慢性炎症性脱髄性多発神経炎
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/09/30 23:28:47」(JST)
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慢性炎症性脱髄性多発神経炎 (まんせいえんしょうせいだつずいせいたはつしんけいえん、Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy、CIDP)は、末梢神経の脱髄および炎症細胞の浸潤をきたす神経疾患のひとつ。慢性炎症性脱髄性多発根神経炎と呼ばれたり、神経炎をニューロパチーとするなど学会や組織によって表記のゆれがある。特定疾患に指定されており、公費対象となっている。
目次
- 1 概要
- 2 症状
- 3 検査
- 4 治療
- 5 関連項目
- 6 外部リンク
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概要
同じ末梢神経の脱髄疾患であるギラン・バレー症候群と似ているが、急性疾患であるギラン・バレー症候群とは異なり、慢性で進行性あるいは再発性の経過をたどる。
当初は特定疾患に指定されていなかったが、2009年9月17日に行われた特定疾患懇親会で特定疾患に追加されることが決定した。
症状
四肢の脱力やしびれ、感覚鈍麻といった、運動神経と末梢神経の双方の障害が認められる。そのため、下肢の脱力によって歩行困難や転倒しやすい状態になったり、上肢の脱力や感覚鈍麻により物をつかんだり細かい作業をしたりするのが困難になったりするといった症状が認められる。
検査
神経学的所見としては、四肢の腱反射の減弱・消失が認められる。また、神経伝導速度検査では振幅は正常範囲であるが、潜時が長くなるという脱髄所見が認められる。
治療
大量免疫グロブリン療法(免疫グロブリンを5日間連続して点滴投与する)、ステロイド療法が有効である。ステロイド療法は内服とステロイドパルスの双方が行われる。再発を繰り返す場合は免疫抑制剤の内服も検討される。症状の増悪を繰り返す場合は免疫吸着も行われる。
関連項目
- みゅうの足(あんよ)パパにあげる - 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーを基にした作品。
外部リンク
- 全国CIDPサポートグループ
- 難病情報センター | 慢性炎症性脱髄性多発神経炎(公費対象)
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎および多巣性運動ニューロパチーのグロブリン大量静注療法におけるクリニカルパスの有用性
- 家田 俊明,山脇 崇,野田 成哉,岩出 展行,三宅 敏之,鎗田 文
- 末梢神経 = Peripheral nerve 21(2), 289-290, 2010-12-01
- NAID 10027742453
- 一時的に totally locked-in state を呈したIgA-λ型M蛋白血症に関連する慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の1例
- 林 信太郎,長嶺 俊,塚越 設貴,水野 裕司,岡本 幸市
- 末梢神経 = Peripheral nerve 21(2), 282, 2010-12-01
- NAID 10027742438
Related Links
- 数日から約1週で発症する急性炎症性脱髄性多発根神経炎(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy: AIDP 別名:ギラン・バレー症候群)に対して、CIDPの 発病は急性、亜急性あるいは慢性の時もありますが、経過は2ヶ月以上にわたり緩徐に ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 68歳の女性。下肢の筋力低下を主訴に来院した。3か月前から下肢の筋力低下を自覚し、和式トイレから立ち上がれなくなり、階段昇降もできないようになった。同じころから足先にジンジンする感じを自覚するようになった。下肢の筋力低下は少し改善したが症状が長引くので受診した。意識は清明。脈拍 68/分、整。血圧 134/82mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。脳神経に異常を認めない。徒手筋力テストで左右差なく、大腿四頭筋は4、前脛骨筋は4で筋萎縮はみられない。表在感覚は正常で下肢振動覚は軽度低下し、四肢腱反射は消失している。自律神経障害はない。血糖 98mg/dL、HbA1c 5.8%(基準 4.6~6.2)。心電図と心エコー図とに異常を認めない。運動神経伝導検査の結果(別冊No. 6)を別に示す。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109E049]←[国試_109]→[109E051]
[★]
- 自己免疫性神経疾患とその治療薬の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [107I038]←[国試_107]→[107I040]
[★]
- 英
- chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy, chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy, CIDP
- 同
- 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発性根神経障害、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎
- 関
- 難病
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概念
病因
- 末梢神経ミエリンの構成成分に対する免疫異常に基づく自己免疫性疾患と考えられている。
uptodateの見解
- 参考2
- CIDPが単一の疾患なのか症候群なのかは議論が分かれるところである。以下の疾患はいずれも慢性、脱髄、炎症、あるいは免疫の媒介(immune-mediation)を共通に有する (略) (以下、鑑別疾患に上げられると思われるため、列挙。現時点でのCIDPの疾患概念はとにかく原因不明ということ)
- CIDP
- 多巣性運動ニューロパチー、multifocal motor neuropathy、MMN
- Lewis-Sumner症候群、Lewis-Sumner syndrome、MADSAM
- IgM異常蛋白をともなう遠位脱髄性神経炎±抗MAG抗体、distal demyelinating neuropathy with IgM paraprotein, with or without anti-myelin associated glycoprotein
- IgG, IgA異常蛋白をともなう脱髄性神経炎、demyelinating neuropathy with IgG or IgA paraprotein
