- 英
- amniotic fluid analysis
- 関
- 羊水、羊水穿刺
目的
- 妊娠22週未満:先天性異常や代謝異常の検査
- 妊娠22週以降:胎児の成熟性、感染症、治療
検出する対象
染色体分析
- NGY.116
- 適応:高齢妊娠(最多)、両親のいずれかが転座保因者、染色体異常の児出産既往、母体血清マーカー陽性、超音波異常
- 時期:妊娠15-18週:中期羊水穿刺(羊水の採取が容易で胎児への影響が少ない) ⇔ 妊娠12-14週:早期羊水穿刺(羊水漏出が2.9倍、早流産率が3.3倍、細胞培養失敗率が26倍)
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2022/01/03 17:00:32」(JST)
[Wiki ja表示]
羊水検査(ようすいけんさ)とは出生前診断の一種。妊娠子宮に長い注射針に似た針を刺して羊水を吸引すること(羊水穿刺)によって得られた羊水中の物質や羊水中の胎児細胞をもとに、染色体や遺伝子異常の有無を調べる。一般に妊娠16週以降の時期に実施される。羊水検査で診断できるのは染色体や遺伝子など特定の異常に限られており、全ての異常が発見できる訳ではない。
概要
羊水を用いた出生前診断は1930年代にさかのぼる。1950年代に入り、Rh不適合妊娠における羊水ビリルビン値による胎児溶血性貧血の診断ができるようになって広く普及した。その後羊水細胞の培養と染色体分析技術の進歩により,1960年代から羊水染色体検査が行われるようになった。また1968年には培養羊水細胞を用いた先天性酵素欠損症の出生前診断が初めて報告されている。近年の超音波診断装置の改良と染色体・遺伝子解析技術の進歩により、多くの胎児情報を提供する安全で精度の高い技術として定着している。厚生労働省の班研究によれば、2000年度には国内で約10,000件が実施されている[1]。高齢出産の増加と、母体血清マーカー検査および新型出生前診断の普及に伴う確定診断の需要のために検査件数は増加する一方で、2012年には倍増の2万件の実施数となっている[2]。
方法
通常の羊水穿刺では超音波ガイド下に、ガイド用アタッチメントを使用せずフリーハンドで行われることが多い。穿刺を行うときは子宮壁すなわち卵膜に対して可能な限り垂直に穿刺し、注射器で羊水を20ml程度吸引採取する。母体細胞の混入を予防するために最初に吸引される1-2mlは破棄されることが多い。
精度
羊水検査の精度はほぼ100%とされ、母体血清マーカー検査および新型出生前診断後の確定診断として用いられる[2]。
合併症
流産
一般には0.2-0.3%と説明されることが多い[3]。しかし羊水検査を実施する妊娠16週頃は自然流産も多い時期で、またこの妊娠中期に自然流産する胎児は元々何らかの先天的異常を持つ場合も多い。羊水穿刺による純粋な合併症としての流産を検討すると、新しい報告になるほどその数字が低下している。もっとも最近の2006年の報告[4] では0.06%,2008年の別の報告[5] では0.13%とされている。何れも正常対照群の流産率との差である。もちろんこのリスクは施設によって、あるいは術者の熟練度によってもかわるが、いずれにしても現在においては1000回に1回程度の頻度と考えるのが妥当であろう。
羊水流出
羊水穿刺後の妊婦が水様性帯下を訴えるときは羊水漏出、破水が疑われる。24時間以内の羊水漏出は1%程度とされ、決して稀ではない合併症である。ただし穿刺針のピンホールからの漏出であるため、通常の前期破水とは異なりいずれも入院により1週間以内に羊水漏出が止まるので一般的予後は悪くない。
母体合併症
母体合併症は極めて稀であるが、子宮内感染による播種性血管内凝固症候群や、腸管穿刺による汎発性腹膜炎の報告がある。
倫理的問題
性別判定
日本産科婦人科学会倫理委員会は、2007年4月改定版のガイドラインにおいても、引き続き [6]「重篤なX連鎖遺伝病のために検査が行われる場合を除き、胎児の性別を告げてはならない」と自主規制している。しかしながら、実際には染色体検査の結果とともに性別を告知する医師もおり、学会の見解そのものに異議を唱える動きもある[7]。また血友病の保因者が胎児の性別判定を目的とした羊水検査を希望したが断られたため中絶を選択したケース[8]もある。
人工妊娠中絶
胎児の異常が発見されたときには、子宮内で大きく育った胎児の人工妊娠中絶が実施される確率が高い。ダウン症候群などの重度の障害が確定診断された場合には、日本国内では9割の妊婦が人工妊娠中絶を選択している[9]。
関連項目
- 着床前診断
- 出生前検査
- 母体血清マーカー検査
- 新型出生前診断
脚注
- ^ 平成13年度厚生科学研究 周産期遺伝カウンセリングシステム構築に関する研究 (分担研究者 左合 治彦)
- ^ a b 羊水検査、10年で倍増 出生前診断に関心高まる 日本経済新聞 2013/6/22 11:42
- ^ 母体血清マーカー検査 分かるのは先天異常の「可能性」 産経新聞 2012.06.21 東京朝刊 18頁 生活 写有 (全1,280字)
- ^ Eddleman KA et al: Pregnancy loss rates after midtrimester amniocentesis. Obstet Gynecol 2006;108:1067-72
- ^ Odibo AO et al: Revisiting the fetal loss rate after second-trimester genetic amniocentesis: a single center's 16-year experience. Obstet Gynecol 2008;111:589-95
- ^ 日本産科婦人科学会 倫理委員会『出生前に行われる検査および診断に関する見解』
- ^ ファアネス法律事務所「日本産科婦人科学会倫理審議会答申書 (諮問事項:着床前診断について)」に対する反論
