出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/04/06 20:33:22」(JST)
臨床検査技師(りんしょうけんさぎし、英: Medical technologist, Biomedical laboratory scientist)は、病院などの医療機関において種々の臨床検査を行う技術者である。日本においては、臨床検査技師等に関する法律により規定される国家資格である。
古くは医師自らが検査を行っていたものであったが、医療の分業化と検査の高度化が進み、現在の医療に臨床検査技師は不可欠の存在となっている。コ・メディカルの一種。
臨床検査技師は、医師又は歯科医師の指示の下に、
を行うことを業とする。
1~6は検体検査である。
この生理学的検査のうち、MRI(磁気共鳴画像検査)と、超音波検査は診療放射線技師も、また眼底写真検査(無散瞳)は視能訓練士および診療放射線技師も業とすることができる。
高い精度と迅速かつ適切な処理が要求される検査においては、検査に先立って臨床検査技師が自ら採血などの検体採取から一貫して行うことが望ましいため、採血および体表などからの検体採取がそれぞれ下記の一定条件下で行うことが認められている。[2]
血液の採取量に関して、かつては検査に供する為の採血という性質から厚生省通達でおおむね20ml以内とされていたが[4]、現在では医師が必要であると認めた場合においては20ml以上の採血量も可能とされている。[5]
(血液以外の)検体採取は、2014年の法改正により2015年4月から認められた業務であり、2015年以前の免許取得者は厚生労働省指定の研修会の修了者でなければ同業務は行えない。[7]
検体検査については業務独占とされていないので、法的には全くの無資格者でも行うことは可能とされているが、実際には無資格者が職を得ることは困難である。
また、臨床検査技師は病理学的検査に関連し、病理医が行う病理解剖の補助を務めることもある。病理解剖助手の資格とは別であるものの、1988年に医道審議会死体解剖資格審査部会がまとめた病理解剖指針の中で、解剖の補助者は臨床検査技師が行うべきであり、死体からの血液採取、摘出臓器の標本作成、縫合等の医学的行為についても臨床検査技師等が行うべきであるとした[8]。
また、監察医が行う解剖(死体検案業務)の補助として、胸腹腔開検の際に、臨床検査技師が臓器の摘出の他、切開、縫合、検体の採取、薬化学、病理組織学的検査などを行う場合がある。
臨床検査は元来医師が行っていたものであり、法的には医師は(「医業と重複しない歯科医業」を除く)全ての医療行為を「医業」として行うことができ、看護師は診療の補助の範囲で検査を行うことができるとされているため、現在でも上記の臨床検査業務のうち一部検査については、医師や看護師が行うこともある。
臨床検査技師 | |
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英名 | Medical technologist, Biomedical laboratory scientist |
実施国 | 日本 |
資格種類 | 国家資格 |
分野 | 医療 |
認定団体 | 厚生労働省 |
等級・称号 | 臨床検査技師 |
根拠法令 | 臨床検査技師等に関する法律 |
ウィキプロジェクト 資格 ウィキポータル 資格 |
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日本において臨床検査技師として業務を行うために合格する必要のある臨床検査技師国家試験を受験するには、臨床検査に関わる3年制の短期大学、3年制・4年制(夜間部)の専門学校、4年制及び6年制大学を卒業することが必要である。 しかし傾向として、4年制大学を志望する学生が増えており、大学院への進学もまた多くなってきている。
このほか、薬学部、獣医学部、理学部などにおいて薬学、獣医学、理学などの課程に加えて臨床検査に関わる一定の科目(医用工学概論、臨床検査総論、臨床生理学、臨床化学,放射性同位元素検査技術学)を取得した者や、医学部医学科、歯学部歯学科の卒業者および医師・歯科医師免許取得者も臨床検査技師国家試験の受験資格を有するが、合格率は総じて低い。
臨床検査技師国家試験:合格者累計/受験者累計。
昭和46年~平成24年:179,598人/293,888人。
昭和46年~昭和52年:52,840人/72,856人。(含特例講習会受講者32,197人、科目免除者13,362人)/(含特例講習会受講者33,461人、科目免除者27,000人)
昭和53年~平成1年:53,485人/114,452人。(含科目免除者13,500人)/(含科目免除者33,953人)
平成2年~平成24年:73,273人/106,580人。
