- 英
- extrapyramidal tract
- ラ
- tractus extrapyramidalis
- 関
- 錐体路、movement disorder、extrapyramidal system
- 錐体外路症候群は、大脳基底核から始まる錐体路以外の下行性伝達経路が傷害されることで生じると考えられてきた。
- 大脳基底核からの下行性の線維はわずかであり、ほとんどが大脳皮質に投射する
- 従って、錐体外路という概念は正しくない
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/12/20 10:44:20」(JST)
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運動系(うんどうけい、英: motor system)は、神経系のうち、全身の運動に関わる部分をいう。随意運動を司るとされる錐体路と、その他の錐体外路性運動系に大きく分けられる。ともに中枢は脳に含まれ、筋肉に直接作用して運動を起こすニューロンは脊髄前角の運動細胞(前角細胞)である(脳神経は除く)。運動系に含まれる一連の伝導路のうち、より中枢に近いことを上位、中枢から遠いことを下位と言う。狭義には前角細胞を下位運動ニューロン、それよりも上位の運動細胞をまとめて上位運動ニューロンと呼ぶ。いわゆる運動神経とは、運動系に属するニューロンを指す。
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目次
- 1 錐体路
- 2 錐体外路性運動系
- 2.1 「錐体外路」について
- 2.2 解剖
- 2.3 異常所見
- 3 参考文献
- 4 関連項目
- 5 外部リンク
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錐体路
延髄の錐体を通る経路は錐体路(pyramidal tract)または皮質脊髄路(corticospinal tract)と呼ばれ、随意運動の伝導路とされる。錐体路の中枢は大脳皮質のうち、中心前域と頭頂葉領域にあり、末梢は全身の骨格筋を支配して終わる。
解剖
錐体路をなす線維のうち、およそ3分の2は中心前域から、残りの3分の1は頭頂葉から起こる。それらの線維は大脳の下部に出て、中脳の大脳脚を作り、橋を貫いて錐体に至る。脳幹を通過する間に一部の線維は運動性脳神経の核に終わる。
- 動眼神経核、三叉神経運動核、顔面神経核の下部(額の筋を支配する)、疑核(迷走神経の運動核)には両側からの線維が入る。
- 外転神経核、顔面神経核の上部(額以外の顔面筋を支配する)、舌下神経核には対側からの線維が入る。
- 滑車神経核には同側からの線維が入る。
錐体を通過した線維の大部分は、錐体交叉と呼ばれる構造を作って対側の脊髄側索に入る。ただし、一部の線維は交叉しないで同側の脊髄前索を下る。交叉しなかった線維も、脊髄を出る前に白交連と呼ばれる部分を通って対側に行くので、錐体より中枢側から見れば、錐体交叉で交叉した線維と同様、対側を支配することになる。交叉した線維も交叉しなかった線維も、直接または介在ニューロンを挟んで脊髄前角の運動細胞に終わる。そこから出た線維は脊髄の前根に出て脊髄神経となり、四肢や体幹の骨格筋を支配する。
異常所見
錐体路のどこかに異常が生じると、錐体路徴候と呼ばれる身体所見が生じる。錐体路徴候とは次の4つである。
- 痙性麻痺
- 腱反射の亢進
- 病的反射(特にバビンスキー反射)の出現
- 腹壁反射の消失または減弱
錐体外路性運動系
運動系には錐体路に属しない経路もある。それらを錐体外路性運動系と総称する。錐体外路系などと呼ぶこともある。錐体外路性運動系は、随意運動が起こるとき、全身の筋をバランスよく動かして、運動を円滑にする。たとえば歩くとき、随意運動は足に起こっているが、「無意識に」腕を振ったり体幹をひねったりしてバランスをとる運動も同時に起こっている。このような調節は錐体外路性運動系が担う。
「錐体外路」について
錐体路が解剖学的な実体であるのに対して、「錐体外路」という神経路は解剖学的には実在しない。このことから、今日では医学臨床上の「錐体外路性疾患」という表現を除き、錐体外路という用語は不適切であるとして使用頻度が減りつつある。このような問題が生じたのは、錐体路に対立するものとして、大脳基底核から脊髄へ下行性の投射(つまり錐体外路)があると、以前考えられていた名残である。実際の「錐体外路性疾患」は大脳基底核の病変によって引き起こされるものであっても、大脳基底核からの出力の多くは大脳新皮質運動野を介して出力されることに留意するべきである。
