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輸血(ゆけつ)とは、血液成分の不足を自他の血液から補う治療法のこと。血液を臓器のひとつとしてみれば、最も頻繁に行われている臓器移植であるといえる。
通常は他人の血液から調製された輸血製剤を点滴投与することを指す。感染症やGVHDに罹る危険を減らすため、手術や化学療法を行う際に、あらかじめ採血し保存しておいた自己の血液を使うことがあり、これを特に自己血輸血と言う。
輸血製剤の量は「単位」で表記する。日本では200 mlの献血から作られる量が1単位で、国により量が異なる。かつては顆粒球輸血も行われていたが、副作用が多いこと、G-CSFが発見され投与されるようになったことなどから現在では少数派となりつつある。しかし小児や、なかなかG-CSFの効果が現れないような症例の場合には非常に有効となるので、現在でも一部の医療機関では行われている。
略称はRCC、RCC-LR、RC-M.A.P.(英語名のRed cell Concentrates mannitol adenine phosphateから)等。
全血から、赤血球のみを取り出し、MAPなどの保存液を添加したもの。極度の貧血(鉄欠乏やビタミンB12欠乏など薬物治療が有効でないものに限る)や外傷・手術による出血に対して用いる。2007年2月より全白血球除去となり、薬価も4000円ほど(400 ml)高くなった。しかし、全く白血球が残存していないことが保証されているわけではない。保存期間は2 - 6℃で21日間。通常は2単位を1時間で点滴する。他の低張な輸液製剤と混ぜると溶血することがあるので注意が必要である。1単位は血液200 mlを遠心分離によって区分けし、保存液などを合わせて140 mLとしている。マップ (MAP) と略称されることがあるが、その言葉は、全く濃厚赤血球を意味しない。また、日本国内で製造、販売されている濃厚赤血球は、ほとんどすべてが、「放射線照射赤血球濃厚液ーLR」という製品であり、製造元で使用されている略称は、「Ir-RCC-LR」である。「Ir」とは、放射線を照射することにより、僅かに含まれている白血球を不活化し、GVHDの発症を予防している事を示す。「LR」は、白血球除去処理済み (Leukocytes Reduced) の略語である。
循環血液量の15~20%の出血なら細胞外補充液、20~50%なら人工膠質液を投与し、赤血球不足による酸素供給不足が疑われればRCCを投与する。
通常、慢性貧血でも日常生活(QOL)などに支障が無ければ輸血は行われない。
また、AIHA(自己免疫性溶血性貧血)でも最初は副腎皮質ステロイド薬が第一選択となる
RCC-LRの1単位のHb値は19g/dl、容量は140ml(2単位なら280ml)なので
1単位あたり19g/dl×140ml/100=約26gのHbが含まれている。
また循環血液量は70mL/kgなので
予測上昇Hb値(g/dl)=投与Hb量(g)/体重(kg)×(70ml/kg) /100
例えば体重70kgの患者に2単位のRCCを投与した場合、上記の式より
予測上昇Hb値(g/dL)= 19g/dl×280ml/100/70kg×(70ml/kg) /100
=約1.08g/dlとなる
略称はPC(英語名のPlatelet Concentratesから)。
20 - 24℃で振盪して保存する。2004年10月より全製剤白血球除去(1バッグあたり10の6乗以下)となっている。さらに有効期間は2007年11月に「採血後72時間以内」から「採血後4日間」と延長された。使用対象の疾患が複雑で、普通は血小板不足による出血に対して用いるが、中には禁忌の疾患もある。
血小板が5万/uL以上あれば重篤な出血は無い。
予測血小板増加数(/ul)=輸血血小板総数/{循環血液量(ml)×103}×(2/3)
またPC10単位あたりの血小板数は2×1011 例えば体重70kgの患者に10単位のPCを投与した場合、上記の式より
