- 英
- anion gap, AG
- 同
- 陰イオンギャップ
- 関
- AG
定義
- [Na+]-[HCO3-]-[Cl-]
血液中の陽イオン
血液中の陰イオン
- Cl-, HCO3-, HPO42-, SO42-, 有機イオン、アルブミン
意義
- [Na+]-[HCO3-]-[Cl-] = 未測定陰イオン - 未測定陽イオン
- 未測定陽イオンの変動はほとんど無く、アニオンギャップは未測定陰イオン濃度の推定に用いられる
- 不揮発性酸(乳酸、リン酸、硫酸、ケト酸など)↑→未測定陰イオン↑→アニオンギャップ↑
- アニオンギャップが開大していると言うことは、不揮発性酸(乳酸、リン酸、硫酸、ケト酸)が血中に増加していることを示す。
基準値
- 「[Na+]-[HCO3-]-[Cl-]の場合」
- 基準値 :12 mEq/l
- 基準範囲:8-16 mEq/l or 12±2 mEq/l or 12±4 mEq/l(LAB.643)
解釈
高値
- 代謝アシドーシスをきたしているとき、HCO3-によりH+を滴定するため、HCO3-が減少する。HCO3-の減少を、Cl-ではない陰イオンが増加することで生体内の電気的中性を保つような病態ではアニオンギャップが開大する。
- (病態の形成機序としては不揮発酸が増大した結果としてHCO3-が減少しているのだが)
- (1)腎不全時のリン酸、硫酸の増加、(2)低酸素血症時の乳酸の増加[ 乳酸アシドーシス ]、(3)ケトン体増加[ 糖尿病性ケトアシドーシス ]
注意
- アニオンギャップの開大しない代謝性アシドーシスもある
- 代謝アシドーシスをきたしているとき、HCO3-によりH+を滴定するため、HCO3-が減少する。このとき、陰イオンが代償的に増加していれば、アニオンギャップは正常となる。アニオンギャップの開大しない代謝アシドーシスではCl-が増加している(Cl-の値に注意する)。
- (不揮発性酸の過剰産生ではなく、代謝的にHCO3-の過剰喪失、H+の過剰産生、H+の排泄障害が考えられる)
- 消化管からのHCO3-喪失、尿細管アシドーシスによるH+排泄の障害、NH4Cl負荷などの外因性H+摂取
低値
- 多発性骨髄腫、ブロム中毒、高ナトリウム血症
- unmeasured anionの減少 or unmeasured cationの増加 (水・電解質と酸塩基平衡 改訂第2版 p. 144)
- unmeasured anionの減少:低アルブミン血症。Alb 1mg/dlの低下→AG約2.5-3.0mEqの低下。高AGをマスクしうるので注意。
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/05/25 02:21:06」(JST)
[Wiki ja表示]
アニオンギャップとは医学、生理学で用いられる指標のひとつであり、体内における有機酸の寄与をあらわす指標である。正常値は12±2mEq/lである。
目次
- 1 概念
- 2 使い方
- 3 AGが増加する代謝性アシドーシス
- 4 高クロール性代謝性アシドーシス
概念
人間の身体は電気的に中性である。即ち、陽イオンの価数だけ陰イオンが存在する。陽イオンは主にナトリウムイオンであり陰イオンはクロールイオン、重炭酸イオン、有機酸である。よってAGを以下のように定義すると大雑把に有機酸がどれ位あるのかを把握することができる。
- AG=ナトリウムイオン-(クロールイオン+重炭酸イオン)
使い方
より詳細な説明は血液ガス分析やアシドーシスとアルカローシスを参照のこと。
基本的に代謝性アシドーシスの時に計算する項目である。代謝性アシドーシスは以下のような病態で発生する。
- 体内で重炭酸イオンが低下する場合は代償的にクロールイオンが上昇しAGは不変となる代謝性アシドーシスとなる。
- 体内で無機酸やケト酸の上昇、これは産出の増加または排出の低下による、があればAGは上昇する代謝性アシドーシスとなる。
AGが増加する代謝性アシドーシス
