過敏性腸症候群 irritable bowel syndrome IBS =? 過敏結腸
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Irritable bowel syndrome |
分類及び外部参照情報 |
ICD-10 |
K58. |
ICD-9 |
564.1 |
DiseasesDB |
30638 |
MedlinePlus |
000246 |
eMedicine |
med/1190 |
MeSH |
D043183 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 |
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過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん、Irritable Bowel Syndrome, 通称:IBS)は、主として大腸の運動および分泌機能の異常で起こる病気の総称。検査を行っても炎症や潰瘍など目に見える異常が認められないにもかかわらず、下痢や便秘、ガス過多による下腹部の張りなどの症状が起こる。以前は大腸の機能の異常によって引き起こされる病気ということで「過敏性大腸症候群」と呼ばれていたが、最近では、大腸だけではなく小腸にも関係することなどからこのように呼ばれている。
目次
- 1 症状
- 2 原因
- 3 治療
- 4 脚注
- 5 関連項目
症状[編集]
症状は主に便通の異常である。症状の現れ方によって、不安定型、慢性下痢型、分泌型、ガス型の4つに分けられる。排便により、しばらくは症状が軽快するが、またぶり返す。
- 不安定型
- 腹痛および腹部の違和感、下痢と便秘が複数日間隔で交互に現れる(交代性便通異常)。
- 慢性下痢型
- 少しでもストレスや不安を感じると下痢を引き起こす。神経性下痢などとも呼ばれる。
- 分泌型
- 強い腹痛の後、大量の粘液が排泄される。
- ガス型
- 常に「ガスが漏れて周囲の人に嫌がられているのではないか」という不安に苛まれ、意識がその一点に集中し、余計におならが出てしまう症状。症状が重くなると、他人の前では無意識の内にガスやにおいがもれるようになる。おなら恐怖症等と呼ばれあがり症(対人恐怖症)の一つと見なされることもある。
※ 機能性消化管障害に関する診断と治療の世界標準であるローマ基準IIによると、ガス型は過敏性腸症候群ではなく機能性腹部膨満症に分類される。
原因[編集]
腸の運動を司る自律神経に異常があったり、精神的不安や過度の緊張などを原因とするストレスなどが引き金となる場合がある。また、元々神経質な性格であったり自律神経系が不安定であったりする人が、暴飲暴食やアルコールの多量摂取などを行ったり、不規則不摂生な生活、過労や体の冷えなどの状態に置かれた場合に症状が発生する場合がある。
また、最初は身体的理由(暴飲暴食など)が原因で下痢をしたものが、それにより人前で恥をかくという経験を幾度か重ねるうち、学習効果により人前で下痢をすること自体に異常に恐怖心を持ってしまい、長時間トイレのない場所や人目に触れずにトイレに入れないような場所に行くと不安障害の一種として下痢をするようになることもある。これはちょうど、乗り物酔いしやすい人ということは、乗り物酔いを何度か経験するうちに「また乗り物酔いするのではないか」という予期不安によって、乗り物に乗る前から、意識がそれに集中してしまい、酔いやすい状態(あるいは酔った状態)になるという、いわゆる「酔うと思うから酔う」現象に似ているともいえる。パニック障害などとほぼ同じ原理といえる。
近年、過敏性腸症候群(IBS)にはセロトニンという神経伝達物質が関係していることが指摘されている。セロトニンは、その約90%が腸内にある。ストレスによって腸のセロトニンが分泌されると、腸のぜん動運動に問題が生じ、IBSの症状が現れるとされている。
治療[編集]
この症状は精神的なストレス、生活の乱れによって引き起こされることが多いため、症状を改善するにはこれらの要因を解消することが基本となる。
- ストレスが原因となっている場合
- 自律神経失調症の恐れがあるので、まず精神的に不安定な状態を解消し、ストレスの原因となっているものをはっきりさせて、これを取り除く。消化器科の医療機関での薬物治療や、精神科の医療機関での心理療法などによる治療を受けることが最も望ましい。また、医療機関に頼らず自らストレスを解消する方法として自律訓練法がある。
- 生活の乱れが原因となっている場合
- 暴飲暴食、喫煙、アルコールの多量摂取を避ける。食生活の改善および生活習慣の改善を行い、規則正しい生活を送る。
漢方薬[編集]
漢方薬では全ての場合が適応となる[1]。治療では精神療法と生活指導が重要であり、これと平行して薬物療法を行う[1]。
参考処方を以下に示すが、あくまで患者ごとの体質や証により最適な処方は異なるので問診が必須である。ファーストチョイス処方の服用からしばらく容態を見ながら、やがて処方内容が変更になることもある。
- 便秘下痢交代型(不安定型) - 桂枝加芍薬湯。人参湯から人参を抜き桂枝と芍薬を加えたもので、暖めと鎮痛などの作用が効く。厳密には、以下の通りで便秘時と下痢時とで処方を使い分けるのが望ましい。
- 下痢型 - 虚弱気味ならばまずは人参湯。体力が中程度になれば半夏瀉心湯だがやや消炎作用が軽いものでは平胃散。人参湯では効能が不足するときは真武湯、もしくは人参湯と真武湯の合方になるが、八味丸と同様に「附子」がはいった処方であるため胃に厳しく、かえって胃の不快感や吐き気、下痢になることがあるので注意を要する。できれば補中益気湯など胃腸薬となる処方と組み合わせたい。
- 便秘型 - 桂枝加芍薬大黄湯。大黄が下剤作用であるので下痢に転じたときは禁忌。
- 腹痛と腹鳴の強いもの - 大建中湯。あくまで該当症状軽減のためのターゲティング処方なので、下痢便秘向けの処方と併用とすること。
- 虚弱な小児 - 小建中湯。あくまで桂枝加芍薬湯に水飴成分が加わっただけで同一である。つまり栄養補給で気分や症状を落ち着かせようという意図の処方なので、桂枝加芍薬湯に市販のエキス栄養剤(甘味や畜魚肉加水分解物の含まれるもの)を併用しても大差は無い。
