-アスペルガー障害
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アスペルガー症候群(アスペルガーしょうこうぐん、Asperger Syndrome, AS)は、興味・コミュニケーションについて特異性が認められる広汎性発達障害である。
興味の面では、特定の分野については驚異的なまでの集中力と知識を持ち、会話の面では、聞かれたことに対して素直に答える(「空気を読む」などの行為を苦手とする)、といった特徴を持つ。 日本語ではしばしばアスペルガー, アスペとも略して呼ばれる。
各種の診断基準には明記されていないが、総合的なIQが知的障害域でないことが多く「知的障害がない自閉症」として扱われることも多いが、この障害を実際の自閉症と関連付けるのは学会の仮説であり、実証性に乏しい。決定づける論文なども存在しない。
なお、世界保健機関・アメリカ合衆国・日本国などにおける公的な文書では、自閉症とは区別して取り扱われる。 精神医学において頻用されるアメリカ精神医学会の診断基準 (DSM-IV-TR) ではアスペルガー障害と呼ぶが、アスペルガーを「障害」や「症候群」として取り扱うことへの反論は根強く、DSM-5ではアスペルガー症候群の名称を無くして自閉症スペクトラム(autism spectrum disorder)に統一される予定。
他者の気持ちの推測力など、心の理論の特異性が原因の1つであるという説もある。 特定の分野への強いこだわりを示し、運動機能の軽度な障害が見られたりすることもある。しかし、カナータイプ(伝統的な自閉症とされているもの)に見られるような知的障害および言語障害はない。
自閉症スペクトラムに分類されている他の状態同様、アスペルガー症候群も性別との相関関係があり、全体のおよそ75%が男性である[要出典]。 ただし、症状が現れずに潜在化(治癒ではない)する場合も勘案せねばならず、この数値にはある程度の疑問も残る。
アスペルガー症候群の患者の特徴として、脳への情報のインプット・アウトプットが共に、健常者よりも「劣って」いる点が挙げられる。 健常者よりも「劣った」インプットは当人の脳に於いて言語の認知を妨げ、「早口言葉を聞いている」様な感覚に陥らせ、結果パニックの原因となる。 これは、脳の中のワーキングメモリーに問題があると考えられる。このようにアスペルガー患者は常に脳をフル回転させていることから、こまめにボーっとしたり、昼寝やうたた寝などの休息を取る必要がある。
アスペルガー症候群は、興味の対象に対して、きわめて強い、偏執的ともいえる水準での集中を伴うことがある。例えば、1950年代のプロレスや、アフリカ独裁政権の国歌、マッチ棒で模型をつくることなど、社会一般の興味や流行にかかわらず、独自的な興味を抱くケースが見られる。しかし、これらの対象への興味は、一般的な子供も持つものである。両者の違いは、その異常なまでの興味の強さにある。アスペルガー児は興味対象に関する大量の情報を記憶することがある。
また一般的に、順序だったもの、規則的なものはアスペルガーの人を魅了する。これらへの興味が物質的あるいは社会的に有用な仕事と結びついた場合、実り豊かな人生を送る可能性もある。例えば、コンピューターに強い興味を持って取りつかれた子供は、大きくなって卓越したプログラマーになるかもしれない。それらと逆に、予測不可能なもの、不合理なものはアスペルガーの人が避ける対象となる。突然のアクシデントや、論理的に話し合いのできない感情的な人間なども、その例である。
彼らの関心は生涯にわたることもあるが、いつしか突然変わる場合もある。どちらの場合でも、ある時点では通常1~2個の対象に強い関心を持っている。 これらの興味を追求する過程で、彼らはしばしば非常に洗練された知性、ほとんど頑固偏屈とも言える集中力、一見些細に見える事実に対する膨大な(時に、写真を見ているかのような詳細さでの)記憶力などを示す。 ハンス・アスペルガーは、彼の幼い患者を『小さな教授』と呼んでいた。その13歳の患者は、自分の興味を持つ分野に網羅的かつ微細な、大学教授のような知識を持っていたからである。
臨床家の中には、アスペルガーの人がこれらの特徴を有することに全面的には賛成しない者もいる。たとえばWing と Gillberg はアスペルガーの人が持つ知識はしばしば理解に根付いた知識よりも表層だけの知識の方が多い場合がある、と主張している。 しかし、このような限定はGillbergの診断基準を用いる場合であっても、診断とは無関係である。