国家資格である臨床検査技師を対象、または臨床検査技師が資格要件となる認定資格を以下に記す。いずれも学会の認定資格であり法的な規定があるわけではないが、実質的に独占業務資格となっているものもある。主立ったものを以下に示す。
臨床検査技師の上級資格で各分野に細分化されている。経験と、高度な知識を持つことを証明するもので、一級試験は非常に難しい。
細胞検査士は、日本臨床検査医学会と日本臨床細胞学会が臨床検査技師から認定し、指導医の監督指導のもと細胞診スクリーニングを行うことができる。学会認定資格であり国家資格(免許)ではないが、この資格を保有していない臨床検査技師はこの業務に携わる事が難く(就業し難い)、実質的に独占業務資格となっている。 合格率は例年低く高度な知識と技術を求められる試験で、受験には1年以上の業務経験が必要であるが、北里大学などの特別に認定を受けた大学では、大学在学中に国家資格取得見込みで細胞検査士資格試験を受検することができる。
超音波検査士は、臨床検査技師として、臨床経験を有し超音波認定医の推薦を受けた上で筆記試験合格者に日本超音波医学会が認定し与えられる。対象臓器ごとにより、さらに細分化されている。
日本臨床検査医学会所定の緊急臨床検査資格認定制度。生化学検査、血液検査、血清検査、微生物検査、輸血検査、生理検査の幅広い知識と技術が必要。
各検査分野に関して高い専門性を有することを証明するための認定資格である。ほとんどの認定検査技師は日本臨床検査技師会の認定センターが認定を行っており今後も必要な分野の認定が行われる予定である。
認定輸血検査技師は輸血検査において高度な知識と技術が求められ、認定の合格率が低い難関となっている。
内視鏡業務に携わる。(日本消化器内視鏡学会の認定資格)
資格取得や維持にかかる支援などの面で、施設側の理解不足ということもあり看護師や管理栄養士に比べて資格取得者が少ない。
薬剤師、管理栄養士、看護師についで取得者が多く栄養サポートチームに参加することの望ましい職種となっている。
産婦人科領域で人工授精に携わる胚培養士。従事者には臨床検査技師であるものも多い。
衛生検査技師は、臨床検査技師の業務のうち、生理学検査以外の検査、すなわち検体検査を行うことができる。業務独占部分のない名称独占資格である。 かつては医学、歯学、獣医学又は薬学の正規の課程を修めた(卒業した)者であれば、申請により無試験で厚生労働大臣から免許を受けることができた。 しかし、臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第39号)により、平成23年4月からは新規の免許は交付されなくなった。 今までの免許取得者はこれまで同様に業務を行うことができる。
臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律(昭和33年法律第76号)第2条第1項の臨床検査技師又は同条第2項の衛生検査技師として10年以上その業務に従事した者は労働衛生コンサルタントの受験資格が付与される。
臨床検査技師は、診療放射線技師と同様に就職難であると言われることが多いが、医療施設における結婚や出産に伴う女性の離職率は他の医療職に比べて低い。
医療施設における臨床検査技師の求人減少の原因は、かつては機械化のよる省力化が原因といわれて久しいが、近年はむしろ診療報酬点数引下げにより採算がとれないことから経営側が検査職の採用枠の増数を渋り、人手が足りず現場も人員を求めているのに採用枠が少ないという矛盾が生じていた。 しかし、近年は機械化省力化は限界に近付いており、また、検査料診療報酬も底打ちとなって、むしろ微生物検査や外来迅速検査加算・採血料の増額、鼻腔咽頭検体採取料の新設などにより、改善のきざしがある。
臨床検査技師は、国家試験に合格して就職したとしても、実際の現場で使えるようになるまでには数年かかるといわれている。近年は就職先の多くが即戦力を求める傾向が強い上に、医師における研修医制度のような育成システムが臨床検査技師にはないため、採用後知識や技能を得て一人前になるまでの数年間はハードなものになることが予想される。 また、他の医療職同様に卒後教育の重要性が指摘されている。
団塊の世代の大量退職は、求職者にとっては喜べるものではあるが、病院にとっては団塊世代退職後の優秀な人材確保が大きな課題となっている。
近年チーム医療の精神の普及により、患者への検査内容の説明、糖尿病療養指導や院内感染対策チーム、栄養サポートチームへの参加など、業務内容は広がりを見せている。
さらに、体外受精に関わる胚培養の業務にも多くの施設では臨床検査技師が携わっている。
また、国境なき医師団の参加資格としても認められており、日本だけにとどまらず世界で活躍する臨床検査技師も増えつつある。