- ^ 日本心理臨床学会 第19回大会研究発表集 『先端医療技術とカウンセリング』
- ^ “新型出生前診断、陽性の9割以上中絶 羊水検査で確定後”. 朝日新聞. (2013年11月22日). http://www.asahi.com/articles/TKY201311220411.html 2013年11月23日閲覧。
外部リンク
典拠管理 |
- GND: 4205581-7
- LCCN: sh85004560
- MA: 2777966818, 2910327880
|
---|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
- 1. 分娩前胎児評価の概要overview of antepartum fetal assessment [show details]
… fetal assessment are the nonstress test, biophysical profile, modified biophysical profile, contraction stress test, and fetal movement count. Assessment of amniotic fluid volume (independent of the biophysical …
- 2. Approach to acute abdominal/pelvic pain in pregnant and postpartum patientsapproach to acute abdominal pelvic pain in pregnant and postpartum patients [show details]
… the first steps in the diagnostic evaluation. If no products of conception are identified grossly in the cervix or vagina, then ultrasonography is the most useful follow-up test. The sonographic signs …
- 3. 羊水量調節の生理学physiology of amniotic fluid volume regulation [show details]
… (170 mL/day near term) is swallowed, and the remainder enters the amniotic cavity, which is the basis for fetal lung maturity testing . Lung fluid secretion is reduced during periods of fetal asphyxia …
- 4. 羊水量の評価assessment of amniotic fluid volume [show details]
… dilution is invasive, cumbersome, and requires specialized technical skills and laboratory support, while collection of amniotic fluid is not an option for ongoing fetal assessment during pregnancy and can be …
- 5. 羊水感染症(臨床的絨毛膜羊膜炎)intraamniotic infection clinical chorioamnionitis [show details]
…perform amniocentesis in such patients because of the poor predictive value of nonculture-based amniotic fluid testing, the 48-hour delay in obtaining definitive culture results, and the lack of data proving …
Related Links
- 羊水検査は出生前診断の一つで、胎児の 染色体 異常 などを調べる検査です。 羊水検査では、子宮内を満たしている羊水の細胞を採取します。 検査の際はお腹に針を刺して検体を採取するため、流産や破水などのリスクがあります。 羊水検査の目的 羊水検査の目的は、胎児を包む羊水を採取して、羊水中に含まれている胎児の細胞を採取し、胎児の染色体異常があるかどうかを調べる検査です。 確定的検査として行われ、前段階の超音波検査や NIPT などで異常があれば羊水検査にて 疾患 を確定します。 さらに染色体異常だけでなく、特定の 遺伝性疾患 の有無を調べる目的もあります。 この場合、 遺伝子 の変異や 酵素 の変化を調べることもあります。 羊水検査の方法 羊水検査の一連の流れを紹介します。
- 羊水検査 は、お腹の中の赤ちゃんの 染色体 疾患 や 遺伝子 の 異常 を調べる検査です。 胎児の先天疾患を調べる検査は他にも、 NIPT ( 新型出生前診断 )や超音波検査などがあります。 羊水 検査はNIPTや超音波検査で検出された結果を確定させるための検査です。 「出生前診断の 確定的検査 」と呼ばれます。 羊水検査でわかること 染色体異常を調べる検査は複数ありますが、羊水検査で具体的にわかることを詳しく解説していきます。 全ての染色体異常 羊水検査は G分染法 ・ FISH 法・ マイクロアレイ 検査によって行われますが、どの手法でも以下の染色体異常を発見することができます。 ・ 21トリソミー ( ダウン症候群 ) ・ 18トリソミー ( エドワーズ 症候群 )