アスペルガーの児童および成人は、自分の興味のない分野に対しての忍耐力が弱い場合が多い。 学生時代、「とても優秀な劣等生」と認識された人も多い。これは、自分の興味のある分野に関しては他人に比べてはるかに優秀であることが誰の目にも明らかなのに、毎日の宿題にはやる気を見せないからである。 (時に、「興味のある分野であってもやる気を見せなかった」という報告もあるが、それは他人が同じ分野だと思うものが本人にとっては異なる分野だからだと思われる。例えば、数学に興味があるが答えが巻末に載っている受験数学を自分で解くことに興味が相対的に変化し、日本語の旧字体に興味はあるが国語の擬古文の読解問題には興味が持てない、など)。ノートやテスト用紙に文字を手書きすることを、快く思う子供、又そうでない子供もいる。 一方、学業において他人に勝つことに興味を持ったために優秀な成績を取る人もおり、これは診断の困難さを増す。
アスペルガーの人は他の様々な感覚、発達、あるいは生理的異常を示すこともある。その子供時代に細かな運動能力に遅れをみせることが多い。 特徴的なゆらゆら歩きや小刻みな歩き方をし、腕を不自然に振りながら歩くかもしれない。手をぶらぶら振るなど(常同行動)、衝動的な指、手、腕の動きもしばしば認められ、チック症を併発している場合も多い。
アスペルガーの人は感覚的に多くの負荷がかかっていることがある。音、匂いに敏感だったり、あるいは接触されることを好まなかったりする。 例えば、突然大きい声でまくしたてられたり、頭を触られたり、髪を触られるのを好まない人もいる。音に神経質過ぎて不眠を訴える人も多い。これが子供の場合、教室の騒音が彼らに耐えられないものである場合等、学校での問題をさらに複雑にすることもある。
別の行動の特徴として、やまびこのように、言葉やその一部を繰り返す反響言語(エコラリア)と呼ばれる症状を示す場合がある。
非自閉症の人(NT:neurotypical, 典型的な精神の人)は、他者の仕草や雰囲気から多くの情報を集め、相手の感情や認知の状態を読み取ることができる。この能力が自閉症の人には欠けており、他者の心を読むことが難しい(心の理論の欠如)。 そのような、仕草や状況、雰囲気から気持ちを読み取れない人は、他人が微笑むようすを見ることはできても、その微笑みがなにを意味しているかが理解できない。 多くの場合、彼らにとって「行間を読む」ことは、困難ないし不可能である。最悪の場合、対人コミュニケーションのどの局面でも、表情やボディランゲージなどを手がかりとしてニュアンスを読みとることができない。 つまり、人が口に出して言葉で言わなければ、意図していることが何かを理解できない。とはいえ、この種の能力差は、健常者から深刻な障害をかかえるケースにまでわたってスペクトラム状(連続体)に分布している。 したがって、アスペルガー症候群に分類されるケースにおいても、表情や他人の意図を読み取ることにさほど不自由のない人もいる。 また、彼らはしばしばアイコンタクトが困難である。ほとんどアイコンタクトをせず、それをドギマギするものだと感じる場合が多い。 その一方で、他人にとって不快に感じるくらいに、じっとその人の目を見つめてしまうようなタイプもいる。アイコンタクトなどにおいて、相手から発せられるメッセージを理解しようと努力しても、この障害のために相手の心を解読しそこねることが多い。 例えば、初対面の人に挨拶をする際に、社会的に受け入れられている通常の手順で自己紹介をするのではなく、自分の関心のある分野について、一人で長々と話し続けることがある。
他人に自分の主張を否定されることに強く嫌悪感を覚えるという人もいる。このことは学校などで学習上の大きな障害となる。 例えば、教師が生徒にいきなり答えさせ、生徒:「これは○○だと思います」、先生:「 違うよね、これは××だよ」というように、否定して答えやヒントを教えるような方法は、アスペルガーの人には相当な苦痛となる。 しかし、多くの成人は、忍耐力のなさと動機の欠如などを克服し、新しい活動や新しい人に会うことに対する耐性を発達させている。
アスペルガーの人は正常な知能と社交能力の低さを併せ持つと考える人もいる。