- 腎不全
- 糖尿病性ケトアシドーシス
- 乳酸アシドーシス
が非常に有名である。救急の現場ではKUSSMAL及び、MUDPILESと覚えられる。これは糖尿病性ケトアシドーシス、尿毒症、サリチル酸中毒、敗血症、メタノール、アルコール中毒、アスピリン中毒、乳酸アシドーシスである。
高クロール性代謝性アシドーシス
AGが増加しない代謝性アシドーシスである。頻度としてはこちらの方が明らかに多い。
- 腸管からの重炭酸イオンの喪失
- 下痢や麻痺性イレウス
- 腎からの重炭酸イオンの喪失
- 尿細管性アシドーシス、呼吸性アルカローシスの代償、甲状腺機能亢進症
- 酸の負荷
- アミノ酸輸液
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 酸塩基平衡と輸液 (特集 小児の輸液ベーシックガイド)
- 廣瀬 幸恵,中西 昌平,金 鐘一,深川 雅史
- 日本透析医学会雑誌 43(11), 919-923, 2010
- … 代謝性アシドーシスの状態把握は透析患者においても重要であるが,透析患者についての酸塩基平衡やアニオンギャップ(AG)に関する文献は少なく,また生化学検査と比し,血液ガス分析を測定する機会は極めて少ない.血液ガス分析でしか得られない重炭酸イオン濃度(HCO3-)を通常測定する生化学検査のデータを用いて代謝性アシドーシスの状態が推測できれば臨床的に有用であると考え,維持透析患者83名のシャ …
- NAID 130000431833
- 高齢患者血漿内強イオン濃度較差及びアニオンギャップの解析
- 診療 小児腎臓病医からみた尿素サイクル異常症診療の留意点
Related Links
- アニオンギャップとは医学、生理学で用いられる指標のひとつであり、体内における有機 酸の寄与をあらわす指標である。正常値は12±2mEq/lである。 目次. 1 概念; 2 使い方; 3 AGが増加する代謝性アシドーシス; 4 高クロール性代謝性アシドーシス ...
- 2007年5月21日 ... 代謝性アシドーシスにはアニオンギャップの増加する場合と正常な場合があり、臨床上 その増減を知ることは重要である。代謝性アシドーシスでは血中HCO3-が減少するが、 その減少分がCl-で補充される場合はアニオン・ギャップは正常で ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 次の文を読み、19~21の問いに答えよ。
- 28歳の男性。意識障害のため救急車で搬入された。
- 現病歴 : 6年前、入社時の健康診断で高血糖と尿糖とを指摘されたが、症状がないため放置していた。半年前からロ渇と多尿とがあり、ジュースやスポーツドリンクをよく飲むようになっていた。最大体重27歳時94kgであった。1か月前から体重が急激に減少し、倦怠感が増強していた。今朝からぐったりとなり意識がもうろうとなった。
- 既往歴 : 子供のころから肥満であった。
- 家族歴 : 父と兄とが糖尿病である。
- 現症 : 傾眠傾向で、大声で呼ぶと開眼する。身長176cm、体重84kg。体温 36.2℃。呼吸数22/分。脈拍96/分、整。血圧132/88mmHg。眼瞼結膜に貧血を認めず、眼球結膜に黄疸を認めない。口唇と舌とは乾燥している。心雑音は聴取しない。肝は右肋骨弓下に2cm触知する。浮腫は認めない。アキレス腱反射は両側消失している。
- 検査所見 : 尿所見:比重1.036、蛋白(-)、糖4+、ケトン体3+。血液所見:赤血球480万、Hb14.6g/dl、Ht46%、白血球9,800、血小板22万。血清生化学所見:血糖820mg/dl、HbA1C14.6%(基準4.3~5.8)、総蛋白7.4g/dl、アルブミン3.8g/dl、尿素窒素34mg/dl、総コレステロール282mg/dl、トリグリセライド340mg/dl、AST32単位、ALT48単位。
[正答]
※国試ナビ4※ [100C018]←[国試_100]→[100C020]