予測血小板増加数(/ul)= 2×1011/{70kg×(70ml/kg)×103}×(2/3)
=約27000/ulとなる
輸血効果はCCI(補正血小板増加数)で判定される。
1時間後に7500(/ul)、24時間後でも4500(/ul)を下回れば無効。
その場合はHLA抗体の存在が疑われ、HLA適合血小板の輸血が必要となる。
CCI=増加血小板数(/ul) ×体表面積(m2)/輸血血小板総数 (×1011)
例えば体表面積14m2の患者のPC10単位投与1時間後に10000(/ul)上昇していた場合、上記の式より
CCI=10000(/ul) ×1.4(m2)/2.0(×1011)
=7000(/ul)となり、7500以下なので無効となる。
略称はFFP(英語名のFresh-frozen Plasmaから)。
採血後分離した血漿成分を6時間以内に-20℃で凍結したもの。使用直前に30~37℃で融解し3時間以内に投与される。
もし融解したものを保存するには4℃で保管するが、「第Ⅴ因子」と「第Ⅷ因子」は不安定なのですぐ失活してしまう。
血漿中にはアルブミンなどの血漿蛋白や種々の凝固因子が含まれる。血中蛋白の不足だけならばアルブミン製剤で補えるので、新鮮凍結血漿が必要になるのはDICなど凝固因子が枯渇している場合である。
2005年から、採血後6か月間の貯留保管が実施されており、現在、医療現場で使用されているFFPは全て採血後6か月間の貯留保管期間を経過した製剤である。保存期間は-20℃以下で1年間。
一般的に出血量100%以上で希釈性凝固障害が起きた際に使用される。また、凝固因子「第Ⅴ因子」「第XI因子」欠乏症に対する濃縮製剤は無いため、これを補充するにはFFPを使うしかない。
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の場合、TTPは血清中にADAMTS13に対する自己抗体ができ、そのためフォン・ウィルブランド因子マルチマーを切断できず血小板血栓が生じる疾患なのでFFPで血漿交換療法を行う。
L―アスパラギナーゼ投与に伴う出血には適応となるが、逆にクマリン系薬剤に伴う出血の場合、これは肝臓で第、Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子を合成する際に必要なビタミンK依存性酸素反応の阻害剤なので、これらの欠乏にはFFPではなくビタミンKの補充を行う。
予測上昇凝固因子活性値(%)=FFP投与量(ml)×血管回収率(%)/循環血漿量(ml)
例えば体重70kgでヘマトクリット60%の患者にFFP4単位(480ml)投与すると、
血管回収率を80%とすると、循環血漿量は70mL/kg×(1-Ht)なので、
予測上昇凝固因子活性値(%)=480(ml)×0.8/70kg×70mL/kg×(1-0.6)
=約19.6%上昇する。
急性の低蛋白血症に基づく病態や他の治療では管理が困難な慢性低蛋白血症による病態に対して一時的な病態改善を図るために使用する。25%製剤としてブミネート、ベーリングのほか、5%製剤としてアルブミナが有名である。かつては術後2日間は細胞外液と血清アルブミン濃度の減少がみられるため、様々な輸血製剤が用いられてきたが現在は細胞外液以外の補充は必要ないとされている。乏尿が出現し、細胞外液を負荷するのを躊躇する呼吸障害や低アルブミン血症が見られる場合は細胞外液とアルブミナを併用する場合はある。
50~100%の出血では、濃度低下による肺水腫や乏尿を防ぐため使用する。またギランバレー症候群に対する血漿交換の置換液としても使用される。
投与後の目標血清アルブミン濃度としては、急性の場合は3.0g/dL以上、慢性の場合は 2.5g/dl以上とする。
人工心肺使用後の低アルブミン血症は一時的なので、また肝硬変による慢性的な低アルブミン血症の場合にも使用されない。
アルブミンの血管回収率は40%、また循環血漿量は70ml/kg×(1-Ht)なので
必要投与量(g)=期待上昇量(g/dL)×体重(kg)×70ml/kg×(1-Ht) /100×2.5