脚注[編集]
- ^ a b 日本医師会編 『漢方治療のABC』 医学書院〈日本医師会生涯教育シリーズ〉、1992年、59-60頁。ISBN 4260175076。
関連項目[編集]
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- O-10. 過敏性大腸症候群患者におけるβ_3-adrenoceptor genetic polymorphismの検討(3.下部消化管,一般演題,第50回日本平滑筋学会総会)
- 六反 一仁
- 腸内細菌学雑誌 = Journal of intestinal microbiology 20(2), 181-184, 2006-04-01
- NAID 10017477860
- 過敏性大腸症候群 (〔日本矯正医学会〕第50回総会記念号 テキスト 矯正医学--矯正医学の新たな礎石を目指して) -- (矯正施設に見られる特異な疾病)
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- irritable bowel syndrome, IBS
- 同
- 刺激結腸 irritable colon, spastic colon, mucous colitis
- 関
- 過敏性大腸症候群、functional bowel syndrome
臨床症状
- (IMD.872)
- 腹痛:腸管の痙攣による。食後に多く、排便により軽快
- 便通異常:便秘(兎糞状)、下痢(軟便~水様便)、あるいは便秘と下痢が交互に出現
- 腹部膨満感、悪心、腹鳴、腹部不快感など。
- 自律神経失調症状:心悸亢進、四肢冷感、発汗、顔面紅潮、肩こり、頭痛
- 精神神経症状 :不安感、不眠、無気力、緊張感、全身倦怠感
診断基準
Rome基準III
- 繰り返す腹痛あるいは腹部不快感が最近6ヶ月中に、少なくとも3ヶ月以上を占め、下記の2項目以上の特徴を示すもの。
- 1. 排便により軽快する。
- 2. 発症は排便頻度(排便回数)の変化で起こる
- 3. 発症は便性状の変化で起こる
検査
治療
- 新新療法
- 食事療法
- 薬物療法(抗コリン薬、整腸薬、抗不安薬、抗うつ薬)
国試
[★]
- 英
- irritable colon
- 関
- 過敏性大腸症候群、過敏大腸、過敏性結腸症
[★]
- 英
- syndrome, symptom-complex
- 同
- 症状群
- 関
- [[]]
- 成因や病理学的所見からではなく、複数の症候の組み合わせによって診断される診断名あるいは疾患。
内分泌
先天的代謝異常
高プロラクチン血症
- 分娩後の視床下部障害によるプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制のため、高プロラクチン血症を呈する。
- 分娩に関係なくプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制をきたし、高プロラクチン血症を呈する。
性腺機能低下
- 嗅覚の低下・脱出、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
- 肥満、網膜色素変性症、知能低下、低ゴナドトロピン性性器発育不全、多指症、低身長
性早熟
- 思春期早発症、多発性線維性骨異形成症、皮膚色素沈着
- 女性型の肥満、性器の発育障害の2主徴を示し、視床下部に器質的障害をもつ疾患群。
脳神経外科・神経内科
[★]
- 英
- large intestine (Z)
- ラ
- intestinum crassum
小腸と比べたときの大腸の特徴 (M.149)
- 結腸ヒモという縦走筋繊維からなる3本の太い帯を有する
- 結腸膨起という結腸ヒモの間の膨らみを有する
- 腹膜垂という脂肪の塊を含む
- 内径は小腸よりも大きい
大腸を構成する部位
- 盲腸
- 結腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)
- 直腸
- (虫垂)
生理
1)膨起性往復運動 haustralshuttling movement
2)(単一)膨起性移送運動 segmentalhaustralpropulsion
3)多膨起性移送運動 multihaustralpropulsion
1) 2)により内容物のゆっくりした移動(5cm/hr)
→ 48hrで上行結腸よりS状結腸へ
4)総蠕動mass movement(mass peristalsis,maSS PrePulsion)
1-3回/日、強い蠕動→結腸内容物が直腸へ移動(→排便誘発)
5)収縮回数:直腸 > S状結腸 のため内容物はS状結腸へ移動
(通常は、直腸に内容物(-))
6)胃大腸反射 gastro-colonic reflex
小腸大腸反射 ileo-colonic reflex:胃、小腸に内容物-→結腸に総蠕動(+)
*排便
1)解剖
①内肛門括約筋internalanal
②外肛門括約筋externalanal
sphincter---平滑筋
sphincter山-一横紋筋
2)排便のメカニズム
i)総蠕動一糞便直腸へ
ii)直腸内圧〉20Ⅷ舶g ⇒ 直腸壁伸展⇒ 仙髄排便中枢(S2-4)
⇒ ①高位中枢(便奇形成)
②排便反射defecation reflex
内肛門筋弛緩
外肛門筋収縮(一過性)
直腸蠕動運動(⇒内圧をさらに高める)
iii) 内圧45-55mmHg以上
内容物200ml以上
便意による排便動作 外肛門筋弛緩
腹筋、横隔膜収縮
[★]
- 英
- hypersensitivity、hyperreactivity、overactivity、hypersensitive、overactive
- 関
- アレルギー、過感受性、過感受的、活動亢進、過敏症、高感受性、知覚過敏、反応亢進、反応性亢進
[★]
- 英
- supersensitivity、irritation、supersensitive、irritable
- 関
- 過感受性、過感受的、刺激作用、被刺激性、易刺激的
[★]
- 英
- group
- 関
- グループ、集団、分類、群れ、基、グループ化