このことは子供時代や、大人になってからも多くの問題をもたらす。 アスペルガーの子供はしばしば学校でのいじめの対象になりやすい。なぜなら彼ら独特の振るまい、言葉使い、興味対象、身なり、そして彼らの非言語的メッセージを受け取る能力の低さを持つからである。彼らに対し、嫌悪感を持つ子供が多いのもこのことが要因だろう。 このため教育の場である学校において、今後はサポート体制の確立や自立の支援、他の子供への理解を深めさせる、といった総合的な支援策が必要になるだろう。
「アスペルガー症候群」という一つのカテゴリーであっても、人によって障害の度合いは千差万別である。 例えば、学校の友達とうまく話せたり、話をうまくまとめられるなど、至って軽度な場合もある。また、上手く話せず、それでもよい友達に巡り会えたから必死で耐えているというように、自閉度が中度–重度なこともある。 この障害は、カナータイプの自閉症などと違い、一見「定型発達者」に見えるために、周りからのサポートが遅れがちになったりすることが問題となっている。
症候群という表現は、アスペルガーの人は障害者(異常)で、その他の者は定型発達者(正常)というように感じる。しかし、特徴の見かたを変えると、客観的で、事実を正確に理解して表現することに長けているともいえる。 以下に挙げられている「言葉を額面どおりに受け取る」や「些細なことにこだわる」という特徴も「厳正に規則を守る」と言い換えることができる。 例えば、パソコンのように順序だったものや規則的なものに興味を持てば、才能を開花させることも可能である。また、「行間を読むことが苦手」というのは、行間を読まないコミュニケーション方法ということである。 それは単に、「行間を読むコミュニケーション(アスペルガー以外の多数派)」に対しての「少数派の方法」という関係なのである。
つまり、少数派であるために、多数派の人と自由にコミュニケーションが取れない、あるいはコミュニケーション方法の違いを理解されないという問題が、社会生活での障壁となりやすい。
アスペルガーをもつ人は、多くの非アスペルガーの人と同様に、またはそれ以上に強く感情の反応をするが、何に対して反応するかは常に違う。 彼らが苦手なものは「他人の情緒を理解すること」で、自分の感情をボディランゲージ、身ぶり手振りや、表情のニュアンス等で他人に伝えることは可能である。
例として、教師がアスペルガーをもつ子供に(宿題を忘れたことを問いただす意味で)、「犬があなたの宿題を食べたちゃったの?」と尋ねると、その子は押し黙ってしまう。 この時、教師に自分は犬を飼っておらず、普通犬は紙を食べないことを説明する必要があるのかどうかを考え、教師の表情や声のトーンから暗に意味していることを理解できないのである。 教師がこの子は宿題の事をうやむやにしようとしている、反抗的である、と考えたりしてしまう場合もある。
上記の例のように、アスペルガーをもつ子供は、言われたことを額面どおり真に受けることが多い。 成長の上で問題となるのは、親や教師が励ますつもりで「テストの点数など、さほど大事ではない」等、きれい事ばかり言ったり、反対に「テストで点数を取れなければ、何も買いあたえない」等、現実的なことばかり言い聞かせる事、つまり極端な教育をすることである。結果的に持つべき水準からかけ離れた観念を持って行動してしまう危険性がある。
彼らは、“大人の発言には掛け値がある”という疑いを持ちにくく、持ったとしても、はたして掛け値がどのくらいなのかを慮ることが困難であるため、発言者の願望を載せて物事を大げさに表現すると狙った効果は効き過ぎることになる。
この傾向を助長する要因の一つに、通常であれば日常生活で周囲の人の会話などから小耳に挟んで得ているはずの雑多な情報を、アスペルガーをもつ人は(アスペルガー特有の“興味の集中”のため)“聞こえてはいる”ものの適切に処理することができないことが考えられる。
近年では、アスペルガー症候群を含む発達障害と睡眠障害との関連性が発見されてきた。睡眠障害といっても、ナルコレプシーや睡眠時無呼吸症候群などの先天的な障害ではなく、睡眠相後退症候群や非24時間睡眠覚醒症候群などの概日リズム睡眠障害、不眠症、過眠症などの後天的な障害のことである。 毎日の睡眠は、脳を整理・形成する働きを持っており、脳の働きや思考メカニズムが定型発達者とは異なるアスペルガー症候群の場合、睡眠障害は非常に起こしやすい二次障害である。睡眠障害は、一度なるとどんどん悪化してしまう傾向があり、難治性であるために、睡眠障害を起こさないように就寝や起床の時間を規則正しく生活することが重要であるとともに、症状が見られた場合は早急に治療をすることが必要である。睡眠外来で診てもらう時は、アスペルガーなどの発達障害をもっていることを申告することが望ましいだろう。
