溶連菌感染後急性糸球体腎炎
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/09/22 05:34:46」(JST)
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糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん、英語: Glomerulonephritis)は、腎疾患の一つで腎臓の炎症の一つ。
腎臓の炎症である腎炎は病理組織学的に炎症の首座がどこにあるかによって、糸球体腎炎、間質性腎炎、および腎盂腎炎に分類される。主に糸球体に炎症反応がみとめられるものを糸球体腎炎と呼ぶ。
目次
- 1 種類
- 2 急性糸球体腎炎
- 2.1 原因
- 2.2 症状
- 2.3 検査
- 2.4 治療
- 2.5 診断のメモ
- 3 急速進行性腎炎症候群
- 4 慢性糸球体腎炎
- 4.1 病型
- 4.2 原因
- 4.3 症状
- 4.4 検査
- 4.5 治療
- 5 関連
- 6 外部リンク
種類
- 急性糸球体腎炎(Acute glomerulonephritis)
- 急速進行性腎炎症候群(Rapidly progressive glomerulonephritis)
- 慢性糸球体腎炎(Chronic glomerulonephritis)
急性糸球体腎炎
急性糸球体腎炎(英語: Acute glomerulonephritis; AGN)は、その90%が連鎖球菌感染に続発していることから、溶連菌感染後急性糸球体腎炎(英: Poststreptococcal Acute GlomeruloNephritis; PSAGN) とも呼ばれており、抗原抗体反応(アレルギーIII型)によって発症するび慢性の炎症である。溶血性連鎖球菌感染後に起こる腎炎が最も多い。小児や青年期に罹患する事が多く、先行する感染としては扁桃炎・咽頭炎等が大部分を占める。
原因
A群β溶血性レンサ球菌感染症後に発症するものが大部分であり、この菌が抗原となる事で抗原抗体複合体を形成し、これが腎糸球体に付着することで炎症を引き起こす。
症状
上気道感染の2~4週間後に発症する。前症状として全身倦怠感、頭痛、咽頭痛、悪心、嘔吐、下痢、便秘等を生じ、その後に主症状である浮腫、血尿、高血圧が診られ、尿量も減少する。
検査
- 尿検査…蛋白尿・血尿・赤血球円柱尿が見られる。
- 細菌学的検査…鼻咽頭からβ-溶血連鎖球菌(溶連菌)を検出。
- 血清学的検査…ASO値の上昇。血清補体活性の低下 (CH50)。
- 腎機能検査…糸球体濾過の低下は見られるが、腎の血流量は正常。
治療
食事制限として塩分、蛋白質、水分の摂取を制限する。また、薬物的には特効薬は無いが、感染の拡大防止としてのペニシリン・マクロライドの投薬を行うことがある(現在ではその有効性は否定的)高血圧の改善目的で利尿薬を第一に使うことが多い。扁桃炎を繰り返す場合は扁桃の摘出も必要になる。なお治療率は小児で約90%以上、成人でも50~80%は完治する。
診断のメモ
-
- 顕微鏡的血尿も見られない場合は急性糸球体腎炎は考えにくい。
- ネフローゼ症候群を呈している場合も急性糸球体腎炎は考えにくい。
- 低補体血症が持続する場合は急性糸球体腎炎ではなく膜性増殖性糸球体腎炎を考える。
急速進行性腎炎症候群
急速進行性糸球体腎炎(英語: Rapidly progressive glomerulonephritis; RPGN)とはWHOにより、『急性あるいは潜在性に発症する肉眼的血尿、蛋白尿、貧血、急速に進行する腎不全症候群』と定義されており、日本では難病疾患に指定されている。
検査
- 尿検査…蛋白尿は高度であり、しばしばネフローゼ症候群を呈する。
顕微鏡的血尿は必発であり、沈渣に多数の赤血球、白血球、及び赤血球円柱が認められる。
- 血液生化学検査…BUN及び血清クレアチニン値は進行性に上昇する。
- 血清学的検査…抗基底膜抗体、p‐ANCA、あるいはc‐ANCAが検出されることがある。
- 腹部X線と腎超音波検査…腎は正常の大きさあるいは腫大を示す。
- 胸部X線検査…肺出血による異常陰影が認められることがある。
治療
副腎皮質ホルモン製剤と免疫抑制薬,抗血小板薬,抗凝固薬による多剤併用療法が基本となる。 症例に応じ血漿交換療法などが行われることがある。
慢性糸球体腎炎
急性糸球体腎炎の発症後、1年以上にわたって異常な尿所見や高血圧症状の持続するものを指す。また、発病時に明らかな腎炎症状は見えないが、1年以上異常尿所見の続くものも含む(ただし、膠原病・糖尿病性腎症・痛風腎・本態性高血圧・腎血管性高血圧・腎盂腎炎・起立性蛋白尿・中毒性腎症等の全身性疾患に因る物は除外する)。なお、進行により腎不全から尿毒症へと変化する。
病型
-
- 巣状糸球体硬化症・巣状糸球体炎(FGS)
- メザンギウム増殖性糸球体腎炎
- 膜性糸球体腎炎
- 膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)
- 硬化性糸球体腎炎
- その他
原因
