肺表面活性物質
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肺サーファクタント(はい-、英語: Pulmonary surfactant、肺表面活性物質)は、生体界面活性剤。
概要[編集]
肺サーファクタントは、肺胞の表面張力を減少させるためのものである。肺胞は球形であり、ここに発生する表面張力は、肺胞をつぶす方向に働く。この力で肺胞が虚脱するのを防ぐため、生体においては、界面活性剤によって表面張力を緩和している。この界面活性剤が肺サーファクタントである。組織液の表面張力は約50ダイン/cmであるのに対し、肺サーファクタントの存在によって、実際の生体肺胞における表面張力は約20ダイン/cmにまで緩和されている。
肺サーファクタントはII型肺胞上皮細胞に由来し、おおむね胎生34週より分泌が開始される。90%のリン脂質と10%のタンパク質によって構成されている。脂質の80%をしめる主要成分はリン脂質のジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoyl lecithin: DPL)で、その他遊離脂肪酸およびトリグリセリドを含有する。一方、タンパク質としては、肺サーファクタントタンパク質-A〜D(SP-A〜D)が含まれている。
製剤としては健康なウシ肺抽出物が用いられており、特に新生児呼吸窮迫症候群に対する補充療法で重宝される。日本では岩手医科大学の藤原哲郎教授らが開発したサーファクテンを田辺三菱製薬が製品化したものがもっとも多用される。投与は、生食液(120mg/4mL)によく懸濁して、120mg/kgを生後8時間以内に気管内に注入することで行なう。肺内に行きわたるように、投与は4,5回に分けて行ない、1回ごとに体位変換する。サーファクテンにおいて副作用は報告されていない。
なお、胎児肺の成熟度の指標として、胎児肺由来の肺サーファクタントにおけるレシチン/スフィンゴミエリン比(L/S比)の測定が行なわれる。レシチン(L; DPLのこと)は肺サーファクタントの主成分であり、肺の成熟に伴って濃度が上昇する。一方、スフィンゴミエリン(S)は妊娠経過を通じてほぼ一定濃度であることから、これら比率によって胎児肺の成熟度を判定し、新生児呼吸窮迫症候群の発生予測に用いられる。L/S比が1.5以下の場合は未熟、2.0以上であれば成熟していることが多い。
参考文献[編集]
- 大関武彦, 古川漸, 横田俊一郎 『今日の小児治療指針 第14版』 医学書院、2006年。ISBN 978-4-260-00090-1。
- 高久史麿, 尾形悦郎, 黒川清, 矢崎義雄 『新臨床内科学 第8版』 医学書院、2002年。ISBN 978-4-260-10251-3。
- 高久史麿, 矢崎義雄, 関顕, 北原光夫, 上野文昭, 越前宏俊 『治療薬マニュアル 2006』 医学書院、2006年5月。ISBN 978-4-260-00139-7。
呼吸器系の正常構造・生理 |
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気道系 |
解剖学的構造
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上気道
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鼻
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鼻孔 | 鼻腔 | 鼻甲介 | 副鼻腔
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口
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口腔前庭 | 口腔 | 口蓋
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咽頭 - 喉頭
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下気道
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気管
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気管支
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主気管支 - 葉気管支 - 区域気管支 - 亜区域気管支
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細気管支
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小気管支 - 細気管支 - 終末細気管支
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呼吸細気管支
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ガス交換器
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肺 - 肺胞管 - 肺胞嚢 - 肺胞
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顕微解剖学
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I型肺胞上皮細胞 | II型肺胞上皮細胞 | 杯細胞 | クララ細胞 | 気管軟骨輪
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生理学・生化学
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生理学
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肺気量 | 肺活量 | %肺活量 | 残気量 | 死腔 | 1回換気量 | 1秒率 | 肺サーファクタント | SP-A
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生化学
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PaCO2 | PaO2 | AaDO2 | FiO2 | SpO2 | 呼吸係数および酸素化係数
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血管系 |
肺循環系
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(右心室 -) 肺動脈 - 毛細血管 - 肺静脈 (- 左心房)
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気管支循環系
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(胸部大動脈 -) 気管支動脈 - 毛細血管 - 気管支静脈 (- 奇静脈/副反奇静脈)
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運動器系 |
骨格
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肋骨 | 胸骨
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呼吸筋
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横隔膜 | 内肋間筋 | 外肋間筋 | 胸鎖乳突筋 | 前斜角筋 | 中斜角筋 | 後斜角筋 | 腹直筋 | 内腹斜筋 | 外腹斜筋 | 腹横筋
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神経系 |
中枢神経系
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呼吸中枢 | 呼吸調節中枢 | 前頭葉
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末梢神経系
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横隔神経 | 肋間神経
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Related Links
- 肺サーファクタント(はい-、英語: Pulmonary surfactant、肺表面活性物質)は、生体 界面活性剤。 [編集] 概要. 肺サーファクタントは、肺胞の表面張力を減少させるための ものである。肺胞は球形であり、ここに発生する表面張力は、肺胞をつぶす方向に働く。
- 肺サーファクタントタンパク質-A(はいサーファクタントたんぱくしつエー、英語: pulmonary Surfactant Protein-A、SP-A)は、肺サーファクタント・タンパク質の1つで、 リン脂質とアポタンパク質で構成されている。
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
組成
- 1瓶中健康なウシ肺抽出物で,一定比率のリン脂質,遊離脂肪酸,トリグリセライドを有するものを120mg含有する.
