アマンタジン
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アマンタジン
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IUPAC命名法による物質名 |
adamantan-1-amine |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
C |
法的規制 |
? |
投与方法 |
経口 |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
よく吸収される |
血漿タンパク結合 |
approx 67% |
代謝 |
無視してよい |
半減期 |
10-14, in renal impairment up to 7-10 days |
排泄 |
腎臓 |
識別 |
CAS登録番号 |
768-94-5 |
ATCコード |
N04BB01 |
PubChem |
CID 2130 |
DrugBank |
APRD00787 |
KEGG |
D07441 |
化学的データ |
化学式 |
C10H17N |
分子量 |
151.249 g/mol |
アマンタジン (Amantadine) は示性式C10H15NH2、分子量151のアミン。別名1-アミノアダマンタン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン-1-アミン 。アダマンタンにアミノ基がついた構造をしている。実際の製剤名は塩酸アマンタジン。CAS登録番号は768-94-5、塩酸塩のCAS登録番号は665-66-7。
黒質線条体からのドーパミン放出を促し、パーキンソン病の症状を改善する治療薬として用いられる。パーキンソン症候群の全てに効果があるわけではない。
また、インフルエンザウイルスのM2蛋白を阻害し、ウイルスが脱殻することを抑制し、またウイルス粒子を構成することができなくなることによりA型インフルエンザ治療薬としても用いられる。なお、B型インフルエンザには効果がない。副作用は睡眠障害や幻覚などであるが、パーキンソン病治療薬としては副作用は少ない方である。
米国では 2005-2006年のインフルエンザシーズン当初にインフルエンザA/H3N2型において 92.3%の率で耐性をもつウィルスが検出され、アメリカ疾病予防管理センターは抗インフルエンザ薬として使用しないよう緊急勧告を出した。英国国立医療技術評価機構ではインフルエンザ予防に使用してはならないとの勧告を出した[1]。日本においては引き続き使用されているが、結果として臨床においても 2003-2004 シーズン、2004-2005 シーズン、2005-2006 シーズンを比較すると有意に解熱時間、発熱時間が年々延長していることが明らかになっている(日本臨床内科医会インフルエンザ研究班の調査)。
本来インフルエンザ感染症の治療薬として開発されていたが、治験の最中にパーキンソン病が改善した患者がいたため、適応を拡大した。商品名として代表的なものは「シンメトレル」であるが、後発品も多数ある。
種類[編集]
用法・用量[編集]
- 1日400~1,200mgを分割経口投与する。なお症状、年齢により適宜増量する。
出典[編集]
- ^ 英国国立医療技術評価機構 (2008-07). Influenza (prophylaxis) - amantadine, oseltamivir and zanamivir (TA158) (Report). http://guidance.nice.org.uk/TA158.
インフルエンザ |
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主要項目 |
研究 - ワクチン - 治療 - ゲノム解読 - 遺伝子再集合 - 重複感染 - シーズン
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ウイルス |
オルトミクソウイルス科 - A型 - B型 - C型
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A型の亜型 |
H1N1(ソ連型) - H1N2 - H2N2 - H2N3 - H3N1 - H3N2(香港型) - H3N8 - H5N1 - H5N2 - H5N3 - H5N8 - H5N9 - H7N1 - H7N2 - H7N3 - H7N4 - H7N7 - H7N9 - H9N2 - H10N7
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H1N1 |
パンデミック |
1918年の世界的流行 - 2009年の世界的流行
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科学 |
2009 H1N1
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H5N1 |