例えば体重70kg、ヘマトクリット60%の患者のアルブミンを1g/dL上げたい場合、上記の式より
必要投与量(g)=1g/dl×70kg×70ml/kg×(1-0.6) /100×2.5
=40gとなる
これは5%250ml製剤では、 49/(0.05×250ml)=3.92 切り上げで4本必要となる
近年注目されている技術に、自己血輸血というものがある。これはあらかじめ自身の血液を摂取保存しておき、出血が見込まれる手術などに遭遇した場合、その血液を用いて副作用のリスクを軽減させるという目的がある。しかし、近年、多くの外科的手術では、輸血がされなくなりつつあり、大量出血が見込まれる整形外科的分野(主に骨の手術)や分娩を扱う産科分野と、適応は限定されている。
略称はWB(英語名のWhole Bloodから)。
採集された血液をそのまま輸血する方法。現在はあまり一般的ではない。なぜなら、血液成分は赤血球・血小板・血漿それぞれが保存条件が異なるため、分離しないままでは極端に保存期間が短くなるからである。ただし、一度に複数の系統の血液成分を補う必要がある場合には全血輸血の理論的適応がある。複数の血液製剤を使うよりも感染を受ける機会を減らすことができるからである。しかしながら、現在では血液センターからの全血供給は注文制であり、限られている。
術中の予想出血量が500~600で輸血の可能性が30%以下の待機的手術で、ABO型が判明しており、 かつRh(D)陽性で不規則抗体陰性の場合は交差適合試験をしない方式。
もし必要になれば生食法、もしくは製剤のABO型確認だけで出庫する。
過去データから術式別の輸血量(T)と準備量(C)を調べ、C/T比が1.5以下になるように製剤を準備する。
患者の術前Hb値、輸血開始Hb値、術式別平均出血量から準備量を計算する。
血液準備量(単位)=術式別平均出血量/200-(術前Hb値-輸血開始HB値)/(40/体重)
この結果が0.5以下ならT&S、それより大きければ四捨五入で単位数を算出。
コンピュータ支援により、一切の交差適合試験をしない方式。ただし下記の3つの条件がある。
輸血業務がコンピュータ化されていること
患者のID番号と血液型(2回以上異なる検体で検査)が登録されており、不規則抗体は陰性であること
製剤のABO血液型が自施設で再確認されていること
利点はABO不適合防止、迅速な出庫、省力化、製剤の有効利用など。
欠点は不規則抗体の繰り返しの測定が必要なことと、保険請求不可。
輸血用血液 | 保存条件 | 有効期間 |
---|---|---|
赤血球LR | 2 - 6℃ | 21日 |
洗浄赤血球LR | 2 - 6℃ | 48時間 |
解凍赤血球LR | 2 - 6℃ | 4日 |
合成血液LR | 2 - 6℃ | 48時間 |
血小板濃厚液 | 20 - 24℃ | 4日 |
新鮮凍結血漿 | -20℃以下 | 製造から1年 |
アルブミン製剤 | 室温 | 製造から2年 |
凝固因子製剤 | 凍結せず10℃以下 | 製造から2年 |
通常の輸液と異なり、血液製剤は、急速に大量に血管内に注入する必要がある場合がある。また、特に濃厚赤血球は冷却して保存されるため、冷たいRCCを急速に輸血した場合の血管痛を低減するため、また、体温の低下を防ぐため、加温しながら輸血を行うことが現在でも一般的である。そのための専用の輸血ライン用ヒーターが存在する。
術中での輸血では
血液法、および医薬品医療機器等法が知られている。しかしながら、医薬品医療機器等法は、ロットを構成する医薬品に適切な法律であり、ロットを構成しない輸血用血液に適用することが適切か問題を含んでいる。血液法および医薬品医療機器等法の要点は、安全な血液を安定供給する、国内自給を達成する、責務を明示するということである。特に医療従事者の責務としては適正輸血の推進、安全情報の提供、インフォームドコンセントの取得、投与記録の保管、調査の協力、輸血管理体制の構築が求められている。