[★]
- 次の文を読み、25~27の問いに答えよ。
- 51歳の男性。昨夜から呼吸困難がひどくなり来院した。
- 現病歴 : 32歳時の会社の健康診断で蛋白尿と血尿とを指摘されたが、症状がなく放置していた。42歳ころから高血圧を指摘され、時々降圧薬を服用していた。45歳ころから夜間尿を認めるようになった。5日前から全身倦怠感、食欲不振、悪心および頭痛が出現した。
- 現症 : 意識は清明。身長171cm、体重79kg。体温37.1℃。脈拍98/分、整。血圧166/92mmHg、眼瞼結膜は貧血様である。胸部で心尖拍動を鎖骨中線から4cm外側に触知し、両側下肺野にcoarse crackles(水泡音)を聴取する。肝を右肋骨弓下に1.5cm触知する。腹水を認める。下腿に著明な浮腫を認める。検査所見:尿所見:蛋白3+、糖(-)、潜血2+。血液所見:赤血球230万、Hb6.9g/dl、Ht21%、白血球7,000、血小板20万。血清生化学所見:総蛋白4.6g/dl、アルブミン2.1g/dl、尿素窒素125mg/dl、クレアチニン12.8mg/dl、Na129mEq/l、K6.6mEq/l、Cl100mEq/l、Ca7.3mg/dl、P6.0mg/dl、HCO3 -12mEq/l
- この患者でみられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [096C025]←[国試_096]→[096C027]
[★]
- 78歳の男性。意識障害のため家族に伴われて来院した。
- 現病歴:3日前から発熱と黄色痰を伴う咳とが続いていたが、病院に行くのを嫌がっていた。いつもの時間に起きてこないため家族が部屋に様子をみに行ったところ、呼びかけに対する反応が悪い患者を発見し、家族が乗用車で救急外来に連れてきた。
- 既往歴: 43歳から高血圧症で内服加療中。 55歳から糖尿病で内服加療中。
- 生活歴 :長男家族と同居。
- 現 症:意識レベルはJCSⅡ-10。体温39.0℃。心拍数118/分、整。血圧84/42mmHg。呼吸数28/分。 SpO2 90%(room air)。四肢末梢の皮膚は温かく、軽度の発赤を認める。刺激に対する上下肢の動きは良好である。左の背部下方にcoarse cracklesを聴取する。
- 検査所見:血液生化学所見: Na144mEq/l、 K4.5mEq/l、 Cl108mEq/l。動脈血ガス分析(自発呼吸、 room air) : pH7.21、 PaCO2 26Torr、 PaO2 60Torr、 HCO3-10mEq/l。
- この患者の酸塩基平衡状態の診断として正しいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106B058]←[国試_106]→[106B060]
[★]
- 48歳の女性。2か月前から両手のしびれが持続するため来院した。尿所見:
- pH7.6。血清生化学所見:Na145mEq/l、K2.7mEq/l、Cl115mEq/l。動脈血
- ガス分析(自発呼吸、room air):pH7.35、PaO2 98Torr、PaCO2 33Torr、HCO3- 18mEq/l。
- 基礎にある酸塩基平衡障害はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [100F040]←[国試_100]→[100F042]
[★]
[★]
[★]
- 英
- metabolic acidosis
- 関
- アシドーシス、酸塩基平衡異常
酸塩基平衡異常とその代償 SP.660
原因
a. アニオンギャップの開大するアシドーシス 有機酸の蓄積
- 代謝アシドーシスをきたしているとき、HCO3-によりH+を滴定するため、HCO3-が減少する。HCO3-の減少を、Cl-ではない陰イオンが増加することで生体内の電気的中性を保つような病態ではアニオンギャップが開大する。