流行 |
クロアチア(2005年) - インド(2006年) - イギリス(2007年) - 西ベンガル州(2008年)
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科学 |
構造 - 感染経路 - 世界的感染 - 治験 - ヒトの致死率 - 社会的影響
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治療 |
抗ウイルス薬 |
塩酸アルビドール - アダマンタン化合物(アマンタジン、リマンタジン) - ノイラミニダーゼ阻害薬(ザナミビル(リレンザ)、オセルタミビル(タミフル)、ペラミビル(ラピアクタ)、ラニナミビル(イナビル))
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ワクチン |
フルミスト - フルゾーン
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流行・
パンデミック |
流行 |
ソ連かぜ(1977-1978年) - 福建かぜ(H3N2) - 2013年H7N9インフルエンザの流行
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パンデミック |
ロシアかぜ(1889-1890年) - スペインかぜ - アジアかぜ - 香港かぜ - 2009年新型インフルエンザの世界的流行
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ヒト以外 |
哺乳類 |
イヌ - ネコ - ウマ(2007年オーストラリアでの流行) - ブタ
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哺乳類以外 |
トリ - 福建かぜ(鳥類間で流行したH5N1)
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関連項目 |
インフルエンザ様疾患 - 新型インフルエンザ - パンデミック
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 河合 直樹,池松 秀之,柏木 征三郎
- 日経メディカル 39(1), 114-116, 2010-01
- … わが国では、抗インフルエンザ薬としてアマンタジン(商品名シンメトレル)がA型に、ノイラミニダーゼ阻害薬のオセルタミビル(タミフル)とザナミビル(リレンザ)がA型またはB型に保険適用がある。 …
- NAID 40016932497
- 医薬情報室 処方のヒント 抗インフルエンザ薬の使い方
- 河合 直樹,池松 秀之,柏木 征三郎
- 日経メディカル 38(1), 137-139, 2009-01
- … 抗インフルエンザ薬として、1998年にアマンタジン塩酸塩(商品名シンメトレルなど)がA型に、2001年にノイラミニダーゼ阻害薬のリン酸オセルタミビル(タミフル)とザナミビル水和物(リレンザ)がA型またはB型に保険適用となり、インフルエンザ治療は一変した。 …
- NAID 40016419742
Related Links
- シンメトレルとは?アマンタジンの効能,副作用等を説明,ジェネリックや薬価も調べられる( おくすり110番:薬事典版)
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
- 精神活動改善剤
- パーキンソン症候群治療剤
- 抗A型インフルエンザウイルス剤
販売名
シンメトレル錠50mg
組成
成分・含量(1錠中)
添加物
- セルロース、ポビドン、第三リン酸カルシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、酸化チタン、マクロゴール
禁忌
透析を必要とするような重篤な腎障害のある患者
- 〔本剤は大部分が未変化体として尿中に排泄されるので、蓄積により、意識障害、精神症状、痙攣、ミオクロヌス等の副作用が発現することがある。また、本剤は血液透析によって少量しか除去されない。〕(「副作用」、【薬物動態】の項参照)
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
効能または効果
- パーキンソン症候群
- 脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下の改善
- A型インフルエンザウイルス感染症
「A型インフルエンザウイルス感染症」に本剤を用いる場合
- 本剤は、医師が特に必要と判断した場合にのみ投与すること。例えば、以下の場合に投与を考慮することが望ましい。
A型インフルエンザウイルス感染症に罹患した場合に、症状も重く死亡率が高いと考えられる者(高齢者、免疫不全状態の患者等)及びそのような患者に接する医療従事者等。
- 本剤を治療に用いる場合は、抗ウイルス薬の投与が全てのA型インフルエンザウイルス感染症の治療に必須ではないことを踏まえ、本剤の使用の必要性を慎重に検討すること。