HBV(B型肝炎ウイルス)はNAT感度以下の低ウイルス量でも感染する可能性があるためNATだけでなく、抗HBc抗体も測定されている。HBV,HCVのそれぞれの平均ウインドウ期間は34日、23日である。HIVについてはウインドウ期間 (window period) が11日と短縮された。海外渡航などのリスクがあれば34日以上は献血を避けるべきである。
輸血に伴う反応を理解するには血液製剤の作り方を考えると理解しやすい。血液製剤は採血によって得た血液を遠心分離することで成分を分離して作っている。赤血球製剤の場合は全てが赤血球というわけではなく、分離し切れなかった血漿、白血球、サイトカイン、血漿蛋白、保存液が含まれており、これが様々な作用をおこす。例えばアレルギーやアナフィラキシーは血漿蛋白が誘因となり、発熱はサイトカインが誘因となる。GVHDはリンパ球がおこし、TRALIや血小板不能は抗HLA抗体や抗顆粒球抗体が引き起こすと考えられている。原因がわかっているため現在も有害作用の除外が改善されている。例えば、2007年現在は製剤をつくる過程で白血球がフィルター除去されているため、サイトカインも少なく輸血後発熱の頻度はかなり低下した(これをLR製剤という)。またGVHD(輸血後7〜14日ころに発熱、紅斑、下痢、肝機能障害、血小板減少)の予防として放射線照射が行われている(但し、溶血しやすくなったため、今後腎障害の報告が増える可能性がある)。この効果は細胞の核に傷をつけることで細胞分裂を阻害し、GVHDを引き起こすだけのリンパ球が蓄積しないようにするということである。感染を防ぐため従来の抗原抗体反応よりもウインドウ期の短いNAT(Nucleic acid Amplification Test, 核酸増幅検査)が導入されている。またさらに血漿蛋白を除外したい場合は洗浄赤血球という製剤も用意されている。
そのため、ガイドラインでは輸血開始後5分間は輸血速度1ml、15分後からは5mlにし、看護師がベッドサイドにいて観察することが必要となっている。
蕁麻疹、かゆみ、発熱はいずれも抗原・抗体反応を基盤としておこると考えられている。
また、血圧低下は40%が輸血開始後10分以内に起き、30分以内では76%を占める。
特徴 | TRALI | TACO | |
体温 | 発熱 | 変化無し | |
血圧 | 低下 | 上昇 | |
呼吸症状 | 呼吸困難 | 呼吸困難 | |
頸静脈 | 変化無し | 怒張 | |
聴診 | ラ音 | ラ音 | |
心エコー | 正常~低下 | 低下 | |
肺水腫 | 滲出液(細胞・蛋白は多い) | 漏出液(細胞・蛋白は少ない) | |
利尿剤の効果 | なし | あり | |
白血球数 | 減少 | 変化なし | |
BNP | <200pg/ml | >1200pg/ml | |
白血球抗体 | + | - |
献血や自己血採血時の副作用でもっとも重要。転倒による死亡事故も起きている。
判定基準 | 基本症状 | その他の症状 | |
Ⅰ度 | 徐脈(>40/分)、血圧低下 | 顔面蒼白、冷汗、悪心など | |
Ⅱ度 | 徐脈(≦40/分)、血圧低下(<90Pa)さらに意識喪失 | 嘔吐 | |
Ⅲ度 | Ⅱ度に加え痙攣、失禁 |
「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」では主にHBV、HCV、HIVの検査のため輸血前後の患者血清(血漿)は2mL程度、-20℃以下で3ヶ月以上保管するよう言っている。
また特定生物由来製品の使用対象者の製剤名、ロット番号、氏名、住所などの記録は20年間の保管義務がある。
近年は輸血の施行の際に同意書をとることが一般的である。輸血の副作用で患者に傷害が生じた場合、PL法に基づくと日本赤十字社が賠償するべきだが、日本赤十字社を訴えるということが難しいということから、医療機関が訴えられることが多い。輸血製剤に病原菌が混入し、輸血を受けた患者が死亡したとき(菌の混入は輸血製剤の性状が変化するほどのものでないと確認できない)、その輸血製剤を使用した病院と医師が有罪になったこともある。輸血同意書には大抵は以下のようなことが記載されている。
