- 英
- angiogenesis
- 同
- 二次血管発生
- 関
- 脈管形成 vasculogenesis
==血管新生促進
血管新生抑制
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/11/18 23:08:48」(JST)
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血管新生(けっかんしんせい、英: Angiogenesis)は、既存の血管から新たな血管枝が分岐して血管網を構築する生理的現象である。広義では胚形成期において新たに血管が作られる脈管形成(英: Vasculogenesis)も含めて血管新生と呼ぶが、厳密にはこれらは区別される(本稿では狭義の血管新生について述べる)。創傷治癒の過程では血管新生が生じることが知られているほか、血管新生は慢性炎症や悪性腫瘍の進展においても重要な役割を担っている。
造血幹細胞(Hemangioblast)から分化した血管内皮細胞は新しい血管の形成に関与する。この血管形成の初期の過程が脈管形成である。一方、既存の血管から新たな血管が出芽して血管網が再構築される過程を血管新生と呼ぶ。
目次
- 1 概要
- 2 生理的血管新生
- 3 悪性腫瘍における血管新生
- 4 血管新生に関与する因子
- 5 血管新生の抑制
- 6 出典
- 7 参考文献
概要
血管新生の過程はいくつかのステージに分けられる。血管新生を促進する作用を持った増殖因子である血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor、VEGF)は癌細胞などにより産生されることが知られている。VEGFは内皮細胞細胞膜上に発現している血管内皮細胞増殖因子受容体に結合し、この受容体の刺激により活性化された内皮細胞はタンパク質分解酵素の一種であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を放出する。MMPは血管の基底膜及び細胞外マトリックスを分解し、血管透過性を亢進させる。さらに内皮細胞の細胞外マトリックスへの遊走及び増殖により新しく直鎖状の血管が作られ、その周囲は平滑筋細胞や血管壁細胞により支持されて安定した血管となる。
生理的血管新生
正常酸素圧(図中赤枠)ではHIF-1αは水酸化を受けることによりユビキチン化酵素であるpVHLにより認識され、プロテアソーム依存的な分解を受ける。一方、低酸素下(図中緑枠)ではHIF-1αの分解は生じない。HIF-1αは核内移行した後に転写因子として働き、VEGF等の遺伝子の転写活性化を引き起こす。
内皮細胞は非常に寿命が長い細胞であり、成体において内皮細胞の細胞分裂はほとんど生じないが一部の生理的現象において血管新生を生じる場合がある。具体的には創傷治癒の過程や子宮内膜等が挙げられる。
悪性腫瘍における血管新生
癌の進展はイニシエーション(第1段階、不死化)、プロモーション(第2段階、増殖)、プログレッション(第3段階、転移及び浸潤)の過程を経て行われる。これらのうち、プログレッションの段階に血管新生が関与している。癌の病巣の特徴として栄養不足、細胞外の低pHそして血流が不足することによる酸素不足(低酸素)状態が挙げられる。癌細胞はこのハードな条件化において新たに血管網を形成することにより病巣への血流を増加し低酸素状態を脱しようとする。血流の増加は転移経路の確保にもつながっている。低酸素条件化においては転写因子である低酸素誘導因子(Hypoxia Inducible Factor、HIF)-1αが働き、種々の遺伝子の転写を亢進させる。HIF-1αは正常酸素圧下でも産生はされるがタンパク質分解酵素であるプロテアソームにより分解されてしまうため機能しない(右図参照)。
HIF-1αは細胞核内へ移行するとHIF-1β(Arnt)と結合する。HIF-1αのAsp803残基はヒストンアセチル基転移酵素活性を持った分子複合体CBP/p300をDNA上のプロモーター領域である低酸素応答性領域(Hypoxia Responsive Element、HRE)へ運搬し、目的遺伝子の転写を促進する[1]。VEGFもHIF-1αによって産生が促進される分子の一つであり、血管新生の過程に関与する。
また慢性炎症は発癌のリスク要因であり、炎症に関与する転写因子NF-κBの活性化を介してVEGFの産生を亢進させる。
血管新生に関与する因子
分子名 |
作用機序 |
線維芽細胞増殖因子(FGF) |
抗凝固薬であるヘパリンと高親和性を示すペプチド。FGFは細胞膜上のFGF受容体に結合して作用する。FGFは内皮細胞や平滑筋細胞、線維芽細胞の増殖及び分化の過程に関与している。 |