- 本剤を予防に用いる場合は、ワクチン療法を補完するものであることを考慮し、下記の場合にのみ用いること。
- ・ワクチンの入手が困難な場合
- ・ワクチン接種が禁忌の場合
- ・ワクチン接種後抗体を獲得するまでの期間
- 本剤はA型以外のインフルエンザウイルス感染症には効果がない。
パーキンソン症候群の場合
- 通常、成人にはアマンタジン塩酸塩として初期量1日100mgを1?2回に分割経口投与し、1週間後に維持量として1日200mgを2回に分割経口投与する。
なお、症状、年齢に応じて適宜増減できるが、1日300mg3回分割経口投与までとする。
脳梗塞後遺症の場合
- 通常、成人にはアマンタジン塩酸塩として1日100?150mgを2?3回に分割経口投与する。
なお、症状、年齢に応じて適宜増減する。
A型インフルエンザウイルス感染症の場合
- 通常、成人にはアマンタジン塩酸塩として1日100mgを1?2回に分割経口投与する。
なお、症状、年齢に応じて適宜増減する。ただし、高齢者及び腎障害のある患者では投与量の上限を1日100mgとすること。
- 本剤は大部分が未変化体として尿中に排泄されるため、腎機能が低下している患者では、血漿中濃度が高くなり、意識障害、精神症状、痙攣、ミオクロヌス等の副作用が発現することがあるので、腎機能の程度に応じて投与間隔を延長するなど、慎重に投与すること。(【禁忌】、「慎重投与」、「副作用」、【薬物動態】の項参照)
参考〉クレアチニンクリアランスと投与間隔の目安
- クレアチニンクリアランス(mL/min/1.73m2):投与間隔(100mg/回)
>75:12時間
35?75:1日
25?35:2日
15?25:3日
注)上記は外国人における試験に基づく目安であり、本剤の国内で承認されている用法及び用量とは異なる。
- 「脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下の改善」に本剤を投与する場合、投与期間は、臨床効果及び副作用の程度を考慮しながら慎重に決定するが、投与12週で効果が認められない場合には投与を中止すること。
- 「A型インフルエンザウイルス感染症」に本剤を投与する場合
発症後に用いる場合
- 発症後は可能な限り速やかに投与を開始すること(発症後48時間以降に開始しても十分な効果が得られないとされている)。また、耐性ウイルスの発現を防ぐため、必要最小限の期間(最長でも1週間)の投与にとどめること。
ワクチンの入手が困難な場合又はワクチン接種が禁忌の場合
- 地域又は施設において流行の徴候があらわれたと判断された後、速やかに投与を開始し、流行の終息後は速やかに投与を中止すること。
ワクチン接種後抗体を獲得するまでの期間に投与する場合
- 抗体獲得までの期間は通常10日以上とされるが、抗体獲得後は速やかに投与を中止すること。
- 小児に対する用法及び用量は確立していないので、小児に投与する場合は医師の判断において患者の状態を十分に観察した上で、用法及び用量を決定すること。(「小児等への投与」の項参照)
慎重投与
心血管疾患(うっ血性心疾患等)又は末梢性浮腫のある患者
- 〔副作用として下肢浮腫が発現することがあり、心血管疾患や浮腫を悪化させるおそれがある。〕
腎障害のある患者
- 〔本剤は大部分が未変化体として尿中に排泄されるので、蓄積による副作用を避けるため用量の調節に十分注意すること。〕(【禁忌】、〈用法及び用量に関連する使用上の注意〉、【薬物動態】の項参照)
肝障害のある患者
- 〔副作用として肝障害が報告されているため、肝機能検査値に注意すること。〕
低血圧を呈する患者
精神疾患のある患者
- 〔幻覚、妄想、錯乱、悪夢等の精神症状が増悪するおそれがある。〕(【警告】の項参照)
閉塞隅角緑内障の患者
- 〔眼圧上昇を起こし、症状が悪化するおそれがある。〕
高齢者
重大な副作用
悪性症候群(Syndrome malin)(0.1%未満)
- 急激な減量又は中止により、高熱、意識障害、高度の筋硬直、不随意運動、ショック症状等があらわれることがあるので、このような場合には再投与後、漸減し、体冷却、水分補給等の適切な処置を行うこと。本症発症時には、白血球の増加や血清CK(CPK)の上昇がみられることが多く、またミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。
なお、投与継続中にも同様の症状があらわれることがある。
皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)(頻度不明)
- 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
視力低下を伴うびまん性表在性角膜炎、角膜上皮浮腫様症状(頻度不明)
- このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
心不全(頻度不明)
- このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