不明。ただし、免疫機序が考えられている。
症状
急性糸球体腎炎と同様である。
検査
-
- 尿検査…蛋白尿・顕微鏡的血尿が見られる。
- 血液生化学検査…総蛋白/総コレステロール比の低下(尿蛋白排泄の多い時)。尿素窒素/クレアチニン比の上昇(糸球体濾過値低下時)
- 腎機能検査…血清尿素窒素、血清クレアチニンの上昇。クレアチニンクリアランス(Ccr)の低下。
- 腎生検…病型の確定。
治療
病状の進行が見られない場合は生活管理・食事療法を中心とし、薬物を補助的に用いる。病状の進行が見られる場合は、厳密な食事療法と薬物療法を組み合わせて用いる。薬物投与は蛋白尿に対してはジピリダモール、ネフローゼ症候群を呈する場合は副腎皮質ステロイドを使用する。また、高血圧の場合はα―メチルドーパを、浮腫の強い場合はフロセミドなどの利尿剤を投与する。
関連
- 腎臓学
- 連鎖球菌感染後糸球体腎炎(en:Post-streptococcal glomerulonephritis)
外部リンク
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疾患 |
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糸球体病変
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急性糸球体腎炎 | IgA腎症 | 急速進行性糸球体腎炎 | 慢性糸球体腎炎
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原発性
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尿路結石
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慢性腎不全 | 尿毒症
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検査 |
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尿細管
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尿道 - 陰茎 - 陰茎亀頭 - 陰茎亀頭冠 - 海綿体 - 陰茎ワナ靭帯 - 陰茎包皮 - 陰茎小帯 - 陰嚢 - 精索 - 精巣上体 - 精細管 - セルトリ細胞 - 精巣輸入管 - 輸精管 - 精嚢 - 射精管 - 前立腺 - 尿道球腺 - 精巣網 - 精巣
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Japanese Journal
- 血小板減少を伴った溶血性連鎖球菌感染後糸球体腎炎の1例 (主題 腎・尿路疾患)
- 連鎖球菌感染後糸球体腎炎罹患時に観察される白血球尿について
Related Links
- 症状 急性レンサ球菌感染後糸球体腎炎(きゅうせいれんさきゅうきんかんせんごしきゅうたいじんえん)。APSGNと略称されるものであり、急性糸球体腎炎の一つとなります。急性であるため、突然糸球体濾過率の低下、水分貯留 ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- poststreptococcal acute glomerulonephritis PSAGN
- 同
- 急性溶連菌性糸球体腎炎 acute poststreptococcal glomerulonephritis
- 連鎖球菌感染後糸球体腎炎 poststreptococcal glomerulonephritis poststrepococcal GN, post-streptococcal glomerulonephritis
- 猩紅熱腎炎 scarlatinal nephritis
- 関
- 非溶連菌性感染後急性糸球体腎炎、急性糸球体腎炎、糸球体腎炎。IgA腎症
[show details]
- first aid step1 2006 p.385(Glomerular pathology)
概念
- A群β溶血性連鎖球菌感染症後に1-2週間して発症するnephritic syndrome
疫学
病因
- A群β溶血性連鎖球菌感染後(上気道炎、皮膚膿痂疹)に続発
- 潜伏期:1-2週間 ← IgA腎症との鑑別点
病態
- 溶連菌成分を抗原とする抗体が産生されて免疫複合体が形成され、この免疫複合体が糸球体基底膜に沈着し(上皮側)、III型アレルギーの機序により補体活性化、多形白血球浸潤、ケミカルメディエーターの放出が起こる。
病理
- 糸球体の腫大、富核、白血球の浸潤 ← 白血球の浸潤と糸球体内の細胞の増殖による
- 蛍光抗体法:係蹄壁へのC3の顆粒状沈着
- 電顕:上皮細胞下沈着物(ハンプ) → subepithelial humps on EM
- typical electron-dense subepithelial(足細胞と基底膜の間) "hump" and intramembranous deposites.