VEGF |
VEGFは二量体の糖タンパク質であり、マクロファージや腫瘍細胞により産生される増殖因子である。VEGFによるシグナル伝達は血管新生において重要な役割を担っている。VEGFは内皮細胞の遊走・増殖及び管腔形成などに影響を与える。 |
アンジオポエチン |
血管内皮細胞と壁細胞の接着を促進することにより新生血管の安定化に寄与する因子であり[2]、受容体型チロシンキナーゼであるTie-2受容体を介して作用を発現する。 |
血小板由来増殖因子(PDGF) |
血管内皮細胞及び線維芽細胞の増殖・遊走に関与している。 |
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β) |
細胞外マトリックスを構成するタンパク質の産生及び毛細血管腔の形成[3]及びVEGFの発現に関与している。また、TGF-βは平滑筋及び線維芽細胞に対して作用し、PDGFの産生を促す。 |
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP) |
MMPは炎症細胞や腫瘍細胞から産生されるタンパク質分解酵素である。MMPは細胞外マトリックスの分解及びVEGFを放出させる役割をもち[4]、血管壁の構造を破壊することにより血管新生の促進に働いている。 |
VE-カドヘリン(CD144)、
CD31 |
内皮細胞同士の接着に関与する接着分子。 |
エフリン |
動静脈の形成に寄与する。また、エフリンは神経系の発達にも関与している[5]。 |
プラスミノーゲンアクチベータ(ウロキナーゼ) |
酵素前駆体であるプラスミノーゲンを活性体であるプラスミンへ変換する反応を促進し、プラスミンによるMMPの活性化を引き起こす[6]。 |
誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、
シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2) |
iNOS及びCOX-2はいずれも誘導型の酵素であり、iNOSは一酸化窒素(NO)の産生に、COX-2はアラキドン酸代謝物であり血管新生を促進する作用を持つプロスタグランジン類の産生に関与する。 |
胎盤成長因子(PlGF) |
VEGFと構造に相同性があり、主にVEGFと二量体(ヘテロダイマー)を形成することによりその生理作用を発現する。PlGFは生理的血管新生に関与している。VEGFよりも血管新生を促進する作用は弱い。 |
血管新生の抑制
インターフェロン及びインターロイキン-4はFGFの産生を抑制することにより内皮細胞の遊走・増殖を阻害する作用を持つ。また、p53やPTENなどの癌抑制遺伝子は血管新生を負に制御している[7]。さらに、MMP阻害薬、VEGF受容体阻害薬及びPDGF受容体阻害薬などの薬物や可溶性VEGF受容体は血管新生阻害作用を示す。
サリドマイドが奇形を引き起こすのは、胎児の手足の末端の血管新生が阻害されて十分に成長しないためである。現在では、この作用を利用して抗がん剤としての利用が試みられている。
出典
- Tannock IF,Hill RP,Bristow RG and Harrington L.『がんのベーシックサイエンス 日本語版 第3版』メディカル・サイエンス・インターナショナル 2006年 ISBN 4895924602
- 今堀 和友、山川 民夫 編集 『生化学辞典 第4版』 東京化学同人 2007年 ISBN 9784807906703
- 宮園 浩平、菅村 和夫 編『BioScience 用語ライブラリー サイトカイン・増殖因子』羊土社 1998年 ISBN 4897062616
参考文献
- ^ Ke Q and Costa M.(2006)"Hypoxia-Inducible Factor-1 (HIF-1)"Mol.Pharmacol.70,1469-80. PMID 16887934
- ^ Thurston G.(2003)"Role of Angiopoietins and Tie receptor tyrosine kinases in angiogenesis and lymphangiogenesis."CellTissue.Res.314,61-8. PMID 12915980
- ^ Tonnesen MG,Feng X and Clark RA.(2000)"Angiogenesis in wound healing."J.Investig.Dermatol.Symp.Proc.5,40-6. PMID 11147674