輸血は確かに危険は伴うが、「重大な副作用が起こるリスクは交通事故の遭遇率より低いため同意書をとるほどのことなのか」という疑問が業界内にはある。
現在、適切な輸血に応じ医療機関に報酬が与えられている。ⅠとⅡがあり、下記で区別されている。
(FFP輸血量-血漿交換に使用したFFP輸血量/2)/RCC輸血量=0.54未満
かつAlb輸血量/RCC輸血量=2未満 が輸血管理料Ⅰ
(FFP輸血量-血漿交換に使用したFFP輸血量/2)/RCC輸血量=0.27未満
かつAlb輸血量/RCC輸血量=2未満 が輸血管理料Ⅱ
アルブミン製剤の使用量を求めるには、各アルブミンを使用重量(g)に換算する。 例えば、5%250mlなら12.5gとなる。これらを3で割った値が単位数である。
医療機関が輸血をする際に確認する項目を述べる。この項目が正確になされていないと輸血製剤に問題があった場合も医療機関は輸血製剤の不適切使用として訴えられ敗訴するという判例がある(判例に基づいた医療)。
赤血球MAP-LRの場合は2単位を1時間で点滴する場合が多いが、有効期限は点滴が終了する時間まで満たされていないと不正使用と認定されることがある。特に血小板濃厚液は有効期限が短いので注意が必要である。点滴がつまり、予定が狂ってしまうことはよくあるからである。
2004年から、ウイルスマーカーが陽転した献血者血液の遡及が始まり、患者に告知されているが、そのリスクとコスト、心理的影響を考えると問題なしとしない[誰によって?]。特に変異型クロイツフェルト・ヤコブ病 (vCJD) に関する遡及(英国滞在者からの輸血)は科学的にも容認しがたい[要出典]。
感染症に対する恐れや信条により(エホバの証人)、輸血を避ける人もいる。
新鮮血全血輸血が一般的であり、輸血を必要とするほどの病態ではその効果は即効的に現れる。
保存血の使用はヒトに比べるとあまり一般的ではない。しかし、施設によっては赤血球輸血、新鮮血漿輸血など成分輸血を行うこともある。
動物においても血液型の差異による同種免疫は存在するが、犬では初回の輸血では血液型が不適合であっても副作用発生の確率は低いとされている。しかし、100%安全であるとは言えない。自然抗体がある場合には輸血副作用が発生するリスクはある。従って、輸血液の相性をみる交差適合試験は不可欠となる。
歴史上の輸血に類する試みで文書に残るのは、17世紀の年代記作家、Stefano Infessuraの記述に遡ることができる。1492年、ローマ教皇インノケンティウス8世の臨終に際して、3人の10歳の少年の血が医師の提案で、口から与えられた。少年たちには金銭が与えられる約束であったが、教皇だけでなく3人の少年も死んだとされるが、Infessuraの作り話であるとする人々もある。ハーベーの血液循環説から、17世紀には、動物を使った実験が行われるようになり、1666年にはリチャード・ロウアーが犬から犬への輸血で失血させた犬に輸血を行い、回復させることに成功した。
人への輸血の試みは、国王ルイ14世の医師を務めたジャン=バティスト・デニが、1667年6月15日に15歳の少年に12オンス(約400cc)の羊の血を輸血し、次に労働者にも羊の血を輸血したが、これらの被験者は生き延びたが、輸血の量が少なく、拒絶反応に体が耐えられたためだと考えられる。3人目の被験者が死に、その後、スキャンダルに巻き込まれ1670年にフランスでは輸血の試みは禁止された。1667年にロウアーも人への数100ccの羊の血の輸血をおこなうが、被験者は生き延びた。動物の血のヒトへの輸血は1875年頃、レオナルト・ランドイスらが、異種の動物の血液輸血が溶血反応などを起こすことを、試験管内と動物の生体実験で証明するまで300例以上も実施された[1]。