- 羊水を採取することにより、羊水中に含まれている胎児の細胞を調べ、胎児に染色体の変化(染色体異常)があるかどうかを調べるための確定診断検査として実施されるのが通常の羊水検査です。 染色体異常だけではなくて、特定の遺伝性疾患の有無を調べる目的で遺伝子変異や酵素の変化を調べる事もあります。 対象疾患 染色体異常(数の異常、構造の異常) 数の異常 ・・・ダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミー、 ターナー症候群、クラインフェルター症候群など 構造の異常・・・転座、欠失など 開放性神経管奇形(開放性二分脊椎や無脳症など)
★リンクテーブル★
[★]
- 33歳の女性。2日前に市販のキットで尿妊娠反応が陽性であったため来院した。最終月経は7週前、月経周期は30~45日である。3年前に糖尿病と診断され、半年前からは自宅近くの診療所でインスリン治療を受けている。内診で子宮は鵞卵大で付属器は触れない。尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体(-)。血液生化学所見:血糖 90mg/dL、HbA1c 5.8%(基準 4.6~6.2)。経腟超音波検査で子宮内に長径 25mmの胎嚢と心拍動を有する胎芽とを認める。妊娠していることを患者に伝えると、糖尿病による胎児奇形が心配だという。
- 患者への説明として適切なのはどれか。
- a 「人工妊娠中絶を勧めます」
- b 「胎児奇形は羊水検査で診断できます」
- c 「治療をインスリンから経口糖尿病薬に変更しましょう」
- d 「胎児奇形のリスクが一般の方より高い状況ではありません」
- e 「今から葉酸を十分に摂取すれば胎児奇形の頻度が減少します」
[正答]
※国試ナビ4※ [110A025]←[国試_110]→[110A027]
[★]
- 36歳の 1回経妊 1回経産婦。妊娠 13週。第 1子が 21trisomyであったことから、妊娠中の第 2子の検査を希望して来院した。現時点で母体、胎児ともに妊娠継続に問題はない。
- まず行うべき対応はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [108E053]←[国試_108]→[108E055]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [108G016]←[国試_108]→[108G018]
[★]
[★]
[★]
- (1) Down症候群
- (2) 単純閉塞性水頭症
- (3) 胎児肺低形成
- (4) 胎児消化管閉塞
- (5) 胎児溶血性貧血
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[★]
- 英
- amniocentesis
- 関
- 羊水検査、羊水
概念
- 検査(羊水検査)あるいは治療目的に施行される手技。
手順
- NGY.116
- 1. 仰臥位とし、腹壁を消毒
- 2. 腹壁超音波にて胎児、胎盤位置を確認
- 3. 穿刺部位に局所麻酔を行う
- 4. 超音波ガイド下に穿刺
- 5. 数ml吸引して廃棄し、約20mlの羊水を吸引する
- 6. 針を抜去後、圧迫し、2時間ベット上安静とする
合併症
- 破水、層流算、子宮内感染、胎児損傷、胎盤・臍帯損傷、胎盤早期剥離、母児間輸血 (NGY.116)
- 羊水漏出(1%)、流早産(0.3%)、子宮内感染(0.1%) (NGY.116) 流産率は0.1%で自然流産と同程度(QB.P-215)
適応
- 通常、妊娠15週以降に行う。
- 早期に羊膜を穿刺すると羊膜腔の緊満性が失われて羊膜が胎児に付着し羊膜索症候群を引きおこしうる。
[★]
- 同
- 胎児well-being
検査
- 経腹超音波断層法
- 超音波ドプラ法
- 胎児心拍数モニタリング
- バイオフィジカルプロファイルスコア BPS
- 羊水検査
目的別検査
[★]
- 英
- chorionic villus analysis
- 関
- 羊水検査
- 妊娠9週以降に可能となり羊水検査に比べ早期に施行できる。通常、妊娠14週頃(妊娠4月3週目、妊娠前期の末)に施行する(QB.P-227)。
参考
- http://www.jsog.or.jp/PDF/59/5907-226.pdf
[★]
- 英
- amniotic diagnosis, amniotic fluid diagnosis
- 関
- 羊水診断法、羊水染色体分析 amniotic fluid chromosome analysis、羊水染色体検査 amniotic fluid chromosome examination、羊水検査 amniotic fluid examination examination using amniotic fluid
[★]
- 関
- 胎児肺成熟、羊水検査、肺表面活性物質
[★]
- 英
- amniotic fluid (Z)
- ラ
- liquor amnii
- 同
- 胎水
- 関
- [[]]
性状
成分
- 種々の成長因子、電解質、低濃度の蛋白質、アミノ酸、糖質、α-フェトプロテイン、リン脂質、酵素、プロラクチン、性ステロイドホルモン
産生
- 妊娠初期:羊膜
- 妊娠中期:胎児腎臓(胎児尿)、胎児肺(肺胞液)
腎による羊水の産生
- 尿細管は妊娠7週で形成され、妊娠10週には腎は尿を排泄するようになる。妊娠5ヶ月頃から腎盂、膀胱に尿が貯留し、随意的排尿が見られるようになる。(NGY.283)
羊水量
- 胎盤完成期から急増して、妊娠7-8ヶ月でピーク(700ml)となり、妊娠末期に減少して50-500mlとなる。
吸収
- 妊娠初期:羊膜
- 妊娠中期:嚥下→腸管から吸収→胎盤→母胎
機能
- MGY.292 G10M34
- 胎児の保護(物理的衝撃、体温保持)
- 運動空間の確保
- 胚の成熟
臨床関連
量的な異常
[★]
- 関
- 検定、試験、視察、視診、調べる、調査、テスト、点検、検討、監査、診察