- POEMS症候群、POEMS syndrome
- 感覚優位型脱髄性神経炎、sensory predominant demyelinating neuropathy
- 中枢神経系の脱髄を伴う脱髄性神経炎、demyelinating neuropathy with central nervous system demyelination
- その他の膠原病・血管炎、甲状腺中毒症、臓器移植・骨髄移植、遺伝性ニューロパチー、ネフローゼ症候群、炎症性腸疾患。
- 全身疾患に関連する脱髄性神経炎:B型肝炎、C型肝炎、HIV感染、リンパ腫、糖尿病、全身性エリテマトーデス
検査
診断基準
- 参考1
- 診断:( 1.の1)2) ) and ( 2.の1) ) and ( 2.の2)~5)のうち1つ )
主要項目
1. 発症と経過
- 1) 2ヶ月以上の経過の、寛解・増悪を繰り返すか、慢性進行性の経過をとる多発ニューロパチーである。
- 2) 当該患者の多発ニューロパチーを説明できる明らかな基礎疾患、薬物使用、毒物への曝露がなく、類似疾患の遺伝歴がない。
2. 検査所見
- 1) 末梢神経伝導検査で、2本以上の運動神経において、脱髄を示唆する所見を示す。(伝導速度の低下、伝導ブロックまたは時間的分散の存在、遠位潜時の延長、F波欠如または最短潜時の延長)
- 2) 脳脊髄液検査で、蛋白増加をみとめ、細胞数は10/mm3未満である。
- 3) 免疫グロブリン大量療法、副腎皮質ステロイド薬、血液浄化療法、その他の免疫療法などにより改善を示した病歴がある。
- 4) MRIで神経根あるいは馬尾の肥厚または造影所見がある。
- 5) 末梢神経生検で脱髄を示唆する所見がある。
鑑別診断
治療
参考
- 1. 慢性炎症性脱髄性多発神経炎(公費対象) - 難病情報センター
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/333
- 2. [charged] Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy: Etiology, clinical features, and diagnosis - uptodate [1]
- 3. [charged] Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy: Treatment and prognosisFind Print Email - uptodate [2]
[★]
商品名
ピリヴィジェン
会社名
CSLベーリング
成分
薬効分類
第3の1
薬効
慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の筋力低下の改善及び慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)を効能・効果とする新有効成分含有医薬品
[★]
- 英
- inflammation
- 同
- 炎症反応 inflammatory reaction
- 関
- 急性炎症による有害な刺激物が除去され組織が修復されるが、障害が続けば慢性炎症となる。
主徴 (BPT.32)
原因
- ウイルス、リケッチア、細菌、真菌、原虫、寄生虫
- 日光、放射線物質、電気的刺激、摩擦
- 酸・アルカリ
- 壊死物
- 異物
- 免疫学的な刺激(アレルギー、自己免疫疾患)
分類
- 比較的短期間で終了し滲出と好中球浸潤が主体
- 長時間持続し、組織増殖とリンパ球・組織球浸潤が主体
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急性炎症
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慢性炎症
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概要
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滲出性病変が主体
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増殖性変化が主体
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経過
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急性・一過性
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遷延性・潜行性
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血管
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血管透過性亢進
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血管新生
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間質組織
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充血・浮腫
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線維芽細胞・血管・間質結合組織の増生
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浸潤細胞
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好中球→マクロファージ→リンパ球
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急性炎症 (BPT.33)
- vasolilation
- increased vascular permeability
- cellular recruitment and activation
慢性炎症
[★]
- 英
- nerve
- ラ
- nervus
- 関
- ニューロン
解剖で分類
- 中枢神経 central nervous systen CNS
- 末梢神経 peripheral nervous system PNS
情報で分類
- 感覚神経 sensory nerve = 求心性線維 afferent nerve
- 運動神経 motor nerve = 遠心性線維 efferent nerve
機能で分類
- 体性神経 somatic nervous system SNS
- 自律神経 autonomic nervous system ANS
[★]
- 関
- 炎光、炎症
[★]
- 英
- neuritis
- 同
- 末梢神経炎、?ニューロパシー neuropathy
[★]
- 英
- multiple
- 関
- 多発性、複数、多重、マルチプル