解剖
錐体外路性運動系は脳のさまざまな部分が協調して統合しているので、どこが中枢かは必ずしも明確でない。特に重要と考えられている部分は、線条体、淡蒼球、中脳の赤核と黒質、そして小脳である。これらを含む数多くの経路が存在し、それらはニューロン環を形成して互いに連絡している。
上の核群に向かう線維は、おもに小脳から出て上小脳脚を通ってくる。また、大脳皮質からも若干の線維がこれらの核に入っている。意識に関わるとされる大脳皮質を錐体外路系に含めるかどうかには定説がない。
錐体外路性運動系の遠心路も、求心路と同様、さまざまである。もっとも重要とされるのが中心被蓋路である。これは線条体、淡蒼球、赤核、網様体、中脳水道周囲灰白質などに始まり、脳幹の被蓋(背側部分)を通って延髄のオリーブに入る経路である。オリーブから出た線維は下小脳脚を通って小脳に入り(オリーブ小脳路)、網様体などに出力される。網様体、赤核、前庭神経核などから出た線維が脊髄を下り、これらが直接には全身の運動を制御する。
異常所見
錐体外路性運動系の障害は、典型的には不随意運動を呈する。すなわち振戦、舞踏様運動、バリズム、アテトーゼ、ミオクローヌスなどである。ジストニアと呼ばれる姿勢の異常も錐体外路性運動系の障害による場合が多く、厳密には不随意運動ではないがやはり筋収縮の制御が乱れる現象である。錐体路障害では不随意運動が起こらないので、これは鑑別の手がかりになる。また錐体路障害で見られる腱反射の亢進、特にバビンスキー反射が、錐体外路性運動系の障害では現れない。
参考文献
- Werner Kahle、長島聖司・岩堀修明訳『分冊 解剖学アトラスⅢ』第5版(文光堂、ISBN 4-8306-0026-8、日本語版2003年)
- 田崎義昭・斎藤佳雄、坂井文彦改訂『ベッドサイドの神経の診かた』第16版(南山堂、ISBN 4-525-24716-9、2004年)
関連項目
- パーキンソン病
- 筋萎縮性脊髄側索硬化症
- 錐体外路障害
- 錐体外路症状
外部リンク
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- Premium Edition 知っていればピンとくる! 副作用症状のメカニズム(第14回)運動失調・錐体外路障害ほか めまい、手のふるえ、表情に着目
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- 日経ドラッグインフォメーションpremium (169), PE5-7, 2011-11
- 1983年、神戸女子薬科大学卒業。滋賀医科大学外科学第2講座勤務を経て、名城大学薬学部専攻科に入学。87年に同大学薬学部医薬情報センターに入職、同学部医薬品情報学講師などを経て、2008年から現職。症例 78歳女性。
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- 3D-SSPを用いたSPECTによるパーキンソン症候群の鑑別診断 (脳疾患画像読影のコツとpitfall)
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- Monthly book medical rehabilitation (132), 169-175, 2011-06
- NAID 40018889155
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- 次の文を読み、7~9の問いに答えよ。
- 65歳の女性。歩きにくさと手足のふるえとを訴えて来院した。
- 現病歴 : 4年前からじっとしているときに左手がふるえることに気付いた。同じころから歩くのが遅くなり、話すときの声が小声で、メモを書くときに字が小さくなることを自覚するようになった。これらの症状は徐々に増悪する傾向にあり、最近左手だけでなく、右手と両足もじっとしているときにふるえるようになった。患者の写真を以下に示す。
- 既往歴・家族歴 : 特記すべきことはない。
- 現症 : 意識は清明。身長165cm、体重52kg。体温36.2℃。臥位で脈拍64/分、整。血圧120/80mmHg。顔面の表情は乏しい。眼瞼結膜と眼球結膜とに貧血と黄疸とを認めない。心雑音はない。呼吸音は清である。腹部は平坦で、肝・脾を触知せず、圧痛と抵抗とを認めない。構音障害、頚部と四肢との筋緊張異常および起立・歩行障害を認める。
