出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/07/07 14:22:53」(JST)
炭酸水素ナトリウム | |
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IUPAC名
炭酸水素ナトリウム |
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別称
重炭酸ナトリウム、重炭酸ソーダ、重曹[1]、ビカ[1]
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識別情報 | |
CAS登録番号 | 144-55-8 |
PubChem | 516892 |
ChemSpider | 8609 |
UNII | 8MDF5V39QO |
EINECS | 205-633-8 |
DrugBank | DB01390 |
KEGG | C12603 |
MeSH | Sodium+bicarbonate |
ChEBI | CHEBI:32139 |
ChEMBL | CHEMBL1353 |
RTECS番号 | VZ0950000 |
ATC分類 | B05CB04,B05XA02 |
バイルシュタイン | 4153970 |
SMILES
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InChI
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特性 | |
化学式 | CHNaO3 |
モル質量 | 84.01 g mol−1 |
精密質量 | 83.982338573 g mol−1 |
外観 | 白色結晶 |
密度 | 2.20 g cm−3[2] |
融点 |
50 °C, 323 K, 122 °F (分解) |
水への溶解度 | 103 g/L;[2] 693 g/L (0 °C);[3] 236 g/L (100 °C)[3] |
log POW | -0.82 |
酸解離定数 pKa | 10.329[4]
6.351 (炭酸)[4] |
屈折率 (nD) | 1.3344 |
構造 | |
結晶構造 | 単斜晶系 |
薬理学 | |
投与経路 | 静脈注射, 経口 |
危険性 | |
MSDS | External MSDS |
主な危険性 | 激しい目のかゆみ |
NFPA 704 |
0
1
0
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半数致死量 LD50 | 4.22 g kg− |
関連する物質 | |
その他の陰イオン | 炭酸ナトリウム |
その他の陽イオン | 炭酸水素アンモニウム 炭酸水素カリウム |
関連物質 | 硫酸水素ナトリウム リン酸水素ナトリウム |
特記なき場合、データは常温(25 °C)・常圧(100 kPa)におけるものである。 |
炭酸水素ナトリウム(たんさんすいそナトリウム、英: Sodium Hydrogen Carbonate)、別名重炭酸ナトリウム(じゅうたんさんナトリウム、Sodium Bicarbonate。重炭酸ソーダ、略して重曹とも)はナトリウムの炭酸水素塩である。常温で白色の粉末状である。pHはアルカリ性を示すものの、フェノールフタレインを加えても変色しない程度の弱い塩基性である。水には少し溶解し、メタノールにも僅かに溶解するものの、エタノールには不溶。具体的には、水 (0 °C) 100 gにつき6.9 g、水 (20 °C) 100 gにつき9.6 g、メタノール (25 °C) 100 gにつき0.8 g溶解する。
目次
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塩化ナトリウム溶液の電気分解で得られた水酸化ナトリウム溶液に二酸化炭素を反応させて製造する。
工業的にはソルベー法により多量に製造される。これは炭酸水素ナトリウムの水への溶解度が比較的低いため沈殿することによる複分解反応である。
また、天然の鉱物を精製しても得られる。日本では旭硝子や東ソーなどが生産している。
ソルベー法の過程で得られた炭酸水素ナトリウムは、焼成することにより炭酸ナトリウムの原料となる。
炭酸水素ナトリウムは両性の化合物で、炭酸の酸解離定数がpKa1 = 6.3、pKa2 = 10.3であるため水溶液はpH = 8.3程度の弱い塩基性を示す。
酸と反応して炭酸と塩を与え、炭酸は二酸化炭素と水に分解する。
酢酸と反応すると酢酸ナトリウムを与える。
塩基と反応して炭酸ナトリウムを与える。