効能または効果
- 呼吸窮迫症候群
- 生理食塩液(120mg/4mL)によく懸濁して,120mg/kgを気管内に注入する.全肺野に液をゆきわたらせるため,4?5回に分け,1回ごとに体位変換する.1回ごとの注入にあたって,100%酸素でバギングしながら,経皮酸素分圧をモニターし,80mmHg以上にあることを確認する.初回投与の時期は,生後8時間以内が望ましい.
追加投与は,患者の症状に応じて決定する.用量は60?120mg/kgとする.
慎重投与
- 両親,兄姉等がアレルギー症状の既往のある患者〔患者血清中には抗体は検出されていないが,動物実験(モルモット,マウス)で抗体産生が認められている.〕
薬効薬理
ヒト低出生体重児の肺機能2)
- 呼吸窮迫症候群の低出生体重児(出生時体重750?1750g未満)に,人工換気管理下で本剤120mg/kgを投与した.動脈血酸素分圧,動脈血二酸化炭素分圧及びpHを生理的正常範囲に維持するために必要な最大吸気圧,平均気道内圧,換気回数,吸入酸素濃度などの人工換気条件は人工換気療法のみの治療群に比較し有意な改善を示した.
ウサギ未熟胎児の肺圧?量特性6)
- 帝王切開にて取り出した妊娠27日のウサギ胎児を,初回呼吸前に脱血して屠殺し,本剤60mg/kgを投与したところ,満期ウサギ胎児と同程度の肺圧?量特性を示した.
作用機序
- 肺サーファクタントは,肺胞の気?液界面の表面張力を低下させて肺の虚脱を防止し,肺の安定した換気能力を維持する.
本剤は,肺サーファクタントの生理的役割を代償し,表面張力を低下させる.
有効成分に関する理化学的知見
性状
- 白色?微黄色の結晶性の塊又は粉末で,わずかに特異なにおいがある.クロロホルムに溶けやすく,メタノール又はエタノール(95)に溶けにくく,ジエチルエーテル又はヘキサンに極めて溶けにくく,水にほとんど溶けない.
★リンクテーブル★
[★]
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [099D041]←[国試_099]→[099D043]
[★]
- a. 糖脂質が含まれる。
- b. 表面張力を低下させる。
- c. 不足時には静脈内投与される。
- d. 妊娠32週ころから産生される。
- e. I型肺胞上皮細胞から分泌される。
[正答]
※国試ナビ4※ [103G013]←[国試_103]→[103G015]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [109H038]←[国試_109]→[109I002]
[★]
- 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の病態について正しいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112B007]←[国試_112]→[112B009]
[★]
- 英
- fetus
- 関
- 胎児の発生
成長
- およそのめやすね。正確ではない。(SPE.68)
- 25週: 750g
- 30週:1500g
- 35週:2000g ←だいたい2200gだけど
- 40週:3000g
- 25週から5週間で2倍、30週から10週で2倍
循環器
- 胎児心拍動は妊娠6週で認められ、妊娠7週目では100%確認できる。(G10M.6 QB.P-209)
感覚系
- 妊娠10週ごろから刺激に反応して口、指、趾、目を動かす。(NGY.285)
聴覚
- 妊娠中期には聴覚が発達。(NGY.285)
- 妊娠28-30週(妊娠後期の始め)には音の刺激により心拍数が増加。(QB.P-190)
胎児の成長
- G10M.6改変
妊娠月数 (月)
|
妊娠週数 (週)
|
胎児のイベント
|
1
|
2
|
肺胞期に着床(受精後6日後)
|
2
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5
|
中枢神経系、心臓形成開始
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6
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肺形成開始
|
7
|
胚形成、胎盤形成開始
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3
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9
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胎児心拍最速(170-180bpm)
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10
|
躯幹と四肢の運動が超音波で測定可能
|
11
|
外陰の性差が決まる(が超音波では分からない)
|
4
|
12
|
排尿が超音波で観察可能、胎便形成開始。
|
15
|
胎盤完成。呼吸様運動が不規則に観察可能(10週から始まっているが観察は容易ではない)。
|
5
|
16
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嚥下が超音波で観察可能。 → 胎盤完成以降に羊水量が(急に)増えるが、嚥下が観察可能になるのはこれと関係ある?