なお、日本で唯一「子どもの睡眠と発達医療センター」を設置している兵庫県立リハビリテーション中央病院の三池輝久医師は、「幼児期の睡眠こそが、潜在している発達障害の発症を左右させる原因である。」との、全く逆の展開も発表している。
アスペルガー症候群は、あくまでも少数派な性格を持った人というだけであり、決して精神障害ではない。障害でない故に、定型発達者と同様、知性・理性共に有しており、反社会的なことを反社会的だと認識する能力もしっかり持っている。しかし、現実にはアスペルガー症候群である人が起こした事件は多数存在する。このような事実に一部の医師やマスコミは、アスペルガー症候群と犯罪との関連性を主張することも少なくないが、決して、犯罪を犯すことはアスペルガー症候群に起因するものではない。 一部のアスペルガー症候群の人は、その特異性から他者とコミュニケーションがうまくいかずに、頻繁にイライラしたり落胆することが多い。このよな状況が長年に渡って続くことにより、二次障害としてうつ病などの精神障害を引き起こすことが確認されている。上記の犯罪の原因は、この精神疾患に起因するものと考えられ、自暴自棄が悪化して破壊衝動が発生するなどのメカニズムである。なお、もちろん、これらうつ病などの精神障害の患者全てが犯罪を起こすというわけではない。 このような二次障害を予防するためには、アスペルガー症候群に定型発達者と同じコミュニケーション方法を望んだり、興味の対象を無理に広げさせたりしないことが重要である。アスペルガー症候群の人はほとんどの場合が、自分の行動が自分の意思によるものだということを強く認識している場合が多く、それを否定されると多大なストレスが伸し掛ることが多いのである。
アスペルガー症候群の定義や「アスペルガー症候群と高機能自閉症は同じものか否か」については諸説あるが、高機能自閉症(知的障害のない、あるいはほとんどない自閉症)と区別されることは少なくなってきている(アスペルガー症候群は、知的障害の有無を問わず、言語障害のない自閉症を指すという研究者もいる)。 このような概念の未整理については議論や批判があり、それを受けて2013年発行予定のDSM-5の草案ではアスペルガー症候群は独立した診断分類としては削除され、自閉症スペクトラムに包括される方針とされている[1]。
自閉症の軽度例とも考えられているが、知的障害でないからといっても、社会生活での対人関係に問題が起きることもあり、知的障害がないから問題がほとんどないとすることはできない。知能の高低については、相対的に低いよりは高い方が自活能力が高いとみなされるが、成人の場合、知能の高さは必ずしも安定就労に結びつかないという調査報告もある[2]。 これは、アスペルガー症候群としての特性の数々は知能の高低にかかわらず就労の場において(しばしば重大な)障害となるのに、知的障害者としての庇護が受けられる者にくらべて、一目では定型発達者と区別がつかない知的障害のない者への理解やサポートは、ほとんど進んでいなかったからである。 日本では従来、アスペルガー症候群への対応が進んでいなかったが、2005年4月1日施行の発達障害者支援法によりアスペルガー症候群と高機能自閉症に対する行政の認知は高まった。 しかし、依然として社会的認知は低く、カナータイプより対人関係での挫折などが生じやすい環境は変わっていない。
また、注意欠陥・多動性障害(AD/HD)や学習障害(LD)などを併発している場合もある。 このような合併障害があることと、「アスペルガー」や「自閉症」という言葉には偏見があることなどを理由に、まとめて「広汎性発達障害(PDD)」や「発達障害」と呼ぶ医師も増えているが、逆にアスペルガーを知らなかった者にとっては、「障害」という言葉に対しての方が偏見を持つ者も多く、まだまだ議論の余地がある。 なお自閉症スペクトラムの考え方では、定型発達者とカナータイプ自閉症の中間的な存在とされている。
他の精神疾患と誤診される可能性があるとの意見や報道がある[3]。誤診されやすいものとして統合失調症、妄想性人格障害、ADHD、ナルコレプシー、びっくり病が挙げられている[4]。