- ^ M Nicola.(2005)"All tied up"Nat.Rev.Cancer5,500
- ^ Martínez A and Soriano E.(2005)"Functions of ephrin/Eph interactions in the development of the nervous system: emphasis on the hippocampal system." BrainRes.BrainRes.Rev.49,211-26. PMID 16111551
- ^ Bobik A and Tkachuk V.(2003)"Metalloproteinases and plasminogen activators in vessel remodeling."Curr.Hypertens.Rep.5,466-72. PMID 14594565
- ^ Lawler J.(2002)"Thrombospondin-1 as an endogenous inhibitor of angiogenesis and tumor growth."J.Cell.Mol.Med.6,1-12. PMID 12003665
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 生物学的製剤を用いた分子標的治療の進歩(3)乳癌に対する分子標的治療の進歩
- 神尾 孝子/亀岡 信悟
- 東京女子医科大学雑誌 82(2), 75-79, 2012-04-25
- … ,Bevacizumabは、血管新生因子の一つであるvascular endothelial growth factor (VEGF)を標的としたヒト化モノクローナル抗体であり、進行・再発乳癌に対し化学療法との併用による相加的治療効果が認められている。 …
- NAID 110009004321
- 神経-血管ガイダンス分子を標的とした血管新生制御機構の解明と新たな血管再生治療の開発
- 森谷 純治,モリヤ ジュンジ,Moriya Junji
- 千葉医学雑誌 88(1), 41-45, 2012-02-01
- … 本分子による血管新生制御機構を解明することは,新たな血管再生治療の開発につながると考えられる。 …
- NAID 120004024980
Related Links
- 血管新生とは? 血管新生は、新しい血管が作られることで、体に備わっている生理的機能です(図1)。大人では、子宮内膜で性周期に応じて、あるいはケガをしてその傷が治るとき(創傷治癒)に起こりますが、それら以外では ...
- 私たちは、北里大学病院における呼吸器センターの柱のひとつとして外科診療、教育、研究に力を注いでいます。 ... 血管新生はいくつかのステップで癌を増殖に導く。腫瘍血管新生は数mm以下の小さな腫瘍塊へ酸素や栄養を供給し ...
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★リンクテーブル★
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- 英
- diabetic retinopathy, DR
- ラ
- retinopathia diabetica
- 同
- 糖尿病性網膜症
- 関
- 糖尿病、福田分類
[show details]
疫学
- 糖尿病の有病率は740万人(2002年の厚生労働省統計)で、糖尿病網膜症はその30-50%が罹患している。
- 罹病期間が10年以上の糖尿病患者の約50%が何らかの網膜症を有し、全糖尿病患者の少なくとも1%が失明。
- 糖尿病性網膜症は、未治療で経過した場合、7年で50%、20年以上で90%以上が発症する。25年以上では網膜症を有する患者の25%が増殖網膜症となる。
遺伝形式
病変形成&病理 SOP.138
- 細小血管 = 内皮細胞 + 基底膜 + 周皮細胞
- 糖尿病により細小血管が傷害される。
- 1. 基底膜の肥厚と周皮細胞の消失 → 周皮細胞の消失により血管壁は薄くなり、脆弱化が進行する。
- 2. 内皮細胞の増殖 → これにより毛細血管瘤が形成
- 3. 2.がみられるころに、血管網膜関門の破綻により硬性白斑が形成される
- 4. 1-3.により血流障害、血栓形成をきたし血管床閉塞を生じる
病理変化
分類
眼底所見による分類
- SOP.138-139
[show details]
- 2. 前増殖網膜症:病変が進行し毛細血管の閉塞が進行している状態
