出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/08/16 10:55:20」(JST)
診療報酬(しんりょうほうしゅう、英語: Health care fee)とは、保険診療の際に医療行為等の対価として計算される報酬を指す。「医師の報酬」ではなく、それだけでなく医療行為を行った医療機関・薬局の医業収入の総和を意味する。医業収入には、医師(または歯科医師)や看護師、その他の医療従事者の医療行為に対する対価である技術料、薬剤師の調剤行為に対する調剤技術料、処方された薬剤の薬剤費、使用された医療材料費、医療行為に伴って行われた検査費用などが含まれる。
日本の保険診療の場合、診療報酬点数表に基づいて計算され点数で表現される。患者はこの一部を窓口で支払い(自己負担)、残りは公的医療保険で支払われる。保険を適用しない自由診療の場合の医療費は、診療報酬点数に規定されず、患者が全額を負担する。
米国の公的医療制度であるメディケアおよびメディケイドについては、連邦政府機関であるメディケア・メディケイドサービスセンター(英語版)(CMS)が所管している。それらの診療報酬は、CMSが予見定額払い方式(英語版)(PPS)にて価格を定めており、外来、入院、その他のサービスに適用される[1]。メディケアは米国において最大の医療サービス購入者であるため、市場に対して大きな価格リーダーである。その価格はCMSが様々な医療サービスの労働費および資源コストを分析して決定する。
台湾の医療では包括払い制度、および総額予算支払制度が導入されており、政府が年間の総額医療費を決定し、その予算内で1点あたりの診療報酬金額を調整される。
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保険診療機関は実施した診療内容等にもとづき、診療報酬明細書(レセプト)を作成し公的医療保険を請求するが、明細書の各項目は金額ではなく点数化されている。診療報酬点数は厚生労働省が告示する(健康保険法76条)。1点=10円。医療機関等で保険を使って診断・治療を受ける(保険診療)ときに用いられる医療費計算の体系となっている。診療報酬点数には医科・歯科・調剤の3種類がある[2]。急性期病院で用いる診断群分類点数 ((DPC点数表)もある。患者は診療報酬によって計算された一部(3割負担など)を医療機関窓口で支払う。
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日本では、中央社会保険医療協議会の答申により診療報酬は決定される(健康保険法第82条)。改定は原則として2年に一度行われる。
診療報酬の全体引き上げ率で語られることが多い。しかし増額は患者窓口負担や健康保険保険料上昇になるので、増額より配分の見直しが先決ではないかとの意見がある[7]。収入の低い診療科や勤務医に重点配分して、医師不足を是正しようとの考え方である。厚生労働省による医療経済実態調査によれば、診療科ごとの報酬の格差や開業医と勤務医の収入の格差が存在する[1][8][9]としているが、同調査は収支の定義、調査期間、調査客体選定の公平性など、統計処理上の問題点が数多く指摘されており[10]、このデータを元に議論するのは不適切との批判が多い。
現在の診療報酬体系では診療報酬を上げても「ドクターフィー」と「ホスピタルフィー」の区分けがないので、病院の維持管理(経営管理)(ホスピタルフィー的なもの)に回り、医師の技術部分を評価(ドクターフィー的なもの)することにつながりにくいとの報告や議論がある[11][2]。
医療機関等で処方される医薬品の価格は、診療報酬の薬価として定められている。
以前は、薬価が実際の医薬品の納入価格よりも高額であったために、医薬品をたくさん処方すればするだけ病院が利益を上げることができた。社会的な問題として「薬漬け医療」の元凶となっていた。
その後厚生省の方針により、度重なる大幅な薬価引き下げが行われ、また医薬分業が導入されたことにより、調剤報酬は病院経営と切り離された。現在の処方箋医薬品の納入価は、先発品について対薬価基準で88~90%前後、特許切れ後の後発品とよばれるものでも80~85%前後である。消費税を含めると、それぞれ 95%,85%である。
薬剤の管理費用や借入金利などを考慮すれば、むしろ「薬価差損」が生じているという声もある。基本効果を同じくする新薬が毎年の如く発売されるために、実際の治療に使われる薬価自体の低価格化が進まないことの方がより問題とする声がある。[要出典]
医療機関等において患者から採取された検体の検査は、検査ごとに診療報酬が定められている。医療費配分で効率化の余地がある領域の項の中で、医薬品、医療材料、検査等は「もの代」として市場実勢価格を反映して診療報酬が決められる[12]。
多くの検査はその医療機関内で実施されるが、登録衛生検査所や医師会検査センターなどの検査受託機関に検査を外注することもしばしばである 検査外注では、検査受託機関が検査料金を割り引くと保険医療機関のもうけが生じる。これが検査差益である。
検体検査において検査試薬価低下、試薬調整・自動化・少人化などにより検査原価低減の余地がある場合は、検査の診療報酬が実勢価格に基づいて決められることは適正と考えることができるが、競争の結果、検査の精度が維持できないまでに受託価格が低下するばあいは、院内・院外問わず、検体検査において有害事象が生じることが危惧される。人件費配分が大きい検査項目では効率的であることで検査が疲弊し医療の質の低下につながる恐れが否定できない。[要出典]
