肥満細胞
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/10/27 09:51:34」(JST)
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肥満細胞(ひまんさいぼう)は哺乳類の粘膜下組織や結合組織などに存在する造血幹細胞由来の細胞。ランゲルハンス細胞とともに炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を持つ。肥満細胞という名前ではあるが肥満とは関係が無く、膨れた様が肥満を想起させることからついた名前である。また、顆粒細胞(mast cell / マスト細胞)とも呼ばれる。青色の塩基性色素での染色では、異調染色性を示し、赤紫色に染まる。
ヒトの肥満細胞にはいくつかの異なるタイプがあるとされ、たとえば社会問題となっている花粉症に代表されるアレルギー性鼻炎の発症部位である鼻粘膜においては、粘膜型と統合織型の肥満細胞があるとされる。これらのうちその発症に関わるものは粘膜型である。いわゆる細胞レベルでの各種実験において統合織型の肥満細胞が用いられることがあるが、反応性などが異なるため注意が必要である。
肥満細胞はIgEを介したI型アレルギー反応の主体である。肥満細胞の中にはヒスタミンをはじめとした各種化学伝達物質(ケミカルメディエーター)があり、細胞表面に結合したIgEに抗原が結合しその架橋が成立すると、それがトリガーとなって細胞膜酵素の活性化がうながされ、結果的に内容物である特異顆粒、すなわちヒスタミンなどが放出される(脱顆粒)。また、細胞膜酵素の活性化は、アラキドン酸の生成と代謝を亢進させ(アラキドン酸カスケード)、代謝物であるロイコトリエン、血小板活性化因子(PAF)、プロスタグランジン、トロンボキサンA2などを細胞膜から遊離する。
こうした肥満細胞から遊離されたケミカルメディエーターのうち、ヒスタミンやロイコトリエンC4などは気管支平滑筋収縮作用、血管透過性亢進作用、粘液分泌作用などを有し、アレルギーにおける即時型反応を引き起こす。いっぽう、血小板活性化因子やロイコトリエンB4などは遊走因子として好酸球や好中球などの炎症細胞を反応局所に呼び寄せる。これはアレルギーの遅延層反応(アレルギー性炎症)を引き起こす。また、肥満細胞は樹状細胞の移動に関与することも報告されている。
関連項目
- 組織学
- 細胞生物学
- 免疫学
- 細胞
- アレルギー/免疫
骨髄系統 - 血液 (白血球 · 赤血球 · 血小板) |
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造血幹
細胞
HSC |
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骨髄芽球 → 前骨髄球 → 骨髄球 → 後骨髄球 → 桿状核球 → 分葉核球(好中球)
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マクロファージ
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組織球 - クッパー細胞 - 肺胞マクロファージ - 小膠細胞 - 破骨細胞 - 類上皮細胞 - 巨細胞 (ラングハンス巨細胞、 異物巨細胞、 トートン型巨細胞)
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CFU-DL
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樹状細胞 - ランゲルハンス細胞
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共通
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骨髄性単球
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CFU-Baso
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骨髄芽球 → 好塩基性前骨髄球 → 好塩基性骨髄球 → 好塩基性後骨髄球 → (好塩基球)
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CFU-Eos
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骨髄芽球 → 好酸性前骨髄球 → 好酸性骨髄球 → 好酸性後骨髄球 → 好酸性桿状核球 → 好酸性分葉核球 (好酸球)
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MEP
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CFU-Meg
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巨核芽球 · 巨核球 · 血小板
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CFU-E
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赤芽球 · 網赤血球
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CFU-Mast
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肥満細胞前駆体
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非細胞 |
血漿
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Japanese Journal
- ヒトマスト細胞活性化におけるPAFおよび神経ペプチドの役割 (特集 アナフィラキシーショック)
- NLRP3インフラマソームを介したマスト細胞の活性化 (特集 アナフィラキシーショック)
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- 当サイトの掲載情報の正確性については万全を期しておりますが、本会は利用者 が当サイトの情報を用いて行う一切の行為について何ら責任を負うものではありません。 マスト細胞
- マスト細胞の成熟と機能 マスト細胞の分化 マスト細胞は骨髄の造血幹細胞に由来しますが、循環血中にはマスト細胞の特徴を有する細胞は検出されません。そのことから、マスト細胞は前駆細胞として骨髄を遊離し、組織に浸潤後 ...
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★リンクテーブル★
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- 次の文を読み、37、38の問いに答えよ。
- 57歳の男性。発作性の喘鳴を主訴に来院した。
- 現病歴 : 1週前から微熱、咳、痰および発作性の喘鳴が出現し、市販の感冒薬を服用したが改善せず、呼吸困難が増強した。
- 既往歴 : 2年前から降圧薬を服用している。喫煙歴はない。
- 現症 : 意識は清明。体温37.0℃。脈拍92/分、整。心音と呼吸音とに異常を認めない。
- 検査所見 : 血液所見:赤血球441万、Hb 15.0g/dl、Ht 45%、白血球 10,200、血小板 18万。血液生化学所見に異常を認めない。免疫学所見:CRP 1.2mg/dl。ツベルクリン反応陽性。胸部エックス線写真と喀痰のMay-
- Giemsa染色標本とを以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [103H036]←[国試_103]→[103H038]
[★]
- 48歳の女性。主婦。咳と息切れとを主訴に8月中旬に来院した。3週前から乾性の咳と階段を上る際の息切れとが出現した。近医で抗菌薬の投与を受けたが改善せず、さらに症状は悪化している。喫煙歴はない。白血球 5,200(好中球52%、好酸球 3%、好塩基球 1%、単球6%、リンパ球 38%)。IgG 2,300mg/dl(基準960~1,960)。ツベルクリン反応陰性。
- この検査所見に直接関与する細胞はどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [103E044]←[国試_103]→[103E046]
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[正答]
※国試ナビ4※ [101B025]←[国試_101]→[101B027]
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[正答]
※国試ナビ4※ [104E007]←[国試_104]→[104E009]
[★]
- 英
- mast cell, mastocyte
- 同
- マスト細胞
- 関
- ヒスタミン、好塩基球
形状
- 20-30μm (HIS.101)
- 細胞質に0.3-0.8μmの顆粒を含む
特徴
- ヘパリン(or コンドロイチン硫酸)、
- ヒスタミン、
- 中性プロテアーゼ(トリプターゼ、キマーゼ、カルボキシペプチダーゼ)
- アリルスルファターゼ
- その他
- β-グルクロニダーゼ
- キニノゲナーゼ
- ペルオキシダーゼ
- スーパーオキシドジスムターゼ
- 好酸球走化因子
- 好中球走化因子
由来
染色像
臨床関連
- 炎症(I型アレルギー)の引き金を引く細胞。喘息患者の気道平滑筋層に存在(健常人では存在しない(HIM. 1598)
[★]
- 英
- tissue basophil
- 関
- マスト細胞
[★]
- 英
- indolent systemic mastocytosis
- 関
- 無痛性全身性肥満細胞症
[★]
- 英
- mastocytic leukemia
- 関
- 肥満細胞性白血病
[★]
- 英
- mast-cell sarcoma
- 関
- 肥満細胞肉腫
[★]
- 英
- trout
- 関
- チャー、イワナ属
[★]
- 英
- must
- 関
- ~ねばならない
[★]
- 英
- cell
- ラ
- cellula
- 関