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栄養サポートチーム(NST:Nutrition Support Team)とは、職種の壁を越え、栄養サポートを実施する多職種の集団(チーム)である。栄養サポートとは、基本的医療のひとつである栄養管理を、症例個々や各疾患治療に応じて適切に実施することである。<ref name=A>東口高志 『NST完全ガイド』照林社、2005年</ref>
NSTは1960年代の中心静脈栄養(TPN)の開発普及とともに誕生し、欧米を中心に世界各地に広がった。日本ではその普及が容易でなく、1998年のPPM方式の考案が契機となり、全国の医療施設に広がった。2006年4月の診療報酬改定により、多くの病院でNSTが立ち上がることとなった。<ref name=A>東口高志 『NST完全ガイド』照林社、2005年</ref>
この項では日本におけるNSTについて述べる。
1968年、米国のダドリック(Dudrick)らによって、中心静脈栄養法(Total Parenteral Nutrition)が開発され、全米に普及した。同時期に、医師・薬剤師・看護師などの栄養管理を専門とするメディカル・スタッフが各施設で求められるようになり、栄養管理チーム構築の始まりとされる。一方、同時期にブラックバーンにより栄養アセスメントが初めて体系化された。
1973年、米国ボストンシティ病院に初のNSTが本格的に誕生した。同時期に、マサチューセッツ総合病院ではフィッシャー教授がNSTをHyperalimentation Unitという名称で構築していた。
NSTは中心静脈栄養法の普及と相まって全米、ヨーロッパ諸国に広がった。 欧米ではNSTは診療部門の一つとして設立されていることが多い。施設内の全ての症例に対して提言・発言する権利を与えられ、中心静脈栄養法の施行にもNSTの承認を必要とするなどの規定が設けられたりしている。NSTが医療の質の向上や医療費の削減に貢献することを全ての医療従事者が認識している。<ref name=B>東口高志、『NSTの運営と栄養療法』医学芸術社、2006年</ref>
日本においても、中心静脈栄養法の普及と同時にNSTが導入されたが、数施設で単科・少数科での活動であったり、全科型でも中心静脈栄養法の管理が中心であった。<ref name=B>東口高志、『NSTの運営と栄養療法』医学芸術社、2006年</ref>栄養管理の有用性が認識されていなかった為、経費のかかる専属チームの設立は考えられていなかった。
全科型のNSTの発足は、PPM(Potluck Party Method)方式によるNSTが、1998年6月に鈴鹿中央総合病院に、2000年7月に尾鷲総合病院に設置されたものが日本初である。<ref name=B>東口高志、『NSTの運営と栄養療法』医学芸術社、2006年</ref>
現在日本でもNST活動の有用性は認識されており、2004年5月に病院機能評価項目Ver5.0の中にNSTの設立が取り上げられ、2005年末には全国で約700施設でNSTが設立されている。また、2006年4月の診療報酬改定に伴い、栄養管理実施加算が新設された。この加算が求めるものは、全科型のNST活動であり、全国の医療施設がNSTを積極的に設立するきっかけとなった。
NSTは職種の壁を越えたチーム医療であり、多職種のメンバーで組織される。主な職種は以下の通りである。
これらのチームによって、患者に対して栄養状態の評価・判定を行い、適正な栄養補給を実施し、さらに経緯を確認しながら栄養を改善することを目的に組織される。
適切な栄養療法を基盤として、より大きな治療効果や予防効果をもたらす補助組織(ワーキングチーム)やコラボレーション組織の育成が必要となる。
カテーテルの管理、栄養・食事のチェック、身体測定、NST診療録の管理などがあるが、中でも重要な役割は、①患者の身体状況を確認し、正確な情報をチームにアドバイスすること、②患者に栄養状態の実状を把握してもらい、協力してもらうことであろう。
第一に、輸液製剤の無菌的な調製があげられる。また、薬学的見地より栄養状態、処方内容を検討すること。特に輸液製剤、経腸栄養剤と薬剤との相互作用の検討、消毒剤と消毒方法の検討と医療従事者及び患者、患者家族への教育がある。<ref name=C>島田慈彦ら 『実践静脈栄養と経腸栄養』エルゼビア・ジャパン、2003年</ref>。
NSTにおいて管理栄養士は患者の食事摂取量や摂取状況など情報を元に食事量や食事形態の調節を行う
日本静脈経腸栄養学会(JSPEN)、日本病態栄養学会、日本栄養療法推進協議会などがNST認定施設、NST専門療法士などの認定を行っている。
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