- 検査所見 : 尿所見:蛋白(-)、糖(-)。
- 血液所見:赤血球410万、Hb13.0g/dl、Ht39%、白血球6,500、血小板25万。
- 血清生化学所見:総蛋白6.9g/dl、アルブミン4.8g/dl、尿素窒素9.2mg/dl、クレアチニン0.9mg/dl、AST18単位(基準40以下)、ALT14単位(基準35以下)、LDH260単位(基準176~353)。
[正答]
※国試ナビ4※ [098C006]←[国試_098]→[098C008]
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- 英
- descending tract (B)
- 関
- 伝導路、上行性伝導路
下行性伝導路
- 皮質延髄路
- 皮質脊髄路
- 前皮質脊髄路
- 外側皮質脊髄路
- 皮質赤核脊髄路
- 皮質網様体脊髄路
- 視蓋延髄路 視蓋脊髄路
- 前庭脊髄路
- オリーブ脊髄路
外側路と内側路
SP.363
伝導路 (TP.101)
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- 英
- pyramidal tract
- ラ
- tractus pyramidalis
- 関
- 錐体外路、下行性伝導路、錐体路徴候
- 皮質脊髄路、corticospinal tract、皮質核路 tractus corticonuclearis
- 大脳の運動野にあるBetzの巨大錐体細胞などから起こり、内包の膝と後脚の前半部を通過し、大脳脚の中央1/3を通り、胸腹側部を経て脊髄腹側に錐体として出現。さらに下降する際は大部分の線維は錐体交叉で対側に写り脊髄側索の背側半を外側皮質脊髄路となって下降していく。
皮質核路
皮質脊髄路
- 錐体交叉→側索 (外側皮質脊髄路) 対側
- →→→→→前索 (前皮質脊髄路) 同側
[★]
- 英
- globus pallidus (KH), pallidum
- 同
- レンズ核淡蒼部 pars pallida nuclei lentiformis
- 関
- レンズ核、被殻、内包、錐体外路、線条体
解剖 (KL.753)
神経連絡 (KL.754)
入力線維
出力線維
-globus pallidus
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- 英
- red nucleus (B), red nuclei
- ラ
- nucleus ruber
- 関
- 不随意運動、錐体外路
- 図:KA.102,117
- 中脳の上部に位置する神経核
- 核は直径約5mmの卵円系
- 錐体外路の中継核
入力
出力
機能
臨床関連
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- 英
- extrapyramidal syndrome, extrapyramidal tract syndrome (SP)
- 関
- 大脳基底核疾患
- 大脳基底核の障害(=大脳基底核疾患)によって生じる症状群
- 筋緊張の異常
- 不随意運動
- 麻痺を伴わない運動減少
- 注意:錐体外路症候群だからと言って、錐体路とか錐体外路のどちらかが関係しなくなることはない。両方とも関わっている。
[★]
- 英
- extrapyramidal rigidity
- 関
- 筋強剛、項部硬直、歯車様固縮、ゲーゲンハルテン
[★]
- 英
- extrapyramidal symptom
- 関
- 錐体外路徴候 extrapyramidal sign
[★]
側頭骨の錐体
- 英
- pyramid (KH)
- ラ
- pyramis
延髄の錐体、延髄錐体
- 英
- pyramis
- 図:N.108
- 錐体の高まりの下層に縦走する白い神経線維の束が存在し、これが錐体束である。
- 延髄の前正中裂と前外側溝に挟まれた高まり
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
- 英
- cone, cone cell, retinal cone
- ラ
- conus
- 同
- 錐状体
- 関
- 網膜、桿状体 桿体 杆体
[★]
- 英
- tract
- ラ
- tractus