科的療法、放射性ヨード療法の明らかな適応外
|
抗甲状腺薬で永続治癒の可能性低
|
抗甲状腺薬で永続治癒の可能性低
|
FT4軽度上昇例
|
服薬・治療コンプライアンス低
|
服薬・治療コンプライアンス低
|
|
手術適応だが合併症、患者の意志により回避される場合
|
通院が困難
|
|
手術後再発例
|
甲状腺腫が大
|
甲状腺腫が小
|
病理
- 濾胞上皮の著明な過形成、上皮細胞の丈が増して円柱上となる、濾胞上皮が乳頭状に濾胞腔に突出する、間質の軽度の線維化、リンパ球集簇、リンパ濾胞、腫大した上皮細胞は濾胞中央部のコロイドを活発に吸収するため、コロイドの辺縁部に空泡が見える。
グレーブス病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎の比較
- YN.D-40改変
参考
- 1. D.産科疾患の診断・治療・管理 8.合併症妊娠の管理と治療 - 日産婦誌60巻3 号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/60/6003-041.pdf
[★]
- 英
- antithyroid drug
- 同
- 甲状腺阻害薬
- 関
- 甲状腺中毒症、薬理学、甲状腺、甲状腺ホルモン
種類
- チアミド系の化合物が用いられる(SPC.323)
作用機序
- 甲状濾胞内に能動的に取り込まれ、濾胞内でヨードの有機化と縮合を抑制
- 甲状腺濾胞内に浸潤しているリンパ球の自己抗体産生を抑制
副作用
- チアミド系化合物の副作用
副作用に対する対処
-
- 抗甲状腺薬の中止。副腎皮質ホルモン、抗菌薬、輸血、G-CSF (医学辞書改変)
- 無顆粒球症(好中球<500/ul)と判断されたらすぐに抗甲状腺薬の中止。
薬物動態の比較
|
チアマゾール
|
プロピルチオウラシル
|
血漿タンパクとの結合
|
結合しない
|
0.75
|
血漿半減期
|
4?6時間
|
75分
|
分布容積
|
40 liters
|
20 liters
|
甲状腺での濃縮
|
濃縮
|
濃縮
|
重症な肝臓病患者での代謝
|
減少
|
普通
|
重症な腎臓病患者での代謝
|
普通
|
普通
|
投与頻度
|
1-2回/日
|
1-4回/日
|
胎盤の通過
|
低
|
低
|
母乳への移行
|
低
|
低
|
参考
uptodate
- 1. [charged] チオナミドによるバセドウ病(グレーブス病)の治療 - uptodate [1]
- 2. [charged] チオナミドの薬理学および毒性 - uptodate [2]
- 3. [charged] 患者情報:抗甲状腺剤 - uptodate [3]
[★]
- 英
- thiamazole
- ラ
- thiamazolum
- 同
- メチマゾール methimazole、メルカプトメチルイミダゾール mercaptomethylimidazole MMI
- 商
- メルカゾール、Tapazole
- 関
- 薬理学、甲状腺機能亢進症。プロピルチオウラシル propylthiouracil PTU
作用機序
薬理作用
- ペルオキシダーゼは濾胞内でO2からH2O2を生成し、H2O2によりI-がI・となりサイログロブリン上のチロシンの3位or5位につく
動態
- 胎盤を通過
- 乳汁中に分泌 → 妊婦には投与しない方がよい
適応
注意
禁忌
副作用
[★]
チアマゾール thiamazole, メチマゾール methimazole, メルカプトメチルイミダゾール mercaptomethylimidazole
[★]
チアマゾール = メチマゾール MMI
[★]
- 英
- methimazole-induced agranulocytosis
- 関
- メチマゾール、無顆粒球症