出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/04/18 11:25:14」(JST)
多価不飽和脂肪酸(たかふほうわしぼうさん、英:polyunsaturated fatty acid, PUFA)とは、不飽和結合を2つ以上持つ不飽和脂肪酸のことである。高度不飽和脂肪酸(こうどふほうわしぼうさん)、多不飽和脂肪酸、ポリエン脂肪酸ともいう。ω-6脂肪酸のリノール酸、γ-リノレン酸 、アラキドン酸、ω-3脂肪酸のα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などが代表的な多価不飽和脂肪酸である。ω-3脂肪酸もω-6脂肪酸も動物には合成できないため必須脂肪酸となっている。
多価不飽和脂肪酸で植物油に多く見られるのはω-6脂肪酸のリノール酸で、一部の植物油にはω-3脂肪酸のα-リノレン酸も見られる。植物油は、多価不飽和脂肪酸の代表的な摂取源である。
ヒトを含めた動物の体内では原料となるω-3脂肪酸やω-6脂肪酸から脂肪酸デサチュラーゼ等の酵素により脂肪酸の不飽和結合を増やしたり、炭素2個伸張してより不飽和度の高い多価不飽和脂肪酸を合成することができる。
細胞膜は流動性を持ち、脂質や膜タンパクは動いている。この流動性は膜の構成物質で決まる。たとえば、リン脂質を構成する脂肪酸の不飽和度(二重結合の数)に影響され、二重結合を持つ炭化水素が多いほど(二重結合があるとその部分で炭化水素が折れ曲がるので)リン脂質の相互作用が低くなり流動性は増すことになる。また、不飽和度が高まるほど相互作用が低くなり脂肪酸の融点は低くなる。
ω-3脂肪酸の多価不飽和脂肪酸であるDHAは、精液や脳、網膜のリン脂質に含まれる脂肪酸の主要な成分である。DHAの摂取は血中の中性脂肪(トリグリセライド)量を減少させ、心臓病の危険を低減する。
ω-6脂肪酸の多価不飽和脂肪酸は、ヒトなどの哺乳類では、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンなどの生理活性物質の合成前駆体となる。
必須脂肪酸の欠乏の過酷な条件下では、哺乳類はオレイン酸を伸長・非飽和にし、ω-9脂肪酸の多価不飽和脂肪酸であるミード酸(20:3, n−9)を作る[2]。また、菜食主義者においても狭い範囲で起こる[3]。
厚生労働省によると、脂質所要割合は、脂肪エネルギー比率で成人で20-25%の範囲が望ましい。飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の望ましい摂取割合は、おおむね3:4:3であり、ω-6脂肪酸とω-3脂肪酸の比は、健康人では4:1程度である[4]。
下の表は、代表的なω-3脂肪酸の多価不飽和脂肪酸の一覧である。
慣用名 | 数値表現 | 組織名 |
---|---|---|
α-リノレン酸 (ALA) | 18:3 (n−3) | all-cis-9,12,15-オクタデカトリエン酸 |
ステアリドン酸 (STD) | 18:4 (n−3) | all-cis-6,9,12,15-オクタデカテトラエン酸 |
エイコサテトラエン酸 (ETA) | 20:4 (n−3) | all-cis-8,11,14,17-[エイコサテトラエン酸 |
エイコサペンタエン酸 (EPA) | 20:5 (n−3) | all-cis-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸 |
ドコサペンタエン酸 (DPA) クルパノドン酸 |
22:5 (n−3) | all-cis-7,10,13,16,19-ドコサペンタエン酸 |
ドコサヘキサエン酸 (DHA) | 22:6 (n−3) | all-cis-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸 |
下の表は、代表的なω-6脂肪酸の多価不飽和脂肪酸の一覧である。
慣用名 | 数値表現 | 組織名 |
---|---|---|
リノール酸 | 18:2 (n−6) | 9,12-オクタデカジエン酸 |