加熱によって炭酸ナトリウム、二酸化炭素、水の3つの物質に分解する。 粉末は270 °C で分解。水溶液は放置しておいても徐々に分解してゆくが65 °C以上で急速に分解する。 なお常温・常圧であっても空気中には水分が含まれるため、放置しておくと少しずつ分解してゆく。
粉末化し、流動性付与剤として無水ケイ酸やホワイトカーボンを加え、防湿剤として金属石鹸やシリコーンオイルをコーティングしたものが消火剤として用いられる。消防法施行規則第21条の規定による第一種粉末消火薬剤であり、B火災(油火災)とC火災(電気火災)に適応していることから、BC粉末消火剤とも呼ばれる。 熱分解によって生成されたナトリウムイオンと燃焼反応で生じる遊離基(OH・、H・)が結合することで燃焼の継続を抑制するのが粉末消火薬剤の消火原理である。安価な事から、化学消防車や消防艇の粉末消火装置に用いられる。
また、酸と反応し二酸化炭素を発生するので、泡消火器、酸アルカリ消火器にも用いられる。 鉛蓄電池の電解液(希硫酸)の中和剤としても用いられる。
食品添加物として用いられる。加熱によって分解し二酸化炭素を発生する性質から、ベーキングパウダーなどとして調理に使われる。口中で炭酸ガスを発生させるソーダ飴などには粉末で封入される。ワラビなどの山菜のアク抜き、松の実などの臭み取り、豆を早く煮るため、肉を柔らかくする下ごしらえ、グレープフルーツや夏みかんの強烈な酸味を中和させるために直接かけたり、冷凍エビの食感改善などにも使うことができる。さらには、マクビティに代表されるダイジェスティブビスケット類には、重曹が多く使われている。 このように食用ともされることから安全性が高いと見られている。 しかし大量に摂取するとアルカローシスなどの問題を引き起こす恐れがあるとされているので、特に幼児が誤食しないように注意する必要はある。合わせて、体重1 kg当り約1.26 gで呼吸器に異常をきたすとのデータ[5]もある(ただし、通常の場合これほどの量を摂取することは考え難い)。
炭酸水素ナトリウムとクエン酸を混ぜると炭酸ガスが発生し炭酸水となるので飲料としても用いられ、レモンを加えレモンソーダにしたり、砂糖を混ぜサイダーを作るということも可能である。
研磨効果、鹸化(乳化)効果から、洗剤や洗剤の補助として、ティーカップなどの茶渋落とし、換気扇などの固着した油汚れ・焦げ落としに使用されたりする。重曹は、水質汚染で問題とされるBOD・COD値がなく、環境ホルモンも含まれていないため環境にやさしいとされる。また食品添加物としても使用できるくらい人体に対して安全であることも売りとなっている。
ただし石けんなどの界面活性剤と比べると軽い汚れしか落ちないという意見もある。
洗濯機での使用を禁止しているメーカーもある(重曹が洗濯機内部で詰まり、水漏れや故障の恐れがあるため)。[6]
酸性の臭いに対する脱臭効果があり、肉・魚臭さを消したり、靴箱の脱臭剤などにも使用できる。
最近では歯磨きやうがいなどにも使用されることがある。
天然の温泉に含まれる場合は重曹泉となり、これを模した入浴剤もある。炭酸水素ナトリウムは多くの入浴剤に配合されている。
医薬品としては、胃酸過多に対して制酸剤として使われる。ただし胃液には塩酸が含まれているために、炭酸水素ナトリウムは急速に分解し二酸化炭素の気泡が発生する。この気泡が胃を刺激し、さらなる胃液の分泌を促進することが知られている。また点滴剤はアシドーシスの対症療法に用いられる。ただし近位尿細管性アシドーシスに対しては、点滴ではなく経口的に投与し続けることでアシドーシスの補正を行う。なお投与がナトリウムの過剰摂取につながり高ナトリウム血症になることが稀にある。
酸性の土壌の中和に用いれば、アルカリ性の土壌を好む植物の生育がよくなる。農作物や人畜及び水産動植物に害を及ぼす恐れがないことが明らかなものとして、安全性の認められた特定農薬(特定防除資材)の1つであり、有機栽培でもウドンコ病等を防除するために使用される。農薬としてハーモメイトが登録され、一般に販売されている。ただし、炭酸水素ナトリウムは葉を褐変させる薬害が起こりやすいため、より薄い濃度で高い殺菌効果を持つ炭酸水素カリウムの方が多く用いられる[1]。
中学理科の「化合物の分解」でよく用いられ、生成する二酸化炭素を石灰水の白濁から、水を塩化コバルト紙の赤変から確認する。この実験を行う際、発生した水が加熱部に流れて試験管が割れるのを防ぐために、加熱する試験管の口を加熱部よりやや下向きにしておく必要がある。また、実験終了の際、加熱をやめる前に加熱している試験管から気体採取用にガラス管をつないであり、その先端が水中にある場合は、ガラス管を水中から出しておく必要がある。これは、加熱をやめ、試験管内部の空気が冷え、気圧が下がった際、ガラス管を通じて水が逆流し、試験管が破損することを防ぐためである。
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