自閉的な特徴を持っていた著名人は多く、研究者や偉人に対する「変わり者の天才」というステレオタイプの形成を助けてきた。ただし、アスペルガー症候群のような高機能な自閉症の存在が知られるのはここ数十年、特に一般に認知されてきたのは1980年代以降であるため、生前に診断や検査を受けた者は例外的である。疑いがあるが、診断されなかった者たちについて残された記録をもって推測することの是非について論争が絶えない。
アスペルガー症候群の特徴を題材にした作品の表記であって、単に作中にアスペルガー症候群の人物が登場するだけの作品は記載しない。
主にアメリカの学会などで、アスペルガー症候群そのものは障害ではなく、治療すべき対象ではないという議論がある[29]。 また、そもそもアスペルガー症候群を「シンドローム」(症候群)であるとか、「ディスオーダー」(障害)とすべきでないという主張もある[30]。
2013年5月、DSMの19年ぶりの改訂で、アメリカの精神医学会はDSMからアスペルガーを外す見通しが発表された[1]。 これは単純に、「高い能力をそれほど持たない人が、持つ人を攻撃する手段として、アスペルガー症候群の名が濫用されている」ことに対する批判が、正当化されたことを意味している。
昭和大学附属烏山病院院長の加藤進昌は、アスペルガー症候群の社会認知が広がる一方で、アスペルガー症候群の人間は「頭の良い人」であるとか、「ちょっと変わった人」という一種のステレオタイプ化が進んでいる風潮に警鐘を鳴らしている[31]。加藤自身、診察で否定しても「自分はアスペルガー症候群に違いない」であるとか、対人関係がうまくいかないことに「アスペルガー症候群でこうなった」と決め付け、食い下がる患者が多いという[31]。
2001年5月にソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント (日本)がビデオスルーで「アスペルガー 死の団欒」と名づけて発売する予定だった外国映画(原題は「Absence of the Good」、1999年のアメリカ映画)が、抗議を受けて発売中止となった。原題にはアスペルガーという単語は使われておらず(直訳しても「良心の不在」程度にしかならない)、登場人物にもアスペルガー症候群らしい人物は存在しないと考えられる[32]。
また、2008年頃から相次いで医師によるアスペルガー症候群の解説書が刊行されていることについて、医師たちの執筆動機の一つには、あたかもアスペルガー症候群の人物が犯罪を起こしやすいかのような解釈への対処がある。この背景には、一部の少年事件の加害者がアスペルガー症候群だと報道されたことが挙げられる。しかし、アスペルガー症候群の人物が犯罪を起こしやすいというデータは確認されておらず、鑑別所や少年院の中の該当者は2%程度とされている。また、犯罪を起こしたケースについても、対人コミュニケーションスキルの不足から、当人が世の中の仕組みをよく理解できていないことによって軽微な犯罪が引き起こされてしまったケースがほとんどである[33]。
広汎性発達障害のノートに、この節に関係する提案があります。ご意見をお寄せ下さい。 |
アスペルガー症候群の人は認知の歪みを抱えており、自分の感情をコントロールするのが困難なため、「キレ」やすく、反社会的な行動をとることがあると考える人々もいるが、統計的に立証されておらず、支援団体や専門家[誰?]は「アスペルガー症候群そのものが犯罪に直結することは決して無い」と強く主張している[要出典]。アスペルガー症候群が事件を誘発したのか、もしそうだとしても主たる要因がアスペルガー症候群自体なのかその他の障害なのかについてなど、誘因の特定はきわめて困難である。また、心身の成長と共に、前述の症状が消えて行くケースも見られる。 現在の診断基準においては、アスペルガー症候群とADHD、チックなどとは重複診断をしないこととなっており、判断はきわめて難しい。
以下に挙げるものは、社会に大きな影響を与えた事件である。
厚生労働省によるとアスペルガー障害が含まれる「F8 心理的発達の障害」カテゴリーの入院対象者は2010年6月30日現在、8名である。 [37]
アスペルガー症候群の人は、現代社会に対し、非常に適応しにくい困難さをかかえている。あちこちで衝突が起こり、引きこもりになっていることも少なくない。自分自身に強いコンプレックスを抱え、二次障害でうつ病を発病したり、自殺志願を持つ人も決して少なくない。そういうアスペルガー症候群の人に援助をする必要が急がれている。発達障害者支援センターなどをはじめ、少しでもアスペルガー症候群の人が社会で暮らしやすいよう、地域活動支援センターやデイケアなどの設備を整える必要が早急に問われている。最も必要なことがこの障害を理解し、受け入れる環境的素地を作り上げることである。