日本臨床検査医学会を含む臨床検査関連6団体協議会からは「医療制度改革における検体検査の取扱いに関する要望書」[13](平成13年12月20日)が出されており、この要望書の中に検査差益の記載がある薬価差益が小さくなるにつれ、その役割が検査差益に移ったのではないかとの指摘がある。一種のゴム風船効果(balloon effect)である[14]。
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栄養サポートチーム(NST:Nutrition Support Team)とは、職種の壁を越え、栄養サポートを実施する多職種の集団(チーム)である。栄養サポートとは、基本的医療のひとつである栄養管理を、症例個々や各疾患治療に応じて適切に実施することである。<ref name=A>東口高志 『NST完全ガイド』照林社、2005年</ref>
NSTは1960年代の中心静脈栄養(TPN)の開発普及とともに誕生し、欧米を中心に世界各地に広がった。日本ではその普及が容易でなく、1998年のPPM方式の考案が契機となり、全国の医療施設に広がった。2006年4月の診療報酬改定により、多くの病院でNSTが立ち上がることとなった。<ref name=A>東口高志 『NST完全ガイド』照林社、2005年</ref>
この項では日本におけるNSTについて述べる。
1968年、米国のダドリック(Dudrick)らによって、中心静脈栄養法(Total Parenteral Nutrition)が開発され、全米に普及した。同時期に、医師・薬剤師・看護師などの栄養管理を専門とするメディカル・スタッフが各施設で求められるようになり、栄養管理チーム構築の始まりとされる。一方、同時期にブラックバーンにより栄養アセスメントが初めて体系化された。
1973年、米国ボストンシティ病院に初のNSTが本格的に誕生した。同時期に、マサチューセッツ総合病院ではフィッシャー教授がNSTをHyperalimentation Unitという名称で構築していた。
NSTは中心静脈栄養法の普及と相まって全米、ヨーロッパ諸国に広がった。 欧米ではNSTは診療部門の一つとして設立されていることが多い。施設内の全ての症例に対して提言・発言する権利を与えられ、中心静脈栄養法の施行にもNSTの承認を必要とするなどの規定が設けられたりしている。NSTが医療の質の向上や医療費の削減に貢献することを全ての医療従事者が認識している。<ref name=B>東口高志、『NSTの運営と栄養療法』医学芸術社、2006年</ref>
日本においても、中心静脈栄養法の普及と同時にNSTが導入されたが、数施設で単科・少数科での活動であったり、全科型でも中心静脈栄養法の管理が中心であった。<ref name=B>東口高志、『NSTの運営と栄養療法』医学芸術社、2006年</ref>栄養管理の有用性が認識されていなかった為、経費のかかる専属チームの設立は考えられていなかった。
全科型のNSTの発足は、PPM(Potluck Party Method)方式によるNSTが、1998年6月に鈴鹿中央総合病院に、2000年7月に尾鷲総合病院に設置されたものが日本初である。<ref name=B>東口高志、『NSTの運営と栄養療法』医学芸術社、2006年</ref>
現在日本でもNST活動の有用性は認識されており、2004年5月に病院機能評価項目Ver5.0の中にNSTの設立が取り上げられ、2005年末には全国で約700施設でNSTが設立されている。また、2006年4月の診療報酬改定に伴い、栄養管理実施加算が新設された。この加算が求めるものは、全科型のNST活動であり、全国の医療施設がNSTを積極的に設立するきっかけとなった。
NSTは職種の壁を越えたチーム医療であり、多職種のメンバーで組織される。主な職種は以下の通りである。
これらのチームによって、患者に対して栄養状態の評価・判定を行い、適正な栄養補給を実施し、さらに経緯を確認しながら栄養を改善することを目的に組織される。
適切な栄養療法を基盤として、より大きな治療効果や予防効果をもたらす補助組織(ワーキングチーム)やコラボレーション組織の育成が必要となる。
カテーテルの管理、栄養・食事のチェック、身体測定、NST診療録の管理などがあるが、中でも重要な役割は、①患者の身体状況を確認し、正確な情報をチームにアドバイスすること、②患者に栄養状態の実状を把握してもらい、協力してもらうことであろう。
第一に、輸液製剤の無菌的な調製があげられる。また、薬学的見地より栄養状態、処方内容を検討すること。特に輸液製剤、経腸栄養剤と薬剤との相互作用の検討、消毒剤と消毒方法の検討と医療従事者及び患者、患者家族への教育がある。<ref name=C>島田慈彦ら 『実践静脈栄養と経腸栄養』エルゼビア・ジャパン、2003年</ref>。
NSTにおいて管理栄養士は患者の食事摂取量や摂取状況など情報を元に食事量や食事形態の調節を行う
日本静脈経腸栄養学会(JSPEN)、日本病態栄養学会、日本栄養療法推進協議会などがNST認定施設、NST専門療法士などの認定を行っている。
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