γ-リノレン酸 | 18:3 (n−6) | 6,9,12-オクタデカトリエン酸 |
ジホモ-γ-リノレン酸 | 20:3 (n−6) | 8,11,14-エイコサトリエン酸 |
アラキドン酸 | 20:4 (n−6) | 5,8,11,14-エイコサテトラエン酸 |
下の表は、代表的なω-9脂肪酸の多価不飽和脂肪酸である。
慣用名 | 数値表現 | 組織名 |
---|---|---|
ミード酸 | 20:3 (n−9) | 5,8,11-エイコサトリエン酸 |
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Cho | TG | LDL-C↓ | HDL-C↑ | TG↓ | 副作用 | |
HMG-CoA還元酵素阻害薬 | Choの合成阻害 →LDL受容体増加 |
○ | ○ | 発疹、胃不快感、肝障害、 筋肉痛、筋脱力、横紋筋融解症 | ||
フィブラート系薬物 | VLDL産生抑制 →VLDL,IDL異化促進 |
○ | ○ | ○ | 単独で、横紋筋融解症 腹痛、下痢、嘔吐などの腹部症状、肝障害 | |
ニコチン酸系薬 | VLDL分泌抑制 | ○ | ○ | ○ | 皮膚、特に顔面および上半身の紅潮、掻痒感 肝障害、胃腸障害、耐糖能の悪化、尿酸値上昇 | |
陰イオン交換樹脂系薬物 | 胆汁酸再吸収抑制 | ○ | 腹部膨満感、便秘、肝障害 | |||
ビフェニル化合物 | Choの胆汁排泄促進 | ○ | 肝障害、胃腸障害、耐糖能の悪化、尿酸値上昇発疹 まれにQT延長にともなう不整脈 | |||
EPA製剤 | VLDL産生抑制 →VLDL異化促進 |
○ | 胃部不快感、腹痛、下痢などの腹部症状 肝障害、出血傾向 |
分類 | 脂質代謝への影響 | 副作用 | ||
LDL-C | TG | HDL-C | ||
スタチン | ↓↓↓ | ↓ | ↑ | 横紋筋融解症、筋肉痛や脱力感などミオパチー様症状、肝障害、認知機能障害、空腹時血糖値およびHbA1c値の上昇、間質性肺炎など |
陰イオン交換樹脂 | ↓↓ | ↑ | ↑ | 消化器症状、脂溶性ビタミンの吸収障害。ジギタリス、ワルファリンとの併用ではそれら薬剤の薬効が減弱しうる。 |
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬 | ↓↓ | ↓ | ↑ | 消化器症状、肝障害、CK上昇 |
フィブラート | ↓ | ↓↓↓ | ↑↑ | 横紋筋融解症、肝障害など |
ニコチン酸誘導体 | ↓ | ↓↓ | ↑ | 顔面潮紅や頭痛など(日本人では多いといわれている。少量から開始して漸増したり、アスピリンを併用することで副作用は回避可能なことがある) |
プロブコール | ↓ | ー | ↓↓ | 可逆性のQT延長や消化器症状など |
多価不飽和脂肪酸 | ー | ↓ | ー | 消化器症状、出血傾向や発疹など |
↓↓↓:≦-25% ↓↓:-25%< ≦-20% ↓:-20%< ≦-10% ー:-10%< ≦10% ↑:10%< ≦20% ↑↑:20%< ≦30% |
炭素数 | 不飽和結合 | 融点 | |||
ラミバス | |||||
ラウリン酸 | 12 | 0 | C12飽和脂肪酸 | 44.2 | |
ミリスチン酸 | 14 | 0 | C14飽和脂肪酸 | 53.9 | |
パルミチン酸 | 16 | 0 | C16飽和脂肪酸 | ||
ステアリン酸 | 18 | 0 | C18飽和脂肪酸 | ||
バスオリレン | |||||
パルミチン酸 | 16 | 0 | 63.1 | ||
ステアリン酸 | 18 | 0 | 69.6 | ||
オレイン酸 | 18 | 1 | n-9 | 動物油 | 14.0 |
リノール酸 | 18 | 2 | n-6 | 植物油 | -5.0 |
α-リノレン酸 | 18 | 3 | n-3 | シソ油 | -11.3 |
パルミトレイン酸 | 16 | 1 | 0.5 | ||
アラキドン酸 | 20 | 4 | -49.5 |
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