- 新生血管:毛細血管の閉塞に続発した虚血性変化。最初は網膜内で発育。
- 軟性白斑(綿花様白斑):毛細血管の閉塞に続発した虚血性変化。神経線維層の梗塞。網膜神経線維の虚血による軸索の膨化(CBT QB vol2 p.495)。網膜表層は白色の混濁を呈し、境界は硬性白斑よりも不鮮明。
- 火焔状網膜出血、静脈異常、網膜内細小血管異常(IRMA)。(出典不明)
- 3. 増殖網膜症 :血管床の閉塞が拡大し網膜虚血が進行し、網膜硝子体に血管新生を発症したもの
- 新生血管増殖:網膜内から内境界膜を貫き、網膜表面~硝子体に向かって成長していく
- 硝子体出血:新生血管により網膜と後部硝子体膜とが癒着し、この状態で硝子体剥離が生じると、新生血管が牽引され破綻する。
- 増殖膜の形成:
- 牽引性の網膜剥離:硝子体剥離だけでなく、網膜を剥離して牽引性の網膜剥離を生じる。
- 網膜前出血。(出典不明)
David分類
- DMR.200
- 1. 単純糖尿病網膜症 :毛細血管瘤、点状・斑状出血、火焔状出血、少数の軟性白斑
- 2. 増殖前糖尿病網膜症:多発する軟性白斑、網膜内細小血管異常、静脈異常、無灌流域
- 3. 増殖糖尿病網膜症 :新生血管、硝子体出血、線維血管性増殖組織、牽引性網膜剥離 ← 網膜の中ではなく、網膜上の新生血管
参考
- http://www.nmckk.jp/pdf/thesis/JJCD/024/007/JJCD_024_007_1051.pdf
国試
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- 英
- intima, intimal (adj.), inner membrane, internal tunic
- ラ
- tunica intima (Z)
- 関
- 中膜、血管
組織
病理
血管の損傷
粥状硬化症
- 内皮下結合組織に粥腫ができる。
- necroticcenterはfibrous capにかこまれる
- fibrous cap
- 平滑筋、マクロファージ、泡沫細胞、リンパ球、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、血管新生
- necrotic center
- 壊死組織、コレステロールの血漿、泡沫細胞、カルシウム
梗塞
[★]
- 英
- vascular endothelial growth factor, VEGF
- 同
- 血管内皮細胞増殖因子、vascular endothelial cell growth factor
- 関
- 血管新生
[show details]
[★]
- 英
- 成長因子 growth factor
- 同
- 成長促進因子 growth-promoting substance、発育因子、増殖因子
[show details]
angiogenic factor
angiostasis
[★]
- 関
- 血管新生、コラーゲン
- angiogenic factors such as VEGF and bFGF have relatively long half-lives in the blood compared with angiostatic factos such as endostain or angiostatin.
- large tumors often produce sufficient amounts of angiostatic factors to suppress the growth of blood vessels in small, undetectable tumors present elsewhere in the body.
[★]
- 英
- vascularization
- 関
- 血管新生、血管新生化
[★]
- 英
- angiogenic activity
- 関
- 血管新生作用
[★]
- 英
- neovascularization
- 関
- 血管新生
[★]
- 英
- retinal neovascularization
[★]
- 英
- blood vessel, blood vessels
構造
- 内皮細胞(単層扁平上皮細胞)
- 基底板
- 内皮下結合組織(内皮下層 subendothelial layer):疎性結合組織、縦走平滑筋
- 内弾性板
分類
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形容詞
- 英
-
- 関
- 未加工、調理していない
名詞
- 英
- life
- 同
- 生命、いのち
- 関
- 生命科学