- (病態の形成機序としては不揮発酸が増大した結果としてHCO3-が減少しているのだが)
- (1)腎不全時のリン酸、硫酸の増加、(2)低酸素血症時の乳酸の増加[ 乳酸アシドーシス ]、(3)ケトン体増加[ 糖尿病性ケトアシドーシス ]
b. アニオンギャップの開大しない代謝性アシドーシス プロトン過剰 or HCO3-喪失
- 水・電解質と酸塩基平衡 改訂第2版
- メカニズム:代謝アシドーシスでは、HCO3-によりH+を滴定されておりHCO3-が減少する。代償的にCl-が増加してアニオンジャップが正常になっている(Cl-の値に注意する)。
- (不揮発性酸の過剰産生ではなく、代謝的にHCO3-の過剰喪失、H+の過剰産生、H+の排泄障害が考えられる)
-
症状
検査
- 血液ガス:pH↓
- 尿検査:カルシウム排泄増加 ← 遠位尿細管でのカルシウム再吸収が抑制されるため。
治療
- 重炭酸ナトリウム投与:volume overload、イオン化カルシウムの減少によりテタニーに注意
- 後者は、急激にpHを上げると、アルブミンが負に帯電、イオン化カルシウムが急激に減少することでテタニーを生じる。このような場合にはグルコン酸カルシウムの投与を行う。(QB.D-354)
その他
- 代謝性アシドーシスでは、呼吸性代償が機能していれば、PaCO2=pHの小数点以下2桁、となる。pH 7.34の代謝性アシドーシスではPaCO2 34Torrが期待されるが、34を大きく上回る場合、呼吸性代償が機能していないと判断される。(出典不明)
[★]
- 英
- renal tubular acidosis, RTA
- 関
- 尿細管アシドーシス 、尿細管性アシドーシス
- 代謝性アシドーシス
- 遠位尿細管性アシドーシス、近位尿細管性アシドーシス、1型尿細管性アシドーシス、尿細管性アシドーシスI型
[show details]
概念
分類
- 遠位尿細管性アシドーシス RTA I :H+の排泄障害。代わりにK+が排泄。高度の血清K低下。尿pH≧5.5(酸性化できない)。尿路結石を生じやすい。
- 近位尿細管性アシドーシス RTA II:近位尿細管でのHCO3-再吸収障害による。遠位尿細管でK+が排泄され、低カリウム血症を生じる。尿pH≦5.5(酸性化ok)。
- 低アルドステロン症 RTA IV:アルドステロン欠乏やアルドステロン抵抗性と関連した病態。高カリウム血症を呈し代謝性アルカローシスとなる。HCO3-≧17mEq/L, pH≦5.3 (参考)
参考
- 1. [charged] Pathophysiology of renal tubular acidosis and the effect on potassium balance - uptodate [1]
[★]
- 英
- acid-base balance
- 関
- 酸塩基平衡、アニオンギャップ
[★]
- 英
- urine anion gap, urinary anion gap
- 同
- 尿アニオンギャップ
- 関
- アニオンギャップ
- 水・電解質と酸塩基平衡 改訂第2版 p.150
定義
- [Na+] + [K+] + [NH4+] + (その他陽イオン) = [Cl-] + (その他陰イオン)
- [Na+] + [K+] - [Cl-] = ( (その他陰イオン) - (その他陽イオン) ) - [NH4+]
- [Na+] + [K+] - [Cl-] ≡ uAG
- ∴ uAG = ( (その他陰イオン) - (その他陽イオン) ) - [NH4+] = 80 - [NH4+]
- 正常値は0
解釈
高値
- +25程度
- 尿中へのNH4+の分泌が低下している病態。ex. 遠位尿細管性アシドーシス
低値
- -30程度
- 尿中へのNH4+の分泌が亢進する病態。ex. 高Cl性代謝性アシドーシス。
[★]
尿中アニオンギャップ
[★]
- 英
- anion
- 関
- カチオン cation、陰イオン
語源