|
17
|
外陰の性差が超音波で観察可能
|
18
|
胎動を感ずる(18-20週)
|
6
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20
|
肺サーファクタント産生開始
|
7
|
26
|
肺の構造完成
|
8
|
28
|
肺サーファクタント増加
|
9
|
34
|
胚が成熟、腎の発生完了
|
国試
[★]
- 英
- surface active agent
- 同
- pulmonary surfactant 肺サーファクタント、肺胞界面活性物質
- 商
- サーファクテン
- 関
- L/S比
[show details]
- 胎児のII型肺胞上皮細胞で在胎20週ころから産生され始め、在胎32週以降に急激に産生が増加する (PED.396) → 胎児#胎児の成長
- 胎児の肺は妊娠26週には構造が完成し、妊娠34週頃には肺のサーファクタント産生が十分量に達して機能的に成熟(G10M.144)
- 肺サーファクタントが羊水に出現するのは妊娠28-32週ごろ (出典不明)
米国
[★]
- 英
- 1,2-dipalmitoylphosphatidylcholine
- 関
- ジパルミトイルホスファチジルコリン
[★]
肺サーファクタント
[★]
- 英
- pulmonary surfactant-associated protein、surfactant protein、SP
- 関
- サブスタンスP、標準模擬患者
[★]
- 英
- pulmonary surfactant-associated protein B
[★]
- 英
- pulmonary surfactant-associated protein C
[★]
- 英
- pulmonary surfactant-associated protein D
[★]
- 英
- lung
- 関
- 肺区域、肺野、呼吸器の上皮の移行
- 図:M.78 N.204(肺のリンパ系),197(肺区域)
解剖
- 重量:右:500g, 左:400g
- 葉:右3葉、左2葉
- 右上葉、右中葉、右下葉、左上葉、左下葉
発生
- L.247
- 肺の上皮、喉頭、気管、および気管支の内面を覆う上皮 → 内胚葉
- 気管および肺の軟骨性要素と筋要素、結合組織 → 中胚葉(臓側中胚葉)
- NGY.283
- 妊娠16週頃:気管、気管支が分岐し腺状構造をなす(腺状期)
- 妊娠16-24週頃:管状構造を形成し、毛細血管が上皮に接触する。(管状期)
機能
肺の構造
- SSUR.323
臨床関連
胸部X線解剖
- 右第1弓:上大静脈
- 右第2弓:右心房
- 左第1弓:大動脈弓
- 左第2弓:肺動脈幹
- 左第3弓:左心房(左心耳)
- 左第4弓:左心室
シルエットサイン
- 右第2弓:(陽性)[上葉]内側中葉区(S5)、[下葉]内側肺底区(S7)、(陰性)[下葉]上-下葉区(S6)???、後肺底区(S10)???? → 陰性だったら背面の区域、つまりS6,S10と考えて良いのではないだろうか?
- 左第4弓:(陽性)[上葉]上舌区(S4)、下舌区(S5)、[下葉]前内側肺底区(S7+8)、(陰性)[下葉]上-下葉区(S6)???、後肺底区(S10)??? → 同様にS6,S10と考えて良いのでは?
肺のリンパ節
- 左肺は心臓があるために、右とは異なる形状・肺区域を有する。
- S1とS2はまとめてS1+2と呼ばれる
- S7とS8はまとめてS7+8あるいはS8と呼ばれる ← 心臓が左胸腔に全内側に突出しているからと考える
臨床関連
- 分葉異常:奇静脈の走行異常による右上葉の奇静脈葉が最も多い(QB.I-295)
[★]
- 英
- surfactant
- 関
- 肺表面活性物質、界面活性剤