肝機能障害(頻度不明)
- AST(GOT)、ALT(GPT)、γ?GTP上昇等の肝機能障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
腎障害(頻度不明)
- 腎障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
なお、腎機能が低下している患者では、本剤の排泄遅延が起こりやすい。(「慎重投与2」の項参照)
意識障害(昏睡を含む)(頻度不明)、精神症状(幻覚、妄想、せん妄:5%未満、錯乱:0.1%未満等)、痙攣(0.1%未満)、ミオクロヌス(頻度不明)
- 意識障害(昏睡を含む)、精神症状(幻覚、妄想、せん妄、錯乱等)、痙攣、ミオクロヌスがみられることがある。このような場合には減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。特に腎機能が低下している患者においてあらわれやすいので注意すること。
薬効薬理
精神活動改善作用
- 高次中枢神経機能低下に対する薬物の改善効果を前臨床的に評価する有効な方法は現在のところまだ開発されておらず、アマンタジン塩酸塩に関してもその作用機序は十分に解明されていないが、動物試験及び臨床薬理試験において以下の作用が認められている。
脳振盪マウスの自発運動に及ぼす影響
- 頭頂部に物理的衝撃を与えたマウスにおいて、昏睡状態回復後の自発運動量を測定した試験では、12.5mg/kg(腹腔内)で自発運動の有意な増加がみられている。
条件回避反応抑制に対する拮抗作用
- ラットにおけるクロルプロマジン、ハロペリドール及びテトラベナジンによる条件回避反応の抑制作用に対し、10及び20mg/kg(腹腔内)で拮抗し、アマンタジン塩酸塩とドパミン及びノルアドレナリン作動性神経系との関連性が示唆されている。
THCによるカタレプシー及びmuricideの抑制作用
- THC(テトラヒドロカンナビノール)によるラットのカタレプシー及びmuricideに対し、0.5mg/kg(腹腔内)で有意な抑制作用を示す。その強さはそれぞれイミプラミンの40倍及び8.8倍、レボドパの400倍及び225.5倍で、アマンタジン塩酸塩が少量でセロトニン作動性神経系の活動亢進を起こすことが示唆されている。
ヒト脳波に及ぼす影響
- 多発梗塞性痴呆患者に100mg/日、2週間経口投与後の脳波変化をみた試験においてα波の出現量の増加、θ波及びδ波の出現量の減少がみられている。
抗パーキンソン作用
- アマンタジン塩酸塩のパーキンソン症候群に対する作用機序はまだ十分に解明されていない点もあるが、動物試験(ラット)においてドパミンの放出促進作用・再取り込み抑制作用・合成促進作用が認められている。これらの作用によりドパミン作動ニューロンの活性が高められ、機能的にアセチルコリン作動系がカテコールアミン作動系に対して過動な状態にあるパーキンソン症候群に対して、主としてドパミン作動神経系の活動を亢進することにより効果を示すものと考えられている。
A型インフルエンザウイルスに対する作用
- アマンタジン塩酸塩の抗A型インフルエンザウイルス作用は、主として感染初期にウイルスの脱殻の段階を阻害し、ウイルスのリボヌクレオプロテインの細胞核内への輸送を阻止することにあると考えられる。
すなわち、インフルエンザウイルス増殖サイクルの過程でウイルス粒子が細胞表面に吸着してエンドサイトーシスで酸性のエンドソームに取り込まれると、M2イオンチャネルが活性化されるが、アマンタジン塩酸塩はM2チャネルを阻害する。(アフリカツメガエル卵母細胞in vitro)
本剤はA型インフルエンザウイルスには有効であるが、B型インフルエンザウイルスには無効とされている。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
- アマンタジン塩酸塩(Amantadine Hydrochloride)
化学名
- Tricyclo[3.3.1.13,7]dec-1-ylamine monohydrochloride
分子式
分子量
性状
- 白色の結晶性の粉末で、においはなく、味は苦い。
ギ酸に極めて溶けやすく、水、メタノール又はエタノール(95)に溶けやすく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- antiparkinsonian drug
- 関
- 抗パーキンソン病薬
商品
[★]
- 英
- amantadine
- 化
- 塩酸アマンタジン amantadine hydrochloride、アマンタジン塩酸塩
- 商
- アテネジン、アマゾロン、シンメトレル Symmetrel、トーファルミン、ボイダン、ロティファミン
歴史
- 最初、A型インフルエンザに対する抗ウイルス薬として使われていたが、パーキンソン病患者がアマンタジンを服用したところパーキンソン病の症状が改善されたことから、パーキンソン病への薬効が見いだされた。
薬理作用
パーキンソン病治療薬
- ドーパミンの合成促進
- ドーパミンの再取り込み抑制
- ドーパミンの遊離促進