症状
検査
- 糸球体係蹄壁への顆粒状C3の沈着、IgGの沈着は50-60%の例に認められる。
合併症
治療
- 急性期:安静、食事療法(水分制限、塩分制限、蛋白制限)
予後
- 良好。90%以上が1-3ヶ月で治癒。一部急性期に死亡/慢性腎不全への移行(SPE.596)
USMLE
参考
- 1. [charged] poststreptococcal-glomerulonephritis - uptodate [1]
国試
[★]
溶連菌感染後急性糸球体腎炎 = 連鎖球菌感染後糸球体腎炎 poststreptococcal glomerulonephritis
[★]
溶連菌感染後急性糸球体腎炎
[★]
- 英
- glomerulus (Z)
- 関
- ボウマン嚢、腎小体、腎臓、輸出細動脈#調節
概念
- 1個の腎臓に100万個存在。
- 房状の毛細血管からなる
- 糸球体の毛細血管は有窓型毛細血管である
糸球体の微細構造 (SP.785)
詳細には
血流の調節 (HIM.1742)
- 輸入細動脈:autonomous vasoreactive reflex in afferent arteriole, tubuloglomerular feedback
- 緻密斑でのCl-の低下 = 原尿流速が早い → 腎灌流量の低下と解釈
- 腎灌流圧↑→輸入細動脈の平滑筋収縮
- 腎灌流圧↓→輸入細動脈の平滑筋弛緩
- 緻密斑はNaClの再吸収にとともにATP、(アデノシン)を細胞外に放出。細胞外のecto-5'-nucleotidaseがATPからアデノシンを産生。アデノシンが輸入細動脈のvasoconstrictorとして作用
- loop diureticsは緻密斑でのNaClの再吸収を妨げるので、尿細管糸球体フィードバックを阻害→糸球体濾過量は高レベルに保たれる
- アンジオテンシンIIと活性酸素種は尿細管糸球体フィードバックを増強 → 輸入細動脈収縮 → 糸球体濾過量低下
- NOは尿細管糸球体フィードバックを減弱 → 輸入細動脈弛緩 → 糸球体濾過量上昇
- 輸出細動脈:angiotensin II-mediated casoconstriction of the efferent arteiole
-
臨床関連
[★]
- 英
- glomerulonephritis
- 同
- 腎炎
- 関
- 糸球体病変
症状
臨床的分類
メモ
- 081201
- E:\データセンター\学習\細々とした勉強ファイル\糸球体腎炎_など.xls
[★]
- 英
- infection
- 関
- 定着、感染症、不顕性感染、顕性感染。サブクリニカル感染
- 細菌が宿主の体表面、体内や組織内に付着して増殖し、定着している状態。
- 感染の成立には微生物(定着能、増殖能、細胞内進入能、毒素産生能などを総合した病原性)と宿主(排除能、殺菌能などの生体防御機構)の力関係が崩れたときに生じる
[★]
- 英
- linkage、link、(化学)catenation、linked
- 関
- 関連、結合、結びつける、連関、連結、連接、リンク、連鎖性、連鎖的、関連づける、カテネーション
- 遺伝子、対立遺伝子
[★]
- 関
- 炎光、炎症