2012年現在、関連書籍が多数発売されたり、主にNHKでアスペルガー症候群についての番組や特集が組まれることが増え、社会認知はある程度は進んだと言える。しかしながら、身体障害やダウン症候群など、目に見える障害ではなく、またアスペルガー症候群の人と実際に話してみても、障害を持っている人間とはわからない場合も多く、外見もごくごく普通であることがほとんどなので、自らカミングアウトしない限り、「変わり者」程度の認識しか持たれないケースが多く、これが障害を抱える本人にとっての苦痛になっている。他人とのコミュニケーション能力の障害ゆえ、対人関係での衝突や確執が多く生まれることがあり、これもまた障害を持つ本人に苦痛を与える大きな要因となっている。相手が理解をしてくれない限り、「変な奴」と見られ、いじめの対象になったり、周りから嫌われたり、仕事上の足手まといのような存在に思われることもあり、非常に難しい障害であると言える。中には本人が障害そのものを強いコンプレックスに感じ、自分自身障害を認めず無理やり健常者と同じ社会に出てしまうケースもある。無論これは精神的にも肉体的にも良くない事であり、そこからうつ病など発症してしまう可能性がある。
大きな問題は、この障害に対する福祉制度がまだ未熟であることにある。2005年に発達障害者支援法が制定され、障害者自立支援法に発達障害も範疇に入ることが2010年代に入って決められたが、実際に働くことが対人関係上の理由から困難で、ひきこもりになっている人々への救いの手はまだ差し伸べられていない。アスペルガー症候群の人も精神障害者保健福祉手帳を持てるが(自治体の裁量で持てない場合もある)、働くことや他人との関わりに困難を抱えている人は多く、そういった人々への援助は進んでいない。ただ、行政の側でも発達障害を持つ人を雇った企業へ助成金を支給するなどの取り組みは行なわれている。しかし、働く意欲のあるアスペルガー症候群の人が、対人関係や精神衛生上の問題をクリアした上で就労できる時代にはまだなっていない。
アスペルガ-症候群が苦手もしくは不可能とされる職業は接客業、多様なメニューに対応する調理人、受付常務、様々な作業を担当する事務、コミュニケーションが大事な営業や勧誘業、などの器用で効率よく場の空気を読んで、臨機応変な対応をする常務はなどが苦手とされる。すなわち世の中に存在するほとんどの仕事が苦手である。
一方得意とされる職業は、画家、彫刻家、工芸家、陶芸家、写真家、建築家などの美術家。作詞家、作曲家、編曲家などの音楽家。小説家、漫画家、詩人、映画監督、脚本家、放送作家などの作家。その他、フラワーアーティスト、ヘアメイクアーティスト、ファッションデザイナー、ゲームクリエイター、フリーライター、評論家など。これらの職業はコミュニケーション能力が必要ない場合もあり、スピード重視や臨機応変といった概念もあまり無い。 また通常では理解しがたい行為、行動、発想、こだわりはアーティスト(芸術家)にとっては長所になる可能性があり、うまい具合にシナジーを発揮するかもしれない。
発症の原因については自閉症#原因を参照のこと。近年、脳の先天的な機能障害と理解されるようになった。
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国試過去問 | 「102G064」「101G006」 |
リンク元 | 「発達障害者支援法」「自閉症」「高機能自閉症」「Asperger syndrome」「Asperger's syndrome」 |
関連記事 | 「症候群」「群」「症候」 |
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第一章 総則
(目的)
(定義)
(国及び地方公共団体の責務)
(国民の責務)
第二章 児童の発達障害の早期発見及び発達障害者の支援のための施策
(児童の発達障害の早期発見等)
(早期の発達支援)
(保育)
(教育)
(放課後児童健全育成事業の利用)
(就労の支援)
(地域での生活支援)
(権利擁護)
(発達障害者の家族への支援)
(発達障害者支援センター等)
(秘密保持義務)
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