人から人への輸血に成功したのは、イギリスのジェームズ・ブランデルで、1818年12月22日に内出血で死にかかっている女性患者に夫の血、4オンスを注射器を使って輸血した。患者は2日半ほど元気を取り戻した後死亡し、1825年から1830年の間に合計10人の患者に輸血を行い、その内5人が生き延びた。南北戦争で2回の輸血が行われ、普仏戦争でも戦場で輸血が行われたが、血液型の不整合の問題や、血液の凝固の問題で、多くの失敗例がうまれた[2]。カール・ラントシュタイナーによって血液型が発見されるのは1901年のことであり、この発見が輸血の危険性を減少させることとなった。20世紀初頭の輸血に関する技術に貢献したのはアレクシス・カレルやジョージ・ワシントン・クライルで、血液の凝固を防ぐために、患者の静脈にドナーの動脈を外科的に接続する方法で患者を救った。クライルは1905年に直接接合による輸血法で成功を収めた[3]。1910年代にベルギーの医学者アルベール・ユスタンらによって、血液抗凝固剤の開発が行われ、第一次世界大戦では多くの負傷した兵士の生命を救うこととなった。
日本における輸血の実施は第一次世界大戦に日本赤十字社の救護班を率いてパリに派遣された塩田広重が、輸血の効果を体験し、1919年、日本で子宮筋腫の患者に行って成功した。塩田は1930年に右翼の青年に狙撃された浜口雄幸首相を輸血を行い手術して救った。[4]
日本では1974年以降、輸血用血液はすべて献血でまかなわれている。以下の項では特に断りがない限り日本の状況について述べている。
昭和20年代まで頻繁に行われていた方法で、輸血の必要な患者のあったとき近親者や知人、もしくは供血斡旋業者が派遣した供血者がその場で血液を提供するもの。血液型の合う人がいない場合があることや、感染症をチェックできないこと、GVHDの危険性が高いことから現在はほぼ絶無である。
1948年には輸血を受けた女性が梅毒に感染した東大病院輸血梅毒事件が発生、枕元輸血に代わり保存血輸血が主流となるきっかけとなった。
いわゆる売血で、血液を提供する代わりに謝礼が受け取れるもの。しかし、麻薬常習者など感染症のリスクの明らかに高い提供者も金目当てに参加するため、当時はまだ知られていなかったC型肝炎の汚染が蔓延した。1964年のライシャワー事件により危険性が大きくクローズアップされ、善意の提供者による献血制度へ移行することとなった。
健康人が無償で血液を提供する。報酬としては簡単な血液検査、通算回数の多い献血者に対して記念品を贈る表彰、他に献血による貧血解消のためのドリンクやお菓子など。 あくまでも人の善意に頼る面が強いことから、血液の安定供給という点で課題が残っているが、現時点では最も安全で、金銭のやりとりがないため、倫理的な問題もクリアしているといえる。 ただし献血血液が売血より安全だという古くからの定説は今日の問診検査の水準を考慮すると疑問が残る。
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国試過去問 | 「075C005」 |
リンク元 | 「溶血性貧血」「間接クームス試験」 |
拡張検索 | 「血液型不適合輸血」「Rh不適合輸血」 |
関連記事 | 「輸血」「不適合」「血」「不適」「適合」 |
溶血の種類 | 機序 | 脾腫 | ヘモグロビン尿 ヘモジデリン尿 |
疾患 |
血管外溶血 | Mφで貪食される | + | - | 球状赤血球症 HS 自己免疫性溶血性貧血 AIHA (温式) ↑冷式より多い |
血管内溶血 | 血管内で溶血 | - | + | 自己免疫性溶血性貧血 AIHA (冷式) 発作性夜間ヘモグロビン尿症 PNH G6PD欠損症 赤血球破砕症候群 不適合輸血 |
また、HTLV-116)、CMV17)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)18)、ヒトパルボウイルスB1919)、マラリア原虫20)、E型肝炎ウイルス(HEV)21)等に感染することがあり、その他血液を介するウイルス、細菌、原虫等に感染する危険性も否定できない。観察を十分に行い、感染が確認された場合には適切な処置を行うこと。
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